■地元の群馬5区の代議士・小渕優子とその元秘書で前中之条町長だった折田謙一郎を当会が政治資金規正法違反や公職選挙法違反の容疑で告発したのは2014年10月20日でした。その後、同10月31日に告発状の内容と様式を見直して再告発を行いました。そして、同11月12日には、小渕優子に対して旅行業法違反の容疑で告発状を提出しました。このうち、政治資金規正法と公選法違反については、2015年4月28日付で小渕優子に関しては不起訴処分、折田謙一郎に関しては在宅起訴処分となったものの、同人の後援会を巡る政治資金規正法虚偽記載(不記載)については不起訴処分になりました。また、小渕優子の旅行業法違反容疑については、いまだに東京地検特捜部から告発状を受理したのかどうかについて、何の連絡もありません。そうした状況下で、今日の二大週刊誌が、小渕優子政治資金問題について、それぞれ記事を掲載しています。
**********週刊新潮2015年6月18日号(6月11日発売)グラビア記事
虚偽記入「説明責任」棚に上げ
未来の有権者委宛に、いったい何を伝えられるのか――。6月4日の昼前、国会議事堂そばに自民党の小渕優子代議士(41)の姿があった。
「本会議や議連の勉強会にちょっと顔を出すぐらいで、代議士会や平成研の定例会もろくに出ていないのに、地元群馬から来た小学生の国会見物に付き添って笑顔で写真を撮ってたんです」
と、党関係者は白目で見ている。
「そもそも国会見学は秘書の案内が普通ですし、議員は子どもさんとの撮影を避ける傾向にあります。支持者ではない親御さんもいるわけですからね」
政治部記者も、呆れ顔を隠さない。
「4月末、虚偽記入で元秘書2人が在宅起訴されてもない、一切説明していません。説明責任を棚上げしたまま、のうのうと国会減額なんてねえ」
そんな彼女でも、さすがに先月の群馬県知事選の事務所開きには出席し、
「事件について訊かれると、“紙で出して居るのがすべて”。処分が出たときの紙には、“事務所関係者が起訴されたことについては重く受け止めており、政治的、道義的責任を痛感しています”とあるだけですよ。また、5月18日に開かれた笹川堯元総務会長のパーティには、中曽根弘文や山本一太といった参院の面々から、代議士は群馬1区から4区まで勢揃いしたというのに、5区の彼女だけが欠席。人としての義理さえ欠くようになりました」
まさか、子どもたちに「逃げるが勝ち」なんて教えたりしてはいないだろうか。
撮影・堀田 喬
**********週刊文春2015年6月18日号(6月11日発売)P41-42
白熱対談 「東京地検特捜部を叱る」
元特捜部長 石川達紘 × 元東京新聞編集委員 村串栄一
<検察の正義の仮面が剥がされた今、事件報道も揺らぎのなかにあるようだ>
元東京新聞編集委員の村串栄一氏(66)は、5月12日に上梓した『検察・国税担当 新聞記者は何を見たのか』(講談社)のあとがきにこう書いた。かつて“最強の捜査機関”と恐れられた東京地検特捜部の実像を描いた村串氏と、東京地検特捜部長、名古屋高検検事長を歴任した石川達紘氏(76)が「特捜部とメディアの劣化」を語り合った。
村串 一昨年から猪瀬直樹東京都知事(当時)ら有名政治家が、次々に東京地検特捜部に告発されましたね。
石川 昨年は渡部喜美みんなの党代表(当時)の八億円借り入れ問題や、小渕優子経産相当時)の政治団体の、観劇会の収支改ざん問題もありました。
村串 ところが猪瀬氏の徳洲会からの五千万円借り入れ問題や、小渕優子経産相(当時)の政治団体の、観劇会の収支改ざん問題もありました。
村串 ところが猪瀬氏の徳洲会からの五千万円借り入れ問題は、略式起訴の罰金刑でおしまい。背後の利権構造にまでメスを入れたとは言えません。渡辺氏も結局不起訴で、なぜそれほど巨額のカネを動かす必要があったのか未解明です。小渕氏の件も、元秘書二名が在宅起訴されたものの、消化不良の感は否めません。
