■新聞などマスコミ報道で、5月18日に、利根川水系から流域の浄水場が取水している水道が有害物質のホルムアルデヒド(この35%溶液はホルマリンと呼ばれている)で汚染されていることがわかり、流域の自治体で断水など、広域的な問題が発生しています。この問題を検証してみると、背景に何か一般市民には知らされていない、得体のしれない理由があるようです。
次に示す東京新聞の5月19日付記事によると、発端は5月15日に埼玉県の春日部市の庄和浄水場でホルムアルデヒドが浄水場で採取した水から基準値の半分程度検出されたのが発端となっていることを伺わせます。しかし、この記事によれば、浄水過程後の採取水のようですが、読み方によっては浄水前の原水、つまり河川から採取した水のようでもあります。
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行田・春日部 2浄水場で有害物質 埼玉県「健康に影響ない」
埼玉県は5月18日、利根川水系から取水する県営の行田浄水場(行田市)と庄和浄水場(春日部市)で、浄水処理した水から水質基準値を上回る有害物質のホルムアルデヒドが検出された、と発表した。
備蓄水などで基準値未満に希釈して家庭に供給しており、健康に影響はない。ただ備蓄水がなくなれば、一部で断水する可能性があるという。
埼玉県は、上流にある化学薬品などの製造工場の排水が原因の可能性があるとみているが、流出場所は不明。同水系の下流の三郷市内にある東京都の浄水場や、同水系の千葉、茨城県内でも基準値を下回るホルムアルデヒドが検出され、千葉県では念のため取水を中止した。
ホルムアルデヒドは接着剤や塗料に含まれ、発がん性がある。
埼玉県によると、江戸川から取水する庄和浄水場で5月15日、基準値(1リットル中0.08ミリグラム)の約半分のホルムアルデヒドを検出。利根川から取水する行田浄水場で、5月17日の採取水から0.168ミリグラム)を検出した。庄和では5月18日の採取水から0.1ミリグラムを検出した。
今後も基準値超えが続き、備蓄水が少なくなれば、埼玉県は両浄水場での取水を停止する可能性がある。埼玉県内28市町村の過程で水道水の出が悪くなったり、一部で断水する可能性もあるという。
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■そして、翌5月20日の東京新聞の一面の記事では、さらに広域にわたって、浄水場の水道水から有害物質のホルムアルデヒドが検出され、埼玉県、千葉県の自治体では34万世帯が断水の影響を受けたとされています。
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ホルムアルデヒド 34万世帯が一時断水 柏など5市 利根川支流 汚染源か
利根川水系から取水する首都圏の浄水場の水道水から有害物質ホルムアルデヒドが検出された問題で5月19日、千葉県では柏、野田、流山の3市の全域と八千代、我孫子市両市の一部で断水し、計約34万4千世帯に影響が出た。
北千葉浄水場(流山市)と栗山浄水場(松戸市)で取水を再開しており、千葉県は断水地域は今後縮小するとみている。
森田健作知事は同日午後、自衛隊に災害派遣を要請。野田、八千代両市に自衛隊の給水車が出動した。
5月18日夜から断続的に取水を停止していた北千葉浄水場と栗山浄水場は、ホルムアルデヒドの濃度が国の基準(1リットル当たり0.08ミリグラム)以下に下がったため、5月19日夕から夜にかけ取水を再開した。
上花輪浄水場(野田市)は、濃度は基準以下に下がったが、取水停止が続いている。
断水した地域では、柏市が16か所の防災井戸から応急給水に当たるなど、井戸水や給水車による水の提供が行われた。
北千葉浄水場の取水再開を受け、柏市の断水は5月19日午後11時ごろには解除となる見通し。
埼玉県によると、群馬県内を流れる利根川の支流の烏川(からすがわ)で比較的高い値が検出された。埼玉県は同日、埼玉県北部の利根川支流で追加調査を実施。
担当者は「これまでの調査では、埼玉県内に汚染源があるとは考えられない」とし、群馬県内の烏川流域が汚染源との見方を強めている。
一時停止した行田浄水場(行田市)では、ホルムアルデヒド濃度は低下を続けており、5月19日午前1時~午後3時の検査で基準値以下の0.029ミリグラム~不検出だった。
庄和浄水場(春日部市)では5月19日午前に0.154~0.81ミリグラムと基準値を超えたが、午後3時には0.028ミリグラムに。埼玉県は「時間の経過とともに下がっており、今のところは取水・給水停止は考えていない」とした。
<ホルムアルデヒドが検出された主な浄水場>
浄水場名/給水人口/給水地域
■東部地域水道浄水場(群馬県千代田町)/約21万人/太田市、館林市など2市5町
■行田浄水場(埼玉県行田市)/約180万人/熊谷市、上尾市、久喜市など24市町
■庄和浄水場(埼玉県春日部市)/約110万人/さいたま市岩槻区、春日部市など8市町
■上花輪浄水場(千葉県野田市)/約15万人/野田市
■北千葉浄水場(千葉県流山市)/約100万人/鎌ヶ谷市、白井市など9市
■栗山浄水場(千葉県松戸市)/約44万人/松戸市、市川市、鎌ヶ谷市
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■また同日の東京新聞の社会面には次のような市民の不安や不満の記事が掲載されています。
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週末の断水「情報遅い」 汚染広がる不満と不安
「情報が遅い」「水が使えないと商売にならない」。浄水場で有害物質のホルムアルデヒドが検出された影響で、断水した千葉県柏市や野田市では5月19日午後、応急の給水所が設けられ、水を求める人々で長蛇の列ができた。影響は家庭や商店など広範囲に及び、週末の生活が脅かされた市民からは不満と不安の声が漏れた。
★千葉 給水、1時間待ちも
柏市では昼すぎに始まった断水が午後2時には市内全域に広がった。井戸水を使って給水所の一つ市立柏第三小学校には、大きなポリタンクやペットボトルを手にした人が列に加わり、給水を待った。
一時間近く並んだという男性会社員(58)は「昨夜から心配していたが、断水になるとは・・・。昼間に給水の情報を知ったが、情報伝達が遅いのでは」と不満を漏らした。
近くに住む主婦(48)は「お店では水を汲むバケツなどの容器が売り切れていた。飲料は確保してあるが、トイレが心配」と不安な表情を見せた。
柏市のスーパーマーケットでは2リットル入りペットボトルの水が午前中で売り切れた。「ペットボトル6本入りのケースを2、3箱まとめて買って行くお客さんが多かった」と店の担当者。調理の必要がない冷凍食品を買う客も多かったという。
昼前から断水が始まった野田市。この日三回目の給水という栗田絵美さん(48)は「トイレや洗い物、炊飯などに使うので、水が浴槽いっぱいになるようにしたい」。
野田市内の利用船の女性経営者(57)は「水が使えないので、お客さんにシャンプーができない。パーマの予約も1件入っていたが、こちらからキャンセルさせてもらった」と困り顔だ。
営業時間を大幅に短縮して、午後3時過ぎに店じまいする料亭もあった。店の関係者は「土日は書き入れ時なのに。明日も断水が続くとしたら、本当に困る」と憤っていた。
★検出濃度の水道水なら「健康への影響ない」
ホルムアルデヒドは住宅やビルに使われる建材の接着剤や、合成樹脂に含まれている化学物質。一定の濃度の水溶液はホルマリンと呼ばれる。蒸発しやく、吸い込み続けると呼吸困難や頭痛、喉や目の炎症が起こる場合があり、シックハウス症候群の原因物質とされている。
