キャンプが好きかと問われると返答に窮する。
学生の頃、特に大学の時はキャンプが当たり前であった。なにせ一年のうち2か月あまりは山暮らしであり、当然にテント暮らしである。山小屋に泊まることは稀であった。
なぜなら、あまりお金がないので、山小屋の宿泊費を払うよりも、幕営料を払ったほうが長く山に登れるからだ。私にとってキャンプとは登山のための手段であり、目的ではなかった。
だから昨今のキャンプ・ブームにはいささか閉口する。私が毎日の習慣である本屋巡りをしていると、大型書店ならば必ずキャンプ関連の書籍を置いてあるコーナーがある。
さらっと立ち読みしてみたが、正直言えば私はキャンプするためにキャンプをやる気は起きなかった。もっと言うと、キャンプを美化しすぎにさえ感じた。
さりとてキャンプを馬鹿にしている訳ではない。あのテントの薄い布一枚で得られる安心感は痛いほどによく分かっている。実際、数多くの山を登ってきた私だが、テントなしのビバーク(緊急露営)は可能な限り避けてきた。
だって怖いもの。野外での暗闇の怖さ、吹き付ける風に奪われる体温、寒くて関節が震えすぎて痛くなる辛さ。ビバークは心も体力も削られる。だから日帰り予定のハイキングでも、ザックの底にビバーク用にツェルトと呼ばれる簡易テントを忍ばせておいた。
テント無しで野外で一晩を過ごすのは苦行に近い。朝、起きれば夜露でビッショリで、この不快さは布で拭いた程度では直らない。また、岩の上で眠る寝苦しさも嫌だった。背中の筋肉がひきつるほどにダメージが残る。
実際、大型のテントに泊まっても、ある程度の寝苦しさは避けられない。数百を超える私のキャンプ経験のなかで、一番快適だったのは、対馬の海岸でキャンプした時だ。
下地が砂なので、おそろしく寝心地が良い。また煩いのではと危惧した波の音が、実は子守唄のように快適だと知ったのもこの時だ。もっとも津波や高潮がきたらお終いである。
やっぱりお家で、本の山に囲まれて過ごす寝床が一番である。私はやはり基本ナマケグマなのである。
昨今のキャンプブームに閉口しているのは同じです。
昨今のキャンパーは屋内の生活をそのままテント内に持ち込もうとしています。
あらゆるものをギリギリまで削って、不自由な中でも生活を楽しむのが野外生活の楽しさだと思うのですが...電源なんて要らないんだよ!!