石川 一連の捜査を外から見ていて問題だと思うのは、いつからか「まずガサ入れ(家宅捜索)」という捜査の形が出来てしまっていることです。また途中で被疑事実が変わるなど、信じがたい事態も起こっている。事前に被疑事実を詰められておらず、筋読みも甘い。
村串 確たる証言も物証もない中、ガサ入れで何かを見つけようとする、いわば見切り発車ですね。
石川 最近の特捜検事は一度も事件を手掛けないまま異動してしまう人が増えました。ヒラ検事時代に事件を手がけたことがないから、副部長や部長として特捜部に戻っても指揮が取れない。
村串 例えば石川さんが副部長だった八五年に手がけた撚糸工連事件。撚糸業界と政治家の癒着を探るため、石川さんは国会の議事録を一人で黙々とめくっていましたね。そこで見つけた業界を利する発言を端緒に、賄賂を受け取っていた政治家二名を訴追しました。
石川 そうした発想は実際に事件を何度も手がけていないと出てきませんからね。
村串 熊崎勝彦さん(元東京地検特捜部長。現日本プロ野球コミッショナー)も、事件がやりたくて仕方がない検事でした。八三年の新薬スパイ事件(製薬会社社員と旧厚生省所管の研究所員が他社の新薬申請資料を盗み取った事件)は、熊崎さんが一件の窃盗事件を端緒に掘り起こし、計十四人の逮捕に発展しました。
石川 熊崎さんは特捜部長時代、旧大蔵省の接待汚職という、難しい事件も完遂してくれました。
村串 あの時は石川さんが上司に当たる検事正でした。捜査中に全国検察幹部の会議が開かれ、某幹部から「いつまでやっているんだ」と批難の声が出た。石川さんは「事件をやらせる、やらせないという発想自体がおかしい!」と声を荒げたそうですね。幹部らは石川さんの激しい口調に驚き、辞職覚悟の発言と受け止める幹部もいたと聞きました。
石川 検察は本来、幹部だろうがヒラだろうが、全員がプレイングマネージャーでないといけません。二〇一〇年に起きた大阪地検特捜部のFD改ざん事件は、プレイングマネージャー不在を示した象徴的事例でしょう。本来上司は「調書を俺にも読ませろ」とやらないといけなかった。検察の仕事は常に人権を侵害する可能性があるのだから、判子を押すだけの“良い上司”ではダメです。吉永祐介元検事総長(故人)は、総長になっても調書を隅々まで読み込んでいました。
村串 〇九年の政権交代直前に“小沢一郎総理”の芽を摘んだ陸山会事件の頃から世間に管積していた特捜批判が、FD改ざん事件で、一気に爆発した感がある。
石川 あれ以降、特捜検事が消極的になってしまった気がします。当然、猛省しなければいけませんが、身を低くして嵐が過ぎ去るのを待つのが信頼回復に繋がるとは思いません。警察や国税、証券取引等監視委員会等が告発した事件を仕上げるだけが検察の仕事ではない。積極的に独自で事件を掘り起してほしい。
村串 グローバル化社会に合わせて、検察という組織も変わっていきますか。
石川 そうかもしれません。今の若手検事には「検察に留まらず、広く活躍したい」という意識が強い人が多いように思います。キャリアアップの場として検察を利用するんですね。検事としてのスキルを身に付けると、早期に退職して弁護士になる若手が増えています。
村串 昔は検察内で問題を起こして「ヤメ検」になる人が多かったのですが……。
石川 今や「検察」や「特捜部」には昔ほどの人気はありません。
村串 一方、取材する側も変わってしまった。最近の新聞社には「危険な取材はするな。スクープは労多くして実りが少ない。発表記事だけ書いていればいい」というような雰囲気がある。
石川 以前は、記者の方々とは緊張関係もあったけど協力関係もありました。お互いに「不正を糺す」という志は同じでしたから。
村串 最初にお目にかかったころ、「この事件の着手、明日でしょう」なんて聞くと、「一二〇%ない」と断言され、騙されました。
石川 そんなこと、ありましたっけ?
