■新型コロナの感染拡大が世界規模で広がり続ける中で、リーダーに女性をいだく国々が好調です。一方、最新の世論調査では我が国の安倍内閣の支持率は感染率とは逆に低下気味です。ネットを見ると、いくつか同じテーマで記事が掲載されていました。なにかヒントになるかもしれません。さっそく見てみましょう。
**********Forbes Japan 2020年04月16日12:00
コロナ対策に成功した国々、共通点は女性リーダーの存在
↑ドイツのアンゲラ・メルケル首相(Photo by Adam Berry/Getty Images)↑
アイスランド、台湾、ドイツ、ニュージーランド、フィンランド、デンマークではいずれも、女性が危機の中で真のリーダーシップを発揮し、世界に対して模範を示している。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)は、女性には混乱に対処する能力があることを浮き彫りにした。
これらの国は小国や島国であり、例外的存在だと反論する人も多いだろう。だが、ドイツは大国だし、英国は島国であるのにもかかわらず、大きな被害を被っている。冒頭に挙げた国々を率いる女性たちは、これまでのリーダーとは違う魅力的な方法で権力を行使している。彼女らに学べることは何だろうか?
★現実と向き合う★
ドイツのアンゲラ・メルケル首相は早期から、冷静かつ断固たる姿勢を持って、国民に対して新型コロナウイルスの危険性を警告。最大で人口の7割が感染する恐れがあるとし、「真剣に受け止めるように」と呼び掛けた。ドイツは他の国々のように現実を否定したり、怒りや情報隠しに走ったりはせずに、検査を即座に開始。同国での感染者数や死者数は近隣の欧州諸国よりはるかに低く、間もなく感染抑止策を緩和できる兆しが出ている。
★決断力★
世界で最も早期かつ迅速に対応を始めたリーダーの一人が、台湾の蔡英文総統だ。蔡総統は、新型コロナウイルス流行の兆しが見え始めた1月、感染拡大防止に向けた124の措置を発表し、結果的に他の国々で取られたような封鎖措置を回避した。そして台湾は今、欧米諸国に1000万枚のマスクを提供している。CNNテレビは、蔡総統の対策を「世界で最も優れたものの一つ」と紹介。台湾は新型コロナウイルスの拡大が抑制できており、死者はわずか6人にとどまっている。
ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相は、早期から封鎖措置を断行。国内に最大限の警戒態勢を敷く方針であることと、その理由を明確に示した。国内の感染者がわずか6人だった段階から入国者に対して自主隔離を課し、その直後には外国人の入国を禁止。こうした明確な姿勢と決断力が、ニュージーランドを守っているのだ。4月中旬の時点で、同国での死者は4人にとどまっている。他国では制限措置の緩和が検討されている中、アーダーン首相は追加措置として帰国者全員に指定の場所での14日間の隔離を義務付けた。
★テクノロジーの活用★
アイスランドでは、カトリン・ヤコブスドッティル首相の指揮の下、国民全員に対し無料の新型コロナウイルス検査が提供されており、ウイルスの流行規模と致死率の実態を知る上で重要なデータが得られる見通しだ。多くの国では症状がある人のみに検査が実施されているが、アイスランドの人口に対する検査件数は韓国の5倍にも上る。また、徹底的な追跡システムも導入し、封鎖措置や学校閉鎖も回避してきた。
昨年12月にサンナ・マリン首相が世界最年少の国家元首として就任したフィンランドでは、ミレニアル世代である同首相の陣頭指揮により、ソーシャルメディア上のインフルエンサーを新型コロナウイルス対策に動員。誰もがニュースを読むわけではないことを認識した上で、さまざまな年齢層のインフルエンサーに対して、感染拡大防止に向けた正しい情報発信での協力を要請している。
★慈しみの心★
ノルウェーのアーナ・ソールバルグ首相は、テレビを通じて国内の子供たちに直接語り掛けるという革新的なアイデアを実行に移した。その数日前には、デンマークのメッテ・フレデリクセン首相が子供たちからの質問に答える3分間の短い記者会見を実施しており、ソールバルグ首相のアイデアはこれにならったものだった。
ソールバルグ首相は大人の参加を禁じた記者会見を開き、全国の子供たちから寄せられた質問に答え、恐怖を感じるのはいけないことではないのだと時間をかけて説明した。その独創性と分かりやすさに、人々は感服。女性リーダーがもっと増えたなら、こうしたシンプルで人間味にあふれるイノベーションがさらに多く生まれることだろう。
これらの女性リーダーたちが示した共感力や思いやりは、私たちに馴染みのある世の中とは別世界のものにも思える。米国のトランプ、ブラジルのボルソナロ、メキシコのロペスオブラドール、インドのモディ、フィリピンのドゥテルテ、ハンガリーのオルバン、ロシアのプーチン、そしてイスラエルのネタニヤフは対照的に、この危機を利用して恐ろしい強権体制を推し進め、他者に責任を転嫁したり、司法を手中に収めたり、ジャーナリストを悪者扱いしたり、永遠の権力を追求したりしている。
女性が他とは異なる有益なリーダーシップスタイルを持っている可能性については、長年の研究によって示されてきた。だが現状として、非常に多くの政治組織や企業が、リーダー職や成功を求める女性に対し、男性的な振る舞いを要求している。しかし、ここで示した女性首脳たちは、男性が女性から学ぶべきリーダーの資質を示す模範例だ。私たちは今こそ、その価値を認識し、より多くの女性リーダーを選ぶべきだ。
(翻訳・編集=遠藤宗生)
**********毎日新聞2020年4月21日 16時14分(最終更新 4月21日 22時13分)
独メルケル首相、台湾・蔡総統…新型コロナ対応で株を上げた女性リーダーたち
↑首脳会談や記者会見などで常に余裕のある笑顔を見せるドイツのメルケル首相=ベルリンで2018年7月20日、ベルリン支局助手メルリン・ズグエ撮影↑
パンデミック(世界的大流行)となった新型コロナウイルスの累積感染者は、米ジョンズ・ホプキンズ大のまとめで20日に240万人を超え、死者も16万5000人以上に達した。国や地域によって対応に相当の違いがあり、評価を大きく上げた政治リーダーもいれば批判の集中砲火を浴び続ける国家首脳もいる。主な国、地域での現状を眺めると、「株を上げた」女性指導者の姿が目立っている。【和田浩明/統合デジタル取材センター】
