この大雑把な白岩岳登山の記録に、かんと氏の目を見張るばかりの素晴らしい天体写真、アンドロメダ星雲を使わせて貰うのは大いに気が引ける。が、この時の登山と関連する写真はもう1枚もないので、いっそ内容とは関係のない見事な天体写真を添えるのも一興かと考えた。
「白岩岳の実力」などと題して書き出したが、登山ルートの詳細は避けた。読んでくれる人の想像力に託す方が実際のこの山の個性、味わい、趣きなどを損なわないと思ったし、もっと言えば訪れる人のあまりいない今のままの山でもいいという気持ちが、登ってみて強くなった。当初の気持ちが、変わってしまった。だから、後日詳述するなどと書いたが、しばらく迷っていた。
結局問い合わせもあって書き始めたが、あの山は、忘れられたままが似つかわしい。と言うか、勝手なことを言わせてもらえば、時折入山者もいるようで、山はそれで満足しているような気がした。
山頂には一点の雲もない深い青い大きな空が広がっていた。名前の通り白い岩のかけらが散在していたが、想像していたようないくつかの白い岩からなる岩峰ではなかった。大きな笠の形をした安心感を誘う穏やかな、品のある頂だと思った。頂上からは仙丈ケ岳、北岳、鋸岳の一部と横岳の順によく見えた。中央アルプスや北アルプスも間違いなく見えていたはずだが、どうしたことかその記憶は定かでない。目の前に見えていた横岳から甲斐駒ヶ岳に続く起伏のきつい、峻険な尾根に気を取られてしまっていたかも知れない。それに、頂上は風が強かった。
西側は深く急落していたが、東側はダケカンバやモミの疎林が笠の縁を飾りでもするように見え、星でも眺めながら一夜の夢を結ぶには絶好の平地でもあった。遠くには、秩父の山々が薄霞の上に浮かび、甲府盆地らしきがその下に広がっていた。
思い入れ深かった山頂に立てて、高揚した。久しく味わったことのない感慨を後まで引きずり、その夜はもっと山頂にいればよかったと後悔したほどだった。
ー記録ー
7:20(旧営林署宿舎跡)-11:00(稜線部)-11:05(白岩岳山頂)
11:30(山頂発)-13:30(旧営林署宿舎跡)
一昨夜の雨に責められた二人の女性キャンパーも、翌日の好天に救われて牧場の美しい景観に満足し、今度は冬の入笠を体験したいと言い残して帰っていった。山小屋「農協ハウス」とキャンプ場の営業に関しましては9月5、6日のブログをご覧ください。