村串 馬鹿な質問をすれば一蹴される緊張感があった。でも新鮮なネタをぶつければ身を乗り出してくる「事件屋検事」そのものでした。
★記者の夜回りも凄かった★
石川 僕はよく「情報持ってこないなら来るな」と言っていました。記者の方の、捜査権がなくとも様々な人と直に接触してネタを取ってくる力は本当に凄いものがある。実際、記者から端緒となる情報を聞くこともありました。各社の皆さんの夜回りも凄かった。
村串 元NHKの小俣一平氏は、検事の帰りを待って自宅前で朝まで寝ていたし、別の記者は熊崎さんの官舎前にテントを張って帰宅を待っていた(笑)。スリリングでハードな毎日でした。
石川 検事も記者も競って仕事をしていました。私は今の特捜検事に「一年に、一人一件は必ず事件をやれ」と言いたい。自分でゼロから事件をやるという気概を持ってほしい。特捜部は約四十人いるんだから、一年で四十の事件を立件できればすごいですよ。小さな事件でも、丹念に調べれば必ず次に繋がっていく。
村串 私は、今こそ特捜部は国民の生活に根付いた問題を手掛けるべきだと思います。政治家や高級官僚、経済界のトップを追うばかりが特捜部じゃない。例えば最近の個人情報流出問題に限らず、年金にまつわる問題はいつも全国民の関心事です。これまでも不祥事だらけだったのに、一度も捜査のメスが入っていない。また、東日本大震災の復興関係予算は約二十五兆円が計上されていますが、利権屋の暗躍をよく耳にします。
石川 先日も、東日本大震災後に作られた制度を利用を悪用し、五億円もの補助金を不正井受給していた発電会社を特捜部が摘発しましたね。
村串 他にも似たような事件が沢山あるでしょうから、『特捜部東北支部』を作って徹底的に捜査してもいいんじゃないかと思いますよ。
石川 「特捜部は国民と共にある」ですね。村串さんの言うように国民の関心が高く、国民に被害が及ぶ可能性がある事案に積極的に取り組んでもらいたいですね。
石川達紘 一九三九年四月、山口県生まれ。中央大学法学部を経て六五年に検事任官。東京地検特捜部副部長、同部長、同検事正などを歴任し、光進事件、ゼネコン汚職、大蔵接待汚職など、数々の大型事件を手がけた。名古屋高検検事長を務めた後、二○○一年に退官。現在は弁護士(第一東京弁護士会所属)。
村串栄一 一九四八年十二月、静岡県生まれ。明治大学から中日新聞社入社。司法記者クラブ、国税庁記者クラブ、JR記者クラブなどを担当し、中国・北京留学を経て社会部デスクなどを歴任。二〇一三年末に退職。著書に『検察秘録 誰も書けなかった事件の深層』「がんと明け暮れ 記者が綴る10年の記録』など。
**********
■こうしてみると、「姫」は金庫番の「国家老」が在宅起訴されたため、銭のかかるパーティからは足が遠のき、事件のことを知らない小学生を相手に笑顔を振りまいているうちに、政治資金不正使用問題が風化していくのではないか、と期待をしつつ、ひたすら時間の経過を待つつもりなのかもしれません。
また、東京地検特捜部に関する対談記事では、いかに現在の地検特捜部が牙を抜かれているかがよくわかる内容となっています。
最近、当会に対してマスコミ関係者からいろいろ問い合わせが増えてきました。いずれも、「いつ検察審査会に申立てをするのか」について関心をもつ記者の皆さんからのものです。
■本来は、ジャーナリズムに基づきマスコミ関係者がこの問題について、もっと積極的に取り組む姿勢を見せないと、ますます地検特捜部が弱体化してしまいます。しかし、この対談で話題に上ったように、最近のマスコミ記者は、プレスリリース(発表記事)を主体に記事を書くようになってしまっているようです。