世界保健機関(WHO)は、長期間、吸い込み続けた場合には発がん性があるとしている。水などに溶けたものを飲み続けた場合、明らかに発がん性があることを示す知見は得られていない。
厚生労働省によると、WHOは昨年まで水道水の基準を1リットル当たり0.9ミリグラムとしていた。しかし、かなりの高濃度でないと、健康への影響が考えられる濃度とはならず、河川や海など環境中のホルムアルデヒドは相当少ないことから、現在は水道水の基準をなくしている、という。
国の水質基準は0.08ミリグラム。基準以下なら、体重50キログラムの人が一日2リットルを毎日飲んでも影響がない。基準は、気化したものを吸い込むことも考慮しており、基準内なら毎日、風呂の水として使っても問題ない。
ホルムアルデヒドはさまざまな有機物と塩素が反応すると発生し、浄水場で使う塩素と反応して発生する場合もあるという。
慶応大学理工学部の田中茂教授(環境化学)は「国の基準はもともと国際的な基準より厳しい。今回の程度の濃度の水道水を短期間に飲んだとしても、健康への影響はないだろう」と話している。
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■そして、この問題について、原因場所の群馬県の地方版で東京新聞は5月20日に初めて記事を掲載しました。
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ホルムアルデヒド 汚染源特定は水採取 烏川流域 県、きょう調査結果
利根川水系から取水する浄水場で国の基準(1リットル当たり0.08ミリグラム)を超える化学物質のホルムアルデヒドが検出された問題で、群馬県は5月19日、烏川流域に汚染源がある可能性が強いとみて、5月18日に0.032ミリグラムが検出された高崎市と玉村町の境の岩倉橋付近を含む烏川を中心に8地点で河川水などを採取した。検査結果は5月20日朝に公表される予定で、群馬県では原因物質と汚染源の特定を急いでいる。(川口晋介、中山岳)
群馬県企業局などによると、同じ利根川から取水をしている埼玉県から5月17日午前、「ホルムアルデヒドが高い数値を示している」との連絡を受け、東部地域水道浄水場(千代田町)で同日と翌18日に採水し検査。
国の基準値を下回ったため、送水を続けていたが、同日(17日?それとも18日?)午前に採水した処理前の原水の検査結果が、同日午後10時50分、基準超の0.098ミリグラムと判明し、同11時45分に取水を停止した。
群馬県は同浄水場から送水する太田、館林市、大泉、板倉、明和、千代田、邑楽町の2市5町(給水人口約21万人)に連絡を取り、翌19日未明から太田市と大泉、明和、千代田各町には送水停止、館林市には30%減の送水制限を行った。このうち板倉町(同約1万5千人)とは連絡が取れず、断水できなかったという。
群馬県は同浄水場で、19日午前4時過ぎに取水口など2か所で採水した結果は基準を下回る0.01~0.04ミリグラムだったため、同10時14分に取水を再開。各自治体に順次送水を再開した。
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■こうしてみると、群馬県は、5月17日に下流自治体から通報を受けて、県内の河川の水質を5月18日に測定し、その結果、0.032mgを検出した烏川流域がホルムアルデヒドの汚染源ではないかということで、5月19日に高崎市と玉村町の境の岩倉橋付近を含む烏川を中心に8地点で河川水などを採取したということになっています。このことについて、5月19日23:04の産経新聞ネット版は次のように報じています。
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一体何が起きたのか」 利根川支流が汚染源?
利根川水系の浄水場で有害物質のホルムアルデヒドが検出された問題。5月19日、関東3県で取水停止措置が相次ぎ、千葉県では断水になる地域も出るなど生活への影響が広がった。原因となる化学物質を扱う事業所が群馬県の利根川支流にあることも判明したが、これだけ広範囲で検出されるのは珍しく、関係自治体は汚染源の特定を急いでいる。
「一体何が起きたのか」。群馬県では県水道課の職員が原因特定に追われた。
同県では、数日前から東部地域水道浄水場(千代田町)でホルムアルデヒドが検出されており、5月19日に利根川をはじめ、支流の烏(からす)川(高崎市)、鏑(かぶら)川(同)、鮎川(藤岡市)など計8地点で採水し検査会社に調査を依頼した。検査結果は5月20日早朝に出るという。
烏川周辺には、塩素と反応してホルムアルデヒドを生成する化学物質ヘキサメチレンテトラミンを扱う事業所が複数あるという。
群馬県水道課では「浄水場で水道水を作る際に消毒のために混ぜる塩素が、上流から流れてきた何かの物質と化学反応を起こしてホルムアルデヒドになったのではないか」と推測する。
一方、埼玉県では行田浄水場(行田市)で取水制限を行ったが、川の水質改善が確認されたため、5月19日午前5時には解除。結果的に生活時間帯にはほとんど影響がなかった。その要因について県は、国土交通省が5月18日夜から利根川上流の2カ所のダムを放流し、利根川の流量が通常のほぼ倍になったことによる影響が大きいと分析している。
埼玉県では平成15年11月、行田浄水場で処理後の水から微量のホルムアルデヒドが検出されたことがある。このときは利根川支流にある埼玉県内の化学薬品工場の排水にホルムアルデヒドの原因物質のヘキサメチレンテトラミンが含まれていることが判明した。
こうした経験に基づき、埼玉県は当初から、今回も化学系の工場からヘキサメチレンテトラミンが流出していると推測。5月19日には利根川水系での水質調査で群馬県内を流れる烏川沿いを割り出した。
厚生労働省によると、ホルムアルデヒドは、草や藻などの有機物(アミン類)が含まれた水を塩素消毒すれば発生するため、浄水場で検出されること自体はめずらしくない。しかし、同省は「基準値を超えるホルムアルデヒドが広域で長期間検出されるのは初めてではないか」と話している。
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また、東京新聞の5月19日13:53のネット版でも次のように報じています。
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ホルムアルデヒド 利根川支流域 汚染源か
2012年5月19日 13時53分
利根川水系から取水する首都圏の浄水場の水道水から有害物質ホルムアルデヒドが検出された問題で、群馬県は5月19日、千代田町の東部地域水道浄水場で国の水質基準(一リットル中0.08ミリグラム)を超える0.098ミリグラムを検出し、取水を一時停止したと発表した。取水停止は、再開済みも含め千葉、埼玉、群馬の三県に拡大。埼玉県は水質調査から、群馬県高崎市付近の烏川流域に汚染源がある可能性を指摘した。
東部地域水道浄水場は5月19日朝に取水を再開した。千葉県では北千葉浄水場(流山市)の上流約15キロ地点で同日早朝、国基準の三倍に当たる0.246ミリグラムを検出。このため同浄水場は5月18日夜の取水停止後、19日未明にいったん再開したが、再び止めている。
この影響で野田市では5月19日午前9時ごろから、市南部のほぼ全域で一般家庭の断水が発生。影響は少なくとも約10万人に上るとみられる。柏市でも正午ごろから一部地域で断水している。
埼玉県によると、群馬県と合同の調査で、高崎市と同県玉村町の市町境の烏川で5月18日に採取した水から、0.032ミリグラムを検出。埼玉県は「少なくとも烏川流域に汚染源があることは確実」としている。
