入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

   ’18年「春」 (47)

2018年04月25日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 大雨の予報が出ていたがそれほどでもなく、上では10時ごろには雨脚も弱まった。その後少しづつ頭上の雨雲が明るくなってきたので、予報の通り天気は回復するものと思っていたら、しかしそうならなかった。
 遅い昼を食べようと外から戻って大分経つが、時折強い雨音を交え、霧は居座ったまま動こうとしない。久しぶりに白い闇に閉じ込められたような圧迫感を感じている。こういう天気に今年もまた耐えて7か月をいかねばと思っていたら、いつの間にか雨音が途絶えていた。そのことに気付いたら、空白の中に放り込まれたようで何の音もしない。鳥の声が聞こえないのは、まだ当分天気は回復しないということだろう。
 こんな日に、何が嬉しくて来たのかと言われそうだが、実はこんな天気だからこそ来たのだ。昨日大雨の予報を聞き、第1牧区へ上がる作業道に流れ出てくる湧水や雨水の対策をしておいた。まだ完成したわけではないが、その結果を是非とも見ておきたかったのだ。こんなふうにあれこれと工夫をして、それが思うような出来だと、それで報われた気持ちになる。ここの仕事は、そういうことの積み重ねであり、自己満足がその最大の報酬である。



 家の白いイカリソウがようやく咲き揃った。しかし、それをじっくりと見てやる者はいない。それでも、この花もどこかの山の中で咲いていたのを人に見付けられて里に運ばれたのだろう。そう考えれば、人知れず、というのがこの白い花の本来の姿だろうと思うことにした。
 霧の中からカケスの声がした。雨は止んだが、霧は相変わらずの強情を決めたままだ。帰ろう。下は晴れているだろうか。

 FAXでも予約や問い合わせに対応できるようになりました。ご利用ください。今月末からの連休は今年も、さまざまな野鳥の美しい声に混ざり、閑古鳥の鳴き声もしてます。
 入笠牧場の営業案内は「入笠牧場の山小屋&キャンプ場(1)」
「同(2)」をご覧ください。


 
 
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   ’18年「春」 (46)

2018年04月24日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など

         Photo by Ume氏

 天気と気温のせいで、牧場の雰囲気は昨日とは一変していた。上に着いた時の気温は10℃で、昼になってもそれが変わらないどころか、わずかだが下がった。冬物は下に降ろしてしまい、外に出るのは寒くてあまり気が進まなかったが、もう炬燵の虜囚などと言ってはいられない。雨の降る前に外のことを済ませてしまおうと、第1牧区へ上がった。
 
 すでに独り言ちたことだが、今春は鹿の姿をあまり目にしなくなり、そのお蔭でか、どこの牧区も通常牧柵の被害が目立って減った。例年なら牧草の新芽を狙い鹿の活動は活発化する。それに対抗するため電気牧柵の立ち上げは優先度の高い仕事であった。しかし今年は、もう少し様子を見るだけの余裕が生まれた。
 ただ、鹿が全くいなくなったわけではない。きょうも昼に、第4牧区の上部のいつもの草地に4,5頭出ているのがここからも見えた。また、仕事を始めて2日目に大型の囲い罠を仕掛けておいたら、翌日にはゲートが途中まで落ちた状態で止まっていた。金網に引っ掛かって落ちなかったのだが、仕掛けはちゃんと作動し、誘引に使った塩はかなり減っていた。その上、周囲には鹿の毛が落ちていたり、多数の足跡も残っていた。だから、鹿がいないわけではない。
 それにしても、こういうことをしてしまうと、学習能力の高い鹿の警戒心をさらに強めてしまうことになったかも知れない。以前に、ライフル弾がゲートを支える鉄柱に当り、それで落としゲートがすんなり滑り落ちなくなったことがあった。今回と同じように、その時捕獲した鹿は当然逃げてしまった。その後の捕獲に、そのことが多少は影響したと思うが、今回も、もしそうであっても今さら仕方ない。そうアッサリと言えるほど、鹿は本当にどこかへ行ってしまったようだ。今だけなのか、それともこのままずっとなのか。

 赤羽さん、通信拝読。多謝。健啖家だとは思っていましたが、他の趣味と同じように、味についても多岐にわたっていますね。読んだだけで満腹になりました。クク。
 訂正:芝平銀座の「タケヤ(漢字不明)百貨店」は、写真の場所よりもっと上方でした。

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   ’18年「春」 (45)

2018年04月23日 | 法華道と北原師


 今朝は1時間ばかり早く、6時過ぎに家を出た。そして、いつもの開田に上がる通勤路を変えて、林や畑の中の違う道を来た。3日続いた好天も明日から雨のようだし、瞬く間に過ぎていく今の季節を少しでも多く見ておきたいと、欲を出したのだ。久しぶりに通る畑中の道は乾き切って暖かく、何故かそのことが気分を和らげてくれた。目に沁みる新緑の中に、山桜やモモ、ヤマブキなどが彩を添え、爽やかな朝の気が満ちみちていた。そして開けた場所に出たら、朝の青空の中に、残雪の仙丈岳と西駒ケ岳、それに少し遠くに空木岳が、東と西に伊那の盆地を挟むようにして見えていた。
 