やはり、市民団体による行動なくしては、この問題の真相解明は困難なようです。
【市民オンブズマン群馬事務局からの連絡】
**********週刊新潮2015年6月18日号(6月11日発売)グラビア記事
虚偽記入「説明責任」棚に上げ
未来の有権者委宛に、いったい何を伝えられるのか――。6月4日の昼前、国会議事堂そばに自民党の小渕優子代議士(41)の姿があった。
「本会議や議連の勉強会にちょっと顔を出すぐらいで、代議士会や平成研の定例会もろくに出ていないのに、地元群馬から来た小学生の国会見物に付き添って笑顔で写真を撮ってたんです」
と、党関係者は白目で見ている。
「そもそも国会見学は秘書の案内が普通ですし、議員は子どもさんとの撮影を避ける傾向にあります。支持者ではない親御さんもいるわけですからね」
政治部記者も、呆れ顔を隠さない。
「4月末、虚偽記入で元秘書2人が在宅起訴されてもない、一切説明していません。説明責任を棚上げしたまま、のうのうと国会減額なんてねえ」
そんな彼女でも、さすがに先月の群馬県知事選の事務所開きには出席し、
「事件について訊かれると、“紙で出して居るのがすべて”。処分が出たときの紙には、“事務所関係者が起訴されたことについては重く受け止めており、政治的、道義的責任を痛感しています”とあるだけですよ。また、5月18日に開かれた笹川堯元総務会長のパーティには、中曽根弘文や山本一太といった参院の面々から、代議士は群馬1区から4区まで勢揃いしたというのに、5区の彼女だけが欠席。人としての義理さえ欠くようになりました」
まさか、子どもたちに「逃げるが勝ち」なんて教えたりしてはいないだろうか。
撮影・堀田 喬
**********週刊文春2015年6月18日号(6月11日発売)P41-42
白熱対談 「東京地検特捜部を叱る」
元特捜部長 石川達紘 × 元東京新聞編集委員 村串栄一
<検察の正義の仮面が剥がされた今、事件報道も揺らぎのなかにあるようだ>
元東京新聞編集委員の村串栄一氏(66)は、5月12日に上梓した『検察・国税担当 新聞記者は何を見たのか』(講談社)のあとがきにこう書いた。かつて“最強の捜査機関”と恐れられた東京地検特捜部の実像を描いた村串氏と、東京地検特捜部長、名古屋高検検事長を歴任した石川達紘氏(76)が「特捜部とメディアの劣化」を語り合った。
村串 一昨年から猪瀬直樹東京都知事(当時)ら有名政治家が、次々に東京地検特捜部に告発されましたね。
石川 昨年は渡部喜美みんなの党代表(当時)の八億円借り入れ問題や、小渕優子経産相当時)の政治団体の、観劇会の収支改ざん問題もありました。
村串 ところが猪瀬氏の徳洲会からの五千万円借り入れ問題や、小渕優子経産相(当時)の政治団体の、観劇会の収支改ざん問題もありました。
村串 ところが猪瀬氏の徳洲会からの五千万円借り入れ問題は、略式起訴の罰金刑でおしまい。背後の利権構造にまでメスを入れたとは言えません。渡辺氏も結局不起訴で、なぜそれほど巨額のカネを動かす必要があったのか未解明です。小渕氏の件も、元秘書二名が在宅起訴されたものの、消化不良の感は否めません。
石川 一連の捜査を外から見ていて問題だと思うのは、いつからか「まずガサ入れ(家宅捜索)」という捜査の形が出来てしまっていることです。また途中で被疑事実が変わるなど、信じがたい事態も起こっている。事前に被疑事実を詰められておらず、筋読みも甘い。
