黙っているのも結構辛い。
知人がタワーマンションを購入したと嬉しそうに告げてきた。かなり高額なので、親からの援助を受けたらしい。知人には私とは別に税理士が付いているので、税務上の問題はクリアしていると思う。
居酒屋での会話だったので、酒が不味くなるような話題はしない。だから私は黙ってニコニコと聴いていた。話したい気持ちはあったけど、彼の幸せを腐すようなことはしたくなかった。
別にタワーマンションに限らないが、建物には保守管理が必要となる。木造であろうと鉄筋であろうと、だいたい最初の15年目の修繕はやるべきである。そして次は30年後である。主に外壁(雨漏り、ヒビ割等)なのだが、水回りや電気系も定期的に修理が必要となる。
団地、分譲マンション、タワーマンションなどでは、管理費と共に修繕積立金の支払いが必要になるのは常識であろう。今、問題となっているのが、この修繕積立金の積み立て不足の問題である。
もちろん当初からそれは想定されていたはずなのだが、資材の値上げ、人件費の高騰により、明らかに修繕積立金が不足することが予測されている。建築され分譲当初から住み続けている物件ならば、比較的問題にならない。
しかし、タワーマンションは些か事情が異なる。そこに住み続ける以上、定期的な修繕は当然のことだ。しかし、投資目的で買った投資家家主は、必ずしもそうは考えない。修繕により資産価値を維持することも考えるが、それ以上に投資効率を優先する。
あるタワーマンションでは、その自治会で修繕積立金の積み立て不足から、一個当たり数百万の追加払いの可能性があると議題で取り上げられた。すると、その翌週には数件が転売されていた。売主にとって、予測された以上の追加投資は不要との判断から、すぐに転売してしまったようなのだ。
人気のある物件なので、すぐに次の入居者が入ってきたが、追加の修繕積立の出費は拒否してきた。そりゃ、そうだろう。まだ住み始めて間もないのに、15年分の使用後の修繕出費なんて納得できる訳がない。
通常の建物と異なり、タワーマンションはその高さ故に、外壁の修繕は割高となる。なにせ足場を組むだけでもたいへんな作業となる。また
高層、中層、下層では外壁のデザインが違っていたりするので、その修繕はその分だけ高額になる。
おまけに住人が多種多様である。終の棲家として購入した方もいれば、投資目的のファンドが家主の場合もある。住んでいるのも日本人に限らず、欧米の外資系企業の役員であったり、東南アジアの富裕層であったりする。
おかげで自治会や管理組合でもなかなか議論がまとまらない。タワーマンション第一号とされる某K市の物件は、つい先日ようやく第一回目の大規模修繕を終えたらしいが、他の物件では私の耳にはもう既に揉めている話がちらほらと入ってきている。
人によっては、修繕が十分なされなくなったタワーマンションが廃墟化する可能性を口にすることもある。特に維持費が高額な共用部分、温水プールやトレーニング・ジム、簡易バーなどは真っ先に廃止される可能性が高い。
もちろん、しっかりと管理されるタワーマンションもあるはずだから、噂は話半分に聞いておくべきだ。でも・・・8階程度のマンションでも、既に半ば廃墟化している物件があるのも事実なのです。
誤解がないように書いておきますが、今現在もタワーマンションは人気の物件です。この人気は当分続くと思います。ただなぁ・・・既に修繕積立金の不足が予測されているのも確かなのです。
私は老後は静かに暮らしたいので、タワーマンションに転居することはないと思います。現実問題、そんな資金もありませんしね。私なら、むしろ郊外の庭のある小さな家屋で、犬を飼って静かに暮らす老後が理想なんです。