
(昨日に続く)
笹平沢の右、左と続く破線が、今も利用可能な登山道か否かを確かめる目的で、8時50分小黒川を渡渉し、笹平沢に入渓した。登山道とおぼしきは、すぐに分かった。左岸から始まるその山道は、なかなか期待の持てそうな予感に3人とも気を良くした。大きな堰堤を高巻いたが、この辺りは少々注意が必要な箇所と言える。その後は判然としない道捜しを続けながら、いつ降り出すか分からない天候に気を揉みながら進んだ。
沢はそれほど急ではないが、渡渉は何度か強いられた。径も、勘を頼りにする場面も出てくるが、上流へとたどる程度の踏み跡は続いた。登山者よりも釣師が目立つ昨今の渓谷だが、ここには最近人が入ったといったような様子は見られなかった。釣りのことは分からないが、もしかすれば限られた釣師の穴場的な渓かも分からない。
谷は狭くはなく、水量も豊富だが、渡渉に苦労するほどのことはない。林業に使用されたものだろうが、放置された太い鉄製のワイヤーが、自然の一部のようになっていて目を惹いた。
南アルプスの各地に残る森林伐採や、植林といった作業の跡は、こういうものを目にすればその苦難を想像することはできる。しかし、普段は誰も関心を寄せない、忘れられた事業だ。そして現在、山奥の森は守られているのか、荒廃しつつあるのかも一般には分からない。
登行は2時間半ほど続いたところで、沢が三分された場所に出た。地図では、この辺りから真ん中の沢を登り、左側の急な山腹に山道を求めることになる。が、そこからは果たしてそれは獣道なのか径なのか全く分からない。しばらく強行し、Profes.のGPSと地図で1700メートル地点を確認し、そこを終了点とした。
本来ならば、そこからさらに300メートル以上の標高差を登り、デコボコと続く長い稜線を白岩岳まで行くというのが計画だった。しかし、今回は天候条件もあってそこまでは考えていなかった。地図上の急な登路が実際にはどれほどのものかを確認できれば引き返すつもりだった。
谷の印象を一言で語るのは難しい。何か特別に記すことも思い出せないが、同行の”追い回し”は「登っていくに従い、より深い自然に抱かれるような快さがあった」などと言っていた。一般登山道とするには、残念ながら無理だろう。そのため、登山路の詳述はしなかった。また、この山道を復活させるのもあまり意味はないかも知れない。ただわれわれはもう一度、天候の良い日を選んで、当初の計画は果たすつもりではいる。
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