市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

【高専過剰不開示体質是正訴訟・報告】第一次訴訟98%敗訴・第二次訴訟全面敗訴のダブル不当判決に仰天!

2020-11-25 23:56:00 | 群馬高専アカハラ問題
■高専組織の情報隠蔽体質の是正のため、当会では2019年10月に第一次・第二次の二回にわたり高専機構を東京地裁に提訴し、「高専過剰不開示体質是正訴訟」プロジェクトとして法廷の闘いを行ってまいりました。新型コロナ禍による裁判所の機能停止や、被告高専機構とその訴訟代理人である銀座の弁護士による幾度もの卑怯な法廷戦術といった苦境に見舞われつつも、提訴から1年をかけてようやく両訴訟は結審し、同日同時刻に「ダブル判決」が設定されました。

 判決言渡当日となった11月24日、その聴取および二件の判決正本受領のため、当会担当者が東京地裁へと向かいました。

 ところが待っていたのは、第一次訴訟について原告当会のほぼ全面敗訴、第二次訴訟に至っては訴訟費用まで含め全面敗訴という、想像を絶する「ダブル不当判決」でした。



11月24日(火)午後1時15分、7階と4階の法廷でほぼ同時に不当判決が言い渡された東京地方・高等裁判所合同ビル。手前左側は法務省赤レンガビル。



■この高専過剰不開示体質是正訴訟の流れについては以下の記事をご覧ください。

【第一次訴訟の流れ】
○2019年10月19日:高専組織の情報隠蔽体質是正は成るか?オンブズが東京地裁に新たなる提訴!(その1)
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3055.html
○2019年10月19日:高専組織の情報隠蔽体質是正は成るか?オンブズが東京地裁に新たなる提訴!(その2)
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3056.html
○2019年12月30日:【高専過剰不開示体質是正訴訟・報告】第一次提訴に対する高専機構からの答弁書と第一回口頭弁論の様子
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3101.html
○2020年3月5日:【高専過剰不開示体質是正訴訟・報告】第一次訴訟での被告・原告の準備書面(1)と第二回口頭弁論の様子
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3129.html
○2020年4月7日:【お知らせ】新型コロナ緊急事態宣言のため高専過剰不開示体質是正訴訟の審理が一時中断
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3144.html
○2020年4月12日:【高専過剰不開示体質是正訴訟・報告】銀座弁護士の本気?第一次訴訟で被告高専機構が準備書面(2)を提出
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3148.html
○2020年6月3日:【高専過剰不開示体質是正訴訟・報告】コロナ中断の第一次訴訟に再開通知…第3回口頭弁論再日程は7月7日
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3170.html
○2020年7月9日:【高専過剰不開示体質是正訴訟・報告】七夕の第一次訴訟第3回弁論報告&第二次訴訟の再開通知到来!
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3180.html
○2020年8月16日:【高専過剰不開示体質是正訴訟・報告】第一次訴訟で当会が原告準備書面(2)提出…機構は準備書面無し!?
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3192.html
○2020年8月21日:【高専過剰不開示体質是正訴訟・報告】酷暑の中で行われた8.20ダブル口頭弁論の様子
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3194.html

【第二次訴訟の流れ】
○2019年10月20日:高専組織の情報隠蔽体質是正は成るか?オンブズが東京地裁に新たなる提訴!(その3)
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3057.html
○2020年3月5日:【高専過剰不開示体質是正訴訟・報告】第二次提訴に対する高専機構からの答弁書と第一回口頭弁論の様子
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3128.html
○2020年4月7日:【お知らせ】新型コロナ緊急事態宣言のため高専過剰不開示体質是正訴訟の審理が一時中断
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3144.html
○2020年4月13日:【高専過剰不開示体質是正訴訟・報告】緊急事態宣言に揺れる東京で原告当会が第二次訴訟準備書面(1)提出!
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3149.html
○2020年7月9日:【高専過剰不開示体質是正訴訟・報告】七夕の第一次訴訟第3回弁論報告&第二次訴訟の再開通知到来!
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3180.html
○2020年8月14日:【高専過剰不開示体質是正訴訟・報告】コロナ凍結の第二次訴訟再開目前に届いた被告高専機構の準備書面(2)
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3190.html
○2020年8月21日:【高専過剰不開示体質是正訴訟・報告】酷暑の中で行われた8.20ダブル口頭弁論の様子
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3194.html
○2020年10月28日:【高専過剰不開示体質是正訴訟・報告】被告が敗勢悟り「訴訟オジャン作戦」発動!? 第2次訴訟の急展開な行方
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3231.html

■11月24日(火)、当会出廷者は高崎発の新幹線に乗り、11時ちょうどに東京駅に到着しました。この日は、永田町にある某団体を訪問する用事があったため、そちらを先に済ませることにしました。永田町で面会協議を終えた後、有楽町線に乗り、桜田門駅で降りました。地表に出ると、法務省の赤レンガ庁舎の奥に、目指す裁判所合同庁舎ビルが見えました。

 奇しくも3年前の同じ日は、群馬高専J科アカハラ情報不開示取消訴訟に関する地裁判決が言い渡された日でした。原告の3分の1程度部分勝訴と、かなり行政寄りなものでしたが、一応は最後の良識が作用したのか、原告の言い分の一部も辛うじて認めたものでした。被告高専機構はこれを不服として控訴し、結果的に西尾逃亡のための時間稼ぎに成功した形になったのでした。
○2017年11月24日:【速報】アカハラと寮生死亡事件に揺れる群馬高専…アカハラ情報不開示訴訟で東京地裁が原告一部勝訴判決!
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2476.html

 裁判所の構内に入ると、大勢の職員が食事のためゾロゾロと庁舎玄関から出てきました。ちょうど昼休み時間になった様子でした。その様子を横目に見ながら、いつもどおり入口の消毒用アルコールで両手を殺菌し、手荷物検査と金属探知ゲートを通り、裁判所の1階ホールに入りました。

