■当会のブログで追及してきているように、大同特殊鋼は有害スラグを「工業製品だ!」「有価物だ!」と自分勝手に主張し、群馬県土を汚染するのも省みず土木資材と偽装して投棄していました。その有害スラグについて、「“有価物”」だとする大同の主張は、平成27年9月11日に、廃棄物の監督である群馬県廃棄物・リサイクル課によって否定され、廃棄物と認定されました。(末尾資料参)。この認定の判断の根拠として、群馬県は、平成14年から平成26年に至るまで年代別に丁寧に逆有償取引について解説し、有毒性と逆有償取引を決め手に廃棄物とする旨の説明をしています。
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↑2017年8月3日朝日新聞群馬版。↑
ところが、「大同スラグは産業廃棄物」とホームページに掲載しているにもかかわらず、肝心の廃棄物リサイクル課の中に、「スラグは“一概に廃棄物とは言えない”」を繰り返し主張する二枚舌幹部がいる?とする噂が群馬県中を駆け巡っています。
こうした監督官庁の二枚舌の方針は、大同スラグの出荷アジトだった“中央混合場”のスラグが撤去されたのに、他の場所ではアスファルト舗装で蓋をしたり、ソフトバンクソーラーやビック安中ソーラーなど民間事業において投棄されたスラグは撤去すら検討されない、という、とんでもない形で私たちに示されているのが実態です。まさに「場所ごとに忖度が行われる?」という異常事態となって、監督官庁の施策に表れているのです。
■そんな中、国土交通省が建設を進める八ツ場ダムの現場事務所跡にまつわるスラグ報道がありました。さっそく検証してみましょう。
**********2017年8月3日朝日新聞群馬版
土壌からフッ素、基準の10倍検出 八ツ場ダム現場事務所跡 /群馬県
国土交通省八ツ場ダム工事事務所は、ダムの移転代替地工事の時に建てられた現場事務所(長野原町川原湯)の跡地の土壌から、環境基準の約10倍のフッ素が見つかったと発表した。事務所を建てる際、大同特殊鋼渋川工場から出た有害物質を含む鉄鋼スラグ混合砕石が使われていたため、県が同社に土壌の分析をするよう指示していた。
ダム工事事務所によると、現場事務所があったのは2011〜14年度で敷地面積は約1千平方メートル。事務所が建てられる際、土壌の上に安定用としてスラグが使われていた。移転工事が終了し、事務所解体に伴ってスラグも処分され、今年春に同社が分析した。
その結果、7カ所のうち5カ所の表層で基準値を超えるフッ素が検出された。今後、表層などの土壌を撤去していくとしている。
国交省は、代替地に移転した住民への生活用水への影響はないとしている。
**********
↑報道でスラグが撤去されたとされる、佐藤建設工業現場事務所跡地。写真は八ッ場あしたの会ホームページより転記しました、ありがとうございます。奥にトンネルが見えます。隣接している民家と比べるとこの場所は広く工事現場事務所のほか資材置場としてこの場所が使われていたことが容易に想像できます。スラグが一旦この場所にストックされ工事現場へ投棄されていたことでしょう。
八ッ場あしたの会 @yambatomorrowはこちらです。↓
https://t.co/ukUFV9EW5z↑
↑場所はこちらです。↑
◆国交省八ッ場ダム工事事務所
平成29年3月15日 大同特殊鋼(株)が群馬県の指示により、鉄鋼スラグ混合砕石が既に撤去された土地で土壌分析調査を行うこととなりましたのでお知らせします。
http://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000668845.pdf
■今回も報道のポイントを整理してみましょう。
ポイント①
有害スラグが使用されていた場所が、八ッ場ダム建設関連の現場事務所跡であり、現場事務所解体時に建設会社により自主的に撤去されたものであること。
ポイント②
跡地の土壌から、環境基準の約10倍のフッ素が見つかったこと。
ポイント③
今後、表層などの土壌を撤去していくと報道されていること。
●ポイント①
有害スラグが使用されていた場所が、八ッ場ダム建設関連の現場事務所跡であり、現場事務所解体時に建設会社により自主的に撤去されたものであること。
国土交通省は「平成23年度から平成26年度まで工事の受注者が現場事務所として使用していた場所(1箇所)(八ッ場ダム工事事務所管理地)で、仮設材料として鉄鋼スラグ混合砕石が使われていました。」と説明しています。http://www.ktr.mlit.go.jp/yanba/yanba00068.html
工事現場事務所の土地が広ければ、そこに建設資材を置くのは建設工事の常識です。有害スラグも一旦はこの場所に仮置きされ建設現場に使用されたことが容易に想像されます。国土交通省の発表は、次の事実を隠ぺいしている疑惑があります・
・現場事務所の仮設材として撤去命令を出さなくとも、建設会社が自主的に撤去したことにできること
・実際は資材置場も兼ねていたのに現場事務所の仮設材とすることにより、建設現場自体にはスラグは使用されていないことを装う事。
現場事務所の撤去費用がどのように予算に組み込まれていたのか?