烏川とは別の利根川の支流で同県熊谷、行田両市境を流れる福川でも、5月18日に取った水から0.013ミリグラムを検出。福川には烏川の水は流れないため、埼玉県は福川流域にも別の汚染源の存在を否定できないとして、詳しい調査を始めた。
埼玉県の担当者は「ホルムアルデヒドを含む物質が原液に近い状態で、工場などから流出していると考えられる」と話している。
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■この記事の内容によると、群馬県水道課は、5月17日に、平成17年11月に行田浄水場で処理後の水から微量のホルムアルデヒドが検出された経験を持つ埼玉県から指摘を受けて、さらに埼玉県から「平成17年の時は、上流にある利根川支流の埼玉県内の化学薬品工場の排水にホルムアルデヒドの原因物質のヘキサメチレンテトラミンが含まれていた」という情報を5月17日に受けても、まだどこが汚染源か特定できなかった様子が伺えます。
そこで、群馬県の対応に業を煮やした埼玉県が「烏川周辺に塩素と反応してホルムアルデヒドを生成する化学物質ヘキサメチレンテトラミンを扱う事業所が複数ある」と独自に調査し、“烏川流域に汚染源があるのではないか”と、埼玉県に促されて、ようやく群馬県は重い腰を上げて、5月18日に埼玉県と合同で烏川流域の水質を計測し、埼玉県の指導で汚染原因場所を割り出してもらったという経緯が垣間見えます。
これでは、下流の首都圏民の健康を守るという自覚に欠けていると見られても仕方がなく、下流の自治体や住民にとっては、上流の群馬県がこのあり様では、安心して利根川水系の表流水を飲めないことになります。
■そして、本日5月20日の午前中に、群馬県はホームページで河川の水式結果を発表しました。これによると、汚染源のひとつとして群栄化学工業を想定していたことになります。さっそく群馬県のHPを見てみましょう。http://www.pref.gunma.jp/houdou/e1000023.html
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【5月20日】浄水場等からの水質基準値を超えるホルムアルデヒドの検出を受けた河川水の調査結果について(環境保全課)
標記について、測定結果が得られたのでお知らせします。
1.調査方法
河川水・事業場排出水に塩素を添加して生成したホルムアルデヒドを測定しました。
2.調査結果
・河川水(1)~(7)については、水道水質基準以下の値です。
・(8)の事業場排出水は0.41mg/Lですが、事業場直下流の地点((4)井野川の下井野川橋)では、水道水質基準以下の値となっています。
なお、群馬県の生活環境を保全する条例で定める、事業場におけるホルムアルデヒドの排出水基準は「10mg/L以下」です。
採水地点/採水時刻(5月19日)/測定値(mg/L)/所在市町村/採水機関
(1)烏川(岩倉橋)/12:00/0.030/高崎市/群馬県・高崎市
(2)烏川(柳瀬橋)/11:35/0.017/高崎市・藤岡市/群馬県・高崎市
(3)井野川(宿矢橋)/11:00/0.006/高崎市/群馬県・高崎市
(4)井野川(下井野川橋)/11:15/0.017/高崎市/群馬県・高崎市
(5)烏川(共栄橋)/11:00/0.008未満/高崎市/群馬県
(6)鏑川(鏑川橋)/10:17/0.008未満/高崎市/群馬県
(7)鮎川(鮎川橋)/10:00/0.008未満/藤岡市/群馬県
(8)群栄化学工業(株)排出水/10:10/0.41/高崎市/県・高崎市
・(1)~(4)、(8)の定量下限値は、0.005mg/L、(5)~(7)の定量下限値は、0.008mg/Lです。
・ホルムアルデヒドの水道水質基準は「0.08mg/L以下」です。
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■このように群馬県は発生原因を群馬県高崎市宿大類町700にある群栄化学工業㈱http://www.gunei-chemical.co.jp/ではないかとみていたことを示唆しています。
群栄化学のHPによれば、同社の製品としては、次のものが挙げられています。
◇化学品部門
・アルミ鋳造用高性能重視
・真珠状樹脂(マリリン)
・射出成型用試作型
・溶剤可溶型多官能ポリイミド(フェノール性水酸基を有する溶剤可溶型ポリイミド)
◇食品部門
・天然旨味シロップシリーズ
・保水性糖質素材(ピュアトース)
・低甘味液状デキストリン(LS-20)
・天然植物活力剤(発酵オリゴ酢)
したがって、同社からホルムアルデヒドの生成原因物質が排出している可能性は高いのは事実です。ところが実際にどれくらい使用して排出しているのか、群馬県は把握していないようです。本当のところは同社しかわからないということのようです。群馬県は、「なお、群馬県の生活環境を保全する条例で定める、事業場におけるホルムアルデヒドの排出水基準は「10mg/L以下」です」と、排出基準を非常に高く設定していた事を認めています。他方、群栄化学がホルムアルデヒドの生成原因物質を排出した時期は5月15日以前と考えられるため、その当時の排水記録や状況をチェックしたうえで、上記のコメントを発したのであればともかく、当時の排水状況を同社にヒヤリングしていないのであれば、問題のある記載です。
■であれば、なぜ下流の数10万の住民に迷惑を掛けるような事態が発生したのでしょうか。
心配なのは、群栄化学が排水先としている井野川が烏川に合流する上流にあたる烏川にかかる柳瀬橋で、0.017mg/Lが検出されていることです。この橋は、高崎線の上り線の鉄橋から見える橋ですが、ここでもホルムアルデヒドの原因物質が検出されているということは、群栄化学以外にも原因者がいることになります。
また、群馬県は柳瀬橋からさらに上流?の(5)烏川(共栄橋)、(6)鏑川(鏑川橋)、(7)鮎川(鮎川橋)での測定に、なぜか定量下限値が0.008mg/Lと、性能の劣る測定機材を使っていることが気になります。
■当会では、ホルムアルデヒドの原因物質とされているヘキサメチレンテトラミンの排出源は群栄化学だけではないと考えています。その中で、烏川流域及びその支流の河川の一つである碓氷川や雁行川など、流域にサンパイ処分場を有する河川からの流出の可能性もあると考えています。
実際に、上記の東京新聞の記事にもある通り、埼玉県は「利根川の支流で埼玉県熊谷、行田両市境を流れる福川でも、5月18日に取った水から0.013ミリグラムを検出。福川には烏川の水は流れないため、埼玉県は福川流域にも別の汚染源の存在を否定できないとして、詳しい調査を始めた」ということです。
群馬県は5月18日に烏川(柳瀬橋)で採取した河川水から0.017ミリグラムを検出したのですから、当然、群栄化学の排水が流れ込んだ井野川との合流よりさらに上流の烏川流域及びその支流についてもきちんと継続的に測定すべきです。
■ホルムアルデヒドの原因とされるヘキサメチレンテトラミンは、樹脂や合成ゴムを製造する際に使われる物質です。サンパイ処分場にはプラスチック屑やゴム屑などは安定型処分場にそのまま埋め立ててよいとされています。
また自動車の解体等で発生するプラスチック類を多く含むシュレッダーダストなども、処分場に埋め立てられますが、こうした物質を土中に埋め立てた場所では非常な高温となり、得体の知れないガスが発生することは常識です。そのため、埋め立てた化学物質が分解し、製造過程で加えられたいろいろな添加物質が浸出して浸透した雨水に溶け込み、排水として下流に滲み出てくるのです。
群馬県西南部や西部には、沢山のサンパイ場や不法投棄場所が点在しています。烏川はこれらの中を流れており、当然、そうした処分場や不法投棄場所から滲み出た原因物質が河川水に何らかの影響を与えているはずです。