 初めに、正面の受付の左側にある法廷表の検索コーナーに行き、ダブル訴訟判決の法廷番号と時刻を確認しました。タッチパネルの画面を見ながら、第一次訴訟(事件番号:令和元年(行ウ)第515号)担当の「民事第2部」と第2次訴訟(事件番号:令和元年(行ウ)第549号)担当の「民事第51部」で検索をしたところ、前者では12件、後者では4件が該当し、その中で当会の関わる事件2つも予定どおり判決言渡されることが確認できました。

■開廷までにまだ1時間ほど時間があるため、地下にある食堂で腹ごしらえをしてから、第一次訴訟の判決言渡しが行われる7階の703号法廷に向かいました。法廷前の廊下に貼りだされている法廷表を見ると、13時15分から4件の行政事件の判決言渡しが行われることがわかりました。当会の第515号事件は4件の一番上に記載されていました。しばらく待合室で時間を過ごしていましたが、12時45分頃になり、第二次訴訟の判決言渡しが行われる4階の419号法廷の様子も見に行きました。こちらも、廊下に貼りだされている法廷表に当会の事件が明記してありました。

 再び7階に戻ると、控室は、スーツ姿の男女らで長椅子が埋められていました。廊下にも大勢の人が集まっていました。同時に4件の行政事件の判決言渡しがあるためか、こうして大勢が判決言渡を聞こうとしていることに驚きました。法廷表を指さして話しているグループの様子で、どうやら表の3件目に記載のあった年金事件に関する関係者が多いことがうかがえました。

■13時5分過ぎ、傍聴者入口のドアが内側から開かれたので、最初に入りました。正面中央にある机の上に出頭カードが並べてあり、その一番左側に当会の闘ってきた第一次訴訟のカードがあったので、原告欄に市民オンブズマン群馬と印刷されてある下に氏名を大きく書きました。

 男性書記官が「どうぞお入りください」と促したので、さっそく法廷内の原告席に着座しました。その後、開廷5分前になると、さきほど見掛けたスーツ姿の集団がぞろぞろ入ってきました。書記官が「法廷内に入って判決をお聞きになる方はここに署名してください」と出頭カードを示して促しましたが、結局当会出廷者以外は誰もカードに署名した人は現れませんでした。傍聴者の数を数えるとちょうど20名でした。

 定刻の13時15分きっかりに、法廷の右側から通路を歩いてくる足音が聞こえ、ドアが開かれて2名の裁判官が現れました。マスクで顔は隠れていましたが、それでも本件を担当してきた森裁判長の姿でないことはわかりました。どうやら代読のようです。

■男性書記官が事件番号「令和元年(行ウ)第515号」と事件番号を読み上げると、裁判官が紙を広げ読み始めました。

 「それでは判決の言渡しを行います。主文1:被告が平成31年4月16日付けで原告に対してした法人文書開示決定のうち、別紙1記載1の部分について、項目名および整理ナンバーに係る情報を不開示とした部分を取り消す。 2:原告のその余の請求を棄却する。 3:訴訟費用は、これを50分し、その1を被告の負担とし、その余を原告の負担とする」

 主文が早口で読み上げられたため、にわかに内容を咀嚼できませんでした。いつもの「原告の訴えを棄却する」という判決主文ではなかったため、完全敗訴ではないことが分かりました。しかし、訴訟費用の負担割合について、被告側がわずか50分の1であることから、これは相当に厳しい判決結果らしいと直感しました。

■そして、裁判官に一礼をしてから、法廷を後にしました。傍聴人出口から廊下に出る際に、書記官が次の事件番号を読み上げる声が聞こえました。廊下に出ていると、中から数人のスーツ姿の傍聴人が出てくるのが見えました。その中に、マスクをしてはいましたが、確かに藍澤弁護士らしき姿もありました。せっかく来たのであれば、法廷内の被告席に着座すればよいのにと思いましたが、出頭カードにさえ署名していませんでした。

 もっとも、判決言渡しに出頭する義務はなく、あとで裁判所から判決文は郵送されてきます。それでも一刻も早く判決内容を知るためには、当日に傍聴する必要があります。高専機構側の訴訟代理人としては、第一次訴訟の判決結果について、やはりどのような判断を裁判所が下すのか、関心があったようです。

 また、第一次訴訟の判決言渡しが終わった後、傍聴人席から弁護士以外にも廊下に出てきた者が数名いたことから、機構本部からも判決内容を聞くために派遣されてきた職員がいたようです。

■筆者は、さっそく判決正本を受領するため、第一次訴訟を担当する民事第2部の窓口を訪れました。まだ、判決が言い渡されてから5分も経過しておらず、被告の高専機構側も判決文を取りに来ている風情もないので、2、3分、廊下に面した壁に並べてあるパイプ椅子で腰掛けて様子を見ていましたが、誰も来る気配はありませんでした。

 窓口に行き、「さきほど判決のあった第515号事件の判決正本を受け取りにきました」とビニールシート越しに告げると、中からファイルを手にした職員が出てきました。職員はファイルを開き、「原告(代表)の小川さんご本人ですね」と訊いてきました。「そうです」と答えると、受領票が差し出され、「ここに署名と押印をお願いします」と指示されたので、署名押印をし、全部で35頁の判決文を受け取りました。あわせて、使い残りの郵券も渡されました。

 続いて、エレベーターを挟んだ反対側の民事第51部に行き、同様に判決正本を受領しました。こちらは、僅か10頁です。

 とりあえず受け取ってから、パイプ椅子に腰かけてまず主文を読んだところ、「1:本件訴えを却下する。2:訴訟費用は原告の負担とする」という全面敗訴の文面が目に飛び込んできました。しかもよくある「棄却」でなく、「却下」となっていたので、さらに驚きました。そうなると、原告の申し立てた訴えの変更についてはどうなったのだろうと思い、4ページ目の「第3 当裁判所の判断」のところに目を通しました。

