市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

通勤通学者約1500名の帰宅の足を乱しても責任の所在を自ら特定できないJRグループの責任転嫁体質(続々報)

2013-04-20 23:44:00 | 国内外からのトピックス
■平成25年4月16日の夕方、信越線安中駅構内で発生した貨物列車のトラブルは、東邦亜鉛安中製錬所に原料の亜鉛鉱石(焼鉱及び精鉱)を運搬する貨車を牽引していた電気機関車が、信越線下り線上で立ち往生したため、後続の信越線下り普通電車151Mが運休し、153M、155M、157Mの3本が遅延しました。立ち往生の原因について、電気機関車EH500を所有し、運行していたJR貨物では、当会の聞き取り調査に対して、運転手のスイッチ操作ミスだったと話しました。

 そこで、実際にどのような経緯でトラブルが発生したのか、4月19日に現場で状況を確認しました。運行時間の管理では、世界一の正確性を誇るJRということなので、毎日同じ時間に同じ作業が行われているため、3日前の状況が再現されているからです。

 新聞報道によれば、「4月16日午後5時50分ごろ、安中市中宿のJR安中駅構内で、車庫への入れ替えをしていた田端操車場発安中行き下り貨物列車が、下り線路上で動かなくなった。車輌を点検し、午後7時20分ごろ運転再開した」とあります。また、この前後に高崎駅を出発する信越線下り電車を時刻表で見ると、普通列車149Mが高崎発17:18(安中着17:29)、同151Mが高崎発17:51(安中着18:02)、同153Mが高崎発18:23(安中着18:34)、同155Mが高崎発19:13(安中着19:25)、同157Mが高崎発20:02(安中着20:13)となっています。

■カメラを構えて、安中駅の西側にある市道の跨線橋のたもとで待機していると、17:30に下り普通電車が定刻通り17:29に安中駅の下り線ホームに到着し、旅客をおろすと17:30に次の駅の磯部に向けて出発しました。


 17:33になると安中貨物の到着が迫り、東邦亜鉛の子会社の安中運輸の作業員が駅構内に姿を見せ始めました。


 すると高崎行きの信越線上り普通電車が安中駅の上り線プラットフォームに入ってきました。


 ほぼ同時に、高崎方面からライトを光らせてこちらに向かってくる列車に気付きました。その列車がぐんぐん近づいてきましたが、途中で下り線から貨物線に入り、やがて停止しました。これが安中貨物を牽引してきた電気機関車EH500です。それと同時に、高崎行の信越線上り普通列車が安中駅の上り線プラットフォームを出発しました。


 17:37に電気機関車EH500が貨車から切り離されて、ゆっくりと動き出しました。そして、貨物線から信越線下り線に入ってきました。



 下り線に入ったEH500は、どんどん磯部方面に進み、跨線橋の下まで来ると停車しました。この時点でも17:38です。


 間もなく機関車のハム音(電気装置特有の唸り音)が消えました。運転手が反対側の運転席に移るため、運転席を離れる際に電源スイッチを一旦切ったようです。


 これを見届けると同時に、安中運輸のディーゼル機関車DB301が動き出し、ゆっくりと貨物線に入っていきます。


 17:40に跨線橋の下で待機していた電気機関車EH500に唸り音がしました。移動を終えた運転手が再び電源スイッチを入れた模様です。


 貨物線に目をやると、タンク貨車との連結作業が済んだらしく、ディーゼル機関車DB301の短い汽笛が聞こえました。DB301はタンク車2両をけん引して、ゆっくりと貨物線から東邦亜鉛の工場への待機線に入ってきました。


 その模様を見ていたEH500は、17:40に、やはり短い汽笛を発すると、跨線橋の下から動き出し、下り線を高崎方面に逆送していきました。


 待機線に入り、跨線橋のすぐ前の位置で一旦停車していたDB301は、17:41にポイントが切り替わるや、短い汽笛を発するやタンク車2両を押して、東邦亜鉛安中製錬所の工場に向かう引込み線に入って行きました。