このことについて発表されていないので分かりませんが、スラグを自主的に撤去した建設会社は、当初予算と比べ莫大なスラグ廃棄物処分費をどのように負担したのか、疑問が湧くところです。
まさか国土交通省が群馬県の撤去措置命令を待たずに撤去の費用を出していたのでは?
となれば、国土交通省の予算上の問題が起きてくるのではないでしょうか?
また、この現場事務所は建設資材置場としても利用されていたことが想像できますので、建設工事現場自体のスラグ使用可能性について、実際に現場を検証したのでしょうか?
●ポイント②
跡地の土壌から、環境基準の約10倍のフッ素が見つかったこと。
報道に先立ち国土交通省関東地方整備局八ッ場ダム工事事務所は、スラグ汚染の情報を公開しています。
平成29年 07月28日大同特殊鋼(株)が群馬県の指示により、鉄鋼スラグ混合砕石が既に撤去された土地で土壌分析調査を行った結果の報告を受けましたので、お知らせします。
http://www.ktr.mlit.go.jp/yanba/yanba00107.html
※PDF ⇒ 2017n08ybypdf.pdf
まず注目すべきなのは、この土壌調査結果は、大同特殊鋼が作成していることです。
なぜ、有害スラグを「工業製品だ」「有価物だ」と悪びれもせずに主張する大同特殊鋼自身に調査をさせるのでしょうか?
群馬県が調査をさせているのでしょうが、スラグを廃棄物と認定した以上、群馬県自身が調査をして、かかった費用を大同特殊鋼に負担させるべきではないでしょうか?
土壌汚染調査などは、サンプルの取り方で調査結果は変わってきます。群馬県の刑事告発について目出度く前橋地検から不起訴処分を勝ち得た今、勢いの波に乗る大同特殊鋼自身によるお手盛り調査では、その結果について疑念が払しょくしきれません。
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↑原因者の大同特殊鋼が作成した資料を引用しただけの“土壌調査結果”。国交省は、このようなデータを信頼に足るものだと考えているらしい。↑
スラグ撤去後の土壌調査結果をみると、フッ素及びその化合物の溶出量が最大7.7mg/L検出されています。土壌環境基準は0.8mg/Lです、この状況をさして朝日新聞は「跡地の土壌から、環境基準の約10倍のフッ素が見つかった」と報道しています。驚くべき汚染の結果です。
基準値をオーバーしたのは表層のみですが、厚さが明記されていません。ビックカメラの安中のメガソーラー施設における土壌調査を請け負ったプロファ設計の報告書では地表部分として厚さ5㎝とあることから、もし大同特殊鋼がプロファ設計に土壌調査を委託したとすれば、厚さ5㎝かもしれません。
注目されるのは、試料採取場所は不詳ですがいずれも地表から深さ3mまでの土壌に含まれる有害物質の溶出量が非常に高いことです。No.5に至っては、GL、つまり地表から3m下がった地点までの試料を一様に混合して溶出試験にかけたところ0.56mg/Lもの数値を叩き出していることが確認できます。0.56と言えば基準値の70%にあたります。スラグがこの場所に何年間敷設されていたのかは公表されていませんが、雨水がスラグに降り注ぎ、スラグから浸出した有毒物質が土壌を地下深く3mの場所まで汚染しつつある状況が鮮明に見て取れます。
このほかにもNo.2やNo.4、No.6では、深い場所までの土壌試験結果のほうが、浅い場所までよりも数値が高くなるという逆転現象が見られます。これは有害物質が地下水とともに土壌の深い場所まで蓄積されていることを示しています。スラグを撤去せずに何年も放置し、雨水に晒され続ければ基準値を超えて土壌汚染が進行し、止めどなく深い場所にまで汚染が拡大していくことが示されたのです。にもかかわらず、国交省は「住民への生活用水への影響はない」などと根拠もなく異様に安全イメージを強調しています。
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↑“鉄鋼スラグに関する連絡会議”と称する任意組織の法的根拠のない「対応方針」。↑
●ポイント③
今後、表層などの土壌を撤去していくと報道されていること。