村串 確たる証言も物証もない中、ガサ入れで何かを見つけようとする、いわば見切り発車ですね。
石川 最近の特捜検事は一度も事件を手掛けないまま異動してしまう人が増えました。ヒラ検事時代に事件を手がけたことがないから、副部長や部長として特捜部に戻っても指揮が取れない。
村串 例えば石川さんが副部長だった八五年に手がけた撚糸工連事件。撚糸業界と政治家の癒着を探るため、石川さんは国会の議事録を一人で黙々とめくっていましたね。そこで見つけた業界を利する発言を端緒に、賄賂を受け取っていた政治家二名を訴追しました。
石川 そうした発想は実際に事件を何度も手がけていないと出てきませんからね。
村串 熊崎勝彦さん(元東京地検特捜部長。現日本プロ野球コミッショナー)も、事件がやりたくて仕方がない検事でした。八三年の新薬スパイ事件(製薬会社社員と旧厚生省所管の研究所員が他社の新薬申請資料を盗み取った事件)は、熊崎さんが一件の窃盗事件を端緒に掘り起こし、計十四人の逮捕に発展しました。
石川 熊崎さんは特捜部長時代、旧大蔵省の接待汚職という、難しい事件も完遂してくれました。
村串 あの時は石川さんが上司に当たる検事正でした。捜査中に全国検察幹部の会議が開かれ、某幹部から「いつまでやっているんだ」と批難の声が出た。石川さんは「事件をやらせる、やらせないという発想自体がおかしい!」と声を荒げたそうですね。幹部らは石川さんの激しい口調に驚き、辞職覚悟の発言と受け止める幹部もいたと聞きました。
石川 検察は本来、幹部だろうがヒラだろうが、全員がプレイングマネージャーでないといけません。二〇一〇年に起きた大阪地検特捜部のFD改ざん事件は、プレイングマネージャー不在を示した象徴的事例でしょう。本来上司は「調書を俺にも読ませろ」とやらないといけなかった。検察の仕事は常に人権を侵害する可能性があるのだから、判子を押すだけの“良い上司”ではダメです。吉永祐介元検事総長(故人)は、総長になっても調書を隅々まで読み込んでいました。
村串 〇九年の政権交代直前に“小沢一郎総理”の芽を摘んだ陸山会事件の頃から世間に管積していた特捜批判が、FD改ざん事件で、一気に爆発した感がある。
石川 あれ以降、特捜検事が消極的になってしまった気がします。当然、猛省しなければいけませんが、身を低くして嵐が過ぎ去るのを待つのが信頼回復に繋がるとは思いません。警察や国税、証券取引等監視委員会等が告発した事件を仕上げるだけが検察の仕事ではない。積極的に独自で事件を掘り起してほしい。
村串 グローバル化社会に合わせて、検察という組織も変わっていきますか。
石川 そうかもしれません。今の若手検事には「検察に留まらず、広く活躍したい」という意識が強い人が多いように思います。キャリアアップの場として検察を利用するんですね。検事としてのスキルを身に付けると、早期に退職して弁護士になる若手が増えています。
村串 昔は検察内で問題を起こして「ヤメ検」になる人が多かったのですが……。
石川 今や「検察」や「特捜部」には昔ほどの人気はありません。
村串 一方、取材する側も変わってしまった。最近の新聞社には「危険な取材はするな。スクープは労多くして実りが少ない。発表記事だけ書いていればいい」というような雰囲気がある。
石川 以前は、記者の方々とは緊張関係もあったけど協力関係もありました。お互いに「不正を糺す」という志は同じでしたから。
村串 最初にお目にかかったころ、「この事件の着手、明日でしょう」なんて聞くと、「一二〇%ない」と断言され、騙されました。
石川 そんなこと、ありましたっけ?