★4分の3が対応に「満足」 ドイツ★
「素晴らしい」「理性的」。ドイツのメルケル首相の新型コロナウイルス対応を、普段は辛口の欧米メディアも評価している。ドイツの国際放送ドイッチェ・ヴェレの記者は、感染抑止の必要性に関し物理学者でもあるメルケル氏が4月15日の会見で行った説明が優れているとして、英語字幕を付けた動画をツイート。AP通信も3月末の記事で「コロナウイルス危機対応で輝くメルケル」と評価した。英ガーディアンは4月2日付記事で、メルケル氏の支持率が3月末の世論調査で11ポイント急上昇し79%に達したことに触れ「驚くべき数字」と述べた。
「ドイツ第2公共放送」が4月6~8日に1175人を対象に行った定例の世論調査では、74%が政府の感染抑止策を評価した。最大500億ユーロ(5兆8500億円)の中小企業や芸術家向け給付金などの経済支援対策も69%が支持した。
多数の死者を出しているイタリア(2万3660人)、スペイン(2万453人)、フランス(1万974444人)、イギリス(1万6095人)に比べ、ドイツの死者数は4642人(いずれもジョンズ・ホプキンズ大調べ20日午前)と相対的に低い。
メルケル氏の人気の背景には、危機の最中でも冷静に対策の必要性を説き、影響を受ける人々に手厚い経済支援を提供する一方、感染被害の抑止にも一定の成果を出している点がありそうだ。
メルケル氏は15日、中小規模店舗の20日からの営業再開を認める一方、3人以上で集まることなどを禁じた接触制限を5月3日まで延長した。
★「専門家内閣」で奏功 台湾★
↑蔡英文総統=台北市の総統府で2020年1月1日午前8時51分、福岡静哉撮影↑
台湾の累積感染者数は420人で、死者は6人と少ない。早期の水際対策と徹底した隔離対策が効力を発揮したとされ、「世界最高レベルの対応」(米CNN)と評価されている。
3月19日に外国人の入港禁止措置を実施。海外から戻った人や濃厚接触者に14日間の隔離を義務づけ、違反者には最高100万台湾ドル(約360万円)の罰金を科した。マスク供給も政府が管理しており不足は報告されていない。
また、歯科医でもある陳時中・衛生福利部長(衛生相)が連日記者会見を行い、記者の質問に徹底して回答。温かい語り口もあって「鉄人大臣」として国民の信頼を獲得した。また、唐鳳(オードリー・タン)政務委員(閣僚級)はIT担当として「マスク配布システム」を仕掛け、市民エンジニアらの協力でオンライン薬局在庫表示を推進した。台湾は16日、日本側にマスク200万枚を送ると発表している。
こうした「専門家内閣」を率いる蔡英文総統の支持率は、3月末に地元TVBSテレビの世論調査(3月20~25日実施)で60%に達した。2月中旬の前回調査から6ポイント上昇している。防疫対策に満足だと回答した人は84%にも上った。
蔡総統は4月16日、米タイム誌(電子版)への寄稿で「医療専門家や政府、民間と社会全体が防衛を固めた」などと述べ、社会が一丸となったことで成果が出たとの見方を示した。また、台湾では37人が死亡した2002~03年の重症急性呼吸器症候群(SARS)対応の教訓が生きたとも説明した。
★「共感重視」アプローチが評価 ニュージーランド★
↑共同記者発表終了後、それぞれの国旗をあしらったラグビーボールを交換するニュージーランドのアーダン首相(左)と安倍晋三首相=首相官邸で2019年9月19日、川田雅浩撮影↑
ニュージーランドの女性首相ジャシンダ・アーダン氏も感染対策で高い評価を得ている。調査会社コルマーバートンが4月3~5日に実施した調査では、3月23日に発表された全土での外出制限措置など、政府の新型コロナウイルス対応を支持する人が84%に及んだ。日本を含む主要7カ国(G7)の平均は54%だった。
首相自身の支持率は13日に発表された世論調査では過去最高の51%で、2月の結果から7ポイント上昇した。
米誌アトランティックは、アーダン氏が「世界で最も効果的な指導者かもしれない」と持ち上げた。同国のクラーク元首相は「説教をするのでなく、我々と共に立ってくれる」と指摘、39歳のアーダン氏の共感を重視したリーダーシップを評価したという。
ニュージーランドの累積感染者数は20日現在1431人で、死者は12人だ。
★「不要な死もたらした」大統領に批判 米国★
一方、世界の男性指導者の中には批判に直面する人も目立つ。
↑来日し、日本企業の幹部らを集めたレセプションであいさつするトランプ米大統領=東京都港区の米国大使公邸で2019年5月25日、手塚耕一郎撮影↑
新型コロナウイルスの累積感染者が約76万人、死者約4万人で世界最悪となった米国では、野党民主党や一部主要メディアによるトランプ米大統領への批判が続く。
「不要な死と経済的災厄をもたらした」。ペロシ下院議長(民主党)は14日、民主党下院議員あて書簡でトランプ氏の感染抑止策などを厳しく指弾した。米国では1月20日に最初の感染例が確認され、トランプ氏はパンデミック(世界的流行)化や多数の死者発生に関する警告を情報機関などから受け続けていたと報じられている。しかし、記者会見では「いずれよくなる」「完全に制御している」など楽観的発言を繰り返してきた。
トランプ氏と激しく対立してきたニューヨーク・タイムズ紙は、11日付の長文記事でトランプ政権の対応を検証し、「リスク認識が遅く適切な対応を怠った」などと問題視した。
トランプ氏が連日ホワイトハウスで行う感染抑止策の記者会見についても「事実上の再選活動」「事実に乏しい」との批判があり、主要テレビ局に生中継中止を求める署名は31万筆を超えた。
だが、トランプ氏の支持率は底堅い。米政治分析サイト「リアル・クリア・ポリティクス」による各種世論調査のまとめでは、16日段階で46%あり、不支持率(50.9%)よりは低いものの、昨年より上昇している。特に与党・共和党の支持者の支持率はロイター通信などの調査では88%に達した。
★当局抑え込み「自画自賛」反発も 中国★
↑安倍晋三首相と握手する中国の習近平国家主席(右)=大阪市北区で2019年6月27日午後7時34分(代表撮影)↑
中国は新型コロナウイルスで3000人を超える犠牲者を出し、感染拡大が最初に発生した湖北省武漢市に対する2カ月半の封鎖を8日に解除した。しかし、ロシア国境に近い地域で新たな感染者確認が報じられるなど、完全制圧とは言いがたい状況だ。
