恐怖の大王、緑色の恐怖と呼ばれたのがデイブ・フィンレーだ。
私が税理士試験受験のため、プロレス断ちをしていた90年代に新日本プロレスで活躍していた。当時の新日は、ジュニアヘビー級に力を入れており、獣神サンダーライガーなど日本人選手の他に、エディ・ゲレロ、クリス・ベノア、ディーン・マレンコなどの逸材が競い合っていた。
でも、私はほとんど知らずにいた。私は極端な性格で、一旦断ち切ると一顧だにしない。だから、コロナ禍のせいで自宅ごもりが増えたのを機に、ユーチューブであれこれどプロレスの試合を観戦しているなかで、フィンレ―を知った。
強い、こりゃ本当に強い。若手時代とはいえ、エディやクリスが子ども扱いされている。179㎝、103キロとプロレスラーとしてはジュニアの体格なのだが、強さはヘビー級でも十二分に通用する。
アイルランド出身で緑色のタイツがトレードマークであったが、イギリス伝統のキャッチ・アズ・キャッチ・キャンというレスリングの使い手であり、自分のスタイルが完成していて、どんな相手でも自分のやり方で対応できる。
その強さは、一つ一つの技が強烈で、しかも決してぶれない。投げ技、蹴り技、関節技となんでもありの日本のスタイルにも順応でき、しかも自分のスタイルを決して崩さずに戦い抜く。
こりゃ本物だ。
船木選手が「殺人者の目」だと怯えていたが、怖がっていたのは他のレスラーも同じこと。ただし、仕事としてのプロレスを理解しており、決して相手を大怪我させるようなことはしないが、ちびだと馬鹿にしてくる相手は、どんな大男でも泣かせるほどに痛めつける。
後年はヨーロッパを主戦場にしていたが、晩年にはアメリカのプロレスにも登場して活躍している。その頃にはもう若い頃の怖さはみせなくなっていたが、より重厚になった体つきから繰り出す技の一発、一発の凄味は変わりはなかった。
現役を退いてからは指導者に回っていたが、なぜか息子デビットは新日本プロレスに預けて鍛えさせている。今も新日では、若手にレスリングの基本の怖さを教えるため、フィンレ―親父を年一回は招聘している。
ライガー曰く、白髪の目立つ爺さんに誰も勝てないとのこと。世界は広いなぁ~、生で試合を観たかったと後悔したほどの名レスラーでした。