 すると、「裁判所の判断」として、「訴訟が終わりかけているときにこうした訴えの変更をするのは、裁判をいたずらに遅らせるので、行政事件訴訟法や民訴法に照らしても許されるものではない」、という趣旨のことが書かれています。そもそも訴えの変更をせざるを得ない状況を作ったのは被告高専機構のほうなのに、問答無用でその責任をすべて原告に押し付けてくることに唖然としました。我が国の裁判所とそのヒラメ裁判官(常に上目遣いでお上の意向を気にしている裁判官の例え)というのは、これほどまでに国の機関に対して忖度するものなのか、と改めて痛感しました。そして、暗たんたる気持ちで裁判所の玄関を出ました。

■ところで脇道話をすると、玄関を出たところで、右手の傍聴券交付受付のところに百人以上が待機している光景が目に入りました。当会出廷者も、佐野太事件の裁判の傍聴などに際して、公判傍聴抽選に何度か並んだことがあります。今日はいったいどんな事件の傍聴なのだろと興味を覚え、傍聴券交付受付のほうに歩いていきました。担当係の職員が「傍聴を希望されますか」と声をかけてきました。筆者は「どんな事件なのかちょっと確認させてください」と言い、掲示ボードを見ました。

 するとそこに、「東京地方裁判所民事第38部」として、「東京外環道大深度地下使用認可無効確認等 平成29年(行ウ)第572号」と記されていました。交付日時と場所が「令和2年11月24日午後1時40分 東京地方裁判所1番交付所」とありました。密集住宅街での地面陥没という驚愕の事態で全国ニュースを騒がせているトピックですから、注目の高さも合点がいきました。ちょうど筆者が通りがかった際は、締切時間ギリギリだったことから、係員も積極的に声掛けをしてきたようすでした。

 開廷時間は午後2時からとなっており、傍聴していると群馬に戻れるのが夕方になってしまうため、できれば傍聴にトライしてみたい気持ちもありましたが、後ろ髪をひかれる思いで「残念ですが時間がありません」と係員に告げ、裁判所を後にしました。閑話休題。

■それでは、実際に判決文を読んでみましょう。本ブログの文字数制限の問題から、双方の主張を要約してまとめた箇所や、添付の別紙・関係法令等は割愛します。判決全文の確認は掲載のファイルを各自ダウンロード・展開のうえお願いいたします。

●第一次訴訟(令和元年(行ウ)第515号)判決全文 ZIP ⇒ 202011241anisej515iij.zip
202011242anisej515iijlf.zip
●第二次訴訟(令和元年(行ウ)第549号)判決全文 ZIP ⇒ 20201124anisej549ipj.zip

■まずは、第一次訴訟の判決文です。

*****第一次訴訟(令和元年(行ウ)第515号)判決文*****
令和2年11月24日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
令和元年(行ウ)第515号 法人文書不開示処分取消請求事件
口頭弁論終結日 令和2年8月20日

              判       決

  前橋市文京町1丁目15-10
      原        告  市民オンブズマン群馬
      同 代 表 者 代 表    小  川    賢

  東京都八王子市東浅川町701番2
      被        告  独立行政法人国立高等専門学校機構
      同 代 表 者 理 事 長  谷  口     功
      同 訴訟代理人弁護士   木  村  美  隆
                  藍  澤  幸  弘
                  角  谷  千  佳

             主      文

1 被告が平成31年4月16日付けで原告に対してした法人文書開示決定のうち,別紙1記載1の部分について,項目名及び整理Noに係る情報を不開示とした部分を取り消す。
 2 原告のその余の請求を棄却する。
 3 訴訟費用は,これを50分し,その1を被告の負担とし,その余を原告の負担とする。


            事 実 及 び 理 由
第1 請求
   被告が平成31年4月16日付けで原告に対してした法人文書開示決定のうち,別紙1記載の各部分を不開示とした部分を取り消す。

第2 事案の概要
   本件は,原告が,被告に対し,独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(以下「法」という。)に基づき,その保有する法人文書の開示を請求したところ,被告から,一部を開示し,その余を開示しない旨の決定(以下「本件決定」という。)を受けたことから,本件決定のうち,別紙1記載の各部分を不開示とした部分は違法であるとして,その取消しを求める事案である。

1 法の定め
  本件に関係する法の定めは,別紙2のとおりである。

2 前提事実(後掲の証拠等により認める。)
 (1) 当事者等
  ア 原告は,地方公共団体等の不正,不当な行為の監視と是正を目的とする権利能力なき社団である(弁論の全趣旨)。
  イ 被告は,独立行政法人国立高等専門学校機構法及び独立行政法人通則法の定めるところにより設立された同法2条1項所定の独立行政法人である(独立行政法人国立高等専門学校機構法2条)。群馬工業高等専門学校(以下「群馬高専」という。)及び長野工業高等専門学校(以下「長野高専」という。)は,被告が設置する国立高等専門学校である(同法12条1項1号,2項,別表)。

