この牧場では最も早い、第2牧区のヤマナシの花が咲き始めた。いつもよりも1週間ばかり遅い開花だ。朝日を浴びた白樺やカラマツ、コナシの若葉の中に、クリーム色の樹幹ばかりを目立たせていたダケカンバや、それより少し控え目な灰色のミズナラの大木も、ようやく芽吹き出した。これで大方の役者は揃うことになる。それでも、少しづつ花を散らし初めたヤマザクラには、まだしばらく主役であってほしい。
カッコーも来たし、ウグイスの声もする。抜けるような青空に中央アルプスの残雪を被った峰々、特に空木岳の雄姿が目を引く。天国・・・。
昼休みの間に、小黒川林道から小黒川に下り、川を渡渉して半対(はんずい)峠に至るおよその道筋を確認しに行ってきた。今まで、林道から川を渡り峠に行ったことはなかった。すでに先日京都から来たチョウチョのKさんがその辺りに詳しいからと、川への下降路の取り付きに目印になる石を積んでくれてあるはずだった。で、その場所は簡単に分かった。車を捨てて、言われた通り獣道を川床に下りてみた。ところが、どうも対岸の様子が記憶と合わない。
一度引き返しかけてから思い直し、とりあえず川を渡渉することにした。対岸にあるはずの、以前にも利用した標識布の替わりのビニールテープを見付け、それに従い川下へと進むのが、峠への登路を見付けるに最も確かな方法だと考えたのだ。目印は記憶の中の大岩だった。
そしてすぐ、チョウチョのKさんに一瞬だけでも、不信感を抱いたことを詫びることになった。2本ばかりのビニールテープに導かれて行くと、ふたつの大岩が目の前に現れた。峠に続く山道も分かった。そのあるかなきかの道こそ、「石堂越え」と呼ばれる、その昔、都に通じていた古道である。
実は、赤羽(仮名)氏が、入笠周辺の中級山岳を対象とした〝最も美しく完成された登山″を計画中で、そのため小黒川林道から半対への登路を調べておくと約束してあったのだ。まだ詳細は伏せるが、「唯一」ではないにしても、「最も」を冠して決して恥じない素晴らしい創作力のある登山で、達成の暁には報告したい。
そういうわけで、赤羽さん、貴便は東部支所経由にて落手してます。多謝。
いい季節になります、お出掛けください。営業内容につきましては、「H29年度の営業案内」と「続H29年度の営業案内」を参考にしてください。