■現在、高崎市吉井町上奥平地区や、安中市岩野谷地区では稼働中のサンパイ場或はサンパイ場計画が目白押しです。そうした処分場ひとつひとつでは、たとえ排水基準を下回っていても、総量として下流の河川に加わる負荷は無視できなくなってきます。今回のホルムアルデヒドによる水質汚染もそうした背景が考えられます。
さらに、初期の報道では有機物に塩素を加えたため、ホルムアルデヒドが生成されたという見方もされていました。本当はホルムアルデヒドではなくさらに危険な発言物質のトリハロメタンが生成されている危険性にも目を向ける必要があると思います。
■下流の首都圏住民の健康と安心な暮らしを守るため、上流の水源地に住む我々住民としては、地元に計画されているサンパイ処分場計画を食い止める責務があります。
しかし、群馬県は上記に述べたような体質ですから、サンパイ場業者の側に立ち、既に承認した案件を前例として、どんどん許認可を出しているのが実態なのです。
【ひらく会情報部】
※参考資料
【ヘキサメチレンテトラミン】(出典:ウィキペディア)
ヘキサメチレンテトラミン (hexamethylenetetramine) は4個の窒素原子がメチレンによってつながれた構造を持つ複素環化合物である。ヘキサミン (hexamine) あるいは1,3,5,7-テトラアザアダマンタンとも呼ばれる。無色で光沢のある結晶もしくは白色結晶性の粉末である。
産業面では化学工業において樹脂や合成ゴムなどを製造する際の硬化剤として用いられる。
医療においては、膀胱炎、尿路感染症、腎盂腎炎の治療に用いられ、日新製薬からヘキサミン注「ニッシン」として販売されている。これは、ヘキサミンが尿内でホルムアルデヒドに分解し、尿が防腐性を持つことを利用したものである。
また、生物学の分類学や生態学の研究現場では、石灰質(リン酸カルシウムや炭酸カルシウム)によって硬化した硬組織を持つ、脊椎動物や甲殻類の標本をホルマリン固定で保存するときに用いることがある。ホルムアルデヒドは水溶液であるホルマリンの中で酸化して徐々にギ酸に変化するが、ヘキサメチレンテトラミンは水中でアンモニアとホルムアルデヒドに分解し、このアンモニアがギ酸を中和して標本の脱灰を防止する。通常ホルマリンの原液にヘキサメチレンテトラミンを飽和させ、これを3~5%に希釈して使用する。
食品の保存料としての使用法もあり、海外ではチーズに添加される場合があるが、日本では食品への添加は法律で禁止されている。RDX爆薬を製造する際の原料となる。
1,3,5-トリオキサンと合わせて棒状に固めたものは、野外で使う固形燃料として用いられる(en:hexamine fuel tablet)。
【新聞記事】
**********(時事通信2012/05/19-13:49)
群馬県内の支流に発生元か=千葉県内21万世帯で断水-ホルムアルデヒド取水停止
利根川水系の埼玉、千葉両県の浄水場から国の水質基準値(1リットル当たり0.08ミリグラム)を上回る化学物質ホルムアルデヒドが検出された問題で、群馬県内を流れる支流の烏川で比較的高い値が検出されたことが5月19日、調査で分かった。同県などは、烏川か、さらにその支流に発生元がある可能性もあるとみて詳しく調査している。
同日昼現在、北千葉浄水場(千葉県流山市)と上花輪浄水場(同県野田市)、栗山浄水場(同県松戸市)の3カ所で取水を停止しており、同県野田市では同日午前から全体の3分の2に当たる約4万6000世帯で、同県柏市でも正午からほぼ全域の約16万4900世帯で断水している。
群馬、埼玉両県は、塩素を混ぜるとホルムアルデヒドに変化する物質が、川に流出しているのが原因とみて調査。約5キロ下流で利根川に合流する群馬県高崎市付近の烏川で比較的高い数値を検出したことから、烏川か、さらにその支流に発生元がある可能性が高いとみて詳しく調査する一方、利根川に流れ込む埼玉県内の複数の河川も調べている。
行田浄水場(埼玉県行田市)と東部地域水道浄水場(群馬県千代田町)は一時取水を停止したが、数値が下がったことなどから既に再開した。
**********(スポニチ 2012年5月19日 21:40)
千葉で断水、影響34万世帯 周辺から流出疑いも
関東地方の浄水場の水道水から水質基準を超える有害物質ホルムアルデヒドが検出された問題で、群馬県と千葉県は5月19日までに、新たに計2カ所の浄水場で取水を停止した。
千葉県内では、柏市や流山市など5市で計34万世帯以上が断水。給水所には水を求める長蛇の列ができた。
千葉県知事は5月19日、自衛隊の災害派遣を要請。自衛隊は断水地域に給水車などを出動させた。政府は首相官邸の危機管理センターに情報連絡室を設置した。
埼玉県によると、群馬県高崎市の利根川支流の烏川で5月18日、濃度が比較的高いホルムアルデヒドを検出。両県は烏川上流で採水し汚染源を絞り込むとともに、事業所への聞き取りも進めた。
烏川上流には塩素と結び付くとホルムアルデヒドになる「ヘキサメチレンテトラミン」という物質を扱う事業所が複数ある。樹脂や合成ゴムを製造する際に使われる。
千葉県は5月18日に上花輪(野田市)北千葉(流山市)の2浄水場で取水を停止。5月19日未明、栗山浄水場(松戸市)も基準を超える恐れがあるとして取水を止めた。うち1カ所で取水停止が継続。
埼玉、群馬県では19日までに取水が再開。埼玉県は行田浄水場(行田市)の取水堰で5月18日午前に採取した水から基準(1リットル当たり0.08ミリグラム)の2.5倍のホルムアルデヒドを検出。5月19日早朝、基準を安定的に下回ったとして取水と給水を再開した。
群馬県は5月18日夜、千代田町の東部地域水道浄水場で取水を停止。18日に採取した利根川の水を塩素処理した結果、基準を超える0.098ミリグラムを検出した。浄水処理後は0.04ミリグラムで基準を下回ったが、通常より高いため安全性を考慮した。
東京都水道局も江戸川、荒川両水系の浄水場3カ所で水質検査。基準を超える数値は出ておらず取水制限はしていない。
**********(毎日新聞 2012年5月19日(土)18:00)
<利根川・化学物質検出>千葉・柏、野田で断水 3県一部、取水停止
利根川・江戸川水系の浄水場の水道水から水質基準値を超えるホルムアルデヒドが検出された問題で、埼玉、群馬、千葉の3県の一部で取水が停止され、5月19日午前、野田、柏両市など千葉県で断水する地域が出始めた
影響が広がり、国土交通省関東地方整備局や各県は水質調査など対応に追われている。一方、ダム放水により数値が下がった取水地もあり、一部で取水が復活した。今回確認されている数値について各県は「短期的には摂取しても人体に影響はない」としている。
千葉県北西部に給水している北千葉浄水場(流山市)では、5月19日午前5時、上流10キロから取水した水から基準値(1リットル当たり0.08ミリグラム)の約3倍に当たる同0.246ミリグラムのホルムアルデヒドを検出。北側の上花輪浄水場(野田市)なども含め複数の浄水場で取水停止措置を随時取っている。
5月19日正午時点の同県のまとめによると、野田市が午前9時半過ぎから、柏市は正午過ぎから断水が始まった。野田市では約13万人が影響を受ける見込み。夕方にかけて我孫子市や八千代市でも断水の恐れがあるという。
関東地整は、水質回復のため、5月18日夜から、上流部の下久保(群馬、埼玉県)、薗原(群馬県)両ダムと渡良瀬遊水池(栃木、群馬、埼玉、茨城県)から緊急放流している。
上流の群馬県では5月18日、東部地域水道浄水場(千代田町)の水道水から最大で同0.04ミリグラムを検出。埼玉、群馬両県が調べたところ、上流で利根川に注ぐ烏川で同0.032ミリグラムを検出。
同川の流域には、塩素と反応してホルムアルデヒドを生成する化学物質ヘキサメチレンテトラミンを大量に使う事業所がある。【林奈緒美、山縣章子、塩田彩、樋岡徹也】