 (2) 本件決定に至る経緯
  ア 原告は,平成31年3月11日付けで,被告に対し,法4条1項に基づき,「(1)平成23年度以降の『国立高等専門学校候補者一覧』。(2)文部科学省から貴法人に出向し,群馬工業高等専門学校長に就いていた西尾典眞氏が,平成28年度末に当該職を辞し出向元に帰任した際,貴法人に提出した『辞職願』。(3)貴法人管轄の群馬工業高等専門学校の『校報』第129,130,131号の『人事関係』欄のうち,育児休業の項を除くすべて。(4)貴法人と本請求人との間で係争が行われた,平成28年(行ウ)第499号及びその控訴・附帯控訴事件において,貴法人が訴訟代理人弁護士に支払った報酬等一切に関しての『支払決議書』。(5)貴法人管轄の長野工業高等専門学校で2009年以降に発生した学生の自殺事件について,『事件・事故等発生状況報告書』,またはそれに類する文書。」の開示を請求した(甲1)。
  イ 被告は,上記アの請求に対し,平成31年4月16日付けで,同請求に係る文書のうち,別紙1記載の部分を含む部分を不開示とし,その余を開示する旨の決定(本件決定)をした(甲2)。

 (3) 本件訴えの提起
   原告は,令和元年10月7日,本件訴えを提起した(顕著な事実)。

3 争点
  本件の争点は,本件決定の適法性の有無であり,具体的には,別紙1記載の各文書(以下,別紙1の記載番号ごとに「本件文書1」などという。)の不開示情報該当性が問題となる。

4 争点に関する当事者の主張
【当会注:本件経緯及び陳述書面・口頭弁論内における双方の主張の要約であるため、文字数の問題から割愛】

第3 当裁判所の判断
 1 本件文書1について
  (1) 本件各候補者一覧は,いずれも被告において各国立高等専門学校の校長を選考する際に用いている資料であり,学校長候補者の氏名,生年月日等候補者を特定する事項や,整理No,推薦機関,主な学歴,学位,専門分野,職歴及び現職(被告に所属する者の場合には現在の所属先)が,推薦機関ごとに一覧表にまとめて記載されているものと認められる(弁論の全趣旨)。
  (2)ア 本件各候補者一覧の項目については,被告が各推薦機関から提供された校長候補者の学歴,職歴等の全ての事項を記載したものではなく,提供された情報の中から校長の選考の考慮要素として主要と考えられる事項を整理して記載したものであり,本件各候補者一覧に記載された項目は,推薦機関ごとに若干の相違があるものと認められる(弁論の全趣旨)。そして,被告は,本件各候補者一覧に記載のある項目名の全てやその並び順を開示すれば,被告における校長選考において重視される事項やどの推薦機関の候補者をまとめた一覧表かを推測することが可能となり,これによって,被告内外からの校長の選考基準について容喙されるなど,被告における校長の選考に関する自由な議論が阻害され,推薦機関からの候補者の推薦に支障を来すおそれがある旨主張する。
     しかしながら,本件各候補者一覧の項目として記載されているものと考えられるのは,学校長候補者の氏名,生年月日,整理No,推薦機関,主な学歴,学位,専門分野,職歴,現職等であるところ,これらはいずれも学校長候補者の一覧表に通常記載され,校長の選考において考慮されるであろうと考えられる項目である。そして,本件各候補者一覧にどのような項目が記載されるかについては,推薦機関ごとに相違があるとはいっても,若干という程度にとどまるから,その項目名の全てやその並び順が開示されたとしても,被告における校長の選考において重視される事項やどの推薦機関の候補者をまとめた一覧表かを推測することが可能となるといえるか疑問がある。そうすると,これらの項目名が開示されたとしても,被告における校長の選考に関する自由な議論が阻害され,推薦機関からの候補者の推薦に支障を来すおそれがあるとはいえない。

   イ 次に,推薦機関が候補者を校長へ推薦するに当たっては,候補者の内諾を得ているものと考えられるが,候補者の生年月日,学歴,学位,専門分野,職歴,現職等の候補者を特定する手がかりとなる事項が開示されるとなると,自身が校長に登用されなかったことが明らかになることを嫌がり,推薦されることに難色を示し,推薦機関が当該候補者を校長に推薦しなくなることが考えられる。
     また,整理No,現職及び推薦機関又はその種別に係る情報のみが開示されたとしても,当該候補者を推薦した推薦機関や推薦機関別の候補者の多寡を判断することができ,現職に係る情報も併せ考慮し,実際に校長に就任した者の職歴を検討すると,校長に就任しなかった候補者の構成を推測することが可能となるものと認められる。そうすると,これらの情報が開示されると,推薦した者が校長に登用される可能性が低いことを危惧して,推薦機関が校長の候補者の推薦を躊躇するなどするおそれがある。これらの結果,推薦機関の推薦する校長候補者が減少するおそれがあることを否定することはできず,校長候補者が減少すると,多数の有為な人材から校長を選任するという被告の円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがある。
     もっとも,整理Noに係る情報のみが開示された場合には,推薦機関別の候補者数は判明するものの,具体的な推薦機関までは判明しないから,当該情報と実際に校長に就任した者の職歴を比較しても,校長に就任しなかった候補者の構成を推測することが可能となるものとはいえず,推薦機関が校長の候補者の推薦を躊躇するなどし,被告の円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがあるとはいえない。本件各候補者一覧の項目名も併せて開示されたとしても,本件各候補者一覧に記載された項目は,推薦機関ごとに相違があるとはいっても,若干という程度にとどまり,候補者を推薦した具体的な推薦機関までは判明するとはいえないから,このことは異ならない。
   ウ 以上によれば,本件各候補者の一覧のうち項目名及び整理Noに係る情報を除く情報は,被告が行う事務又は事業に関する情報であって,公にすることにより,人事管理に係る事務に関し,公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがあるものとして,法5条4号ヘの不開示情報に該当するが,項目名や整理Noに係る情報は,これらのみが明らかになったとしても,上記のおそれが生ずるとはいえないから,同号ヘの不開示情報に該当するとはいえない。
  (3) 原告は,本件各候補者一覧に記載のある者のうち,選考に合格し国立高等専門学校長に就任した者の生年月日,学位,学歴,専門分野,職歴等は,全て公開情報となっていることから,法5条1号ただし書イに該当する旨主張する。しかしながら,仮に,本件文書1に記録された情報が同号ただし書イに該当したとしても,同号の不開示情報に該当しないことになるだけであり,同条の他の規定による不開示情報に該当すれば,本件文書1は開示されないことになるところ,前記(2)ウのとおり,本件各候補者一覧の項目名及び整理Noに係る情報を除く本件文書1に記録された情報は,少なくとも同条4号ヘの不開示情報に該当するから,原告の主張は失当である。
  (4) 以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,本件決定のうち,本件各候補者一覧の項目名及び整理Noに係る情報を不開示とした部分は違法であるが,本件文書1のその余の部分を不開示として部分は適法である。