 一方、下り線を逆走していったEH500は、柳瀬川の橋梁を過ぎたところで一旦停車しました。そして、運転手が一旦電源を切り、反対側の運転席に移り、再び電源スイッチを入れてポイントの切り替えを確認後、ゆっくりと動き出して、貨物線に入り、福島県いわき市の小名浜製錬所から運んできた安中貨物の貨車から200mくらい離れた位置に停車しました。時間は17:45でした。


 17:49に、工場に最初の2両のタンク貨車を運び終わったDB301ディーゼル機関車が単機で戻ってきました。


 DB301は、一旦待機線でポイントの切り替えを待ち、すぐに貨物線に入り、タンク貨車を2両連結して、17:51に移動を開始しました。



 そして待機線で再びポイントの切り替えを待った後、17:52に再度、タンク貨車2両を押しながら、安中製錬所の引込み線に入って行きました。



■以上の一連の作業は、80年にもわたる東邦亜鉛安中製錬所の操業の歴史と同じ期間、繰り返されているだけあって、実に手際よく行われていることが見ていて分かります。

 ではなぜ、平成25年4月16日の17:50ごろ、安中市中宿のJR安中駅構内で、車庫への入れ替えをしていた田端操車場発安中行き下り貨物列車を牽引してきたJR貨物所属の電気機関車EH500-76号機が、下り線路上で動かなくなったのでしょうか。

 午後5時50分ごろといえば、EH500-76号機が、一旦下り線を高崎方面に逆送してから、再び貨物線に入り、空の貨車を小名浜まで持ち帰る深夜の出発に備えて、待機を始めた時間と言うことになります。







暮れなずむ西空をバックに21:41まで安中駅構内の貨物線で待機するEH500-6号機。4月19日撮影。

 おそらく、17:42から17:44にかけて、柳瀬川の付近の下り線で、ポイントの切り替え待ちと、運転手の移動のために停止していたEH500-76号機が、運転手の前後の移動を終えて、入れ替わった運転台で、再度電源スイッチを入れて動かそうとした際に、スイッチ操作のミスで動かなくなったものとみられます。

 そうすると、信越線と並行して走っている国道18号線沿いの100円ショップ脇にある信越線の踏切の信号機が、ずっと鳴りっぱなしになっていたのではないかと思われます。もし、運悪くこの踏切信号機にひっかかったドライバーは、大変な迷惑を被ったに違いありません。

 また、17:50ごろ、立ち往生の連絡が高崎駅に入ったとすれば、電気機関車が立ち往生してから5分以上経過したことになります。信越線の時刻表によれば、ちょうどそのころ、普通電車151Mが高崎駅を17:51に出発する直前でした。運休したのはこの電車で、その後の普通電車153M(高崎発18:23、安中着18:34)、同155M(高崎発19:13、安中着19:25)、同157M(高崎発20:02、安中着20:13)のダイヤが乱れて、運行時間が大幅に遅れたわけです。

■JR貨物は渋々「運転手のスイッチ操作を誤ったのが今回の立ち往生の原因だ」と説明しました。ところが、「現場からの報告書は一切上がってきていない」と言っています。JR貨物では、関東支社と東京貨物ターミナル駅が2000年12月にISO9000シリーズの認証を取得し、それ以降、各駅や各機関区でISO認証取得を進めているはずです。となると、今回の事故報告書が関東支社に上げられていないことなり、その場合ISOのルール違反になります。

 筆者は、通勤・通学客約1500名の帰宅の足への影響の原因とされた今回のJR貨物の電気機関車EH500-6号機の線路上での立ち往生の本当の理由は別のところにあるとみています。その根拠は、JR東日本やJR貨物が、事故原因の問い合わせに対して不自然な対応をとったためです。

 たしかに、安中貨物を牽引してきた電気機関車は、安中駅構内で3回の運転台の入れ替わりを行いますが、基本中の基本であるこの時のスイッチ操作の手順を誤るということなど、到底考えられないからです。

 JR貨物の売り上げは漸減していますが、こうした事故対応の原因秘匿体質を見ると、顧客の信頼に十分こたえているのだろうか、という疑問がわき、そのことが売り上げの伸び悩みという結果に表れているとも受け取れるからです。

