市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

1400万円かけた修理直後の虎の子EF63の脱輪事故で信頼回復が急務の碓氷峠鉄道文化むら(その3)

2012-09-03 23:25:00 | 困ったちゃん岡田義弘・元市政
■安中市民は、17年前に起きた安中市土地開発公社を舞台にした巨額詐欺横領事件の再発防止に最善の注意を払わなければなりません。当時の元職員と一緒に公社の理事・監事を歴任した岡田義弘氏が、現在安中市長として、権勢をふるっている現状では、なおさら市民は市政に敏感になる必要が有ります。今回の、鉄道文化むらで起きたEF63形24号機の脱線事故を契機に浮かび上がった碓氷峠交流記念財団の内部統制に関する疑念や懸念について明らかにし、再度、警鐘を鳴らしておきたいと思います。

来春運行開始予定のトロッコ列車を牽く新ディーゼル機関車のデザイン画。市内後閑地区在住市民の案が採用された。

 同財団のHPによれば、平成16年度以降の鉄道文化むらと峠の湯交流館の入場者数の変遷は次の通りとなっています。

<鉄道文化むら>
平成16年度 188,490人(EF63運転体験1,920人)
平成17年度 201,075人(EF63運転体験1,851 人、トロッコ列車114,215人)
平成18年度 191,473人(EF63運転体験2,119 人、トロッコ列車 97,840人)
平成19年度 193,941人(EF63運転体験2,312 人、トロッコ列車 97,108人)
平成20年度 183,857人(EF63運転体験2,497 人、トロッコ列車 87,716人)
平成21年度 175,870人(EF63運転体験2,188 人、トロッコ列車 79,878人)
平成22年度 148,662人(EF63運転体験2,068人、トロッコ列車 75,869人)
       〔平成22年度末時点での延べ利用者数230万7235人〕
平成23年度       ?人(EF63運転体験2,470 人、トロッコ列車 73,205人)
※なぜか、平成23年度の事業報告書には、利用者数が明記されていない。

<峠の湯交流館>
平成16年度 180,436人
平成17年度 187,046人
平成18年度 193,695人
平成19年度 185,022人
平成20年度 173,563人
平成21年度 171,615人
平成22年度 157,675人〔平成22年度末時点での延べ利用者数186万6413人〕
平成23年度       ?人
※なぜか、平成23年度の事業報告書には、利用者数が明記されておらず、「平成24年1月14日入館者200万人達成」と記載あるのみ。

■また、同財団のHPによれば、平成16年度以降の鉄道文化むらと峠の湯交流館の事業収入と事業支出は次の通りとなっています。

<鉄道文化むら> 単位:円
平成16年度  事業収入136,421,961   事業支出 123,098,301
平成17年度  事業収入181,177,451   事業支出 147,626,794
平成18年度  事業収入176,173,218   事業支出 121,259,598
平成19年度  事業収入187,602,276   事業支出 129,737,300
平成20年度  事業収入172,809,666   事業支出 133,107,793
平成21年度  事業収入168,345,184   事業支出 138,967,931
平成22年度  事業収入149,281,404   事業支出 134,030,959
平成23年度  事業収入164,603,628   事業支出 137,609,127

<峠の湯交流館>
平成16年度  事業収入 126,675,755   事業支出 108,360,779
平成17年度  事業収入 125,545,985   事業支出 120,225,451
平成18年度  事業収入 122,249,345   事業支出 109,586,728
平成19年度  事業収入 115,329,992   事業支出 113,070,113
平成20年度  事業収入 106,871,856   事業支出 109,895,565
平成21年度  事業収入 102,888,483   事業支出 99,596,351
平成22年度  事業収入 94,419,701   事業支出 102,605,713
平成23年度  事業収入 100,108,694   事業支出 113,273,612

■こうしてみると、鉄道文化むらと峠の湯交流館の利用者数はほぼ拮抗しています。これは、あきらかに相乗効果であり、利用者の多くは両方の施設を利用している可能性があります。最近は文化むらの利用者数がやや減少傾向にありますが、平成23年度は群馬デスティネーションキャンペーンがあったので、おそらく前年度より利用者は増えていると思われます。事業収入を見る限り、その傾向は明らかに読み取れます。