 2 本件文書2について
  (1) 本件文書2は,西尾の辞職願のうち群馬高専を辞職する理由を記録した部分であって,その記録部分の長さから20字強の記載があり,相応の記載内容があることがうかがわれ(甲4),その記載内容から群馬高専内の者や群馬高専の関係者が辞職する個人を識別することが可能であるものと考えられることから,本件文書2に記録された情報は法5条1号本文の個人識別情報に該当するというべきである。
  (2) 原告は,本件文書2に記録された情報は,法5条1号ただし書ハに該当する旨主張する。
    しかしながら,法5条1号ただし書ハの「職務の遂行に係る情報」とは,当該個人が,独立行政法人等の役員及び職員等としてその担任する職務を遂行する場合における当該活動についての情報を意味するところ,辞職は,職を辞する行為にすぎず,職務の遂行には当たらない。このことは,当該辞職が群馬高専から出向元である文部科学省へ復帰するためのものであったとしても,異なるところはない。したがって,本件文書2に記録された情報は,同号ただし書ハには該当しない。
  (3) したがって,本件文書2に記録された情報は,法5条1号本文の不開示情報に該当するから,本件決定のうち,本件文書2を不開示とした部分は適法である。

 3 本件文書3について
  (1) 本件文書3の(1)について
   ア 本件文書3の(1)の不開示部分に係る被告の職員は,いずれも補助職員であるところ,群馬高専の補助職員には,各学科,総務課,庶務課等の部署に所属する者がいるが,いずれも1名又は若干名であることが認められる(弁論の全趣旨)。そうすると,本件文書3の(1)に記録された情報のうち,「氏名」が明らかになった場合はもちろん,その余の情報が明らかになった場合にも,群馬高専内の者や群馬高専と関係のある者において,当該情報に係る個人を容易に特定することが可能となる。したがって,本件文書3の(1)に記録された情報は,法5条1号本文の個人識別情報に該当する。

   イ(ア) 原告は,群馬高専の職員の採用,異動,退職等は,群馬高専内部の者にとっては既知の事実であり,本件文書3の(1)に記録された情報を開示したとしても,新たに個人が特定されるとはいえないから,同情報は法5条1号本文の個人識別情報には該当しない旨主張する。
       しかしながら,法5条1号本文の個人識別情報に該当するか否かは,当該情報により,又は当該情報と他の情報とを照合することにより,特定の個人を識別することができるか否かにより決せられるのであり,当該情報が内部の者にとって既知であるか否かにより決まるものではなく,原告の主張は失当である。また,原告の主張を本件文書3の(1)に記録された情報が同号ただし書イに該当する旨の主張と善解したとしても,少なくとも,後記(イ)のとおり,群馬高専外部の者には同情報が公表されていないのであるから,同情報は同号ただし書イには該当しない。
       また,原告は,「職名」は法5条1号本文の個人識別情報に該当しない旨主張するが,群馬高専において一時期に異動等する者の人数は限られることからすれば,「職名」に異動等の時期を併せることで,群馬高専内の者や群馬高専と関係のある者において当該情報に係る個人を特定することが可能になると考えられるから,「職名」は同号本文の個人識別情報に該当するというべきである。

    (イ)a 原告は,群馬高専の技術補佐員については,群馬高専のホームページ上で公開されている「教育研究支援センターメンバー構成」や「年報」において各年の技術補佐員の氏名が部署及び役職ごとに公表されており,また,採用や退職の挨拶という形でも氏名が公表されているから,各人の在籍状況及び職位に加え,採用,退職,異動,昇任状況等は容易に把握可能であるから,技術補佐員の氏名は,既に慣行として公にされている情報であり,法5条1号ただし書イに該当する旨主張する。
       そこで検討すると,証拠(甲10,11)及び弁論の全趣旨によれば,技術補佐員は補助職員に含まれるところ,技術補佐員の氏名が掲載された群馬高専教育研究支援センターの構成員の表である「教育研究支援センターメンバー構成」や,技術補佐員の退職挨拶が掲載された群馬高専教育研究支援センターの平成29年及び平成30年の「年報」がホームページ上で公開されていることが認められる。しかしながら,被告は,技術補佐員の退職挨拶が掲載されているのは,当該技術補佐員の勤務期間や担当職務等の個別事情を考慮したものであり,技術補佐員が退職する際に「年報」に挨拶を掲載するといった慣行はなく,「年報」以外でも移動や退職を群馬高専の外部に公開していない旨主張しているところ,少なくとも平成28年以降においては,被告の主張するような取扱いがされているものと認められ(甲30,弁論の全趣旨),本件文書3の(1)で不開示となっている技術補佐員の採用,異動及び退職に係る情報が群馬高専の外部に公開されている事実を認めることはできない。

      b さらに,原告は,ホームページや「年報」における職員氏名一覧の掲載状況を追跡することで,異動や退職といった人事状況を事実上公表されている情報として把握することができるから,技術補佐員の異動や退職について公表する慣行が存在している旨主張する。
       しかしながら,原告の主張する方法によっても,職員が当該部署に在籍するようになったり,在籍しなくなったりしたことが確認できるのみであり,異動,退職等の具体的な内容が明らかになるわけではないから,群馬高専において異動,退職等の人事情報を公表する慣行が存在しているとはいえない。

      c したがって,本件文書3の(1)に記録された情報は,法5条1号ただし書イに該当するとは認められない。

    (ウ) 原告は,「配置換」,「配置換(学内)」及び「兼務」に係る情報については,法5条1号ただし書ハに該当する旨主張する。
       しかしながら,法5条1号ただし書ハの「職務の遂行に係る情報」とは,当該個人が,独立行政法人等の役員及び職員等としてその担任する職務を遂行する場合における当該活動についての情報を意味するところ,人事異動そのものは担任する職務の遂行に当たらないから,「配置換」,「配置換(学内)」及び「兼務」に係る情報については,法5条1号ただし書ハに該当しない。