村串 馬鹿な質問をすれば一蹴される緊張感があった。でも新鮮なネタをぶつければ身を乗り出してくる「事件屋検事」そのものでした。
★記者の夜回りも凄かった★
石川 僕はよく「情報持ってこないなら来るな」と言っていました。記者の方の、捜査権がなくとも様々な人と直に接触してネタを取ってくる力は本当に凄いものがある。実際、記者から端緒となる情報を聞くこともありました。各社の皆さんの夜回りも凄かった。
村串 元NHKの小俣一平氏は、検事の帰りを待って自宅前で朝まで寝ていたし、別の記者は熊崎さんの官舎前にテントを張って帰宅を待っていた(笑)。スリリングでハードな毎日でした。
石川 検事も記者も競って仕事をしていました。私は今の特捜検事に「一年に、一人一件は必ず事件をやれ」と言いたい。自分でゼロから事件をやるという気概を持ってほしい。特捜部は約四十人いるんだから、一年で四十の事件を立件できればすごいですよ。小さな事件でも、丹念に調べれば必ず次に繋がっていく。
村串 私は、今こそ特捜部は国民の生活に根付いた問題を手掛けるべきだと思います。政治家や高級官僚、経済界のトップを追うばかりが特捜部じゃない。例えば最近の個人情報流出問題に限らず、年金にまつわる問題はいつも全国民の関心事です。これまでも不祥事だらけだったのに、一度も捜査のメスが入っていない。また、東日本大震災の復興関係予算は約二十五兆円が計上されていますが、利権屋の暗躍をよく耳にします。
石川 先日も、東日本大震災後に作られた制度を利用を悪用し、五億円もの補助金を不正井受給していた発電会社を特捜部が摘発しましたね。
村串 他にも似たような事件が沢山あるでしょうから、『特捜部東北支部』を作って徹底的に捜査してもいいんじゃないかと思いますよ。
石川 「特捜部は国民と共にある」ですね。村串さんの言うように国民の関心が高く、国民に被害が及ぶ可能性がある事案に積極的に取り組んでもらいたいですね。
石川達紘 一九三九年四月、山口県生まれ。中央大学法学部を経て六五年に検事任官。東京地検特捜部副部長、同部長、同検事正などを歴任し、光進事件、ゼネコン汚職、大蔵接待汚職など、数々の大型事件を手がけた。名古屋高検検事長を務めた後、二○○一年に退官。現在は弁護士(第一東京弁護士会所属)。
村串栄一 一九四八年十二月、静岡県生まれ。明治大学から中日新聞社入社。司法記者クラブ、国税庁記者クラブ、JR記者クラブなどを担当し、中国・北京留学を経て社会部デスクなどを歴任。二〇一三年末に退職。著書に『検察秘録 誰も書けなかった事件の深層』「がんと明け暮れ 記者が綴る10年の記録』など。
**********
■こうしてみると、「姫」は金庫番の「国家老」が在宅起訴されたため、銭のかかるパーティからは足が遠のき、事件のことを知らない小学生を相手に笑顔を振りまいているうちに、政治資金不正使用問題が風化していくのではないか、と期待をしつつ、ひたすら時間の経過を待つつもりなのかもしれません。
また、東京地検特捜部に関する対談記事では、いかに現在の地検特捜部が牙を抜かれているかがよくわかる内容となっています。
最近、当会に対してマスコミ関係者からいろいろ問い合わせが増えてきました。いずれも、「いつ検察審査会に申立てをするのか」について関心をもつ記者の皆さんからのものです。
■本来は、ジャーナリズムに基づきマスコミ関係者がこの問題について、もっと積極的に取り組む姿勢を見せないと、ますます地検特捜部が弱体化してしまいます。しかし、この対談で話題に上ったように、最近のマスコミ記者は、プレスリリース(発表記事)を主体に記事を書くようになってしまっているようです。
やはり、市民団体による行動なくしては、この問題の真相解明は困難なようです。
【市民オンブズマン群馬事務局からの連絡】