■東京ガスは、平成21年4月16日(木)に発生した国道18号線の陥没による物損事故について、4月17日付で、ホームページ上で次の記事をプレスリリースとして発表しました。
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4月16日に発生した高崎市藤塚町国道18号の路面陥没について
東京ガス株式会社 平成21年4月17日
東京ガス株式会社は、平成21年4月16日4時50分頃に高崎市藤塚町の国道18号線上で発生しました路面陥没につきまして、陥没発生箇所近傍でガス管埋設のためのシールド工事(掘削してトンネルを地下につくる工事)を行っていることから、陥没への影響につきまして調査を進めております。
現時点におきましては、明確な因果関係は判明していないものの、周辺の埋設物の状況、陥没の位置や形状などの状況から、弊社のシールド工事がこのたびの陥没の要因のひとつとして影響している可能性があるものと考えております。
現在、シールド工事を一時中断しており、本日から、陥没への影響につきまして下記のとおり詳細な調査を進めてまいります。なお、調査結果につきましては、まとまり次第、すみやかに国土交通省関東地方整備局に報告いたします。
また、調査終了後、国土交通省関東地方整備局のご指示に基づき、本復旧工事を行ってまいります。
弊社といたしましては、皆さまにご迷惑ならびに、ご心配をお掛けしますことをお詫び申しあげます。何卒、ご理解、ご協力を賜りますようお願い申しあげます。
記
1.調査内容とスケジュール
(1)シールド施工部における空洞調査
1.内容
安中市板鼻から高崎市藤塚町までの国道18号線の地下における延長1.4kmのシールド施工部について、非開削のレーダー探査による空洞調査を実施し、データの解析を行います。
2.スケジュール
平成21年4月17日(金)~19日(日)の夜間に現地調査を実施いたします(雨天延期)。また、その後のデータ解析に3日間程度を予定しております。
(2)陥没箇所におけるシールド施工内容の調査
1.内容
陥没箇所近傍のシールド施工部について、土質、地形、施工管理方法等につきまして調査を行います。
2.スケジュール
本日から1週間程度を予定しております。
<国道18号線下におけるシールド工事の概要>
安中市板鼻から高崎市藤塚町までの国道18号線の地下において延長1.4kmのシールド工事を行っております。工期は平成20年11月から平成21年4月末までとなっており、シールド工事によりトンネルが完成した後、そのトンネル内に輸送用のガス管を配管する予定となっております。シールドエ法とはシールドマシーン(掘削機)でトンネルを掘っていき、掘り進むごとに鋼製のセグメントを取り付けてトンネルを作っていく工法です。 以上
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↑4月16日(木)午前中に行われた国道18号線陥没現場での復旧作業の模様。既に陥没穴の底には土が入れられ転圧済みで、穴の中に東京ガスやパイプ会社及びその下請けらしい作業員が5人ほど入って、路盤や舗装部分の断面を観察しているらしい様子がうかがえる。右側は舗装の下がかなり空洞になって入り込んでいるらしく、陥没穴が相当大きかったことが分かる。後方には一車線の交通規制で数珠繋ぎになっている通行車両が見える。地上で見守る作業員らには笑顔が浮かんでおり、大渋滞を引き起こしているという緊張感は殆ど感じられない。【写真:読売新聞社提供】↑
■東京ガスは、低炭素社会への貢献だとか、C02発生量の少ない天然ガスヘのエネルギー転換こそフロンティア企業としての使命だとか、崇高な精神を掲げて、耳触りのよい言葉を乱発しながら、70気圧という超高圧ガス導管の敷設工事を群馬幹線1期工事と称して、昨年から安中市内で、通学路や農免道路を掘り返し、交通規制を敷いた挙句に、凸凹の仮舗装のまま1年以上も放置しています。
当初、東京ガスの工事の噂を聞いて、安中市でも都市ガスが使えるようになる、と喜んでいた住民も、東京ガスの工事の目的が、東邦亜鉛安中精練所やP&Gのような大口事業者に限っていることが分かり、住民への稗益効果がゼロだと知りました。ところが、住民が気付いた時には既に遅く、東京ガスが、安中市長と密約して、地元の代表区長の同意書のみ取り付けて安中市役所に道路占有許可申請を出しており、とっくに許可が出された後でした。しかも東京ガスは、道路工事許可と占用許可の手続きを間違うなど、最初から真面目に手続きをするという緊張感がまったく欠けていました。