習近平指導部は封じ込め策が成果を出したとの立場だが、初動が遅れ情報公開も不十分だと国内外から批判が出た。習近平氏は3月10日に初めて武漢を視察したが、当局が収束前に「成果」を自画自賛して反発されたこともあり、武漢市民への「感謝」を繰り返すことで不満軽減を図った形だ。
★大統領と州知事が対立 ブラジル★
「我々は新型コロナウイルスだけでなく『ボルソナロ・ウイルスとも戦っている』」。AP通信のインタビューでそう言い切ったのは、ブラジル最大の州で日系人も多いサンパウロ州のジョアン・ドリア知事だ。
「ブラジルのトランプ」と揶揄(やゆ)されるボルソナロ大統領は、感染拡大阻止で厳格な外出規制を求めるドリア氏ら州知事勢と対立を続けている。新型コロナウイルス感染症を「ちょっとした風邪」などと主張して物議を醸した。
こうした状況に、医師出身で外出規制を推進するマンデッタ保健相ですら「国民が混乱する」と地元メディアで苦言を呈したほどだ。同保健相は16日解任された。
AP通信によると、直近の世論調査では国民の4分の3が外出規制に賛成している。大統領の対応への支持は3割に過ぎなかったという。ブラジルの累積感染者は約2万9000人、死者は1760人となっている。
★ハンガリー 首相権限強化 無期限に★
ハンガリーは累積感染者約1600人、死者142人と感染被害は相対的には低い。しかし議会は3月末、新型コロナウイルス対策の名目で、議会の許諾を得ず政令による統治を無期限で可能にする権限を、強権的支配で知られるオルバン首相に与えた。
議会が可決した法案は、新型コロナウイルスに関する「偽情報」の流布に最大5年の禁錮刑を科すことを可能にしている。このため、同国ですでに制約されている報道の自由がさらに悪化するとの見方が強まっている。
これに関し、欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長は強い懸念を表明。感染防止措置は必要だが「期限を設定し民主的に行われる必要がある」と独メディアのインタビューで指摘した。新法の乱用があればハンガリーに対し法的措置を取る可能性にも言及した。
★安倍政権対応「評価しない」53%★
さて我が国はどうか。20日時点で累積感染者1万219人、死者は161人だ。感染爆発への懸念がくすぶる中、安倍晋三首相の対策には批判も根強い。
新型コロナ感染拡大を受けた経済対策では「減収世帯に30万円」の給付を決めた後、連立を組む公明党の強い突き上げを受け「1人あたり10万円」への転換を余儀なくされた。安倍首相は17日の記者会見で「混乱を招いたことは私自身の責任であり、国民の皆様に心からおわびを申し上げたい」と謝罪した。
マスクを含む感染防止の保護具不足は続いており、安倍政権は「1住所に2枚」の布マスク配布を決めたが、費用が466億円に及ぶことや、防疫効果に疑念があるなどとして「アベノマスク」とSNSなどでからかわれる事態になっている。
毎日新聞の電話世論調査(4月18、19日実施)では、安倍政権の対応を「評価しない」との回答は53%で、「評価する」の39%を14ポイント上回った。内閣支持率は41%で前回(3月14、15日)の43%から2ポイント下落。不支持率は42%で前回の38%から4ポイント上がった。
**********
■我が国の場合、「日本を取り戻す。」と母国愛を前面に押し出してきた安倍政権ですが、いざ国難になると、とたんに迷走しているようでは、3.11の時に福島原発事故対応で迷走した民主党政権を批判する資格はありません。
もはや我が国の政治システムそのものが、世界に比して後進国になりさがっていることを為政者は十分に認識し、今回の新型コロナ禍を、災い転じて福となす契機にしなければなりません。
【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】
※関連情報「非常時のリーダーシップとは」
**********東京新聞2020年4月24日
<こちら特報部>非常時のリーダーシップとは
安倍首相支持率低下
新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、安倍内閣の支持率が低下している。最初の世論調査では前回より5.1ポイント減の40.4%、不支持率は43.0%に上る。その反面、主要各国では首脳の支持率が概ねアップしている。安倍晋三首相の言動や行動、政策が国民の期待に沿っていないのだとしても、各国首脳と何が違うのだろうか。(榊原宗仁、中山岳)
★死者多い国でも★
五輪イヤーとして迎えた今年の初め、共同通信の世論調査で安倍政権の内閣支持率は9.4 3 %に達した。 三月半ばでも約半数が支持したものの、そこから逆風が強まった。「オーバーシュート(爆発的患者増)」「ロックダウン(都市封鎖)」といった言葉が広まりだした同月下旬に45.5%になり、四月十~十三日の調査で40.4%に減った。
一方で、 各国首脳の支持率は上がっている。企業や自治体にコミュニケーション戦略をアドバイスするコンサルタントの岡本純子氏が調べたところ、イタリアのコンテ首相の三月の支持率は71%と、二月から27ポイント上げた。英国のジョンソン首相は三月下旬で55%になり、二月比13ポイント増。フランスのマクロン大統領も―二月中旬に51%を記録し、二月から15ポイント伸ばした。いずれも感染が急拡大し、多数の死者を出した国であるにもかかわらずだ。
欧州以外も同様。オーストラリアのモリソン首相の四月の支持率は、三月から18ポイント増の59%。韓国の聯合ニュースによれば、文在寅(ムンジェイン)大統領も二月末に42%だった支持率が四月半ばに59%まで上がった。
特に目を引くのがドイツのメルケル首相の支持率だ。三月下旬に、同上旬から11ポイント増の79%になった。
「かねて論理的と評されてきたメルケル氏は新型コロナの対応でも自分の言葉で語り、国民に寄り添う姿勢を見せてきた」(岡本氏)
その演説は各国からもたたえられている。「第二次大戦以来、最大の難局」と危機感を鮮明にし、「政治的決定を透明化し、説明することで行動の根拠を示す」と宣言。共産主義国だった旧東ドイツで育った経験を踏まえ「(外出制限などは)移動の自由を苦労して勝ち取った私のような者にとって、絶対に必要な場合にしか正当化されない。しかし今、命を救うために不可欠だ」と訴えた。
