市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

造成済みの東邦亜鉛サンパイ場に石綿含有ゴミを捨てていいと設置許可をこっそり出していた群馬県の化けの皮

2012-12-06 01:57:00 | 東邦亜鉛カドミウム公害問題
■全国のサンパイ業者が注目している群馬県西部の観音山丘陵から岩野谷丘陵にかけてのサンパイ場計画がひしめく地域で、公害企業として一世を風靡した東邦亜鉛安中製錬所のサンパイ処分場については、鉱山保安法の改正による山元製錬所から独立製錬所への切り替えのドサクサに、それまで鉱山保安法の監督官庁だった経産省と示し合わせて、旧法を適用した手続で不当にサンパイ場を造成し、改正法適用前に既成事実を作っておこうという、いかにも公害企業らしい手口で、今後20年間分の容量のサンパイ処分場を作った東邦亜鉛ですが、先祖代々の墓地のわずか100mたらずのところにサンパイ場がつくられる地元住民としては、ぜったいに阻止しなければなりません。

操業中の東邦亜鉛安中製錬所。未だに工場周辺の畑地はカドミウム汚染土壌が除染されず放置されたまま。しかも今もなお稼働する製錬所から微量ながら毎日降下煤塵が降り注ぎ、更なる汚染が進行中。11月1日撮影。

 ところが、許可権限をもっているのは、サンパイ業者に定年後天下るのを何とも思わない群馬県の環境行政に携わる職員ですので、行政と業者の癒着の根は深く、群馬県は、この美しい県土を全国のサンパイ業者の為に、人身御供とすることについて何のためらいも持ち合わせていないようです。

■さて、東邦亜鉛は、既に造成済みのサンパイ場に実際にサンパイを持ち込めるようにする為の施設設置許可申請を平成23年4月に群馬県に出しておりました。今年の5月ごろの時点では、まだ設置許可は出ていませんでした。そのことは当会のブログでも報告済みですが、このたび、群馬県環境リサイクル課を、別件の㈱環境資源の問題で訪れた際に、東邦亜鉛のサンパイ場のその後の状況についてヒヤリングしたところ、驚くべきことに、今年の6月8日付で県知事の設置許可証が東邦亜鉛に交付されていたことが判明したのです。

平成24年6月8日付で群馬県知事が東邦亜鉛に出した埋立面積2,083㎡、埋立容量12,747㎥のサンパイ最終処分場設置許可証。地元住民らによる意見書の内容が全く反映されないまま、シレッと出され、しかもアスベスト含有物質も廃棄できることになっている。官業癒着の構図が読み取れる。

 このことを知るまでに、環境リサイクル課の職員に、東邦亜鉛のサンパイ場の話を切り出してから10分ほど経過してもなお、職員が「使用許可はまだ出ていない」などと、手続の詳細を知らない地元住民である当会に対して、あたかもまだ許可を出していないような表現をしていましたが、こちらが「設置許可」についてしつこく聞いた挙句に、ようやく「設置許可は既に出してある」と認めました。

 当会は腰が抜けるほど驚いて、「というと、まだ完成検査中なのでしょうか」というと、県職員は「完成検査は(出先の)西部(環境森林事務所)のほうでやったと聞いているが、完成検査をするわけなので、それを踏まえて使用許可が出される」と、わざと話をはぐらかせて説明するのです。

 こうして、役所内の手続に疎い住民をいたぶったあげく、「施設許可はもう出されている」と、しれっと言うのが群馬県の環境行政に携わる職員らの共通の特徴なのです。

■そこで、さっそく「施設設置許可書を見せてください」と県職員にお願いしたところ、席をはずして、上司らと5分くらい相談した挙句、ようやく「(もう許可を出したんだから)見せても構わないだろう」という声が聞こえて、当該の県職員がファイルをもって戻ってきました。

 さっそく、見せてもらったところ、石綿含有物質については、「東邦亜鉛は住民説明会の際に、アスベストのアの字も言っていないのだから、申請書から全部削除するように」と、意見書にも書いておいたのに、東邦亜鉛の申請書どおり、安定五品目のすべてに「石綿含有物質を含む」と明記されていました。これほど、県民・納税者を愚弄する自治体も他に見当たらないでしょう。

 「なんだ、ちっとも勘案していないではないですか?」と抗議をすると、県職員は「もともと申請書の様式にそのように記載されているので、それにならったまでで、とくに手続に問題はない」などと、あきれたことを口走りました。

■そのため、当会から、「そんなはずはありません。東邦亜鉛は、安定五品目の説明の際、アスベストについては住民に対する説明のなかで、全く言及していませんでした。申請書の様式にそのように記載されているはずはないと思います。世界的にみても、アスベストの取り扱いについては、どこでも非常に厳しい規制をしており、石綿含有物質とあるだけで、有害物質として位置付けられています。念のため、確認してみてください」と県職員にお願いしたところ、規則集らしきマニュアル本を持ってきた県職員が当該ページを開いて見せて「ほら、ここにちゃんと石綿有害物質を含むと、様式の左の欄のなかに明記されている」といいました。

 しかし、その欄をよく読むと、「石綿含有物質を含む場合は」という意味で記載しているのは一目瞭然です。そのことを指摘すると「石綿の有無を確かめた上で、という意味で・・・」などと県職員は、くちごもり、それ以上は黙ってしまいました。