 きょうの写真は「芝平銀座」。この辺りを中心に、かつては公民館だった建物が残り、製材所や農協もあって、その奥に今も万朶の桜が咲く分校跡がある。手前には廃屋と化した「竹屋百貨店」という名の万屋(よろずや)があり、廃村が決まるまでは集落の生活必需品を一手に引き受けていたのだろう。またこの少し先に進むと、この山深い谷間に暮らした人々の長い歴史を証する石塔なども多数ある。とにかく今の時期が、昔の住民はいなくなったが、清冽な山室川の流れも手伝いこの村が最も清々しく華やぐ時だ。
 この芝平(しびら)という珍しい名前の平和な集落に、予想だにしなかった災害が襲ったのが1961年、昭和36年の通称「三六災害」だった。少なくとも12世紀から存在したこの村は、この為に集団離村を余儀なくされたのだ。そのことについては、すでに触れた。北原のお師匠の語るところによれば今も、旧村民の結束は固く強いという。それは、この村との少しばかりの縁ができて以来、いろいろな場面で見たし、感じてきたことだ。芝平や師のことは、カテゴリー別「法華道と北原師」などでも呟いた。
 と、そんなことを昼休みに書いていたらなんと、当のお師匠がお孫さんの運転で突然現れ、驚かされた。風邪で元気がなかったから、入笠へ行けば元気になるだろうと、家族に勧められて来たのだという。一休みして師はお孫さんと二人で、本家・御所平のお地蔵さんに挨拶しに出掛けていった。

 本日よりFAXでも予約や問い合わせに対応できるようになりました。ご利用ください。

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   ’18年「春」 (44)

2018年04月21日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 遠くの残雪の山々が、今は一番に美しく見える。その中でも仙丈岳と空木岳は飛び抜けていて、家を出て一段高い開田に出るときょうのような好天の日には、その両方の山が、左右に見えてくる。光線の加減もあって朝は空木岳、夕暮れは千丈岳がいい。
 弘妙寺の桜はもう盛りを過ぎてしまっていたが、それでも間に合った。芝平分校の跡地の花も、すでに勢いは過ぎて散り始めていたが、例年ならこれからのはずだ。とにかく今年は草花の生育が異常なくらいに早い。第2堰堤から眺める落葉松の林はもう芽吹き始めたようで、薄い緑の靄のように見え、これもいつもの年よりか半月以上は早いだろう。そんなに急がずにもっとゆっくりとした進み具合を守って、自然の再生する姿をじっくりと見せてもらえぬかと、周囲の森や林に頼みたいほどだ。

 昨年は、露天風呂に手子摺ったが、今年は一度で着火してくれた。取水の水量は申し分ないし、ついでだからと点検を兼ね風呂を沸かし、一風呂浴びた。浴びてみて、やはりそうする必要があったと分かったが、技術的なことになるので詳しくは書かない。戸台の方から来た車が1台こちらに気が付き、不思議なものでも見るように見下ろしながら停車し、そしてゆっくりと通り過ぎていった。
 空はどこまでも青く深く、これでコナシや白樺が芽吹き出せば、露天風呂は天国だか極楽になるだろう。旅客機が音もなく東から西へ、銀色の機体を輝かせながら飛んでいくのが見えた。さながら自然の中に埋没していくようで、非現実的ないい時間が流れた。
 
 北原のお師匠が電話をくれ、昨日のUme氏の空撮写真を大変に褒めていた。「本当に入笠はいい所だ。あんな写真を見れば誰でもそこへ行きたくなるだろう」とのご感想。そこできょうも昨日撮ったUme氏の空撮写真。お師匠は少し風邪気味、ご自愛くだされ。

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   ’18年「春」 (43)

2018年04月20日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など

      Photo by Ume氏
 
 きょうより、これから7か月、11月末まで牧の仕事が続く。牛が来るのは6月だが、牧場管理人にとっては本日が牧開き。
 
 驚いたことに、入笠には雪がなかった。「焼合わせ」や「ど日陰」でさえ、雪はなかった。これまで仕事最初の日からしばらくは、途中から車を捨て歩くのが普通だったが、そんなことがまるで嘘のようだった。前回来たのが3月の30日のことだから20日しか経っていない。あの時は、日陰にはまだしっかりと雪があった。牧場に来ても1か所、例年遅くまで残る谷を省けば、乾き切った枯草に早くも緑色の新芽が生え始めていた。こんなことは12年間のうちで初めてのことだろう。
 それと、鹿の姿が目に付かなかった。オオダオ(芝平峠)の手前で1匹の雄鹿を見たが、それだけだった。北門を過ぎて、いつもの斜面で数頭の鹿を確認したが数も少なく、後で放牧地を見回っても姿はなく、落し物も信じられないほど目立たなかった。





 初日はまず何を差し置いても水回りを優先させる。取水場だけでも4か所のバルブを開けたり閉めたりして、管理棟と小屋でも6か所で同じようなことをする。山小屋に通ずる配管が1か所漏水しているところがあり、取り敢えずだが、小屋は断水にしておいた。あそこは小屋の西側の日陰で、バルブを開くためには凍結した多量の雪を、いつもなら鶴嘴(つるはし)まで持ち出して掘り出さなければならなかった所だ。今年は有難いことにその必要がなかった。ここにも雪がなかったのだ。
 自慢の露天風呂も煙突を立て、水を引き、いつでも入浴できるまでにはした。ただ、案じていた水漏れが若干あり、コーキング処理が必要になる。大きなコナシの枝が風呂の近くに落下していて、片付けるのに苦労したが、心配していたチェーンソーは、一汗かいたらようやく動き出してくれ、助かった。

 昨日Ume氏に頼みごとをしてあって、そのため氏はわざわざ上まで来てくれた。大変に有難かった。きょうの最初の写真はその時のもの。本日の空から見た入笠牧場の様子で、赤い屋根が管理棟と時代遅れの山小屋。
 
 入笠牧場の営業案内は「入笠牧場の山小屋&キャンプ場(1)」
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