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次に示す東京新聞の5月19日付記事によると、発端は5月15日に埼玉県の春日部市の庄和浄水場でホルムアルデヒドが浄水場で採取した水から基準値の半分程度検出されたのが発端となっていることを伺わせます。しかし、この記事によれば、浄水過程後の採取水のようですが、読み方によっては浄水前の原水、つまり河川から採取した水のようでもあります。
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行田・春日部 2浄水場で有害物質 埼玉県「健康に影響ない」
埼玉県は5月18日、利根川水系から取水する県営の行田浄水場(行田市)と庄和浄水場(春日部市)で、浄水処理した水から水質基準値を上回る有害物質のホルムアルデヒドが検出された、と発表した。
備蓄水などで基準値未満に希釈して家庭に供給しており、健康に影響はない。ただ備蓄水がなくなれば、一部で断水する可能性があるという。
埼玉県は、上流にある化学薬品などの製造工場の排水が原因の可能性があるとみているが、流出場所は不明。同水系の下流の三郷市内にある東京都の浄水場や、同水系の千葉、茨城県内でも基準値を下回るホルムアルデヒドが検出され、千葉県では念のため取水を中止した。
ホルムアルデヒドは接着剤や塗料に含まれ、発がん性がある。
埼玉県によると、江戸川から取水する庄和浄水場で5月15日、基準値(1リットル中0.08ミリグラム)の約半分のホルムアルデヒドを検出。利根川から取水する行田浄水場で、5月17日の採取水から0.168ミリグラム)を検出した。庄和では5月18日の採取水から0.1ミリグラムを検出した。
今後も基準値超えが続き、備蓄水が少なくなれば、埼玉県は両浄水場での取水を停止する可能性がある。埼玉県内28市町村の過程で水道水の出が悪くなったり、一部で断水する可能性もあるという。
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■そして、翌5月20日の東京新聞の一面の記事では、さらに広域にわたって、浄水場の水道水から有害物質のホルムアルデヒドが検出され、埼玉県、千葉県の自治体では34万世帯が断水の影響を受けたとされています。
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ホルムアルデヒド 34万世帯が一時断水 柏など5市 利根川支流 汚染源か
利根川水系から取水する首都圏の浄水場の水道水から有害物質ホルムアルデヒドが検出された問題で5月19日、千葉県では柏、野田、流山の3市の全域と八千代、我孫子市両市の一部で断水し、計約34万4千世帯に影響が出た。
北千葉浄水場(流山市)と栗山浄水場(松戸市)で取水を再開しており、千葉県は断水地域は今後縮小するとみている。
森田健作知事は同日午後、自衛隊に災害派遣を要請。野田、八千代両市に自衛隊の給水車が出動した。
5月18日夜から断続的に取水を停止していた北千葉浄水場と栗山浄水場は、ホルムアルデヒドの濃度が国の基準(1リットル当たり0.08ミリグラム)以下に下がったため、5月19日夕から夜にかけ取水を再開した。
上花輪浄水場(野田市)は、濃度は基準以下に下がったが、取水停止が続いている。
断水した地域では、柏市が16か所の防災井戸から応急給水に当たるなど、井戸水や給水車による水の提供が行われた。
北千葉浄水場の取水再開を受け、柏市の断水は5月19日午後11時ごろには解除となる見通し。
埼玉県によると、群馬県内を流れる利根川の支流の烏川(からすがわ)で比較的高い値が検出された。埼玉県は同日、埼玉県北部の利根川支流で追加調査を実施。
担当者は「これまでの調査では、埼玉県内に汚染源があるとは考えられない」とし、群馬県内の烏川流域が汚染源との見方を強めている。
一時停止した行田浄水場(行田市)では、ホルムアルデヒド濃度は低下を続けており、5月19日午前1時~午後3時の検査で基準値以下の0.029ミリグラム~不検出だった。
庄和浄水場(春日部市)では5月19日午前に0.154~0.81ミリグラムと基準値を超えたが、午後3時には0.028ミリグラムに。埼玉県は「時間の経過とともに下がっており、今のところは取水・給水停止は考えていない」とした。
<ホルムアルデヒドが検出された主な浄水場>
浄水場名/給水人口/給水地域
■東部地域水道浄水場(群馬県千代田町)/約21万人/太田市、館林市など2市5町
■行田浄水場(埼玉県行田市)/約180万人/熊谷市、上尾市、久喜市など24市町
■庄和浄水場(埼玉県春日部市)/約110万人/さいたま市岩槻区、春日部市など8市町
■上花輪浄水場(千葉県野田市)/約15万人/野田市
■北千葉浄水場(千葉県流山市)/約100万人/鎌ヶ谷市、白井市など9市
■栗山浄水場(千葉県松戸市)/約44万人/松戸市、市川市、鎌ヶ谷市
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■また同日の東京新聞の社会面には次のような市民の不安や不満の記事が掲載されています。
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週末の断水「情報遅い」 汚染広がる不満と不安
「情報が遅い」「水が使えないと商売にならない」。浄水場で有害物質のホルムアルデヒドが検出された影響で、断水した千葉県柏市や野田市では5月19日午後、応急の給水所が設けられ、水を求める人々で長蛇の列ができた。影響は家庭や商店など広範囲に及び、週末の生活が脅かされた市民からは不満と不安の声が漏れた。
★千葉 給水、1時間待ちも
柏市では昼すぎに始まった断水が午後2時には市内全域に広がった。井戸水を使って給水所の一つ市立柏第三小学校には、大きなポリタンクやペットボトルを手にした人が列に加わり、給水を待った。
一時間近く並んだという男性会社員(58)は「昨夜から心配していたが、断水になるとは・・・。昼間に給水の情報を知ったが、情報伝達が遅いのでは」と不満を漏らした。
近くに住む主婦(48)は「お店では水を汲むバケツなどの容器が売り切れていた。飲料は確保してあるが、トイレが心配」と不安な表情を見せた。
柏市のスーパーマーケットでは2リットル入りペットボトルの水が午前中で売り切れた。「ペットボトル6本入りのケースを2、3箱まとめて買って行くお客さんが多かった」と店の担当者。調理の必要がない冷凍食品を買う客も多かったという。
昼前から断水が始まった野田市。この日三回目の給水という栗田絵美さん(48)は「トイレや洗い物、炊飯などに使うので、水が浴槽いっぱいになるようにしたい」。
野田市内の利用船の女性経営者(57)は「水が使えないので、お客さんにシャンプーができない。パーマの予約も1件入っていたが、こちらからキャンセルさせてもらった」と困り顔だ。
営業時間を大幅に短縮して、午後3時過ぎに店じまいする料亭もあった。店の関係者は「土日は書き入れ時なのに。明日も断水が続くとしたら、本当に困る」と憤っていた。
★検出濃度の水道水なら「健康への影響ない」
ホルムアルデヒドは住宅やビルに使われる建材の接着剤や、合成樹脂に含まれている化学物質。一定の濃度の水溶液はホルマリンと呼ばれる。蒸発しやく、吸い込み続けると呼吸困難や頭痛、喉や目の炎症が起こる場合があり、シックハウス症候群の原因物質とされている。
世界保健機関(WHO)は、長期間、吸い込み続けた場合には発がん性があるとしている。水などに溶けたものを飲み続けた場合、明らかに発がん性があることを示す知見は得られていない。