朝日新聞の記者が丁寧に取材をし、「表層などの土壌を撤去していく」と報道しています。しかし、大同特殊鋼が作成した土壌調査結果資料は、どうも信用できません。額面通り受け止めれば「表層」土壌だけを撤去すればよいのかもしれませんが、汚染された土壌は雨水により既に深層まで達していることがうかがえます。すでに地下水汚染を引き起こしていることは明らかなので、この場所については徹底的に適切な対策が行われることが必要です。
国土交通省は汚染された土壌について、「今後『鉄鋼スラグに関する連絡会議』の対応方針に基づき大同特殊鋼が対策を行うこととなります」などと7月29日付で発表しています。法律や権限に詳しい人なら、思わず噴き出してしまうでしょう。それほど笑える方針を示しています。
なぜなら、群馬県内の廃棄物の監督官庁は群馬県森林環境部であるからです。「鉄鋼スラグに関する連絡会議」は工事実施主体が寄り集まった烏合の衆で、“廃棄物”や“廃棄物が汚染した土壌”について何の権限も責任も有していません。
正しい行政の在り方とすれば、“廃棄物に由来する汚染土壌”について、群馬県森林環境部が、この現場に有害スラグを不法投棄した佐藤建設工業に改善命令や措置命令を出し、または命令が実効性を欠くときに、排出者に措置命令を出すべきなのではないでしょうか? 当会が「歪んでしまった行政」と表現するのは、こうした実態をなんども目の当たりにしてきたためです。
■最後に指摘しておきたいことがあります。今回の問題となった土地は、八ッ場ダム工事事務所管理地なのだそうです。
「表層などの土壌を撤去していく」と報道されたことについては、当会の抱いている疑念は「国土交通省の管理地だから、自分の土地はサッサと有害スラグを撤去し、直下の土壌まで汚染有害物質を取り除く」ということであり、「この撤去方針がほかの有害スラグ不法投棄現場にも適用されるわけではない」ということです。
国交省の二枚舌行政を浮き彫りにするために、この国交省の管理地での撤去方針が、他の有害スラグ不法投棄現場とあまりにも違うことを検証してみたいと思います。
↑新川原湯駅の北側。有害スラグがザックザク見ることができる。この道は村道に移管される道なのだろうか?国土交通省の管理地ではないから、有害スラグの撤去はおろか直下の土壌の検査すら実施してもらえないかわいそうな土地だ。↑
↑新川原湯駅を見下ろす高台には、佐藤建設工業のカラーコーンが置かれていたが、その周りにも猛毒スラグがザックザク。しかも雨水で流されてしまっている、猛毒スラグはどこにいくのか!時が経てば汚染が拡大してしまう!この道も国土交通省の管理地ではないらしい。有害スラグが撤去されるどころか土壌汚染など気にも留められていない。↑
↑現在、群馬県農政部との裁判にまで発展した萩生川西地区の農道に敷砂利として敷設された有害スラグ。ところが群馬県農政部は「ステージコンストラクションによるものだ」として裁判で当初主張し続けた。写真は敷設された砕石を少しひっかき、アルカリと反応する試薬を噴霧しているところを示している。すると・・・↑
↑瞬くうちに真っ赤に反応した敷砂利。有害スラグ100%の状態に間違いない。ここは国土交通省の管理地ではないので、群馬県農政部は、有害スラグを撤去するどころか、アスファルトで蓋をしてしまった。↑
↑アスファルトで蓋をすると言っても、舗装の脇は土を薄く擦り付けてあるだけ。なので、ここから容易に雨水が浸み込んでしまう。八ッ場ダム工事事務所管理地と同じように時が経てば、直下の土壌まで汚染されるおそれが十分ある。群馬県廃棄物・リサイクル課の幹部様、「有害スラグは一概に廃棄物とは言えない」などといつまでも“駄々を”こねていないで、八ッ場ダム工事事務所管理地と差別することなく、萩生川西地区のスラグも佐藤建設工業に撤去させたうえ、直下の土壌汚染も分析調査するよう命令しなければならないはず。一刻も早くしかるべき措置を!↑
↑安中市に建設されたビックカメラのメガソーラー。有害スラグが不法投棄されている。↑
