「番外編」では、車で「ど日陰の曲り」まで行けなければ「法華道」を登ると書いた。しかし、14,15日の豪雪の状況などの考慮して、今回はもっとも安全・確実な富士見パノラマのゴンドラを利用させていただくことにした。富士見パノラマリゾートのK氏を始め関係者の方々にはお世話になりました。
忸怩たる思いもないわけではないが、ひとりでラッセルしながら「法華道」登るとなるとどれほどの時間を要するか予想もつかず、迷いぬいた末今回は避けた。千代田湖から芝平峠のコースは、高遠興産の社長に聞けば「人も通れない」ほどの雪だと。
ゴンドラの山頂駅からは、豪雪で3,4時間もかかりはしないかと心配する人もいたが、予測通り1時間ほどで管理棟に着く。
途中マナスル山荘前からは踏み跡がなく、新雪の上を進む。スノーシュー(ズ)の威力を感じながらも、背中のザックの重さが気になる。ビール500ccと350ccが各半ダースづつ入っている。
もう、思い返すだに疲れてしまうが、かつては登攀具、食糧、衣類、寝具そしてテント、一体それらをどうやってザックに詰め込み、長い山道を登っていったのだろうか。今回はビールの他は食糧と羽毛服、それに少々の着替えだけ。食糧は、発泡スチロールの小箱に入れるというガードの固さ、というかこれはもう堕落だろう。
ほぼ正午に到着。入口の戸が開かず、さんざん苦労して小屋に入る。寒い。見慣れた風景とは言え外が見えた方がよいと、防寒用にレースのカーテンの上に架けておいた毛布をまくり上げる。
ビールよりも今日は冷えてドロドロしたウイスキーが美味い。酔いの深まりとともに何もする気になれず、音楽を聴きながら呆けている。「G線上のアリア」、「ソルウ”ェイグの歌」、タイスの「瞑想曲」・・・。
夕暮れとともに気温が急速に落ち始めた。さっきからずっと何をしていたのだろう。冬の山の夜は長い。もうすぐ底のない闇の中から、遠い過去の牧人たちの、不可思議な想像力が名づけた星々の群れが、冬の夜空に輝きだすことだろう。2月22日記。(つづく)