★国旗の下に集結★
一般的に、有事に国のトップの支持率は上がるとされる。一九七〇年代に、米国の政治学者ジョン・ミューラー氏が提唱した「ラリー・ザ・フラッグ効果」といわれる考え方だ。
「国難では国旗の下に集結するよう、リーダーに支持が集まる。不安を抱く国民は自分たちを守ってほしいと思い、その役割を担うリーダーヘの支持を強める。団結や連帯が必要とも思い、象徴となるリーダーに期待を寄せる」(岡本氏)
この効果が顕著に出たのが、共に米大統領を務めたブッシュ親子のケース。父親は九一年の湾岸戦争開始直後、支持率が20ポイント伸びて90%近くに達した。息子は、二〇〇一年の米中枢同時テロ前に50%強だった支持率が、発生後は90%まで伸びた。岡本氏は「危機に直面した国では指導者の支持率が上がるのが普通。上がらない方が例外」と話した。
<理念なき政策>
・布マスク配布
・動画で炎上
・給付策ドタバタ
・自分の言葉で語らず
↑緊急事態宣言の対象地域を拡大し、記者会見する安倍晋三首相=17日、首相官邸で↑
↑安倍首相が全世帯への2枚配布を表明し、郵便局に搬入された布マスク=東京都世田谷区で↑
★カギは国民との対話★
★日本の評価23%★
支持率を下げたのは安倍首相だけではない。感染者が四万六千人を超えたブラジル。四月初旬の世論調査で、39%がボルソナロ大統領の対応を「悪い」「ひどい」と評価し、三月より悪化した。新型コロナ感染症を「ただの風邪」と呼ぶなど、対策を軽視してきた手法に批判が集まっている。
世界最多の八十四万人以上が感染した米国のトランプ大統領も、三月上旬まで「米国民のリスクは低い」「暖かくなればウイルスはなくなる」と楽観論を繰り返していた。感染者が急増すると、中国からの入国制限に当初反対していた世界保健機関 (WHO)を「中国寄り」と言い始め、拠出金を停止すると表明。自らへの批判をWHOの責任に転嫁する姿勢を強めた。四月の支持率は43%と、三月下旬から6ポイント下がった。
★米も低迷 楽観視、責任転嫁要因か★
調査会社「日本リサーチセンター」(東京)によると、オーストリアに本部を置く「ギャラップ・インターナショナル・アソシェーション」が三十力国・地域の約二万八千人に聞いた世論調査でも、米国民の見方は厳しい。「自国の政府はコロナウイルスにうまく対処しているか」との問いに、「とても思う」「思う」と回答したのは42%にとどまり、二十七位だった。
日本政府への評価はさらに低い23%で、二十八位。その理由を元鳥取県知事の片山善博・早稲田大大学院教授(地方自治論)は「政策の理念が全く見えない。ピントがずれている」と分析する。迷走ぶりを象徴するのが、四百六十六億円をかけた「世帯ごとに布マスク二枚配布」と「全国民に一律十万円給付」という。布マスクは、安倍首相が「月六億枚以上(マスクの)供給を確保する」と強調しながらできなかったため、考案したとみる。一律十万円も、減収世帯に三十万円給付する案が「条件が厳しすぎる」と反発を受けて転換するなど思いつきぶりが際立つとする。
片山氏は「 評判が良さそうなことをやろうという姿勢で、危機の本質を見抜いた対策を打てていない。国のリーダーは組織をうまく動かして自治体や企業と連携することも求められるのに、安倍首相に期待するのは難しい」と切り捨てる。
東京工業大の西田亮介准教授(社会学)は、日本の死亡率は各国と比べて低く抑えられており「個々の政策がそれほど悪いとは言えない」としながら、「政策に通底する原理原則が見えない。安倍首相は強いリーダー像やメッセージを打ち出せていない」とみる。
特に、記者会見で自らの言葉で語らない姿勢を問題視する。「批判的な質問にほとんど答えず、用意された回答を繰り返すだけ。民意と支持率ばかり気にし、言葉を尽くして国民に説明したり、反対する者を説得しようとしたりする意思が見えない」と解説する。
★真摯さに欠ける★
メルケル首相の演説が評価される一方、安倍首相の話が人の心を打たないのは「真摯さに欠けているから」と指摘するのは同志社大の浜矩子教授(国際経済学)。浜氏は政治家に求められる資質に、人の痛みを想像して政策を考える「共感力」を挙げる。「安倍首相にはそれがなく、いかに得点を稼ぎ、減点を防げるかしか考えていない。ペットと戯れる動画を投稿して評価されると思っている姿勢からもにじみ出ている」
浜氏は、国の首脳に必要なのは「分け隔てなく人々に尽くせる、賢いリーダーシップ」と説く。安倍首相はその点を理解すべきだと訴えつつ、賢明さは国民一人一人にも求められるとし、こう驚鐘を鳴らす。
「しんどい時は『何でもいいから早く決めて』と思考停止に陥りがち。強権的な政治に慣れてしまうと、反対意見が言いにくい風潮になる。改憲などの議論が進めば、取り返しがつかなくなる」
【デスクメモ】
「組織はトップ次第」とよくいわれる。人間性や日ごろの態度から、「あの人のためなら」と周りがやる気になり、うまく回っていく。それは国でも同じだろうが、残念ながらそうはなっていない。今からでもいい。信頼に値する言動、行動で国民の期待に応えてほしいと切に願う。(千)2020.4.24
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**********Forbes Japan 2020年04月16日12:00
コロナ対策に成功した国々、共通点は女性リーダーの存在
↑ドイツのアンゲラ・メルケル首相(Photo by Adam Berry/Getty Images)↑
アイスランド、台湾、ドイツ、ニュージーランド、フィンランド、デンマークではいずれも、女性が危機の中で真のリーダーシップを発揮し、世界に対して模範を示している。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)は、女性には混乱に対処する能力があることを浮き彫りにした。
これらの国は小国や島国であり、例外的存在だと反論する人も多いだろう。だが、ドイツは大国だし、英国は島国であるのにもかかわらず、大きな被害を被っている。冒頭に挙げた国々を率いる女性たちは、これまでのリーダーとは違う魅力的な方法で権力を行使している。彼女らに学べることは何だろうか?