■不安に駆られた住民が、ガス工事の内容について知ろうと地元説明会をお願いしても、東京ガスは「住民説明会は原則的に沿線住民にはやったことがないし、やる必要もない」と主張し、説明会の開催を頑なに拒み続けました。市道管理者の安中市長との密約があるから、沿線の住民や地権者の声など聞く耳を持つ必要はないと考えているのです。
それでも、粘り強くお願いした結果、東京ガスはしぶしぶ住民説明会に応じましたが、生活道路や子供の通学道路を避けたり、交通量の少ないルートに変更しようとしたりせず、事前の地質調査も手を抜き、いざ工事に着手して道路を掘ってみたら岩だらけだったなどと言い訳をして、予定よりも1年も工期を延長し、いまだに地元で交通規制を続けて、地元民を始め不特定多数の通行者に多大な迷惑をかけ続けています。
その最中に発生した、今回の国道18号線の陥没事故は、東京ガスのガス埋設工事の根本的な問題を露呈しています。それは、ガス会社が、談合で、高圧ガス専用のパイプメーカ一にパイプラインエ事を丸投げ発注しているためです。
同じく新潟の天然ガスを昔から首都圏に供給してきた帝国石油は、ガスパイプライン工事をゼネコンに発注しています。高圧ガスパイプは、メーカーから帝国石油の指定品をゼネコンに納めさせるのか、あるいは帝国石油が買ってゼネコンに支給するのか分かりませんが、たぶん後者ではないかと思われます。ゼネコンに発注すると、確かに一般管理費がかかり、高くつくかもしれませんが、土木施工技術は安心して任せることができます。
■ところが、東京ガスは、なぜか鋼管メーカーとの相性がよいらしく、新日鉄、JFE、住金系の鋼管メーカーだけを対象に入札することが多く、この群馬幹線1期工事も住友金属パイプエンジという会社が工事を請け負いました。この入札調書を東京ガスに情報公開するようお願いしましたが、第3者への開示はしない、と拒否されました。新日鉄、JFE、住金系の鋼管メーカーは東京ガスなどの発注工事をめぐり談合を繰り返しており、公正取引委員会から排除勧告を何度も受けています。また、東京ガスの子会社の東京ガスエンジニアリングも天然ガス供給ステーションの建設で、談合したため、公取から指導を受けたことがあります。
こうしたビジネス環境にいると、いつしか、東京ガス自体も、地域独占的な事業を展開し公益事業にあぐらをかいているうちに住民サービスとか顧客本位という精神から実態としてかけ離れた企業体質が身に染み付いてしまっているようです。
■実は、当会は、地元安中市の北野殿地区における高圧ガス導管埋設工事で、たかだか2キロ足らずの距離なのだから、丘陵地帯の上に配管を通さずに、一気に山の下にトンネルを掘って、まっすぐに通したらどうか、と東京ガスに提案していました。そうすれば、交通規制も不要で、予どもたちの通学道路の真下を高圧ガスで脅かすこともなく、管路長も最短で済むので、トータルで見ればコスト高にはならないと考えたからです。
ところが東京ガスは、住民の提案を荒唐無稽だとして一顧だにせず、既に計画していたルートと工法に頑なに拘り、地元住民の悲痛な要望や、コスト減に役立ちそうないろいろな提案を全て蹴飛ばしたのでした。
今回、国道18号線の陥没事故で、東京ガスが、全長1.4kmにおよぶシールド工法によるトンネル掘削を施工していることは、これまで全く知りませんでした。トンネルエ法は、河川を横切る場合のみ採用し、そのほかは全て開削工法で高圧ガス導管を埋設する方針であることを、再三告げられていたからです。国道18号線でも、路側帯を開削工法で通すものだとばかり思っていました。ところが実際は真っ赤なウソでした。
■東京ガスは、4月16日(木)未明に国道を陥没させましたが、実際には、その数日前に陥没地点の真下をシールド掘削機が通過していました。ということは、掘削機が通過した段階で、既に地中には大きな空洞ができていたことになります。
読売新聞提供の写真を見るとお分かりのように、国道は大型トラックなどの重車両が頻繁に通行するため、舗装の厚さは、市道や県道とは比べ物になりません。厚さ数十センチの舗装は、それ自体、強度を持っていますから、下が空洞になっても、簡単には穴が開きません。1日たち、2日たち、3日たち、1日あたり数万台も車が通るうちに、振動や移動荷重が繰り返し加わるうちに、舗装の下のほうから、少しずつ割れてゆき、次第に表面のアスファルト部分が薄皮一枚に残されていったと思われます。そして4月16日の未明、夜間の大型トラック軍団の通行についに耐えかねて、穴が表面に達し、そこに軽乗用車がはまり込んだのでした。