 このように、事業規模3億円前後の同財団にとって、鉄道文化むらと峠の湯交流館は、事業の2本柱で、合計すると財団の事業の95%を占めており、とくに文化むらは財団全体の6割を占める重要事業です。利用者あたりの単価も交流館より遥かに高く、今後も集客と収益が見込める事業です。

 財団の収支は、岡田市長が権限を掌握することになるまでは、非常に好調で、毎年、2000万円~6000万円も安中市(平成18年4月の合併までは、松井田町)に寄付をしていました。財団のHPによれば、平成16年度が2260万円、平成18年度が6000万円、平成19年度が5000万円、平成20年度が2000万円、平成21年度が1500万円、自治体に寄付したことになっています。

 ところが、峠の湯交流館の事業の方は、上記のとおり、平成20年度から経費の方がかさむようになり、財団の収益を支えるのは文化むらの事業となっています。しかし、以前と比べるとその収益力には陰りが見え始めています。

 この原因としては、JRから譲渡された後、日常点検や整備はきちんとしているものの、次第に機材や設備の老朽化が進み、維持費用が増えて来たことが挙げられます。本物の機関車や客車などの展示のみならず、EF63を4機保有し、いずれも動態保存(今回の脱輪事故で、24号機は動態保存状態ではなくなったので、正確には動態保存状態は3機)していることが、鉄道ファンの関心を集めているわけですが、いくらテーマパークの「遊具」といっても、実物を維持して、動かすわけですから、その維持管理には細心の注意が必要となります。さもないと、老朽化した場合の修復や、今回のように事故で損傷した場合には、非常に大きなコストを強いられることになるわけです。

 今回、せっかく交付金を使って本格修理を施したEF36が再び損傷してしまいました。財団では、「軽微な損傷なので、文化むらの構内で簡単に修理でき、修理代も大した額にはならないだろう」と説明していますが、未だに修理費用の見積が出て来ていません。結局、今回の事故の原因と責任の所在と再発防止の実施確認がうやむやにされ、市民の知らないうちに、再び血税が注がれることもなるかもしれません。

■富岡製糸場が平成26年の世界遺産登録に向けて、先日推薦をされ、眼鏡橋等を含む関連の近代産業遺産を有する安中市にも追い風が吹く予感を感じさせますが、その風を受け止める安中市の組織が、しっかりと内部統制がとれていないと、せっかくのチャンスを活かすことができません。

 「ればたら」の話にはなりますが、もし仮にトロッコ列車による軽井沢への延伸計画が、2007年に当初プラン通りに実行されていれば、たとえ、横川~軽井沢間で往復2時間かかるとしても、最近のスローライフの風潮に合致して、おそらくもっと利用客は増えていたに違い有りません。その芽を封じたわけですから、岡田市長には文化むらを運営する財団の管理責任者として重大な責任があります。

■そのため、岡田市長は、起死回生の策として、平成23年6月に故障したトロッコ列車をけん引するディーゼル機関車を、市民の血税約1億円を投入して、更新する決断をしました。このカネをどこから捻出したかというと、安中市は「ふるさと創生基金」(記事末尾掲載)から浄財約1億円を財団に出したのでした。