★現実と向き合う★
ドイツのアンゲラ・メルケル首相は早期から、冷静かつ断固たる姿勢を持って、国民に対して新型コロナウイルスの危険性を警告。最大で人口の7割が感染する恐れがあるとし、「真剣に受け止めるように」と呼び掛けた。ドイツは他の国々のように現実を否定したり、怒りや情報隠しに走ったりはせずに、検査を即座に開始。同国での感染者数や死者数は近隣の欧州諸国よりはるかに低く、間もなく感染抑止策を緩和できる兆しが出ている。
★決断力★
世界で最も早期かつ迅速に対応を始めたリーダーの一人が、台湾の蔡英文総統だ。蔡総統は、新型コロナウイルス流行の兆しが見え始めた1月、感染拡大防止に向けた124の措置を発表し、結果的に他の国々で取られたような封鎖措置を回避した。そして台湾は今、欧米諸国に1000万枚のマスクを提供している。CNNテレビは、蔡総統の対策を「世界で最も優れたものの一つ」と紹介。台湾は新型コロナウイルスの拡大が抑制できており、死者はわずか6人にとどまっている。
ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相は、早期から封鎖措置を断行。国内に最大限の警戒態勢を敷く方針であることと、その理由を明確に示した。国内の感染者がわずか6人だった段階から入国者に対して自主隔離を課し、その直後には外国人の入国を禁止。こうした明確な姿勢と決断力が、ニュージーランドを守っているのだ。4月中旬の時点で、同国での死者は4人にとどまっている。他国では制限措置の緩和が検討されている中、アーダーン首相は追加措置として帰国者全員に指定の場所での14日間の隔離を義務付けた。
★テクノロジーの活用★
アイスランドでは、カトリン・ヤコブスドッティル首相の指揮の下、国民全員に対し無料の新型コロナウイルス検査が提供されており、ウイルスの流行規模と致死率の実態を知る上で重要なデータが得られる見通しだ。多くの国では症状がある人のみに検査が実施されているが、アイスランドの人口に対する検査件数は韓国の5倍にも上る。また、徹底的な追跡システムも導入し、封鎖措置や学校閉鎖も回避してきた。
昨年12月にサンナ・マリン首相が世界最年少の国家元首として就任したフィンランドでは、ミレニアル世代である同首相の陣頭指揮により、ソーシャルメディア上のインフルエンサーを新型コロナウイルス対策に動員。誰もがニュースを読むわけではないことを認識した上で、さまざまな年齢層のインフルエンサーに対して、感染拡大防止に向けた正しい情報発信での協力を要請している。
★慈しみの心★
ノルウェーのアーナ・ソールバルグ首相は、テレビを通じて国内の子供たちに直接語り掛けるという革新的なアイデアを実行に移した。その数日前には、デンマークのメッテ・フレデリクセン首相が子供たちからの質問に答える3分間の短い記者会見を実施しており、ソールバルグ首相のアイデアはこれにならったものだった。
ソールバルグ首相は大人の参加を禁じた記者会見を開き、全国の子供たちから寄せられた質問に答え、恐怖を感じるのはいけないことではないのだと時間をかけて説明した。その独創性と分かりやすさに、人々は感服。女性リーダーがもっと増えたなら、こうしたシンプルで人間味にあふれるイノベーションがさらに多く生まれることだろう。
これらの女性リーダーたちが示した共感力や思いやりは、私たちに馴染みのある世の中とは別世界のものにも思える。米国のトランプ、ブラジルのボルソナロ、メキシコのロペスオブラドール、インドのモディ、フィリピンのドゥテルテ、ハンガリーのオルバン、ロシアのプーチン、そしてイスラエルのネタニヤフは対照的に、この危機を利用して恐ろしい強権体制を推し進め、他者に責任を転嫁したり、司法を手中に収めたり、ジャーナリストを悪者扱いしたり、永遠の権力を追求したりしている。
女性が他とは異なる有益なリーダーシップスタイルを持っている可能性については、長年の研究によって示されてきた。だが現状として、非常に多くの政治組織や企業が、リーダー職や成功を求める女性に対し、男性的な振る舞いを要求している。しかし、ここで示した女性首脳たちは、男性が女性から学ぶべきリーダーの資質を示す模範例だ。私たちは今こそ、その価値を認識し、より多くの女性リーダーを選ぶべきだ。
(翻訳・編集=遠藤宗生)
**********毎日新聞2020年4月21日 16時14分(最終更新 4月21日 22時13分)
独メルケル首相、台湾・蔡総統…新型コロナ対応で株を上げた女性リーダーたち
↑首脳会談や記者会見などで常に余裕のある笑顔を見せるドイツのメルケル首相=ベルリンで2018年7月20日、ベルリン支局助手メルリン・ズグエ撮影↑
パンデミック(世界的大流行)となった新型コロナウイルスの累積感染者は、米ジョンズ・ホプキンズ大のまとめで20日に240万人を超え、死者も16万5000人以上に達した。国や地域によって対応に相当の違いがあり、評価を大きく上げた政治リーダーもいれば批判の集中砲火を浴び続ける国家首脳もいる。主な国、地域での現状を眺めると、「株を上げた」女性指導者の姿が目立っている。【和田浩明/統合デジタル取材センター】
★4分の3が対応に「満足」 ドイツ★
「素晴らしい」「理性的」。ドイツのメルケル首相の新型コロナウイルス対応を、普段は辛口の欧米メディアも評価している。ドイツの国際放送ドイッチェ・ヴェレの記者は、感染抑止の必要性に関し物理学者でもあるメルケル氏が4月15日の会見で行った説明が優れているとして、英語字幕を付けた動画をツイート。AP通信も3月末の記事で「コロナウイルス危機対応で輝くメルケル」と評価した。英ガーディアンは4月2日付記事で、メルケル氏の支持率が3月末の世論調査で11ポイント急上昇し79%に達したことに触れ「驚くべき数字」と述べた。