東京ガスは、ホームページで、国道18号線下におけるシールド工事の概要として、「安中市板鼻から高崎市藤塚町までの国道18号線の地下において延長1.4kmのシールド工事を行っております。工期は平成20年11月から平成21年4月末までとなっており、シールド工事によりトンネルが完成した後、そのトンネル内に輸送用のガス管を配管する予定となっております。シールド工法とはシールドマシーン(掘削機)でトンネルを掘っていき、掘り進むごとに鋼製のセグメントを取り付けてトンネルを作っていく工法です。」と説明しています。工期が平成21年4月末ということから、ほぼトンネル掘削工事は完了したようです。予定より、半月ほど早いことから、かなり突貫工事で施工したのかもしれません。
■このシールド工法ですが、直径2mのトンネルだということから、シールドマシーンはかなり大きいかもしれませんが、地下鉄のトンネルを掘るシールドマシーンと比べるとずっと小さく、中に人間が入って操作するようなタイプではなさそうです。すると、シールド工法というより、推進工法に近いかもしれません。
最近は、道路交通への支障を最小限にするため、非開削工法として、道路を掘り返さずに済む工法を利用した工事が一般的のようです。特にパイプの断面の大きな下水道関係ではシールド工法が多用され、電線関係では推進工法がよく使われ、東京ガスのようなガス関係では、内面被覆工法といって、既存埋設管の内面を被覆することで管の機能を回復・強化する工法がもっぱらです。
ところが、今回のガス導管は、70気圧で直径50センチもある幹線用の高圧導管ですので、推進工法やシールド工法が不可欠となります。東京ガスが、シールド工法でどの程度経験があるのか分かりませんが、帝国石油に比べると、格段に経験が少ないと推測されます。
■しかも、長さ1.4kmという長距離となると、シールド工法(或は小口径の推進工法)といっても、簡単な技術ではなさそうです。国道18号線はまっすぐではなく、ところどころ微妙に曲がっており、縦方向にもいろいろな障害物があるかも知れず、それらをかわしてトンネルを掘る必要があるからです。
さらに、陥没現場一帯は、昔から地すべり地帯として有名です。ダルマ市で有名な対岸の少林山から押し出される土砂を食い止めるために、国は長年にわたり対策に苦労してきました。当然、土質も不安定で、川から押し出された土砂の影響で、砂礫質で崩壊性が著しく高く、透水係数も非常に高いことが予想されます。また、国道18号線は堤防を隔てて碓氷川と平行して走っているため、地下水位や地下水圧など、碓氷川の伏流水の関係でかなり高いと思われます。
このような自然条件のもとで、しかも、共同溝が先行して埋設させるなど、埋設物が輻輳し、しかも、国道18号線として大型車両が頻繁に通行する道路直下でのシールド工法によるトンネル工事は、それなりに事前の調査や検討などが必要だったと思われます。そのあたりを、東京ガスがどの程度認識していたのかどうかが、ひとつのポイントになると思われます。
■シールド掘削機の中心部の位置は深度6mだったと思われますが、国道18号線は大型車の通行が頻繁で、路面は轍、ひび割れ、沈下による補修がたびたび繰り返されているところです。そうしたことを考慮のうえ、深度6mという設定を決めたのかどうか、東京ガスに聞いてみたいものです。
また、多大な交通量と地盤条件から、当然、東京ガスは、シールド工法によるトンネル掘削工事に先立ち、レベル測量を行っているものと見られます。レベル測量は、工事中も定期的に継続して実施しているはずです。工事完了後に測っても意味がありません。さもないと、工事中や工事後の沈下量の変位が把握できず、今回のように国道の直下にトンネルを掘った場合の工事による影響の有無や程度を検証できないからです。
■シールド工法によるトンネル掘削工事の事前と事後には、レーダー探査による舗装直下及び地盤の空洞調査を行うことも常識です。今回の陥没事故のように、シールド工事直後に路面沈下が生じた場合、その責任の所在を明確にするための比較証拠資料として重要だからです。まさか、東京ガスは、事前のレーダー探査は実施しなかったのではないか、ということはないでしょうが、心配なところです。万が一、コスト重視で、そのような手抜きをしたとなると、発注者としての責任は免れないでしよう。