↑スラグが投棄されている下層土壌試料の分析調査結果。スラグ砕石が基準超過していた地点の直下の土壌を分析すると、No.6地点を除き、全ての地点で基準値を超過していた。なぜ国土交通省の管理地の汚染土壌は撤去するのに、ビックカメラのソーラー施設の汚染土壌に対して撤去命令が出せないのか?安中は土壌から地下水汚染に発展しても、安中公害地なので有害物質の汚染に慣れ切っているから放置されるのか?長野原町と安中市との間で何か差別される理由があるのだろうか?↑
■有害スラグは、廃棄物の監督官庁である環境森林部が廃棄物と認定しました。不法・不適正に投棄された廃棄物は、現状の回復が基本原則です。よって、すみやかに撤去するべきです。撤去の後は、スラグの直下にある土壌が汚染していないか調査し、汚染が認められれば、汚染土壌まで撤去するのが、適正な措置の在り方です。
「一概に廃棄物とは言えない」などと子どもじみた“駄々をこねたり”、地下水が汚染されていなければ何もしない、などと勉強不足を露呈したりして、歪んだ行政を体現しようとせず、県民の安全・安心な生活環境保全を最優先に施策を打ち出してもらいたいものです。
将来の地下水汚染につながる廃棄物由来の汚染土壌は速やかに撤去しなければなりません。今回の八ッ場ダム工事事務所管理地の対応と同様に、スラグや汚染土壌は速やかに撤去しなければならないのです。
【市民オンブズマン群馬・大同有毒スラグ不法投棄特別調査チーム・この項つづく】
※参考資料:大同特殊鋼(株)渋川工場から排出された鉄鋼スラグに関する廃棄物処理法に基づく調査結果について
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平成27年9月11日廃棄物の監督官庁である群馬県廃棄物・リサイクル課は、有害スラグは“有価物”だとする大同の主張を全面否定し、廃棄物と認定しました。年代別に図を公表し丁寧に逆有償取引を説明しています。平成14年以降、有毒性や逆有償取引を決め手として、廃棄物に認定しています。「一概に廃棄物とは言えない」などの戯言は、廃棄物認定を取り消してからお話し願いたいものです。↓
http://www.gunma-sanpai.jp/gp26/003.htm
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↑2017年8月3日朝日新聞群馬版。↑
ところが、「大同スラグは産業廃棄物」とホームページに掲載しているにもかかわらず、肝心の廃棄物リサイクル課の中に、「スラグは“一概に廃棄物とは言えない”」を繰り返し主張する二枚舌幹部がいる?とする噂が群馬県中を駆け巡っています。
こうした監督官庁の二枚舌の方針は、大同スラグの出荷アジトだった“中央混合場”のスラグが撤去されたのに、他の場所ではアスファルト舗装で蓋をしたり、ソフトバンクソーラーやビック安中ソーラーなど民間事業において投棄されたスラグは撤去すら検討されない、という、とんでもない形で私たちに示されているのが実態です。まさに「場所ごとに忖度が行われる?」という異常事態となって、監督官庁の施策に表れているのです。
■そんな中、国土交通省が建設を進める八ツ場ダムの現場事務所跡にまつわるスラグ報道がありました。さっそく検証してみましょう。
**********2017年8月3日朝日新聞群馬版
土壌からフッ素、基準の10倍検出 八ツ場ダム現場事務所跡 /群馬県
国土交通省八ツ場ダム工事事務所は、ダムの移転代替地工事の時に建てられた現場事務所(長野原町川原湯)の跡地の土壌から、環境基準の約10倍のフッ素が見つかったと発表した。事務所を建てる際、大同特殊鋼渋川工場から出た有害物質を含む鉄鋼スラグ混合砕石が使われていたため、県が同社に土壌の分析をするよう指示していた。
ダム工事事務所によると、現場事務所があったのは2011〜14年度で敷地面積は約1千平方メートル。事務所が建てられる際、土壌の上に安定用としてスラグが使われていた。移転工事が終了し、事務所解体に伴ってスラグも処分され、今年春に同社が分析した。
その結果、7カ所のうち5カ所の表層で基準値を超えるフッ素が検出された。今後、表層などの土壌を撤去していくとしている。
国交省は、代替地に移転した住民への生活用水への影響はないとしている。
