よい天気。
循環バスの停留所は駅よりすぐで
JRとのダイヤ乗継もスムーズなようだった。
海辺の町がみなそうなのかと思えてくる 眠っているような町並みを
循環バスはやってきて 私たち数人の待ち客を乗せ 発車した。
すぐに左折、「それでは ドナルド・キーンセンター柏崎 の反対方向だな。」
初めて乗ったバスに戸惑いながら 景色を眺めていた。
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時間がないぞ。
Festina lente!
いつものように
「スタンダードアトラス世界」、それともう2冊持とうと思ったのだが
「狭き門」は
家族1「あるような気もするがないような気がする。」(訳・探ス気ガシナイ。)
家族2「門前払いじゃー!」(訳・ンナ本、モッテル訳ャーナイ。)
で なし。(それにしても この頃他力本願だ。)
「マルテの手記」は
家族1「ほれ。そこにある。」 ということで
地図と文庫本1冊ずつ持って 出発である。
クリスマス休暇の「私たち」のベルギーへの旅、ブリュッセルからは海にむかって西へ行く旅。
地図を追っていくと
Gentは ゲントだったりヘントだったり。
何語発音によると どちらになるのだろう、
小さな違いをくすぐったく思いながら読み進んでいくうちに
柏崎の海を思い出したのだった。
海を見に来たのではない、キーンさんの書斎を見たい 中に入ってみたい、
循環バスはその名の通り ちゃんとセンター近くにゆきついた。
遠回りと言っても 15分ほどのバス旅。
海辺の公園を左手に のんびりゆったりとバスは進んだ。
「…私は、海が、それまで自分の中にあったどの海のイメージとも異なっているのに気づいた。」
似たような思いを 私もしていたのだな。
初めて泳いだ海は おだやかな けれどすぐに深くなる海だった。
私の海は あの海だ。
バス路線の右手を対向方向に 部活と思われる一群が走っている。
学校や大きな建物や そちらに目を取られているうちに海は見えなくなった。