「安物買いの銭失い」という言葉があります。「急がばまわれ」という言葉もあります。コストと工期にばかり気をとられ、結局、全体を見ずに事を急ぎ過ぎて失敗してしまっては、何もなりません。どうせ丸投げするなら、多少高くなっても専門性と総合力を鑑みて、ゼネコンか実績豊富な土建業者と掘削専門会社のJVなどに発注したほうがよかったのかもしれません。
■東京ガスは、国交省の高崎河川国道事務所と一緒に、現場一帯の道路をパトロールしていたとマスコミに発表しているようです。東京ガスのいう「道路パトロール」というのは、地元説明会で関いた「幹線パトロール」のことのようです。
東京ガスのホームページに「幹線パトロール」について次のように紹介されております。
「高圧ガス輸送幹線は、ガス工場から首都圏を含めた関東一円に都市ガスをお届けする大動脈です。都市ガスの安定輸送のため、万全の体制と最新の設備で高圧ガス輸送幹線の維持管理に努めていますが、その重要な取り組みのひとつが高圧ガス輸送幹線上を定期的に巡回する路線パトロールです。」
「路線パトロールでは、未照会他工事(東京ガスにガス管の埋設位置の事前確認がない他企業者の工事)が行われていないか、路面の亀裂・陥没などガス管に影響を与える現象が発生していないかを確認するとともにガス供給設備を点検し、整圧器(ガスの圧力を調整する機器)やバルブ(ガスの流れを遮断する機器)からの振動や騒音などの異常がないことを確認します。このように多岐にわたる点検を行う路線パトロールを毎日実施することで、保安の確保をより確かなものとしています。」
今回は、下請けの工事の監視パトロールだったわけですが、どのようにパトロールしていたのか、きちんと聞いてみたいので、公開質問状の質問事項に入れてあります。
■今回の陥没事故は、東京ガスによれば、4月16日(木)の未明の「午前4時50分頃に高崎市藤塚町の国道18号線上で発生した]と説明されていますが、新聞報道を見ると、最初、陥没箇所を見つけた大型トラックが、Uターンをしようとしたら、後ろから追い越そうと歩道側の車線を走行した軽自動車が、陥没穴に左側の前後輪を落としたとなっており、誰かが110番して、真っ先に駆け付けたのは高崎署員だったということです。では、そのとき、東京ガスはいったい何をしていたのでしょう。
東京ガスのガス導管埋設工事で、安中市の現場では、朝7時から夜9時までしか、現場の交通誘導をしないので余計な時間を信号で費やされるため、朝早く高崎方面に通勤する人が、もっと早く交通誘導するように東京ガスにお願いしようと電話しても、朝9時から夜5時の間でないと留守番電話しか繋がらないとぼやいていたくらいですから、自宅や出張先の宿舎で寝ていたのではないでしょうか。緊急時に、どのような対応を取ったのか、東京ガスの通報体制についても、質問してみたいところです。
■シールド工法については、今回の東京ガスの陥没事故を契機に初めて聞きましたが、安中市岩井の県道や岩井川にかかる若宮橋付近の渡河部分で、推進工法によるトンネル工事が採用されています。いずれも、切羽を密閉して自動的に掘削を行う「泥水加圧式」と呼ばれる、切羽に泥水を供給し地下水圧とバランスをとる方式か、「泥土圧式」と坪ばれる、土砂をスポンジケーキ状に固化し、崩壊を防ぐ方式だと思われます。
前者の場合、泥水の成分と加圧の調整は土質に合わせて適切に行う必要があるようです。東京ガスは、事前にガス導管敷設ルートで多数の試験掘りを行って、準備に手抜かりはないと自慢していますが、住民は、試験掘りはてっきり土質調査のためだとばかり思っていたところ、東京ガスは地元説明会で、「あれは地下埋設の障害物の位置を確認するためだけの目的」と説明し、驚かされました。
その経緯から察するに、国道18号線のシールド工法によるトンネル掘削工事では、事前に土質調査をやっていないのではないかという疑念が浮上します。
■以上のように、東京ガスのやることについて、安中市内の工事を様子を見てきた住民としては、まったく信用できないのです。今回の調査分析レポートは、国交省の関東地方整備局だけに提出するのではなく、ぜひホームページにも全文掲載し、広く公表する姿勢が東京ガスには求められていると思います。そうすることで、はじめて、エネルギー・フロンティアをコーポレート・スローガンに掲げるガスパッチョ東京ガスのCSRにふさわしい行動だと、信じることが、顧客やステークホルダーとして可能なのです。