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↑報道でスラグが撤去されたとされる、佐藤建設工業現場事務所跡地。写真は八ッ場あしたの会ホームページより転記しました、ありがとうございます。奥にトンネルが見えます。隣接している民家と比べるとこの場所は広く工事現場事務所のほか資材置場としてこの場所が使われていたことが容易に想像できます。スラグが一旦この場所にストックされ工事現場へ投棄されていたことでしょう。
八ッ場あしたの会 @yambatomorrowはこちらです。↓
https://t.co/ukUFV9EW5z↑
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↑場所はこちらです。↑
◆国交省八ッ場ダム工事事務所
平成29年3月15日 大同特殊鋼(株)が群馬県の指示により、鉄鋼スラグ混合砕石が既に撤去された土地で土壌分析調査を行うこととなりましたのでお知らせします。
http://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000668845.pdf
■今回も報道のポイントを整理してみましょう。
ポイント①
有害スラグが使用されていた場所が、八ッ場ダム建設関連の現場事務所跡であり、現場事務所解体時に建設会社により自主的に撤去されたものであること。
ポイント②
跡地の土壌から、環境基準の約10倍のフッ素が見つかったこと。
ポイント③
今後、表層などの土壌を撤去していくと報道されていること。
●ポイント①
有害スラグが使用されていた場所が、八ッ場ダム建設関連の現場事務所跡であり、現場事務所解体時に建設会社により自主的に撤去されたものであること。
国土交通省は「平成23年度から平成26年度まで工事の受注者が現場事務所として使用していた場所(1箇所)(八ッ場ダム工事事務所管理地)で、仮設材料として鉄鋼スラグ混合砕石が使われていました。」と説明しています。http://www.ktr.mlit.go.jp/yanba/yanba00068.html
工事現場事務所の土地が広ければ、そこに建設資材を置くのは建設工事の常識です。有害スラグも一旦はこの場所に仮置きされ建設現場に使用されたことが容易に想像されます。国土交通省の発表は、次の事実を隠ぺいしている疑惑があります・
・現場事務所の仮設材として撤去命令を出さなくとも、建設会社が自主的に撤去したことにできること
・実際は資材置場も兼ねていたのに現場事務所の仮設材とすることにより、建設現場自体にはスラグは使用されていないことを装う事。
現場事務所の撤去費用がどのように予算に組み込まれていたのか?
このことについて発表されていないので分かりませんが、スラグを自主的に撤去した建設会社は、当初予算と比べ莫大なスラグ廃棄物処分費をどのように負担したのか、疑問が湧くところです。
まさか国土交通省が群馬県の撤去措置命令を待たずに撤去の費用を出していたのでは?
となれば、国土交通省の予算上の問題が起きてくるのではないでしょうか?
また、この現場事務所は建設資材置場としても利用されていたことが想像できますので、建設工事現場自体のスラグ使用可能性について、実際に現場を検証したのでしょうか?
●ポイント②
跡地の土壌から、環境基準の約10倍のフッ素が見つかったこと。
報道に先立ち国土交通省関東地方整備局八ッ場ダム工事事務所は、スラグ汚染の情報を公開しています。
平成29年 07月28日大同特殊鋼(株)が群馬県の指示により、鉄鋼スラグ混合砕石が既に撤去された土地で土壌分析調査を行った結果の報告を受けましたので、お知らせします。
http://www.ktr.mlit.go.jp/yanba/yanba00107.html
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まず注目すべきなのは、この土壌調査結果は、大同特殊鋼が作成していることです。
なぜ、有害スラグを「工業製品だ」「有価物だ」と悪びれもせずに主張する大同特殊鋼自身に調査をさせるのでしょうか?
群馬県が調査をさせているのでしょうが、スラグを廃棄物と認定した以上、群馬県自身が調査をして、かかった費用を大同特殊鋼に負担させるべきではないでしょうか?
