ヌマンタの書斎

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プロレスってさ 手四つ

2015-03-10 13:27:00 | スポーツ

プロレスラーという奴らには、とんでもない怪力自慢が少なくない。

腕相撲世界一のスコット・ノートンとか、全米ボディビル三年連続チャンピオンのトニー・アトラスなど怪力自慢は個性的なレスラーが少なくない。いずれも己の腕力には自信があり、怪力自慢をリング上で繰り広げる。

その一つに手四つと言われるものがある。向き合ったレスラー同士が、相手の手と手を合わせて、その怪力をもって押しつぶす。ただ、それだけなのだが、これが実力者同士の手四つだと、見ている方まで全身に力が入るほどの迫力がある。

日本でも絶大な人気をもっていたハルク・ホーガンは、この手四つを得意としていた。あの2メートルの長身とボディビルで鍛え上げた膨大な筋肉を見せつけるのを好んだホーガンは、よく対戦相手をこの手四つで潰して、誇らしげにリング上で決めポーズを取っていた。

そのホーガンに真っ向から力勝負を挑んだのが、温厚で知られるマスクド・スーパースターであった。華麗なとび技を得意としていたマスクド・スーパースターだが、実はその怪力ぶりは知る人ぞ知るものであった。

リング中央で、二人は真っ向から手四つに組み、見ているこちらまで緊張するほどの力比べを始めた。リング上を一歩も動かず、全身から噴き出る汗と、膨らんだ筋肉だけが、二人の熱闘を伝えてくる。

驚いたことに相手を跪づかせたのはマスクド・スーパースターであった。屈辱で顔を真っ赤に染めたホーガンは、膝をリングに付きながらも必死で押し返そうとするが、この力比べでは負けたことは確かであった。あの瞬間、会場から一斉に驚嘆のうなり声が出たほどの名場面であった。

ただ、プロであるマスクド・スーパースターは相手の見せ場を作ることも忘れない。その後でしっかりとホーガンに頭上に抱えられてマットに叩きつけられる場面を作り、ホーガンの面子を立てていた。これが出来るから、マスクド・スーパースターは仲間のレスラーたちから信頼されていたのだろう。

体格面ではホーガンよりも一回り小柄だが、筋肉の付き方は尋常ではない。ただ、ボディビルダーのように見栄えのする筋肉ではないため、これほど怪力だとは思われていなかっただけに、この試合を見た観客は改めて感心したものだ。

もっともマスクド・スーパースターはボディビルダーではなかったが、筋トレ自体は熱心にやっていた。ただ、あくまで強くなるための筋肉トレーニングと考えていたようで、筋肉の見た目をよくすることには関心が薄かったらしい。

いわば実戦向けの筋肉とも云えた訳で、だからこそ巨体でマッチョなホーガンに力比べで勝てたのだろうと思う。もっともホーガンが日本のリングで見せた力比べで負けたことは、私が見た限りではこの時だけで、決してホーガンが弱かった訳ではない。

私としては、生涯に一度あるかないかの好勝負を見た気がして、その日一日気分が良かったことは、今も忘れずにいる。

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