【ひらく会情報部・東京ガス高圧導管敷設問題研究班】
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4月16日に発生した高崎市藤塚町国道18号の路面陥没について
東京ガス株式会社 平成21年4月17日
東京ガス株式会社は、平成21年4月16日4時50分頃に高崎市藤塚町の国道18号線上で発生しました路面陥没につきまして、陥没発生箇所近傍でガス管埋設のためのシールド工事(掘削してトンネルを地下につくる工事)を行っていることから、陥没への影響につきまして調査を進めております。
現時点におきましては、明確な因果関係は判明していないものの、周辺の埋設物の状況、陥没の位置や形状などの状況から、弊社のシールド工事がこのたびの陥没の要因のひとつとして影響している可能性があるものと考えております。
現在、シールド工事を一時中断しており、本日から、陥没への影響につきまして下記のとおり詳細な調査を進めてまいります。なお、調査結果につきましては、まとまり次第、すみやかに国土交通省関東地方整備局に報告いたします。
また、調査終了後、国土交通省関東地方整備局のご指示に基づき、本復旧工事を行ってまいります。
弊社といたしましては、皆さまにご迷惑ならびに、ご心配をお掛けしますことをお詫び申しあげます。何卒、ご理解、ご協力を賜りますようお願い申しあげます。
記
1.調査内容とスケジュール
(1)シールド施工部における空洞調査
1.内容
安中市板鼻から高崎市藤塚町までの国道18号線の地下における延長1.4kmのシールド施工部について、非開削のレーダー探査による空洞調査を実施し、データの解析を行います。
2.スケジュール
平成21年4月17日(金)~19日(日)の夜間に現地調査を実施いたします(雨天延期)。また、その後のデータ解析に3日間程度を予定しております。
(2)陥没箇所におけるシールド施工内容の調査
1.内容
陥没箇所近傍のシールド施工部について、土質、地形、施工管理方法等につきまして調査を行います。
2.スケジュール
本日から1週間程度を予定しております。
<国道18号線下におけるシールド工事の概要>
安中市板鼻から高崎市藤塚町までの国道18号線の地下において延長1.4kmのシールド工事を行っております。工期は平成20年11月から平成21年4月末までとなっており、シールド工事によりトンネルが完成した後、そのトンネル内に輸送用のガス管を配管する予定となっております。シールドエ法とはシールドマシーン(掘削機)でトンネルを掘っていき、掘り進むごとに鋼製のセグメントを取り付けてトンネルを作っていく工法です。 以上
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↑4月16日(木)午前中に行われた国道18号線陥没現場での復旧作業の模様。既に陥没穴の底には土が入れられ転圧済みで、穴の中に東京ガスやパイプ会社及びその下請けらしい作業員が5人ほど入って、路盤や舗装部分の断面を観察しているらしい様子がうかがえる。右側は舗装の下がかなり空洞になって入り込んでいるらしく、陥没穴が相当大きかったことが分かる。後方には一車線の交通規制で数珠繋ぎになっている通行車両が見える。地上で見守る作業員らには笑顔が浮かんでおり、大渋滞を引き起こしているという緊張感は殆ど感じられない。【写真:読売新聞社提供】↑
■東京ガスは、低炭素社会への貢献だとか、C02発生量の少ない天然ガスヘのエネルギー転換こそフロンティア企業としての使命だとか、崇高な精神を掲げて、耳触りのよい言葉を乱発しながら、70気圧という超高圧ガス導管の敷設工事を群馬幹線1期工事と称して、昨年から安中市内で、通学路や農免道路を掘り返し、交通規制を敷いた挙句に、凸凹の仮舗装のまま1年以上も放置しています。
当初、東京ガスの工事の噂を聞いて、安中市でも都市ガスが使えるようになる、と喜んでいた住民も、東京ガスの工事の目的が、東邦亜鉛安中精練所やP&Gのような大口事業者に限っていることが分かり、住民への稗益効果がゼロだと知りました。ところが、住民が気付いた時には既に遅く、東京ガスが、安中市長と密約して、地元の代表区長の同意書のみ取り付けて安中市役所に道路占有許可申請を出しており、とっくに許可が出された後でした。しかも東京ガスは、道路工事許可と占用許可の手続きを間違うなど、最初から真面目に手続きをするという緊張感がまったく欠けていました。