土壌汚染調査などは、サンプルの取り方で調査結果は変わってきます。群馬県の刑事告発について目出度く前橋地検から不起訴処分を勝ち得た今、勢いの波に乗る大同特殊鋼自身によるお手盛り調査では、その結果について疑念が払しょくしきれません。
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↑原因者の大同特殊鋼が作成した資料を引用しただけの“土壌調査結果”。国交省は、このようなデータを信頼に足るものだと考えているらしい。↑
スラグ撤去後の土壌調査結果をみると、フッ素及びその化合物の溶出量が最大7.7mg/L検出されています。土壌環境基準は0.8mg/Lです、この状況をさして朝日新聞は「跡地の土壌から、環境基準の約10倍のフッ素が見つかった」と報道しています。驚くべき汚染の結果です。
基準値をオーバーしたのは表層のみですが、厚さが明記されていません。ビックカメラの安中のメガソーラー施設における土壌調査を請け負ったプロファ設計の報告書では地表部分として厚さ5㎝とあることから、もし大同特殊鋼がプロファ設計に土壌調査を委託したとすれば、厚さ5㎝かもしれません。
注目されるのは、試料採取場所は不詳ですがいずれも地表から深さ3mまでの土壌に含まれる有害物質の溶出量が非常に高いことです。No.5に至っては、GL、つまり地表から3m下がった地点までの試料を一様に混合して溶出試験にかけたところ0.56mg/Lもの数値を叩き出していることが確認できます。0.56と言えば基準値の70%にあたります。スラグがこの場所に何年間敷設されていたのかは公表されていませんが、雨水がスラグに降り注ぎ、スラグから浸出した有毒物質が土壌を地下深く3mの場所まで汚染しつつある状況が鮮明に見て取れます。
このほかにもNo.2やNo.4、No.6では、深い場所までの土壌試験結果のほうが、浅い場所までよりも数値が高くなるという逆転現象が見られます。これは有害物質が地下水とともに土壌の深い場所まで蓄積されていることを示しています。スラグを撤去せずに何年も放置し、雨水に晒され続ければ基準値を超えて土壌汚染が進行し、止めどなく深い場所にまで汚染が拡大していくことが示されたのです。にもかかわらず、国交省は「住民への生活用水への影響はない」などと根拠もなく異様に安全イメージを強調しています。
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↑“鉄鋼スラグに関する連絡会議”と称する任意組織の法的根拠のない「対応方針」。↑
●ポイント③
今後、表層などの土壌を撤去していくと報道されていること。
朝日新聞の記者が丁寧に取材をし、「表層などの土壌を撤去していく」と報道しています。しかし、大同特殊鋼が作成した土壌調査結果資料は、どうも信用できません。額面通り受け止めれば「表層」土壌だけを撤去すればよいのかもしれませんが、汚染された土壌は雨水により既に深層まで達していることがうかがえます。すでに地下水汚染を引き起こしていることは明らかなので、この場所については徹底的に適切な対策が行われることが必要です。
国土交通省は汚染された土壌について、「今後『鉄鋼スラグに関する連絡会議』の対応方針に基づき大同特殊鋼が対策を行うこととなります」などと7月29日付で発表しています。法律や権限に詳しい人なら、思わず噴き出してしまうでしょう。それほど笑える方針を示しています。
なぜなら、群馬県内の廃棄物の監督官庁は群馬県森林環境部であるからです。「鉄鋼スラグに関する連絡会議」は工事実施主体が寄り集まった烏合の衆で、“廃棄物”や“廃棄物が汚染した土壌”について何の権限も責任も有していません。
正しい行政の在り方とすれば、“廃棄物に由来する汚染土壌”について、群馬県森林環境部が、この現場に有害スラグを不法投棄した佐藤建設工業に改善命令や措置命令を出し、または命令が実効性を欠くときに、排出者に措置命令を出すべきなのではないでしょうか? 当会が「歪んでしまった行政」と表現するのは、こうした実態をなんども目の当たりにしてきたためです。
■最後に指摘しておきたいことがあります。今回の問題となった土地は、八ッ場ダム工事事務所管理地なのだそうです。
「表層などの土壌を撤去していく」と報道されたことについては、当会の抱いている疑念は「国土交通省の管理地だから、自分の土地はサッサと有害スラグを撤去し、直下の土壌まで汚染有害物質を取り除く」ということであり、「この撤去方針がほかの有害スラグ不法投棄現場にも適用されるわけではない」ということです。
国交省の二枚舌行政を浮き彫りにするために、この国交省の管理地での撤去方針が、他の有害スラグ不法投棄現場とあまりにも違うことを検証してみたいと思います。
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↑新川原湯駅の北側。有害スラグがザックザク見ることができる。この道は村道に移管される道なのだろうか?国土交通省の管理地ではないから、有害スラグの撤去はおろか直下の土壌の検査すら実施してもらえないかわいそうな土地だ。↑