■ところで、今回の事故調査で、東邦亜鉛安中製錬所の動脈である安中貨物の運行実態を理解できました。こんな内陸に、全量海外からの原料を使って操業してきた公害企業を支えていたのは、まさに鉄道輸送だったのです。

 そして、電気機関車の駆動も、亜鉛の製錬も両方とも電気に依存しています。JR貨物も東邦亜鉛も東京電力から非常に安い単価で電力供給を受けています。原発事故を契機に、一般家庭の電気代は上がりっぱなしですが、東邦亜鉛は再生エネルギー買取制度の賦課金さえ免除されています。

 そうした特典を得ていながらも、東邦亜鉛は「電力コストが今後の経営戦略に大きな重しとなっている」という見解を示しています。東邦亜鉛は豪州の鉱山会社を円高の恩恵を受けて安値で買収したのですから、日本の高い電気代や日本までの鉱石運搬費を使って電気亜鉛の製錬をするのではなく、豪州で亜鉛製錬まで一貫して行い、製品を日本に持ち込めば、電力や輸送コスト、そして公害問題の観点からも経営改善に寄与することはだれの目にも明らかです。当会もそうした提案を東邦亜鉛にし続けていますが、なぜか無視されたままです。

 この理由としてオーストラリアでは、以前は電気代が安かったが最近になって再生エネルギー促進や環境保護の高まりなどで電力料金がアップしているという事情があります(末尾の参考情報の通り、2012年現在の一般家庭用電力料金は20.42円/kwhで、日本の約23円に比べればまだ低い)。オーストラリアは石炭の産地として世界的に知られていますが、環境問題にも積極的に取り組んでおり、二酸化炭素の排出についても賦課金を課しています。だからといって原発に依存することはしてはいません。

 こうした理由により、今でも公害企業の体質を内包する東邦亜鉛としては、環境問題に敏感で規制も厳しいオーストラリアで製錬事業を行うよりも、既に公害汚染地として周辺を汚染し続けても環境行政面で緩フンの日本政府、群馬県、安中市の行政の庇護のもとで事業を営む方が、遥かにメリットがあると判断しているのかもしれません。