   ウ 以上によれば,本件文書3の(1)に記録された情報は,法5条1号本文の不開示情報に該当するから,本件決定のうち,本件文書3の(1)を不開示とした部分は違法である。

  (2) 本件文書3の(2)について
   ア 本件文書3の(2)に記録された情報は,群馬高専の常勤教職員の退職理由に関する情報であるところ,時期を同じくして退職する群馬高専の常勤教職員は限られているから,退職理由が開示された場合,退職時期等に係る情報と相まって,群馬高専内の者や群馬高専の関係者が当該情報に係る個人を特定することが容易となる。したがって,本件文書3の(2)に記録された情報は,法5条1号本文の個人識別情報に該当する。

   イ 原告は,群馬高専とは別の被告が設置及び運営する複数の学校について,本件文書3の(2)に記録された情報と同様の情報が慣行として公にされていることから,本件文書3の(2)に記録された情報は,法5条1号ただし書イに該当する旨主張する。
     確かに,証拠(甲14~16)及び弁論の全趣旨によれば,原告が群馬高専と別の被告が設置及び運営する複数の学校について,「校報」の開示請求をしたところ,本件文書3の(2)に記録された情報と同種の情報が開示されたことが認められる。しかしながら,上記本件文書3の(2)に記録された情報と同種の情報が開示された学校については,人事事項を含めて「校報」がホームページで公開されているが,群馬高専については,そのような情報がホームページで公開されていないものと認められる(甲30,弁論の全趣旨)。そして,他に証拠等を検討しても,群馬高専の常勤教職員の退職理由が慣行として公にされていることを認めることはできない。したがって,本件文書3の(2)に記録された情報は,法5条1号ただし書イに該当するとはいえない。

   ウ 以上によれば,本件文書3の(2)に記録された情報は,法5条1号本文の不開示情報に該当するから,本件決定のうち,同情報に係る部分は適法である。

4 本件文書4について
  (1) 証拠(甲6)及び弁論の全趣旨によれば,本件文書4のうち,①平成28年度支払決議書に係る部分は,被告の訴訟代理人である木村美隆弁護士(以下「木村弁護士」という。)に対する訴訟関係の着手金の支払額及び当該着手金に係る源泉徴収税の八王子税務署への支払額の合計額を記載した「合計金額」欄並びに当該着手金の支払及び当該八王子税務署への支払に係る各「支払金額」欄,「うち消費税額」欄及び「配分金額」欄から成ること,②平成29年度支払決議書に係る部分は,木村弁護士に対する訴訟関係の着手金は申立実費の支払額及び当該着手金に係る源泉徴収税の八王子税務署への支払額の合計額を記載した「合計金額」欄並びに当該着手金や申立実費の支払及び八王子税務署への支払に係る各「支払金額」欄,「うち消費税額」欄及び「配分金額」欄から成ること,③平成30年度支払決議書に係る部分は,木村弁護士に対する訴訟関係の報酬金の支払額及び当該報酬金に係る源泉徴収税の八王子税務署への支払額の合計額を記載した「合計金額」欄並びに当該報酬金の支払及び八王子税務署への支払に係る各「支払金額」欄,「うち消費税額」欄及び「配分金額」欄から成ることが認められる。

  (2) 弁護士費用に係る情報は,事業を営む個人である木村弁護士の弁護士事業に関する情報に該当する。
    また,本件文書4のうち,弁護士費用に係る「支払金額」欄,「うち消費税額」欄及び「配分金額」欄が開示されると,弁護士費用の額が明らかとなる。
    そして,弁護士は,報酬の算定方法や金額等を依頼者との合意によって自由に定めることができるところ,弁護士費用の額が明らかになると,これを認識した競合する弁護士や弁護士法人が,上記の額を踏まえて,より有利な弁護士費用の額を提示して競争上優位な立場に立つ可能性があり,木村弁護士の競争上の地位に影響を与えるおそれがある。したがって,平成28年度から平成30年度までの各支払決議書の弁護士費用に係る「支払金額」欄,「うち消費税額」及び「配分金額」欄に記載された情報は,法5条2号イの不開示情報に該当する。
    加えて,本件文書4のうち,平成28年度から平成30年度までの各支払決議書の各「合計金額」欄は,弁護士費用の支払額及びその源泉徴収税の支払である八王子税務署への支払額の合計額が記載されている。そうすると,その金額が明らかになると,弁護士費用の額を計算することが可能となるから,上記と同様の理由により,木村弁護士の競争上の地位に影響を与えるおそれがある。したがって,上記各「合計金額」欄に記載された情報は,法5条2号イの不開示情報に該当する。