厚生労働省によると、WHOは昨年まで水道水の基準を1リットル当たり0.9ミリグラムとしていた。しかし、かなりの高濃度でないと、健康への影響が考えられる濃度とはならず、河川や海など環境中のホルムアルデヒドは相当少ないことから、現在は水道水の基準をなくしている、という。
国の水質基準は0.08ミリグラム。基準以下なら、体重50キログラムの人が一日2リットルを毎日飲んでも影響がない。基準は、気化したものを吸い込むことも考慮しており、基準内なら毎日、風呂の水として使っても問題ない。
ホルムアルデヒドはさまざまな有機物と塩素が反応すると発生し、浄水場で使う塩素と反応して発生する場合もあるという。
慶応大学理工学部の田中茂教授(環境化学)は「国の基準はもともと国際的な基準より厳しい。今回の程度の濃度の水道水を短期間に飲んだとしても、健康への影響はないだろう」と話している。
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■そして、この問題について、原因場所の群馬県の地方版で東京新聞は5月20日に初めて記事を掲載しました。
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ホルムアルデヒド 汚染源特定は水採取 烏川流域 県、きょう調査結果
利根川水系から取水する浄水場で国の基準(1リットル当たり0.08ミリグラム)を超える化学物質のホルムアルデヒドが検出された問題で、群馬県は5月19日、烏川流域に汚染源がある可能性が強いとみて、5月18日に0.032ミリグラムが検出された高崎市と玉村町の境の岩倉橋付近を含む烏川を中心に8地点で河川水などを採取した。検査結果は5月20日朝に公表される予定で、群馬県では原因物質と汚染源の特定を急いでいる。(川口晋介、中山岳)
群馬県企業局などによると、同じ利根川から取水をしている埼玉県から5月17日午前、「ホルムアルデヒドが高い数値を示している」との連絡を受け、東部地域水道浄水場(千代田町)で同日と翌18日に採水し検査。
国の基準値を下回ったため、送水を続けていたが、同日(17日?それとも18日?)午前に採水した処理前の原水の検査結果が、同日午後10時50分、基準超の0.098ミリグラムと判明し、同11時45分に取水を停止した。
群馬県は同浄水場から送水する太田、館林市、大泉、板倉、明和、千代田、邑楽町の2市5町(給水人口約21万人)に連絡を取り、翌19日未明から太田市と大泉、明和、千代田各町には送水停止、館林市には30%減の送水制限を行った。このうち板倉町(同約1万5千人)とは連絡が取れず、断水できなかったという。
群馬県は同浄水場で、19日午前4時過ぎに取水口など2か所で採水した結果は基準を下回る0.01~0.04ミリグラムだったため、同10時14分に取水を再開。各自治体に順次送水を再開した。
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■こうしてみると、群馬県は、5月17日に下流自治体から通報を受けて、県内の河川の水質を5月18日に測定し、その結果、0.032mgを検出した烏川流域がホルムアルデヒドの汚染源ではないかということで、5月19日に高崎市と玉村町の境の岩倉橋付近を含む烏川を中心に8地点で河川水などを採取したということになっています。このことについて、5月19日23:04の産経新聞ネット版は次のように報じています。
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一体何が起きたのか」 利根川支流が汚染源?
利根川水系の浄水場で有害物質のホルムアルデヒドが検出された問題。5月19日、関東3県で取水停止措置が相次ぎ、千葉県では断水になる地域も出るなど生活への影響が広がった。原因となる化学物質を扱う事業所が群馬県の利根川支流にあることも判明したが、これだけ広範囲で検出されるのは珍しく、関係自治体は汚染源の特定を急いでいる。
「一体何が起きたのか」。群馬県では県水道課の職員が原因特定に追われた。
同県では、数日前から東部地域水道浄水場(千代田町)でホルムアルデヒドが検出されており、5月19日に利根川をはじめ、支流の烏(からす)川(高崎市)、鏑(かぶら)川(同)、鮎川(藤岡市)など計8地点で採水し検査会社に調査を依頼した。検査結果は5月20日早朝に出るという。
烏川周辺には、塩素と反応してホルムアルデヒドを生成する化学物質ヘキサメチレンテトラミンを扱う事業所が複数あるという。
群馬県水道課では「浄水場で水道水を作る際に消毒のために混ぜる塩素が、上流から流れてきた何かの物質と化学反応を起こしてホルムアルデヒドになったのではないか」と推測する。
一方、埼玉県では行田浄水場(行田市)で取水制限を行ったが、川の水質改善が確認されたため、5月19日午前5時には解除。結果的に生活時間帯にはほとんど影響がなかった。その要因について県は、国土交通省が5月18日夜から利根川上流の2カ所のダムを放流し、利根川の流量が通常のほぼ倍になったことによる影響が大きいと分析している。
埼玉県では平成15年11月、行田浄水場で処理後の水から微量のホルムアルデヒドが検出されたことがある。このときは利根川支流にある埼玉県内の化学薬品工場の排水にホルムアルデヒドの原因物質のヘキサメチレンテトラミンが含まれていることが判明した。
こうした経験に基づき、埼玉県は当初から、今回も化学系の工場からヘキサメチレンテトラミンが流出していると推測。5月19日には利根川水系での水質調査で群馬県内を流れる烏川沿いを割り出した。
厚生労働省によると、ホルムアルデヒドは、草や藻などの有機物(アミン類)が含まれた水を塩素消毒すれば発生するため、浄水場で検出されること自体はめずらしくない。しかし、同省は「基準値を超えるホルムアルデヒドが広域で長期間検出されるのは初めてではないか」と話している。
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また、東京新聞の5月19日13:53のネット版でも次のように報じています。
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ホルムアルデヒド 利根川支流域 汚染源か
2012年5月19日 13時53分
利根川水系から取水する首都圏の浄水場の水道水から有害物質ホルムアルデヒドが検出された問題で、群馬県は5月19日、千代田町の東部地域水道浄水場で国の水質基準(一リットル中0.08ミリグラム)を超える0.098ミリグラムを検出し、取水を一時停止したと発表した。取水停止は、再開済みも含め千葉、埼玉、群馬の三県に拡大。埼玉県は水質調査から、群馬県高崎市付近の烏川流域に汚染源がある可能性を指摘した。
東部地域水道浄水場は5月19日朝に取水を再開した。千葉県では北千葉浄水場(流山市)の上流約15キロ地点で同日早朝、国基準の三倍に当たる0.246ミリグラムを検出。このため同浄水場は5月18日夜の取水停止後、19日未明にいったん再開したが、再び止めている。
この影響で野田市では5月19日午前9時ごろから、市南部のほぼ全域で一般家庭の断水が発生。影響は少なくとも約10万人に上るとみられる。柏市でも正午ごろから一部地域で断水している。
埼玉県によると、群馬県と合同の調査で、高崎市と同県玉村町の市町境の烏川で5月18日に採取した水から、0.032ミリグラムを検出。埼玉県は「少なくとも烏川流域に汚染源があることは確実」としている。
烏川とは別の利根川の支流で同県熊谷、行田両市境を流れる福川でも、5月18日に取った水から0.013ミリグラムを検出。福川には烏川の水は流れないため、埼玉県は福川流域にも別の汚染源の存在を否定できないとして、詳しい調査を始めた。