「ドイツ第2公共放送」が4月6~8日に1175人を対象に行った定例の世論調査では、74%が政府の感染抑止策を評価した。最大500億ユーロ(5兆8500億円)の中小企業や芸術家向け給付金などの経済支援対策も69%が支持した。
多数の死者を出しているイタリア(2万3660人)、スペイン(2万453人)、フランス(1万974444人)、イギリス(1万6095人)に比べ、ドイツの死者数は4642人(いずれもジョンズ・ホプキンズ大調べ20日午前)と相対的に低い。
メルケル氏の人気の背景には、危機の最中でも冷静に対策の必要性を説き、影響を受ける人々に手厚い経済支援を提供する一方、感染被害の抑止にも一定の成果を出している点がありそうだ。
メルケル氏は15日、中小規模店舗の20日からの営業再開を認める一方、3人以上で集まることなどを禁じた接触制限を5月3日まで延長した。
★「専門家内閣」で奏功 台湾★
↑蔡英文総統=台北市の総統府で2020年1月1日午前8時51分、福岡静哉撮影↑
台湾の累積感染者数は420人で、死者は6人と少ない。早期の水際対策と徹底した隔離対策が効力を発揮したとされ、「世界最高レベルの対応」(米CNN)と評価されている。
3月19日に外国人の入港禁止措置を実施。海外から戻った人や濃厚接触者に14日間の隔離を義務づけ、違反者には最高100万台湾ドル(約360万円)の罰金を科した。マスク供給も政府が管理しており不足は報告されていない。
また、歯科医でもある陳時中・衛生福利部長(衛生相)が連日記者会見を行い、記者の質問に徹底して回答。温かい語り口もあって「鉄人大臣」として国民の信頼を獲得した。また、唐鳳(オードリー・タン)政務委員(閣僚級)はIT担当として「マスク配布システム」を仕掛け、市民エンジニアらの協力でオンライン薬局在庫表示を推進した。台湾は16日、日本側にマスク200万枚を送ると発表している。
こうした「専門家内閣」を率いる蔡英文総統の支持率は、3月末に地元TVBSテレビの世論調査(3月20~25日実施)で60%に達した。2月中旬の前回調査から6ポイント上昇している。防疫対策に満足だと回答した人は84%にも上った。
蔡総統は4月16日、米タイム誌(電子版)への寄稿で「医療専門家や政府、民間と社会全体が防衛を固めた」などと述べ、社会が一丸となったことで成果が出たとの見方を示した。また、台湾では37人が死亡した2002~03年の重症急性呼吸器症候群(SARS)対応の教訓が生きたとも説明した。
★「共感重視」アプローチが評価 ニュージーランド★
↑共同記者発表終了後、それぞれの国旗をあしらったラグビーボールを交換するニュージーランドのアーダン首相(左)と安倍晋三首相=首相官邸で2019年9月19日、川田雅浩撮影↑
ニュージーランドの女性首相ジャシンダ・アーダン氏も感染対策で高い評価を得ている。調査会社コルマーバートンが4月3~5日に実施した調査では、3月23日に発表された全土での外出制限措置など、政府の新型コロナウイルス対応を支持する人が84%に及んだ。日本を含む主要7カ国(G7)の平均は54%だった。
首相自身の支持率は13日に発表された世論調査では過去最高の51%で、2月の結果から7ポイント上昇した。
米誌アトランティックは、アーダン氏が「世界で最も効果的な指導者かもしれない」と持ち上げた。同国のクラーク元首相は「説教をするのでなく、我々と共に立ってくれる」と指摘、39歳のアーダン氏の共感を重視したリーダーシップを評価したという。
ニュージーランドの累積感染者数は20日現在1431人で、死者は12人だ。
★「不要な死もたらした」大統領に批判 米国★
一方、世界の男性指導者の中には批判に直面する人も目立つ。
↑来日し、日本企業の幹部らを集めたレセプションであいさつするトランプ米大統領=東京都港区の米国大使公邸で2019年5月25日、手塚耕一郎撮影↑
新型コロナウイルスの累積感染者が約76万人、死者約4万人で世界最悪となった米国では、野党民主党や一部主要メディアによるトランプ米大統領への批判が続く。
「不要な死と経済的災厄をもたらした」。ペロシ下院議長(民主党)は14日、民主党下院議員あて書簡でトランプ氏の感染抑止策などを厳しく指弾した。米国では1月20日に最初の感染例が確認され、トランプ氏はパンデミック(世界的流行)化や多数の死者発生に関する警告を情報機関などから受け続けていたと報じられている。しかし、記者会見では「いずれよくなる」「完全に制御している」など楽観的発言を繰り返してきた。
トランプ氏と激しく対立してきたニューヨーク・タイムズ紙は、11日付の長文記事でトランプ政権の対応を検証し、「リスク認識が遅く適切な対応を怠った」などと問題視した。
トランプ氏が連日ホワイトハウスで行う感染抑止策の記者会見についても「事実上の再選活動」「事実に乏しい」との批判があり、主要テレビ局に生中継中止を求める署名は31万筆を超えた。
だが、トランプ氏の支持率は底堅い。米政治分析サイト「リアル・クリア・ポリティクス」による各種世論調査のまとめでは、16日段階で46%あり、不支持率(50.9%)よりは低いものの、昨年より上昇している。特に与党・共和党の支持者の支持率はロイター通信などの調査では88%に達した。
★当局抑え込み「自画自賛」反発も 中国★
↑安倍晋三首相と握手する中国の習近平国家主席(右)=大阪市北区で2019年6月27日午後7時34分(代表撮影)↑
中国は新型コロナウイルスで3000人を超える犠牲者を出し、感染拡大が最初に発生した湖北省武漢市に対する2カ月半の封鎖を8日に解除した。しかし、ロシア国境に近い地域で新たな感染者確認が報じられるなど、完全制圧とは言いがたい状況だ。