■不安に駆られた住民が、ガス工事の内容について知ろうと地元説明会をお願いしても、東京ガスは「住民説明会は原則的に沿線住民にはやったことがないし、やる必要もない」と主張し、説明会の開催を頑なに拒み続けました。市道管理者の安中市長との密約があるから、沿線の住民や地権者の声など聞く耳を持つ必要はないと考えているのです。
それでも、粘り強くお願いした結果、東京ガスはしぶしぶ住民説明会に応じましたが、生活道路や子供の通学道路を避けたり、交通量の少ないルートに変更しようとしたりせず、事前の地質調査も手を抜き、いざ工事に着手して道路を掘ってみたら岩だらけだったなどと言い訳をして、予定よりも1年も工期を延長し、いまだに地元で交通規制を続けて、地元民を始め不特定多数の通行者に多大な迷惑をかけ続けています。
その最中に発生した、今回の国道18号線の陥没事故は、東京ガスのガス埋設工事の根本的な問題を露呈しています。それは、ガス会社が、談合で、高圧ガス専用のパイプメーカ一にパイプラインエ事を丸投げ発注しているためです。
同じく新潟の天然ガスを昔から首都圏に供給してきた帝国石油は、ガスパイプライン工事をゼネコンに発注しています。高圧ガスパイプは、メーカーから帝国石油の指定品をゼネコンに納めさせるのか、あるいは帝国石油が買ってゼネコンに支給するのか分かりませんが、たぶん後者ではないかと思われます。ゼネコンに発注すると、確かに一般管理費がかかり、高くつくかもしれませんが、土木施工技術は安心して任せることができます。
■ところが、東京ガスは、なぜか鋼管メーカーとの相性がよいらしく、新日鉄、JFE、住金系の鋼管メーカーだけを対象に入札することが多く、この群馬幹線1期工事も住友金属パイプエンジという会社が工事を請け負いました。この入札調書を東京ガスに情報公開するようお願いしましたが、第3者への開示はしない、と拒否されました。新日鉄、JFE、住金系の鋼管メーカーは東京ガスなどの発注工事をめぐり談合を繰り返しており、公正取引委員会から排除勧告を何度も受けています。また、東京ガスの子会社の東京ガスエンジニアリングも天然ガス供給ステーションの建設で、談合したため、公取から指導を受けたことがあります。
こうしたビジネス環境にいると、いつしか、東京ガス自体も、地域独占的な事業を展開し公益事業にあぐらをかいているうちに住民サービスとか顧客本位という精神から実態としてかけ離れた企業体質が身に染み付いてしまっているようです。
■実は、当会は、地元安中市の北野殿地区における高圧ガス導管埋設工事で、たかだか2キロ足らずの距離なのだから、丘陵地帯の上に配管を通さずに、一気に山の下にトンネルを掘って、まっすぐに通したらどうか、と東京ガスに提案していました。そうすれば、交通規制も不要で、予どもたちの通学道路の真下を高圧ガスで脅かすこともなく、管路長も最短で済むので、トータルで見ればコスト高にはならないと考えたからです。
ところが東京ガスは、住民の提案を荒唐無稽だとして一顧だにせず、既に計画していたルートと工法に頑なに拘り、地元住民の悲痛な要望や、コスト減に役立ちそうないろいろな提案を全て蹴飛ばしたのでした。
今回、国道18号線の陥没事故で、東京ガスが、全長1.4kmにおよぶシールド工法によるトンネル掘削を施工していることは、これまで全く知りませんでした。トンネルエ法は、河川を横切る場合のみ採用し、そのほかは全て開削工法で高圧ガス導管を埋設する方針であることを、再三告げられていたからです。国道18号線でも、路側帯を開削工法で通すものだとばかり思っていました。ところが実際は真っ赤なウソでした。
■東京ガスは、4月16日(木)未明に国道を陥没させましたが、実際には、その数日前に陥没地点の真下をシールド掘削機が通過していました。ということは、掘削機が通過した段階で、既に地中には大きな空洞ができていたことになります。
読売新聞提供の写真を見るとお分かりのように、国道は大型トラックなどの重車両が頻繁に通行するため、舗装の厚さは、市道や県道とは比べ物になりません。厚さ数十センチの舗装は、それ自体、強度を持っていますから、下が空洞になっても、簡単には穴が開きません。1日たち、2日たち、3日たち、1日あたり数万台も車が通るうちに、振動や移動荷重が繰り返し加わるうちに、舗装の下のほうから、少しずつ割れてゆき、次第に表面のアスファルト部分が薄皮一枚に残されていったと思われます。そして4月16日の未明、夜間の大型トラック軍団の通行についに耐えかねて、穴が表面に達し、そこに軽乗用車がはまり込んだのでした。