埼玉県の担当者は「ホルムアルデヒドを含む物質が原液に近い状態で、工場などから流出していると考えられる」と話している。
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■この記事の内容によると、群馬県水道課は、5月17日に、平成17年11月に行田浄水場で処理後の水から微量のホルムアルデヒドが検出された経験を持つ埼玉県から指摘を受けて、さらに埼玉県から「平成17年の時は、上流にある利根川支流の埼玉県内の化学薬品工場の排水にホルムアルデヒドの原因物質のヘキサメチレンテトラミンが含まれていた」という情報を5月17日に受けても、まだどこが汚染源か特定できなかった様子が伺えます。
そこで、群馬県の対応に業を煮やした埼玉県が「烏川周辺に塩素と反応してホルムアルデヒドを生成する化学物質ヘキサメチレンテトラミンを扱う事業所が複数ある」と独自に調査し、“烏川流域に汚染源があるのではないか”と、埼玉県に促されて、ようやく群馬県は重い腰を上げて、5月18日に埼玉県と合同で烏川流域の水質を計測し、埼玉県の指導で汚染原因場所を割り出してもらったという経緯が垣間見えます。
これでは、下流の首都圏民の健康を守るという自覚に欠けていると見られても仕方がなく、下流の自治体や住民にとっては、上流の群馬県がこのあり様では、安心して利根川水系の表流水を飲めないことになります。
■そして、本日5月20日の午前中に、群馬県はホームページで河川の水式結果を発表しました。これによると、汚染源のひとつとして群栄化学工業を想定していたことになります。さっそく群馬県のHPを見てみましょう。http://www.pref.gunma.jp/houdou/e1000023.html
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【5月20日】浄水場等からの水質基準値を超えるホルムアルデヒドの検出を受けた河川水の調査結果について(環境保全課)
標記について、測定結果が得られたのでお知らせします。
1.調査方法
河川水・事業場排出水に塩素を添加して生成したホルムアルデヒドを測定しました。
2.調査結果
・河川水(1)~(7)については、水道水質基準以下の値です。
・(8)の事業場排出水は0.41mg/Lですが、事業場直下流の地点((4)井野川の下井野川橋)では、水道水質基準以下の値となっています。
なお、群馬県の生活環境を保全する条例で定める、事業場におけるホルムアルデヒドの排出水基準は「10mg/L以下」です。
採水地点/採水時刻(5月19日)/測定値(mg/L)/所在市町村/採水機関
(1)烏川(岩倉橋)/12:00/0.030/高崎市/群馬県・高崎市
(2)烏川(柳瀬橋)/11:35/0.017/高崎市・藤岡市/群馬県・高崎市
(3)井野川(宿矢橋)/11:00/0.006/高崎市/群馬県・高崎市
(4)井野川(下井野川橋)/11:15/0.017/高崎市/群馬県・高崎市
(5)烏川(共栄橋)/11:00/0.008未満/高崎市/群馬県
(6)鏑川(鏑川橋)/10:17/0.008未満/高崎市/群馬県
(7)鮎川(鮎川橋)/10:00/0.008未満/藤岡市/群馬県
(8)群栄化学工業(株)排出水/10:10/0.41/高崎市/県・高崎市
・(1)~(4)、(8)の定量下限値は、0.005mg/L、(5)~(7)の定量下限値は、0.008mg/Lです。
・ホルムアルデヒドの水道水質基準は「0.08mg/L以下」です。
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■このように群馬県は発生原因を群馬県高崎市宿大類町700にある群栄化学工業㈱http://www.gunei-chemical.co.jp/ではないかとみていたことを示唆しています。
群栄化学のHPによれば、同社の製品としては、次のものが挙げられています。
◇化学品部門
・アルミ鋳造用高性能重視
・真珠状樹脂(マリリン)
・射出成型用試作型
・溶剤可溶型多官能ポリイミド(フェノール性水酸基を有する溶剤可溶型ポリイミド)
◇食品部門
・天然旨味シロップシリーズ
・保水性糖質素材(ピュアトース)
・低甘味液状デキストリン(LS-20)
・天然植物活力剤(発酵オリゴ酢)
したがって、同社からホルムアルデヒドの生成原因物質が排出している可能性は高いのは事実です。ところが実際にどれくらい使用して排出しているのか、群馬県は把握していないようです。本当のところは同社しかわからないということのようです。群馬県は、「なお、群馬県の生活環境を保全する条例で定める、事業場におけるホルムアルデヒドの排出水基準は「10mg/L以下」です」と、排出基準を非常に高く設定していた事を認めています。他方、群栄化学がホルムアルデヒドの生成原因物質を排出した時期は5月15日以前と考えられるため、その当時の排水記録や状況をチェックしたうえで、上記のコメントを発したのであればともかく、当時の排水状況を同社にヒヤリングしていないのであれば、問題のある記載です。
■であれば、なぜ下流の数10万の住民に迷惑を掛けるような事態が発生したのでしょうか。
心配なのは、群栄化学が排水先としている井野川が烏川に合流する上流にあたる烏川にかかる柳瀬橋で、0.017mg/Lが検出されていることです。この橋は、高崎線の上り線の鉄橋から見える橋ですが、ここでもホルムアルデヒドの原因物質が検出されているということは、群栄化学以外にも原因者がいることになります。
また、群馬県は柳瀬橋からさらに上流?の(5)烏川(共栄橋)、(6)鏑川(鏑川橋)、(7)鮎川(鮎川橋)での測定に、なぜか定量下限値が0.008mg/Lと、性能の劣る測定機材を使っていることが気になります。
■当会では、ホルムアルデヒドの原因物質とされているヘキサメチレンテトラミンの排出源は群栄化学だけではないと考えています。その中で、烏川流域及びその支流の河川の一つである碓氷川や雁行川など、流域にサンパイ処分場を有する河川からの流出の可能性もあると考えています。
実際に、上記の東京新聞の記事にもある通り、埼玉県は「利根川の支流で埼玉県熊谷、行田両市境を流れる福川でも、5月18日に取った水から0.013ミリグラムを検出。福川には烏川の水は流れないため、埼玉県は福川流域にも別の汚染源の存在を否定できないとして、詳しい調査を始めた」ということです。
群馬県は5月18日に烏川(柳瀬橋)で採取した河川水から0.017ミリグラムを検出したのですから、当然、群栄化学の排水が流れ込んだ井野川との合流よりさらに上流の烏川流域及びその支流についてもきちんと継続的に測定すべきです。
■ホルムアルデヒドの原因とされるヘキサメチレンテトラミンは、樹脂や合成ゴムを製造する際に使われる物質です。サンパイ処分場にはプラスチック屑やゴム屑などは安定型処分場にそのまま埋め立ててよいとされています。
また自動車の解体等で発生するプラスチック類を多く含むシュレッダーダストなども、処分場に埋め立てられますが、こうした物質を土中に埋め立てた場所では非常な高温となり、得体の知れないガスが発生することは常識です。そのため、埋め立てた化学物質が分解し、製造過程で加えられたいろいろな添加物質が浸出して浸透した雨水に溶け込み、排水として下流に滲み出てくるのです。
群馬県西南部や西部には、沢山のサンパイ場や不法投棄場所が点在しています。烏川はこれらの中を流れており、当然、そうした処分場や不法投棄場所から滲み出た原因物質が河川水に何らかの影響を与えているはずです。
■現在、高崎市吉井町上奥平地区や、安中市岩野谷地区では稼働中のサンパイ場或はサンパイ場計画が目白押しです。そうした処分場ひとつひとつでは、たとえ排水基準を下回っていても、総量として下流の河川に加わる負荷は無視できなくなってきます。今回のホルムアルデヒドによる水質汚染もそうした背景が考えられます。
