やはり日本は製造業の国なのだろうか。
脱炭素などと言っているが、要は石油の効率的な使用だろう。そうなるとエネルギー効率の悪い自動車よりも、大量輸送が可能な鉄道に物流インフラが移行することは必然である。
実際、これは現在進行形である。そのため鉄道が運ぶ物資が増えているが、困るのはその鉄道を支える軌道、すなわちレールである。鉄道車両の重量が増加しているため、従来のレールの摩耗が激しい。
鉄道は常にメンテナンスが必要であり、そのなかでもレールの交換は3年から5年間隔で行われる。しかし、鉄道が運ぶ物資の重量が増えたため、一年でのレール交換が必要となる始末である。
このレールなのだが、従来は一メートルあたりの重量が30キロから50キロが普通であった。しかし、鉄道の高速化が進み新幹線などは、一メートル当たり60キロのレールが使われていた。
しかし、これでも摩耗が激しく、また乗り心地にも悪影響が出てきた。そこで現在日本のJRは、一メートル当たり80キロのレールに交換を進めている。東海道新幹線だと、東京から神戸くらいまでは既に交換済みである。
多分、その先へ行くと乗り心地が変わったと感じたら、それはレールが従来の60キロである可能性が高い。JRは現在も、このレールの80キロ化を推進中である。
事情はアメリカも同様である。トラックが物流の中心であったが、もう90年代から徐々に鉄道輸送へのシフトを始めている。特に大陸横断鉄道の活用が進んでいる。
そこで問題となるのが、鉄道車両の重量増加に伴うレールの摩耗である。少し前の話になるが、オバマ大統領(当時)が来日した際の、日本側への要望項目の一つに、アメリカへの80キロレールの優先導入への協力要請があった。
実はこの80キロレールは、アメリカでは製造できない。いや、現在も世界中で生産出来るのは、日本の新日鉄住金とJFEの二社だけであるそうだ。どうやら技術的なハードルがかなり高く、欧米だけでなくインド、ブラジル、韓国、シナでも未だ実用化が出来ていない。
いずれは外国でも製造されると思うが、ここ暫くは日本の独占状態である。
かつて日米貿易摩擦の代表的問題の一つであった鉄鋼が、貿易問題に上がらなくなって久しいが、このような事情があったとは知らなかった。鉄鋼なんて衰退業種だと思っていたら、大間違いでした。
もちろん日々の技術革新あってのものなのでしょう。まったく日本の製造業の底力には脱帽です。