ガソリン代の高騰が止まらない。
これをウクライナ危機と結びつける報道などがあるが、高騰自体はそれ以前からある。政府が補助金を支給した程度で収まるとは思えない。
なぜなら、このガソリン代の高騰は石油という化石燃料の枯渇と深く関わっているからだ。もちろん、まだまだ原油はあるし、決して油田が枯れ果てた訳ではない。しかし、産油国は強い危機感を持っている。原油が枯渇する前に、出来るだけ稼ぎたいのが本音だろう。
さらに言えば、原油の高騰は今後も続く。日本政府の小手先の補助金ばら撒きなんざ、なんの役にも立たない。では、この価格高騰はいつまで続きのか。
答えは分かっている。原油を代替する化石燃料の採取から精製、販売価額が見合う値段まで上昇してからだ。私の予想だと、天然ガス、もしくはシェール・ガスが相当程度ガソリンを代替すると思う。
期待の大きい水素に関しては、技術的制約からまだ当分は難しいと思う。液化石炭もやはりコスト面での制約が大きく、ガソリン価額が相当に上がらない限り、採算が合わないと予測している。
いかなる優れた技術も、市場社会ではコストの制約からは逃れられない。ガソリン代の高騰は、ライバルとなる他の化石燃料のコスト次第だと思う。
ただ、原油の枯渇は21世紀の世界に大変動をもたらす可能性が高いことは指摘しておきたい。
特に中東において劇的な変化をもたらす。その中心となるのはサウジアラビアだ。20世紀より不思議なほどにアメリカと蜜月関係にあったが、原油という戦略物資の枯渇は、必然的にサウジの政治的地位を押し下げる。
サウジはイスラム教スンニ派の国だが、王家はワッハーブ派というスンニ派でも異端な存在であり、そのせいでアラブ社会において指導者的存在にはなれずにいる。石油輸出機構では中心的存在であるが、アラブ社会では思いの外評価は低い。
かつてのサウジ王家の人たちはそれを分かっていたし、アメリカあってのサウジである現実も理解していた。しかし、生まれついて大富豪の地位にあった現在のサウジ王家の人たちは違う。
自分たちの政治的地位が低いことが我慢できない。アメリカの保護下にあることに我慢できない。だからこそサウジは反米志向が強いテロリズムの温床となって久しい。ビン・ラディンはサウジの富裕階級出身であることを思い出して欲しい。
多量の原油を有するからこそサウジは、アメリカとの友好関係を維持できた。しかし原油が枯渇したら、どうなる。これはいささか大胆過ぎる予測だが、アメリカとイランは再び友好を取り戻すかもしれないと考えている。
もちろんイスラエルのこともあるので一筋縄ではいかないだろう。でもパーレビ王朝のイランは、アメリカ第一の友好国であったことも事実だ。イランは反米を口にすることは多いが、案外と本気でアメリカと戦う気はない。ただ友好を取り戻すきっかけがない。
もしサウジがアメリカから離反すれば、それは絶好の機会となる可能性がある。
まァ、いずれにせよ、それは原油次第である。現代文明は石油に支えられたことを改めて痛感しますね。