習近平指導部は封じ込め策が成果を出したとの立場だが、初動が遅れ情報公開も不十分だと国内外から批判が出た。習近平氏は3月10日に初めて武漢を視察したが、当局が収束前に「成果」を自画自賛して反発されたこともあり、武漢市民への「感謝」を繰り返すことで不満軽減を図った形だ。
★大統領と州知事が対立 ブラジル★
「我々は新型コロナウイルスだけでなく『ボルソナロ・ウイルスとも戦っている』」。AP通信のインタビューでそう言い切ったのは、ブラジル最大の州で日系人も多いサンパウロ州のジョアン・ドリア知事だ。
「ブラジルのトランプ」と揶揄(やゆ)されるボルソナロ大統領は、感染拡大阻止で厳格な外出規制を求めるドリア氏ら州知事勢と対立を続けている。新型コロナウイルス感染症を「ちょっとした風邪」などと主張して物議を醸した。
こうした状況に、医師出身で外出規制を推進するマンデッタ保健相ですら「国民が混乱する」と地元メディアで苦言を呈したほどだ。同保健相は16日解任された。
AP通信によると、直近の世論調査では国民の4分の3が外出規制に賛成している。大統領の対応への支持は3割に過ぎなかったという。ブラジルの累積感染者は約2万9000人、死者は1760人となっている。
★ハンガリー 首相権限強化 無期限に★
ハンガリーは累積感染者約1600人、死者142人と感染被害は相対的には低い。しかし議会は3月末、新型コロナウイルス対策の名目で、議会の許諾を得ず政令による統治を無期限で可能にする権限を、強権的支配で知られるオルバン首相に与えた。
議会が可決した法案は、新型コロナウイルスに関する「偽情報」の流布に最大5年の禁錮刑を科すことを可能にしている。このため、同国ですでに制約されている報道の自由がさらに悪化するとの見方が強まっている。
これに関し、欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長は強い懸念を表明。感染防止措置は必要だが「期限を設定し民主的に行われる必要がある」と独メディアのインタビューで指摘した。新法の乱用があればハンガリーに対し法的措置を取る可能性にも言及した。
★安倍政権対応「評価しない」53%★
さて我が国はどうか。20日時点で累積感染者1万219人、死者は161人だ。感染爆発への懸念がくすぶる中、安倍晋三首相の対策には批判も根強い。
新型コロナ感染拡大を受けた経済対策では「減収世帯に30万円」の給付を決めた後、連立を組む公明党の強い突き上げを受け「1人あたり10万円」への転換を余儀なくされた。安倍首相は17日の記者会見で「混乱を招いたことは私自身の責任であり、国民の皆様に心からおわびを申し上げたい」と謝罪した。
マスクを含む感染防止の保護具不足は続いており、安倍政権は「1住所に2枚」の布マスク配布を決めたが、費用が466億円に及ぶことや、防疫効果に疑念があるなどとして「アベノマスク」とSNSなどでからかわれる事態になっている。
毎日新聞の電話世論調査(4月18、19日実施)では、安倍政権の対応を「評価しない」との回答は53%で、「評価する」の39%を14ポイント上回った。内閣支持率は41%で前回(3月14、15日)の43%から2ポイント下落。不支持率は42%で前回の38%から4ポイント上がった。
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■我が国の場合、「日本を取り戻す。」と母国愛を前面に押し出してきた安倍政権ですが、いざ国難になると、とたんに迷走しているようでは、3.11の時に福島原発事故対応で迷走した民主党政権を批判する資格はありません。
もはや我が国の政治システムそのものが、世界に比して後進国になりさがっていることを為政者は十分に認識し、今回の新型コロナ禍を、災い転じて福となす契機にしなければなりません。
【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】
※関連情報「非常時のリーダーシップとは」
**********東京新聞2020年4月24日
<こちら特報部>非常時のリーダーシップとは
安倍首相支持率低下
新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、安倍内閣の支持率が低下している。最初の世論調査では前回より5.1ポイント減の40.4%、不支持率は43.0%に上る。その反面、主要各国では首脳の支持率が概ねアップしている。安倍晋三首相の言動や行動、政策が国民の期待に沿っていないのだとしても、各国首脳と何が違うのだろうか。(榊原宗仁、中山岳)
★死者多い国でも★
五輪イヤーとして迎えた今年の初め、共同通信の世論調査で安倍政権の内閣支持率は9.4 3 %に達した。 三月半ばでも約半数が支持したものの、そこから逆風が強まった。「オーバーシュート(爆発的患者増)」「ロックダウン(都市封鎖)」といった言葉が広まりだした同月下旬に45.5%になり、四月十~十三日の調査で40.4%に減った。
一方で、 各国首脳の支持率は上がっている。企業や自治体にコミュニケーション戦略をアドバイスするコンサルタントの岡本純子氏が調べたところ、イタリアのコンテ首相の三月の支持率は71%と、二月から27ポイント上げた。英国のジョンソン首相は三月下旬で55%になり、二月比13ポイント増。フランスのマクロン大統領も―二月中旬に51%を記録し、二月から15ポイント伸ばした。いずれも感染が急拡大し、多数の死者を出した国であるにもかかわらずだ。
欧州以外も同様。オーストラリアのモリソン首相の四月の支持率は、三月から18ポイント増の59%。韓国の聯合ニュースによれば、文在寅(ムンジェイン)大統領も二月末に42%だった支持率が四月半ばに59%まで上がった。
特に目を引くのがドイツのメルケル首相の支持率だ。三月下旬に、同上旬から11ポイント増の79%になった。