さらに、初期の報道では有機物に塩素を加えたため、ホルムアルデヒドが生成されたという見方もされていました。本当はホルムアルデヒドではなくさらに危険な発言物質のトリハロメタンが生成されている危険性にも目を向ける必要があると思います。
■下流の首都圏住民の健康と安心な暮らしを守るため、上流の水源地に住む我々住民としては、地元に計画されているサンパイ処分場計画を食い止める責務があります。
しかし、群馬県は上記に述べたような体質ですから、サンパイ場業者の側に立ち、既に承認した案件を前例として、どんどん許認可を出しているのが実態なのです。
【ひらく会情報部】
※参考資料
【ヘキサメチレンテトラミン】(出典:ウィキペディア)
ヘキサメチレンテトラミン (hexamethylenetetramine) は4個の窒素原子がメチレンによってつながれた構造を持つ複素環化合物である。ヘキサミン (hexamine) あるいは1,3,5,7-テトラアザアダマンタンとも呼ばれる。無色で光沢のある結晶もしくは白色結晶性の粉末である。
産業面では化学工業において樹脂や合成ゴムなどを製造する際の硬化剤として用いられる。
医療においては、膀胱炎、尿路感染症、腎盂腎炎の治療に用いられ、日新製薬からヘキサミン注「ニッシン」として販売されている。これは、ヘキサミンが尿内でホルムアルデヒドに分解し、尿が防腐性を持つことを利用したものである。
また、生物学の分類学や生態学の研究現場では、石灰質(リン酸カルシウムや炭酸カルシウム)によって硬化した硬組織を持つ、脊椎動物や甲殻類の標本をホルマリン固定で保存するときに用いることがある。ホルムアルデヒドは水溶液であるホルマリンの中で酸化して徐々にギ酸に変化するが、ヘキサメチレンテトラミンは水中でアンモニアとホルムアルデヒドに分解し、このアンモニアがギ酸を中和して標本の脱灰を防止する。通常ホルマリンの原液にヘキサメチレンテトラミンを飽和させ、これを3~5%に希釈して使用する。
食品の保存料としての使用法もあり、海外ではチーズに添加される場合があるが、日本では食品への添加は法律で禁止されている。RDX爆薬を製造する際の原料となる。
1,3,5-トリオキサンと合わせて棒状に固めたものは、野外で使う固形燃料として用いられる(en:hexamine fuel tablet)。
【新聞記事】
**********(時事通信2012/05/19-13:49)
群馬県内の支流に発生元か=千葉県内21万世帯で断水-ホルムアルデヒド取水停止
利根川水系の埼玉、千葉両県の浄水場から国の水質基準値(1リットル当たり0.08ミリグラム)を上回る化学物質ホルムアルデヒドが検出された問題で、群馬県内を流れる支流の烏川で比較的高い値が検出されたことが5月19日、調査で分かった。同県などは、烏川か、さらにその支流に発生元がある可能性もあるとみて詳しく調査している。
同日昼現在、北千葉浄水場(千葉県流山市)と上花輪浄水場(同県野田市)、栗山浄水場(同県松戸市)の3カ所で取水を停止しており、同県野田市では同日午前から全体の3分の2に当たる約4万6000世帯で、同県柏市でも正午からほぼ全域の約16万4900世帯で断水している。
群馬、埼玉両県は、塩素を混ぜるとホルムアルデヒドに変化する物質が、川に流出しているのが原因とみて調査。約5キロ下流で利根川に合流する群馬県高崎市付近の烏川で比較的高い数値を検出したことから、烏川か、さらにその支流に発生元がある可能性が高いとみて詳しく調査する一方、利根川に流れ込む埼玉県内の複数の河川も調べている。
行田浄水場(埼玉県行田市)と東部地域水道浄水場(群馬県千代田町)は一時取水を停止したが、数値が下がったことなどから既に再開した。
**********(スポニチ 2012年5月19日 21:40)
千葉で断水、影響34万世帯 周辺から流出疑いも
関東地方の浄水場の水道水から水質基準を超える有害物質ホルムアルデヒドが検出された問題で、群馬県と千葉県は5月19日までに、新たに計2カ所の浄水場で取水を停止した。
千葉県内では、柏市や流山市など5市で計34万世帯以上が断水。給水所には水を求める長蛇の列ができた。
千葉県知事は5月19日、自衛隊の災害派遣を要請。自衛隊は断水地域に給水車などを出動させた。政府は首相官邸の危機管理センターに情報連絡室を設置した。
埼玉県によると、群馬県高崎市の利根川支流の烏川で5月18日、濃度が比較的高いホルムアルデヒドを検出。両県は烏川上流で採水し汚染源を絞り込むとともに、事業所への聞き取りも進めた。
烏川上流には塩素と結び付くとホルムアルデヒドになる「ヘキサメチレンテトラミン」という物質を扱う事業所が複数ある。樹脂や合成ゴムを製造する際に使われる。
千葉県は5月18日に上花輪(野田市)北千葉(流山市)の2浄水場で取水を停止。5月19日未明、栗山浄水場(松戸市)も基準を超える恐れがあるとして取水を止めた。うち1カ所で取水停止が継続。
埼玉、群馬県では19日までに取水が再開。埼玉県は行田浄水場(行田市)の取水堰で5月18日午前に採取した水から基準(1リットル当たり0.08ミリグラム)の2.5倍のホルムアルデヒドを検出。5月19日早朝、基準を安定的に下回ったとして取水と給水を再開した。
群馬県は5月18日夜、千代田町の東部地域水道浄水場で取水を停止。18日に採取した利根川の水を塩素処理した結果、基準を超える0.098ミリグラムを検出した。浄水処理後は0.04ミリグラムで基準を下回ったが、通常より高いため安全性を考慮した。
東京都水道局も江戸川、荒川両水系の浄水場3カ所で水質検査。基準を超える数値は出ておらず取水制限はしていない。
**********(毎日新聞 2012年5月19日(土)18:00)
<利根川・化学物質検出>千葉・柏、野田で断水 3県一部、取水停止
利根川・江戸川水系の浄水場の水道水から水質基準値を超えるホルムアルデヒドが検出された問題で、埼玉、群馬、千葉の3県の一部で取水が停止され、5月19日午前、野田、柏両市など千葉県で断水する地域が出始めた
影響が広がり、国土交通省関東地方整備局や各県は水質調査など対応に追われている。一方、ダム放水により数値が下がった取水地もあり、一部で取水が復活した。今回確認されている数値について各県は「短期的には摂取しても人体に影響はない」としている。
千葉県北西部に給水している北千葉浄水場(流山市)では、5月19日午前5時、上流10キロから取水した水から基準値(1リットル当たり0.08ミリグラム)の約3倍に当たる同0.246ミリグラムのホルムアルデヒドを検出。北側の上花輪浄水場(野田市)なども含め複数の浄水場で取水停止措置を随時取っている。
5月19日正午時点の同県のまとめによると、野田市が午前9時半過ぎから、柏市は正午過ぎから断水が始まった。野田市では約13万人が影響を受ける見込み。夕方にかけて我孫子市や八千代市でも断水の恐れがあるという。
関東地整は、水質回復のため、5月18日夜から、上流部の下久保(群馬、埼玉県)、薗原(群馬県)両ダムと渡良瀬遊水池(栃木、群馬、埼玉、茨城県)から緊急放流している。
上流の群馬県では5月18日、東部地域水道浄水場(千代田町)の水道水から最大で同0.04ミリグラムを検出。埼玉、群馬両県が調べたところ、上流で利根川に注ぐ烏川で同0.032ミリグラムを検出。
同川の流域には、塩素と反応してホルムアルデヒドを生成する化学物質ヘキサメチレンテトラミンを大量に使う事業所がある。【林奈緒美、山縣章子、塩田彩、樋岡徹也】
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