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↑新川原湯駅を見下ろす高台には、佐藤建設工業のカラーコーンが置かれていたが、その周りにも猛毒スラグがザックザク。しかも雨水で流されてしまっている、猛毒スラグはどこにいくのか!時が経てば汚染が拡大してしまう!この道も国土交通省の管理地ではないらしい。有害スラグが撤去されるどころか土壌汚染など気にも留められていない。↑
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↑現在、群馬県農政部との裁判にまで発展した萩生川西地区の農道に敷砂利として敷設された有害スラグ。ところが群馬県農政部は「ステージコンストラクションによるものだ」として裁判で当初主張し続けた。写真は敷設された砕石を少しひっかき、アルカリと反応する試薬を噴霧しているところを示している。すると・・・↑
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↑瞬くうちに真っ赤に反応した敷砂利。有害スラグ100%の状態に間違いない。ここは国土交通省の管理地ではないので、群馬県農政部は、有害スラグを撤去するどころか、アスファルトで蓋をしてしまった。↑
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↑アスファルトで蓋をすると言っても、舗装の脇は土を薄く擦り付けてあるだけ。なので、ここから容易に雨水が浸み込んでしまう。八ッ場ダム工事事務所管理地と同じように時が経てば、直下の土壌まで汚染されるおそれが十分ある。群馬県廃棄物・リサイクル課の幹部様、「有害スラグは一概に廃棄物とは言えない」などといつまでも“駄々を”こねていないで、八ッ場ダム工事事務所管理地と差別することなく、萩生川西地区のスラグも佐藤建設工業に撤去させたうえ、直下の土壌汚染も分析調査するよう命令しなければならないはず。一刻も早くしかるべき措置を!↑
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↑安中市に建設されたビックカメラのメガソーラー。有害スラグが不法投棄されている。↑
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↑スラグが投棄されている下層土壌試料の分析調査結果。スラグ砕石が基準超過していた地点の直下の土壌を分析すると、No.6地点を除き、全ての地点で基準値を超過していた。なぜ国土交通省の管理地の汚染土壌は撤去するのに、ビックカメラのソーラー施設の汚染土壌に対して撤去命令が出せないのか?安中は土壌から地下水汚染に発展しても、安中公害地なので有害物質の汚染に慣れ切っているから放置されるのか?長野原町と安中市との間で何か差別される理由があるのだろうか?↑
■有害スラグは、廃棄物の監督官庁である環境森林部が廃棄物と認定しました。不法・不適正に投棄された廃棄物は、現状の回復が基本原則です。よって、すみやかに撤去するべきです。撤去の後は、スラグの直下にある土壌が汚染していないか調査し、汚染が認められれば、汚染土壌まで撤去するのが、適正な措置の在り方です。
「一概に廃棄物とは言えない」などと子どもじみた“駄々をこねたり”、地下水が汚染されていなければ何もしない、などと勉強不足を露呈したりして、歪んだ行政を体現しようとせず、県民の安全・安心な生活環境保全を最優先に施策を打ち出してもらいたいものです。
将来の地下水汚染につながる廃棄物由来の汚染土壌は速やかに撤去しなければなりません。今回の八ッ場ダム工事事務所管理地の対応と同様に、スラグや汚染土壌は速やかに撤去しなければならないのです。
【市民オンブズマン群馬・大同有毒スラグ不法投棄特別調査チーム・この項つづく】
※参考資料:大同特殊鋼(株)渋川工場から排出された鉄鋼スラグに関する廃棄物処理法に基づく調査結果について
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平成27年9月11日廃棄物の監督官庁である群馬県廃棄物・リサイクル課は、有害スラグは“有価物”だとする大同の主張を全面否定し、廃棄物と認定しました。年代別に図を公表し丁寧に逆有償取引を説明しています。平成14年以降、有毒性や逆有償取引を決め手として、廃棄物に認定しています。「一概に廃棄物とは言えない」などの戯言は、廃棄物認定を取り消してからお話し願いたいものです。↓
http://www.gunma-sanpai.jp/gp26/003.htm
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