「かねて論理的と評されてきたメルケル氏は新型コロナの対応でも自分の言葉で語り、国民に寄り添う姿勢を見せてきた」(岡本氏)
その演説は各国からもたたえられている。「第二次大戦以来、最大の難局」と危機感を鮮明にし、「政治的決定を透明化し、説明することで行動の根拠を示す」と宣言。共産主義国だった旧東ドイツで育った経験を踏まえ「(外出制限などは)移動の自由を苦労して勝ち取った私のような者にとって、絶対に必要な場合にしか正当化されない。しかし今、命を救うために不可欠だ」と訴えた。
★国旗の下に集結★
一般的に、有事に国のトップの支持率は上がるとされる。一九七〇年代に、米国の政治学者ジョン・ミューラー氏が提唱した「ラリー・ザ・フラッグ効果」といわれる考え方だ。
「国難では国旗の下に集結するよう、リーダーに支持が集まる。不安を抱く国民は自分たちを守ってほしいと思い、その役割を担うリーダーヘの支持を強める。団結や連帯が必要とも思い、象徴となるリーダーに期待を寄せる」(岡本氏)
この効果が顕著に出たのが、共に米大統領を務めたブッシュ親子のケース。父親は九一年の湾岸戦争開始直後、支持率が20ポイント伸びて90%近くに達した。息子は、二〇〇一年の米中枢同時テロ前に50%強だった支持率が、発生後は90%まで伸びた。岡本氏は「危機に直面した国では指導者の支持率が上がるのが普通。上がらない方が例外」と話した。
<理念なき政策>
・布マスク配布
・動画で炎上
・給付策ドタバタ
・自分の言葉で語らず
↑緊急事態宣言の対象地域を拡大し、記者会見する安倍晋三首相=17日、首相官邸で↑
↑安倍首相が全世帯への2枚配布を表明し、郵便局に搬入された布マスク=東京都世田谷区で↑
★カギは国民との対話★
★日本の評価23%★
支持率を下げたのは安倍首相だけではない。感染者が四万六千人を超えたブラジル。四月初旬の世論調査で、39%がボルソナロ大統領の対応を「悪い」「ひどい」と評価し、三月より悪化した。新型コロナ感染症を「ただの風邪」と呼ぶなど、対策を軽視してきた手法に批判が集まっている。
世界最多の八十四万人以上が感染した米国のトランプ大統領も、三月上旬まで「米国民のリスクは低い」「暖かくなればウイルスはなくなる」と楽観論を繰り返していた。感染者が急増すると、中国からの入国制限に当初反対していた世界保健機関 (WHO)を「中国寄り」と言い始め、拠出金を停止すると表明。自らへの批判をWHOの責任に転嫁する姿勢を強めた。四月の支持率は43%と、三月下旬から6ポイント下がった。
★米も低迷 楽観視、責任転嫁要因か★
調査会社「日本リサーチセンター」(東京)によると、オーストリアに本部を置く「ギャラップ・インターナショナル・アソシェーション」が三十力国・地域の約二万八千人に聞いた世論調査でも、米国民の見方は厳しい。「自国の政府はコロナウイルスにうまく対処しているか」との問いに、「とても思う」「思う」と回答したのは42%にとどまり、二十七位だった。
日本政府への評価はさらに低い23%で、二十八位。その理由を元鳥取県知事の片山善博・早稲田大大学院教授(地方自治論)は「政策の理念が全く見えない。ピントがずれている」と分析する。迷走ぶりを象徴するのが、四百六十六億円をかけた「世帯ごとに布マスク二枚配布」と「全国民に一律十万円給付」という。布マスクは、安倍首相が「月六億枚以上(マスクの)供給を確保する」と強調しながらできなかったため、考案したとみる。一律十万円も、減収世帯に三十万円給付する案が「条件が厳しすぎる」と反発を受けて転換するなど思いつきぶりが際立つとする。
片山氏は「 評判が良さそうなことをやろうという姿勢で、危機の本質を見抜いた対策を打てていない。国のリーダーは組織をうまく動かして自治体や企業と連携することも求められるのに、安倍首相に期待するのは難しい」と切り捨てる。
東京工業大の西田亮介准教授(社会学)は、日本の死亡率は各国と比べて低く抑えられており「個々の政策がそれほど悪いとは言えない」としながら、「政策に通底する原理原則が見えない。安倍首相は強いリーダー像やメッセージを打ち出せていない」とみる。
特に、記者会見で自らの言葉で語らない姿勢を問題視する。「批判的な質問にほとんど答えず、用意された回答を繰り返すだけ。民意と支持率ばかり気にし、言葉を尽くして国民に説明したり、反対する者を説得しようとしたりする意思が見えない」と解説する。
★真摯さに欠ける★
メルケル首相の演説が評価される一方、安倍首相の話が人の心を打たないのは「真摯さに欠けているから」と指摘するのは同志社大の浜矩子教授(国際経済学)。浜氏は政治家に求められる資質に、人の痛みを想像して政策を考える「共感力」を挙げる。「安倍首相にはそれがなく、いかに得点を稼ぎ、減点を防げるかしか考えていない。ペットと戯れる動画を投稿して評価されると思っている姿勢からもにじみ出ている」
浜氏は、国の首脳に必要なのは「分け隔てなく人々に尽くせる、賢いリーダーシップ」と説く。安倍首相はその点を理解すべきだと訴えつつ、賢明さは国民一人一人にも求められるとし、こう驚鐘を鳴らす。
「しんどい時は『何でもいいから早く決めて』と思考停止に陥りがち。強権的な政治に慣れてしまうと、反対意見が言いにくい風潮になる。改憲などの議論が進めば、取り返しがつかなくなる」
【デスクメモ】
「組織はトップ次第」とよくいわれる。人間性や日ごろの態度から、「あの人のためなら」と周りがやる気になり、うまく回っていく。それは国でも同じだろうが、残念ながらそうはなっていない。今からでもいい。信頼に値する言動、行動で国民の期待に応えてほしいと切に願う。(千)2020.4.24
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