東京ガスは、ホームページで、国道18号線下におけるシールド工事の概要として、「安中市板鼻から高崎市藤塚町までの国道18号線の地下において延長1.4kmのシールド工事を行っております。工期は平成20年11月から平成21年4月末までとなっており、シールド工事によりトンネルが完成した後、そのトンネル内に輸送用のガス管を配管する予定となっております。シールド工法とはシールドマシーン(掘削機)でトンネルを掘っていき、掘り進むごとに鋼製のセグメントを取り付けてトンネルを作っていく工法です。」と説明しています。工期が平成21年4月末ということから、ほぼトンネル掘削工事は完了したようです。予定より、半月ほど早いことから、かなり突貫工事で施工したのかもしれません。
■このシールド工法ですが、直径2mのトンネルだということから、シールドマシーンはかなり大きいかもしれませんが、地下鉄のトンネルを掘るシールドマシーンと比べるとずっと小さく、中に人間が入って操作するようなタイプではなさそうです。すると、シールド工法というより、推進工法に近いかもしれません。
最近は、道路交通への支障を最小限にするため、非開削工法として、道路を掘り返さずに済む工法を利用した工事が一般的のようです。特にパイプの断面の大きな下水道関係ではシールド工法が多用され、電線関係では推進工法がよく使われ、東京ガスのようなガス関係では、内面被覆工法といって、既存埋設管の内面を被覆することで管の機能を回復・強化する工法がもっぱらです。
ところが、今回のガス導管は、70気圧で直径50センチもある幹線用の高圧導管ですので、推進工法やシールド工法が不可欠となります。東京ガスが、シールド工法でどの程度経験があるのか分かりませんが、帝国石油に比べると、格段に経験が少ないと推測されます。
■しかも、長さ1.4kmという長距離となると、シールド工法(或は小口径の推進工法)といっても、簡単な技術ではなさそうです。国道18号線はまっすぐではなく、ところどころ微妙に曲がっており、縦方向にもいろいろな障害物があるかも知れず、それらをかわしてトンネルを掘る必要があるからです。
さらに、陥没現場一帯は、昔から地すべり地帯として有名です。ダルマ市で有名な対岸の少林山から押し出される土砂を食い止めるために、国は長年にわたり対策に苦労してきました。当然、土質も不安定で、川から押し出された土砂の影響で、砂礫質で崩壊性が著しく高く、透水係数も非常に高いことが予想されます。また、国道18号線は堤防を隔てて碓氷川と平行して走っているため、地下水位や地下水圧など、碓氷川の伏流水の関係でかなり高いと思われます。
このような自然条件のもとで、しかも、共同溝が先行して埋設させるなど、埋設物が輻輳し、しかも、国道18号線として大型車両が頻繁に通行する道路直下でのシールド工法によるトンネル工事は、それなりに事前の調査や検討などが必要だったと思われます。そのあたりを、東京ガスがどの程度認識していたのかどうかが、ひとつのポイントになると思われます。
■シールド掘削機の中心部の位置は深度6mだったと思われますが、国道18号線は大型車の通行が頻繁で、路面は轍、ひび割れ、沈下による補修がたびたび繰り返されているところです。そうしたことを考慮のうえ、深度6mという設定を決めたのかどうか、東京ガスに聞いてみたいものです。
また、多大な交通量と地盤条件から、当然、東京ガスは、シールド工法によるトンネル掘削工事に先立ち、レベル測量を行っているものと見られます。レベル測量は、工事中も定期的に継続して実施しているはずです。工事完了後に測っても意味がありません。さもないと、工事中や工事後の沈下量の変位が把握できず、今回のように国道の直下にトンネルを掘った場合の工事による影響の有無や程度を検証できないからです。
■シールド工法によるトンネル掘削工事の事前と事後には、レーダー探査による舗装直下及び地盤の空洞調査を行うことも常識です。今回の陥没事故のように、シールド工事直後に路面沈下が生じた場合、その責任の所在を明確にするための比較証拠資料として重要だからです。まさか、東京ガスは、事前のレーダー探査は実施しなかったのではないか、ということはないでしょうが、心配なところです。万が一、コスト重視で、そのような手抜きをしたとなると、発注者としての責任は免れないでしよう。