■当会から、「東邦亜鉛は、住民に対して、環境重視企業として、『アスベストを含む廃棄物はシビアに分別し、少しでもアスベストを含む有害物質は専門業者に委託して無害化処理をしてもらっていると明言しており、東邦亜鉛の意向は、住民説明会における住民への説明どおり、アスベストについては問題の無いように処理してサンパイ最終処分場には投棄しないから、説明で言及しなかった』といっています。それなのに、県職員の皆さんが東邦亜鉛に対して、『少しでもアスベストの混じっているのが立会い検査の際に発見された場合には、ややこしいことになるよ』と言って、『石綿含有物質を含む、と追記しておいたほうが、安心ではないのか』などとアドバイスをしてくれるものだから、東邦亜鉛は『それじゃあ、石綿含有物質を含む、と入れてください』と言っていましたよ。」と東邦亜鉛の言い分を代弁して県職員に説明をしました。

 つまり、東邦亜鉛はアスベストについては、法律を守りきちんと分別して処理するのを会社の基本方針としているのに、県職員は、そんなことをする必要はありませんよ、と、民間会社に行政指導をしたようなものです。「それでよろしいのでしょうか」と県職員に申し上げたところ、県職員は、話を変えて「東邦亜鉛さんが、石綿含有物質を含まない、ということで、再度、変更申請をするのであれば、それはそれで問題はないので、県としても受け付ける用意がある。だから東邦亜鉛さん次第だ」と手のひらを返したように、あたかも、石綿含有物質を含んだ有害物質を、安定五品目に勝手に入れて申請したのは東邦亜鉛だ、といわんばかりに、説明の表現を変化させたのでした。

 極めつけは、当会が「アスベストについてなぜ安易に安定五品目に付記したのですか?」と質問したところ、県職員は「(基本的に石綿含有物の件は)事業者と住民の話になることだから」と言ったことです。ことし3月の㈱環境資源のサンパイ場設置計画に関する地元岩野谷公民館での出前講座で、群馬県の環境リサイクル課の吉田係長は「県はしっかりと業者を指導するので住民の皆さんは安心してほしい」などと繰り返し住民らに力説していたからです。

 当の本人は2年か3年で他の部署に異動になっており、その後任者は、前任者と違うことを平気でいうのです。これが無責任を座右の銘銘としている役所の本質です。

■さっそく東邦亜鉛安中製錬所に向かい、総務担当者と環境管理担当者に面談を申し込みましたが、あいにく二人とも東京本社に出張中とのことでした。そこで、留守番の女性職員に本社まで電話をつないでもらい、総務担当者と電話で話をしました。

安中製錬所事務棟の入り口の門柱にある古めかしいプレート。11月3日撮影。

 電話で、群馬県で入手した情報、すなわち、いつのまにか、設置許可が東邦亜鉛に出されているのはどうしたわけなのか?あれほどアスベスト入れないと豪語していたのになぜ申請内容を変更しなかったのか?安全検査はもう済んだのか?もう使用を開始しているのか?などについて、矢継ぎ早に質問しました。

折から不要書類を裁断中。

 すると、総務担当者は、「設置許可はもらったが、安全検査が済んでいないので、安全検査が終わった後、設置変更申請をすればいい、と思っていた」と答えるのです。それにしても、あきれた対応の仕方です。しかも、本人は少しも変に感じては居ないのが、これまた問題です。

事務棟受付の窓口に掲示されているISOの認証票。

■東邦亜鉛の意見として「アスベストについてはこれまでもきちんと仕分けをして、安全に処理をしてきているし、隣りの富岡市でアスベスト中間処理施設設置問題で大騒ぎになっていることから、アスベストへの対応は慎重を期したい。だから、アスベストの部分を安定五品目の記述から削除することはやぶさかではないが、設置許可を受けている状態の今また、群馬県に対して、変更申請をした場合、時間がかかるのではないかということが懸念される」というスタンスであることが分かりました。

待合室に張ってある自民党代議士小渕優子のカレンダー。同社と自民党の古くからの因縁を物語る。

 そこで、当会は「あくまで、地元住民の先祖代々の墓地のすぐ近くにサンパイ場を作って稼動させるのは絶対に許される行為ではありません。それはそれで、今後もきちんと東邦亜鉛には申し入れるが、住民説明会でアスベストのアの字も言わなかったのだから、そもそも設置許可申請に、石綿含有物質という表現が含まれること自体、ありえないことです。だから、東邦亜鉛のコンプライアンスの観点から、きちんと設置許可の内容を変更して、再度群馬県に対して住民説明会での説明内容にそったかたちで手続をしなおすのが、東邦亜鉛の取るべき道ではないのでしょうか」と申し入れました。

 東邦亜鉛では、「群馬県がそのように言っているのであれば、設置変更申請してみるが、まずは社内で協議をしなければならない。それを踏まえてどうするか決めたい」などと、およそ一部上場会社とは思えない、腰の引けた見解を示してきました。

 当会から「群馬県が、まちがいなく、変更手続には応じるといっているのだから、ウソだとおもったら、確認すればよいのではないでしょうか」と申し上げましたが、どうせ、どっちもどっちなので、また、群馬県の環境行政の関係者は「常に、住民と業者との中立の立場にたって判断する」というのが口癖ですが、ウラでは、業者べったりであるのはこれまでの類似案件での群馬県の素行を見ても明らかであり、群馬県の職員らのいうことはまったく信用なりません。

■こうして、、またひとつ、岩野谷地区に廃棄物処理施設が増えてしまうのです。しかも、重金属汚染農地についても、東邦亜鉛は未だに放置したままです。無責任行政と無責任企業の両輪に、地元住民の生活環境や営農環境は踏みにじられっぱなしです。

【ひらく会情報部】

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