**********朝日新聞デジタル2012年7月5日0時53分
碓氷峠の人気者 新規感謝の色やデザインを募集 群馬
 廃止された信越線横川~軽井沢間の鉄路を走るトロッコ列車の機関車が更新される。群馬県安中市と運行する碓氷峠鉄道文化むらが新しい機関車の色のデザインを募集している。
 トロッコ列車は観光用として、JR横川駅近くの文化むらと「とうげのゆ駅」の間2.6キロで運行されてきた。しかし昨年6月、下りの急勾配で車両を支えるエンジンブレーキが故障。現在は勾配が緩やかな途中の「まるやま駅」まで1.6キロの運行になっている。
 安中市によると、ディーゼル機関車は1975年製で、旧国鉄とJRが碓氷峠の保線用に使っていた特別な車両で部品がなく、完全な修理ができないことが分かった。このため約1億円の予算で新しい機関車を東京のメーカーに発注した。碓氷峠観光の人気施設で「とうげのゆ」」までの運行を望む声が強いという。
**********東京新聞2012年8月30日
ディーゼル機関車 デザイン案を選定
 安中市は8月29日、松井田町の「碓氷峠鉄道文化むら」で来春から運行を予定する新しいディーゼル機関車のデザイン案を来場者から募り、市内の男性の案を最優秀賞に選定したと発表した。
 市によると、選ばれたのは同市中後閑、大羽賀征正さん(34)の案。車両は茶色を基調とし、前後に虹色を配した。側面には施設のキャラクターで、駅長をイメージした白髭のおじいさんなどを描いた。
 募集期間は4月末から3カ月間で、488点を市幹部らが審査した。
 来春を予定する完成式典で大羽賀さんを表彰する。
 機関車はトロッコ列車をけん引し、施設から「峠の湯」までの約2キロを運行する。現在は老朽化し、運行が途中までとなっているため、東京都の車両製造会社が約一億円で新たな機関車を製造している。 (菅原洋)
**********読売新聞2012年8月31日
鉄道文化むら 新機関車デザイン
 安中市は、鉄道テーマパーク「碓氷峠鉄道文化むら」で来春から運行を予定している新しいディーゼル機関車のデザイン案が選ばれたと発表した。
 市によると、今年4月末から募集したところ、約3ヶ月で全国から488点の応募があった。機関車は、同施設から温泉施設「峠の湯」までの約2.6キロメートルを運行していたが、老朽化して急勾配専用のブレーキ部分が故障したため、昨年5月以降は、勾配の緩やかな「旧丸山変電所」までの運行となっていた。
**********

■安中市のHPには、ふるさと創生基金の使途について次の説明が載っています。

①安中市の元気を発信する事業
  マラソン発祥の地にちなみ、全国から元気ユーモアのある参加者を募り開催している「安政遠足」をはじめとした元気ある事業
②安中市の歴史、芸能・文化を発信する事業
 世界遺産暫定一覧表に記載されている「碓氷峠鉄道施設」の一つである美しいアーチ橋「めがね橋」をはじめとする歴史遺産や伝統文化の環境整備事業
③安中市のいやしとやすらぎを発信する事業
 温泉マーク発祥の地、磯部温泉郷やぐんま三大梅林の秋間梅林など、数多くの貴重な観光資源の活用と環境整備事業
④寄付者の指定による事業
寄附者の指定(教育分野、福祉分野など)による地域づくりに関連した事業
※指定のない場合、市長が使途の指定を行います

 ④にあるとおり、ふるさと創生基金には、住民から寄附ができます。安中市のHPトップ > 財務部財政課 > ふるさと創生寄附金の状況で検索すると次の説明が見られます。

>安中市を応援していただきありがとうございました(ふるさと創生寄附金の状況)
>元気なまちづくりを行う安中市”を応援していただき、ありがとうございます。制度創設以来、これまで全国の14人の方々から計100万5千円のご寄附がありました。(平成24年3月31日現在)
 寄附金は「安中市ふるさと創生基金」に積み立て、次の事業に活用させていただきます
>事業別内訳
 観光振興事業:168,000円
 文化財保護事業:105,000円
 一般社会福祉事業:30,000円
 安政遠足事業:2,000円
 教育振興事業:700,000円
>寄附をいただいた方
 平成23年度 1名
 平成22年度 寄附あり
 平成21年度 1名
 平成21年度 3名

 この基金の市条例では、安中市長が財政上必要とする場合、確実な繰戻しの方法、期間及び利率を定めて、基金に属する現金を歳計現金に繰り替えて運用できる、と定めてあります。また、「『地域づくりに必要な財源の確保に資する』事業の財源に充てる場合に限り、これを処分することができる」と定めてあります。

■今回、同財団が市のふるさと創生基金から約1億円を、新しいディーゼル機関車の製造費用として出してもらったのは、安中市が基金から借り出して財団に貸し出したのか、それとも、財団は文化むらの指定管理者だけであり、動態保存や展示用の車両は全て安中市の所有物のため、安中市が基金から約1億円を取り崩して、東京の車両製造メーカーに支払うのか、それとも、安中市が基金から浄財約1億円を借り受けて、それをいずれ基金に返済するために財団に対して1億円を貸し付けるという形をとっているのか、判然としません。

 いずれにしても、条例を見る限り、市長の腹づもりひとつで使途が決められるようなので、運用の実態を市民に明らかにしないと、“猫に鰹節”の制度になりかねません。事実、この基金のu運用実績等の状況について、安中市のHPには何も載っていません。