【ひらく会情報部】

※参考情報
【平成25年4月16日の安中貨物】
安中駅構内で立ち往生したJR貨物の電気機関車はEH500-76号機で、牽引していた貨車はタンク貨車(タキ)6両、無蓋貨車(トキ)6両であることが次の画像で分かります。
http://www.youtube.com/watch?v=WoAPlznjxmg 
【平成25年5月15日の安中貨物】
事故前日の安中貨物を牽引した電気機関車はEH500-20号機で、貨車はタキ1両、トキ5両であることがわかります。
http://www.youtube.com/watch?v=DcoeSgc9Cx0 
【豪州の電気料金】
2012年12月26日電力事業連合会「海外電力関連解説情報」
http://www.fepc.or.jp/library/kaigai/kaigai_kaisetsu/1223716_4141.html
「大幅に上昇したオーストラリアの小売電気料金」
 オーストラリア(豪州)では、1990年代後半からの規制緩和により、州電力庁の分割民営化、全国で統一した卸電力市場の創設、段階的な小売の自由化といった電力システムの制度改革を実施してきた。ところが、近年になって電気料金が大幅に上昇を続け、今後もこの傾向が継続するとの見通しが強い。実態と背景を探ってみる。
□3年間で40%も値上がりした家庭用電気料金
 自国の豊富な石炭資源を利用できることから、豪州では長年にわたって割安な電気料金の恩恵を享受してきた。しかし、2007年以降、料金上昇が続いており、豪州エネルギー消費者協会(EUAA)が2012年3月に公表した国際比較調査の結果によると、既に日本、欧州連合(EU)平均、米国の水準を上回っている実態が明らかになった。2008年の世界金融危機以降の対米ドル高、対ユーロ高となった豪ドル為替相場の影響を考慮しても、こうした国々よりも高い水準となっている。
 2007年から2010年の3年間の家庭用電気料金の値上がり幅は約40%に達しており、燃料価格の高騰によって上昇している欧州と比較しても、短期間で急激に値上がりしている実情が明確だ。さらに、豪州エネルギー市場委員会(AEMC)は、電気料金の上昇傾向は今後も続くと予測している。なお、2012年の豪州の家庭用小売電気料金の平均単価は25.21豪セント(約20.42円)/kWhとなっている。
□背景にある燃料価格の高騰、新設設備の増加、環境関連費用
 こうした電気料金の上昇に大きく影響しているのが、卸電力調達費用と送配電線使用料の高騰である。送配電線使用料はピーク需要の増加、電力供給信頼度基準の強化、老朽設備の更新などに必要となる莫大な投資、さらには料金規制上の問題を背景に急上昇している。卸電力調達費用の増加は、現行のスポット価格は比較的安く推移しているものの、小売料金の規制期間の卸電力調達コストの上昇が想定されているためだ。
 この背景には、国際的な燃料価格の高騰や新規参入者の増大に伴う新設設備の増加、炭素価格制度の導入などがある。2012年7月から実施された炭素価格制度は、火力発電所を含むCO2排出量の多い事業者に対して、排出価格を1トン当たり23豪ドル(約1860円)の負担を義務化しており、これによる初年度の平均的な家庭の負担は電気料金で10%(週3.3豪ドル、約267.3円)アップすると試算されている。
 また、再生可能エネルギーに関しては、2020年までに発電電力量の20%(450億kWh)を再エネでまかなうという目標を掲げた「再生可能エネルギー目標制度(RET)」があり、その中心を風力発電が担っている。同制度は2001年4月にスタート、小売事業者に販売電力量の一定割合について、再エネ証書の調達を義務付けており、その結果、風力発電の導入が進んでいる。この一方で、間欠性電源である風力発電にはバックアップ電源が必要であることから、風力発電の増加と並行して、負荷追従性が高いオープンサイクルガス発電も増加している。AEMCによると、最近の電気料金上昇分の7%はRETによる商業用再エネ発電の導入費用、3%は州政府が独自に行っている固定価格買取制度や省エネ証書制度などの費用とされる。炭素価格制度やRETが電気料金に与える影響はまだ軽微だが、今後は増加していくことが確実といえる。
□連邦政府が「電気代が安価な時代は終わった」と明言
 豪州連邦政府は2012年11月、基本的なエネルギー政策である「エネルギー白書」を公表した。世界的な環境意識の高まりから、豪州でも2012年7月に排出量取引の前段階として炭素価格制度が導入され、長期的には国産資源を活用した石炭火力発電から、クリーンエネルギーへの移行を目指し、今後10年間は天然ガスを移行期におけるエネルギーとする青写真を描いている。
 豪州エネルギー市場管理会社(AEMO)はこれを実現するためには、2030年までに全国電力市場(NEM)管内で発電所や送電線の新設に720億~820億豪ドル(約5.8兆~約6.6兆円)もの投資が必要であるとしている。また、別の試算では、送電投資に240億豪ドル(約1兆9500億円)、配電投資に1200億豪ドル(約9兆7000億円)が必要という結果も報告されている。しかし、民間企業にとっては、政策変更懸念や炭素価格リスクがつきまとい、先行きの不透明感から投資判断に苦慮しているのが実情だ。
 連邦政府は電気料金が上昇している現状を認め、「電気代が安価な時代は終わった」と明言し、民間企業による発電投資や送配電投資を促すため、更なる規制緩和を進める方針を打ち出している。しかし、連邦規模のエネルギー政策は、連邦と州のエネルギー大臣で構成される「エネルギーに関する閣僚会議(MCE)」で議論され、MCEの上位機関で、連邦と州の首相の意思決定機関である「政府間評議会(COAG)」で決定されるように、エネルギー政策には州政府の意向が色濃く反映される。特に規制緩和は州政府の権限を弱めることを意味し、反発も予想されるため、連邦政府のシナリオ通りに進むとは限らない可能性もある。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 通勤・通学者約1500名の帰宅... | トップ | 椿本興業の不祥事とタゴ51億... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

国内外からのトピックス」カテゴリの最新記事