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谷間の盆地を埋めるように続く青田を、幾たびとなく風が吹き渡り、少しづつ稲穂は黄金色(こがねいろ)に染まりつつある。雨の中、そんな風景を眺めながら今日も来た。こんな天気では森の中は行き交う車もなく、途中オオダオ(芝平峠)の手前で雨に濡れた山鳥の子が4羽、雨水にえぐられた道を遊び場にして、安心し切ったように戯れていた。
昨日、「何の苦もない」などと書いて、そのことが少なからず引っかかり、夜になって酒を飲みながら考えた。結果、どうやら馬齢を重ねるにつれていつの間にか、そういう心の負担になるようなことは考えないことにして、ただ、やり過ごしているだけなのかも知れないと、考えを変えるに至った。
水深の浅い澄んだ水の底には、泥の堆積がある。森の中で、普段は静かに眠っている「御所が池」も、1匹の鹿の侵入で、つがいのカモの水浴びでも、静寂(しじま)は破られ、水はあえなく濁る。苦がないということは、そんな危うい、脆弱なものかも分からない。
だから、今の平安がそんな仮初(かりそ)めのものであればあるほど余計に、雑事を忘れ、「最後の秋」を過ごすかのような気持ちで、やってくる本格的な紅葉の季節に熱中し、没頭したいと願うのだが・・・。
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悪天続きで牛のことが心配だった。今朝来ると、第4牧区の塩場に10頭ばかりの牛が雨に濡れながらたむろしていた。第1牧区に登ってみれば、やはり15頭ばかりが塩場にいた。こちらもぐしょ濡れだ。今日は給塩の日だが、牛にそれが分かるのだろうか。
こういう天気の中でも管理人としては最低限、牛の頭数確認だけは怠るわけにはいかない。全頭の元気な姿を確認できると、牛たちへの親愛の気持ちがさらにまた強まる。
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