 このように、安中市とその天下り先のような関連組織との間の関係をしっかり監視しておかないと、安中市土地開発公社や安中市観光協会のようなズサンな経理がまかり通ることになります。それだからこそ、岡田市長には、しっかりとした組織統治(ガバナンス)や法令順守(コンプライアンス)をこれらの関連組織に対して、励行させる義務があります。

■しかし、これには暗雲が立ち込めています。財団が運営する文化むらについて、地元でいろいろな情報が飛び交っているからです。

 今年はじめ、文化むらに10年勤務する職員が、軽井沢ツルヤスーパーでカート2台を万引きして、同スーパーの店長が文化むらまで取り返しに来るという事件が発生しました。しかしこの事件は、なぜか表ざたにならず、当該職員も何事も無かったかのように勤務しているという話もあります。

 また、文化むらに勤める職員には、縁故採用者が多く、その場合、試用期間が3カ月のあと直ちに正式採用されており、優遇され過ぎではないか、という声もあります。

■同財団の今年度、平成24年度事業計画書には、メインの事業として鉄道遺産等普及事業(寄付行為 第4条第1号該当)について次の記載が有ります。

「明治26年(1893)横川・軽井沢間に官設鉄道が開通して以来育まれてきた鉄道文化遺産は、今も多くの重要な施設と人材を残している。
めがね橋や旧丸山変電所などの重要文化財だけではなく、ED42やEF63等の電気機関車に代表されるハード部分の遺産と、旧国鉄職員に代表されるソフト部分の遺産も、当該地域には数多く残されている。
特にEF63形電気機関車は碓氷峠鉄道文化むらに4両動態保存されており、全国から鉄道ファンが運転体験に訪れている。また、全国から集めた数多くの貴重な鉄道車両が展示されており、これらを後世に伝えていくための保存活動を続けていくことが重要である。軽井沢~横川間だけを走行していたEF63形電気機関車を実際に運転していただき普及活動を行っていく。」

 こうして、今年度、文化むらの虎の子のEF63を整備して、収益の一層の改善を図ろうとした矢先、約1400万円をつぎ込んだ24号機が損傷してしまいました。さらに、財団には、トロッコ列車牽引用の新しいディーゼル機関車を来春から運用する重大な役割がのしかかります。

 内部規律の緩みから発生した今回の事故を徹底的に反省し、市民のその顛末と対応策を積極的に公表し、再発防止の環境作りを自ら求めない限り、市民の血税はタゴ事件の尻拭いと同様に再びドブに捨てられる心配があります。

【ひらく会情報部・この項おわり】

※参考情報
○安中市ふるさと創生基金条例
http://www.city.annaka.gunma.jp/reiki_int/reiki_honbun/r354RG00000181.html 
平成18年3月18日 安中市条例第69号
(設置)
第1条 地域づくりに必要な財源の確保に資するため、安中市ふるさと創生基金(以下「基金」という。)を設置する。
(積立て)
第2条 基金として積み立てる金額は、毎年度の予算の定めるところによる。
(管理)
第3条 基金に属する現金は、金融機関への預金その他最も確実かつ有利な方法により保管しなければならない。
2 基金に属する現金は、必要に応じ、最も確実かつ有利な有価証券に代えることができる。
(運用益金の処理)
第4条 基金の運用から生ずる収益は、一般会計歳入歳出予算に計上して、この基金に編入するものとする。
(繰替運用)
第5条 市長は、財政上必要があると認めるときは、確実な繰戻しの方法、期間及び利率を定めて、基金に属する現金を歳計現金に繰り替えて運用することができる。
(処分)
第6条 基金は、第1条に規定する事業の財源に充てる場合に限り、これを処分することができる。
(委任)
第7条 この条例に定めるもののほか、基金の管理に関し必要な事項は、市長が別に定める。
附 則
(施行期日)
1 この条例は、平成18年3月18日から施行する。
(経過措置)
2 この条例の施行の日(以下「施行日」という。)の前日において合併前の安中市ふるさと創生基金の設置管理及び処分に関する条例(平成元年安中市条例第4号)又は松井田町ふるさと振興基金条例(平成元年松井田町条例第2号)に基づく基金に属していた現金、有価証券その他の財産は、施行日において、この条例に基づく基金に属するものとする。


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