  (3) 以上によれば,本件文書4に係る情報は,法5条2号イの不開示情報に該当するから,本件決定のうち,本件文書4に係る部分は適法である。

 5 本件文書5について
  (1) 本件文書5に係る情報は,本件報告書の年月日や時刻に係る情報であるところ,証拠(甲7)によれば,これらの情報は,学生が死亡したという事件・事故に対する対応経過と併せて記録されており,その対応経過は一定程度開示されていることが認められる。そうすると,年月日等に係る情報が開示されると,本件報告書に記載されている事件・事故をより具体的に特定できるようになり,その結果,長野高専内の者や長野高専の関係者において,死亡した学生を特定することが容易となる。したがって,本件文書5に係る情報は,法5条1号本文の個人識別情報に該当する。

  (2) これに対し,原告は,開示された文書に記載のある学生課長の在籍時期や,事件・事故を受けた全校集会の開催並びにカウンセラー等による講習会及び後援会の開催の事実から,本件報告書に記載された年や月は容易に推定可能であると主張するところ,これは,本件報告書の年月に係る情報について,法5条1号本文の個人識別情報に該当しない旨主張するものとも解される。
     しかしながら,原告の挙げる情報からは,本件報告書に記載されている事件・事故の発生した時期等を絞り込めるにとどまるのに対し,本件報告書に記載のある年月が開示されると,当該事件・事故の発生した時期を具体的に特定することができ,それにより当該事件・事故により死亡した学生を特定することが格段に容易となるから,原告の主張をもって,本件報告書の年月に係る情報が法5条1号本文の個人識別情報に該当することを否定することはできない。
     また,原告の上記主張を,本件報告書の年月に係る情報が法5条1号ただし書イに該当する旨の主張と解したとしても,学生課長の在籍時期は一定の機関にわたり,これのみで本件報告書の年月に係る情報を具体的に絞り込めるものではないと考えられる上,事件・事故を受けた全校集会の開催並びにカウンセラー等による講習会及び講演会の開催が公表されていることを認めるに足りる証拠はない。したがって,原告の上記主張をもって,本件報告書の年月に係る情報が法5条1号ただし書イに該当するとはいえない。

  (3) 原告は,開示請求の対象文書の作成時期を個別に区切ることにより,開示される文書に違いが生じることを指摘して,本件報告書の年月日等に係る情報は公衆が知り得る状態に置かれているものとして,法5条1号ただし書イに該当する旨主張する。
    しかしながら,原告の指摘する開示請求の方法によって本件報告書の年月日等に係る情報を推知することができる場合があるとしても,それは,開示請求の対照(ママ)文書の作成時期の区切り方という偶然に左右されるものといわざるを得ない。したがって,原告の指摘する開示請求の方法によって,本件報告書の年月日等に係る情報を推知することができる場合があることをもって,当該情報が法5条1号ただし書イに該当するとはいえない。

  (4) 以上によれば,本件文書5に記録された情報は,法5条1号本文の不開示情報に該当するから,その余の点について判断するまでもなく,本件決定のうち,本件文書5に係る部分は適法である。

 6 結論
   以上の次第で,原告の請求は,本件決定のうち,本件文書1のうち項目名及び整理Noに係る情報を不開示とした部分の取消しを求める部分については理由があるから,これを認容することとし,原告のその余の請求は理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する(なお,原告は,本件文書1及び3の(1)に係る請求については,請求の認容度合いにかかわらず,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法64条に基づき,訴訟費用は全て被告の負担とすべきである旨主張するが,本件の経緯,主張内容等に鑑みると,上記各条を適用すべきであるとは認められない。)。

   東京地方裁判所民事第2部
        裁判長裁判官  森 英明
           裁判官  小川 弘持
           裁判官  三貫納 有子
**********

■続いて、第二次訴訟の判決文です。

*****第二次訴訟(令和元年(行ウ)第549号)判決文*****
令和2年11月24日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
令和元年(行ウ)第549号 法人文書不開示処分取消請求事件
口頭弁論終結日 令和2年10月16日

              判       決

  前橋市文京町1丁目15-10
      原        告  市民オンブズマン群馬
      同 代 表 者 代 表    小  川    賢

  東京都八王子市東浅川町701番2
      被        告  独立行政法人
国立高等専門学校機構
      同 代 表 者 理 事 長  谷  口      功
      同 訴訟代理人弁護士   木  村  美  隆
      同           藍  澤  幸  弘
      同           角  谷  千  佳

             主      文

 1 本件訴えを却下する。
 2 訴訟費用は原告の負担とする。


             事 実 及 び 理 由
第1 請求
  被告が原告に対し令和元年9月17日付けでした法人文書一部開示決定のうち,次の各部分を不開示とした部分を取り消す。
 (1) 被告理事長が平成30年10月10日付けで群馬工業高等専門学校長及び沼津工業高等専門学校長に宛てて発出した「平成31年度高専・両技科大間教員交流制度派遣推薦者の派遣決定について(通知)」(30高機人第72号)のうち,「交流期間」欄の記載部分
 (2) 被告理事長が平成30年10月10日付けで各国立高等専門学校長,長岡技術科学大学長及び豊橋技術科学大学長に宛てて発出した「平成31年度高専・両技科大間教員交流制度派遣者の決定について(通知)」(30高機人第72号)のうち,別添「平成31年度高専・技科大間教員交流制度」の「派遣期間」欄のうち雑賀洋平に係る部分

第2 事案の概要
 1 本件は,原告が,独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(以下「」という。)4条に基づき被告の保有する法人文書の開示を請求したところ,被告(処分行政庁)から,その一部について不開示とする決定(以下「本件一部不開示決定」という。)を受けたことから,その不開示とされた部分の一部を不服として,被告を相手に,本件一部不開示決定のうち上記不服に係る部分の取消しを求める事案である(なお,原告は,後記3(6)のとおり,訴えの交換的変更を申し立てているが,当裁判所は,後記第3の1のとおり,これを許さないこととするものである。)。