「安物買いの銭失い」という言葉があります。「急がばまわれ」という言葉もあります。コストと工期にばかり気をとられ、結局、全体を見ずに事を急ぎ過ぎて失敗してしまっては、何もなりません。どうせ丸投げするなら、多少高くなっても専門性と総合力を鑑みて、ゼネコンか実績豊富な土建業者と掘削専門会社のJVなどに発注したほうがよかったのかもしれません。
■東京ガスは、国交省の高崎河川国道事務所と一緒に、現場一帯の道路をパトロールしていたとマスコミに発表しているようです。東京ガスのいう「道路パトロール」というのは、地元説明会で関いた「幹線パトロール」のことのようです。
東京ガスのホームページに「幹線パトロール」について次のように紹介されております。
「高圧ガス輸送幹線は、ガス工場から首都圏を含めた関東一円に都市ガスをお届けする大動脈です。都市ガスの安定輸送のため、万全の体制と最新の設備で高圧ガス輸送幹線の維持管理に努めていますが、その重要な取り組みのひとつが高圧ガス輸送幹線上を定期的に巡回する路線パトロールです。」
「路線パトロールでは、未照会他工事(東京ガスにガス管の埋設位置の事前確認がない他企業者の工事)が行われていないか、路面の亀裂・陥没などガス管に影響を与える現象が発生していないかを確認するとともにガス供給設備を点検し、整圧器(ガスの圧力を調整する機器)やバルブ(ガスの流れを遮断する機器)からの振動や騒音などの異常がないことを確認します。このように多岐にわたる点検を行う路線パトロールを毎日実施することで、保安の確保をより確かなものとしています。」
今回は、下請けの工事の監視パトロールだったわけですが、どのようにパトロールしていたのか、きちんと聞いてみたいので、公開質問状の質問事項に入れてあります。
■今回の陥没事故は、東京ガスによれば、4月16日(木)の未明の「午前4時50分頃に高崎市藤塚町の国道18号線上で発生した]と説明されていますが、新聞報道を見ると、最初、陥没箇所を見つけた大型トラックが、Uターンをしようとしたら、後ろから追い越そうと歩道側の車線を走行した軽自動車が、陥没穴に左側の前後輪を落としたとなっており、誰かが110番して、真っ先に駆け付けたのは高崎署員だったということです。では、そのとき、東京ガスはいったい何をしていたのでしょう。
東京ガスのガス導管埋設工事で、安中市の現場では、朝7時から夜9時までしか、現場の交通誘導をしないので余計な時間を信号で費やされるため、朝早く高崎方面に通勤する人が、もっと早く交通誘導するように東京ガスにお願いしようと電話しても、朝9時から夜5時の間でないと留守番電話しか繋がらないとぼやいていたくらいですから、自宅や出張先の宿舎で寝ていたのではないでしょうか。緊急時に、どのような対応を取ったのか、東京ガスの通報体制についても、質問してみたいところです。
■シールド工法については、今回の東京ガスの陥没事故を契機に初めて聞きましたが、安中市岩井の県道や岩井川にかかる若宮橋付近の渡河部分で、推進工法によるトンネル工事が採用されています。いずれも、切羽を密閉して自動的に掘削を行う「泥水加圧式」と呼ばれる、切羽に泥水を供給し地下水圧とバランスをとる方式か、「泥土圧式」と坪ばれる、土砂をスポンジケーキ状に固化し、崩壊を防ぐ方式だと思われます。
前者の場合、泥水の成分と加圧の調整は土質に合わせて適切に行う必要があるようです。東京ガスは、事前にガス導管敷設ルートで多数の試験掘りを行って、準備に手抜かりはないと自慢していますが、住民は、試験掘りはてっきり土質調査のためだとばかり思っていたところ、東京ガスは地元説明会で、「あれは地下埋設の障害物の位置を確認するためだけの目的」と説明し、驚かされました。
その経緯から察するに、国道18号線のシールド工法によるトンネル掘削工事では、事前に土質調査をやっていないのではないかという疑念が浮上します。
■以上のように、東京ガスのやることについて、安中市内の工事を様子を見てきた住民としては、まったく信用できないのです。今回の調査分析レポートは、国交省の関東地方整備局だけに提出するのではなく、ぜひホームページにも全文掲載し、広く公表する姿勢が東京ガスには求められていると思います。そうすることで、はじめて、エネルギー・フロンティアをコーポレート・スローガンに掲げるガスパッチョ東京ガスのCSRにふさわしい行動だと、信じることが、顧客やステークホルダーとして可能なのです。
【ひらく会情報部・東京ガス高圧導管敷設問題研究班】