 2 関係法令の定め
   本件に関連する法令の定めは,別紙1記載のとおりである。

 3 前提事実
【当会注:本件経緯及び陳述書面・口頭弁論内における双方の主張の要約であるため、文字数の問題から割愛】

 4 争点及び当事者の主張
   本件の争点は,①本件訴えの適法性及び②本件一部不開示決定のうち本件各不開示部分に係る部分の適法性であり,争点に関する当事者の主張の要旨は,別紙2記載のとおりである。

第3 当裁判所の判断
 1 本件訴えの変更申立てについて
   前記前提事実のとおり,原告は,令和2年10月9日に至り,本件訴えの変更申立てをしたものである。しかし,後記2において説示するところによれば,本件訴えの変更申立ての時点において,訴えの変更前の本訴請求に係る訴えが不適法であり却下されるべきものであることは明らかであって,令和2年10月16日の本件口頭弁論期日の時点において,本件訴訟の全部が裁判をするのに熟していたものである。他方,同申立てに係る訴えの変更を許した場合には,本件新請求1に係る訴えの適法性のほか,本件新請求2について,原告が同請求の請求原因事実として主張する事実の有無及びこれが国家賠償法上または不法行為法上違法と評価されるか否か並びに損害の有無等について改めて審理することを要し,そのためになお相当の期間を要することとなることは明らかである。そうすると,本件訴えの変更申立ては,これを許した場合には,これにより著しく訴訟手続を遅滞させることとなるものと認められる。
   よって,本件訴えの変更申立てについては,行政事件訴訟法7条,民訴法143条1項ただし書,同条4項により,これを許さないこととする。

 2 争点①(本件訴えの適法性)について
   原告は,本件訴訟において,本件一部不開示決定のうち本件各不開示部分に係る部分の取消しを求めているところ,前期前提事実によれば,被告は,令和2年10月2日付けで,原告に対し,本件一部不開示決定のうち本件各不開示部分に係る部分を取り消し,本件各法人文書のうち本件各不開示部分を開示する旨の決定をしたことが認められる(本件再決定)。
   そうすると,原告は,現時点においては,もはや本件一部不開示決定のうち本件各不開示部分に係る部分の取消しによって回復すべき法律上の利益を有しないものというほかなく,その取消しを求める訴えの利益は失われたものというべきである。

 3 結論
   よって,本件訴えは不適法であるからこれを却下することとして,主文のとおり判決する。

   東京地方裁判所民事第51部
        裁判長裁判官  清水知恵子
           裁判官  川山泰弘
           裁判官  釜村健太
**********

■以上のように、第一次訴訟・第二次訴訟の判決は両方とも、被告高専機構側の杜撰な言い分や姑息な法廷戦術をそのままガバガバで素通し状態の代物です。

 見てお分かりのとおり、「両方の主張を見て、ひとつひとつの論点について公平に判断をしていく」というあり方からは程遠く、「被告勝訴をスタートラインに、原告の主張をいかに工夫して潰していくか」という思考方式で作られています。これが、当会が活動開始以来幾度となく直面してきた、限りなく行政寄りに立つ我が国司法の現実です。

 第一次訴訟については、開示を求めた五大文書のうち、「①高専校長選考の候補者名簿」のごくごく一部(項目名と整理No)のみ開示が許され、①のその他の箇所(特に推薦機関)と、「②西尾典眞・群馬高専前校長の辞職理由」「③群馬高専『校報』人事情報」「④高専機構が御用達の弁護士に支払っている費用」「⑤長野高専学生自殺事件報告書の記載年月日」は全てことごとく開示を阻まれてしまいました。

 特に⑤については、長野高専連続自殺事件という悲劇の経緯解明と真相究明をしてほしいと切に願う当時の学友らの方々の想いに応えることができず、忸怩たる思いです。

■ただ、判決全文に目を通した時点での率直な感想は、第一次訴訟について森裁判長が下した判決よりも、第二次訴訟について清水裁判長が下した判決の方が、より悪質極まりないものであるというものです。

 第一次訴訟についての判決文は、「しかしながら」を10回も連発したうえ、「原告の主張を~という旨に(善)解したとしても」という形の上での断りが何か所か差し挟まれています。すなわち、「最終的に原告敗訴」の結論ありきで判決が作られたにせよ、原告の主張についても一応はちゃんと検討しましたよ、というポーズは辛うじて見せています。

 ところが第二次訴訟の判決は、被告の仕掛けた「訴訟オジャン作戦」を丸々素通しするものであり、まさに問答無用です。被告高専機構の不意打ちに応じて、原告当会はやむを得ず訴え変更という措置を取らざるを得なくなったにも関わらず、なぜ被告高専機構の行動と主張は一切不問にされ、原告の対応だけが「訴訟進行を著しく遅滞させるもの」などと一方的に扱われて却下されなければならないのでしょう。

 そうして全面敗訴に追い込まれたばかりか、挙句の果てには、なぜか訴訟費用までが全額、原告当会の負担にされています。偏った判断というレベルですらなく、原告当会をとにかく意図的に貶めようとするもので、率直に意味不明と評するしかありません。

 勝ち確定だったはずの訴訟ですら、あれよあれよという間に全面敗訴に持っていく清水裁判長の腕前は、まさに「法廷マジック」と評すべきものです。しかし、法律があってないような未開の独裁国家紛いのこんな手法が、現代日本で通用していいわけがありません。だいいち、こんな手法を横行させてしまえば、情報公開法に関する行政訴訟で市民側が勝つことが原理的に不可能になり、行政の不開示体質には歯止めが効かなくなってしまいます。

■当会では、今回の2つの不当判決の内容を精査し、その両方あるいはどちらか一方について、控訴するかどうかを早急に決定していく所存です。控訴する場合、判決言渡の翌日から2週間以内、すなわち12月8日(火)までに東京地裁に控訴状を提出することになります。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】

コメント (2)
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