■群馬県の観光発展に貢献してきた前橋市のはらぼじ観光は、群馬県の観光行政の元締めである観光局観光物産課が旅行業法に定めてある法律を、業界の実態を知らぬまま、立入り検査などで前時代的な検査マニュアルをかざして嫌がらせをしてきたため、旅行業の登録をしていても、群馬県の観光業の発展には阻害要因にしかならないと判断し、自ら登録を返上しました。そして、旅行者に対して直接債務を負わない形での新しいビジネスモデルに着眼し、顧客で宿泊業者らに事前に説明した上で取引をして、宿泊業者からも、利用客からも、双方から喜ばれていました。
ところがそれを妬んだ旅行業協会が、はらぼじ観光を告訴し、告訴状を送りつけたため、司直は、地元の政治の圧力もあったらしく、最初のうちは渋々捜査をしていましたが、そのうち、選挙の時期が過ぎてしまい、関心がなくなっていたところ、再度ハッパが上層部から掛けられたためか、今年の春、ようやく検察がはらぼじ観光の元社長を起訴し、8月から裁判所で審理が行われています。
そして、平成25年11月18日(月)午後1時半から、この事件(事件番号:平成25年(ろ)第9号旅行業法違反、裁判官:高橋芳久)に掛かる審理の一環として、前橋簡易裁判所の2号法廷で第4回目の弁論が行われました。
傍聴席は1、2席を残して後は全て傍聴者らで埋まりました。定刻1時30分から2、3分遅れて裁判官が姿を現しました。全員起立し、礼をして着席し、いよいよ第4回公判が始まりました。被告人質問におけるやりとりはおおよそ次のとおりです。
**********
<被告人質問>
【弁護人原田】平成16年(2004年)10月の旅行業更新手続きの時に県庁の立ち入り検査を拒否しても、更新登録完了の書類が県庁から郵送された、と「松浦の主張」にありますが、なぜ、立ち入り検査を拒否したのですか?
【被告人松浦】立ち入り検査マニュアルの時代遅れ、現実離れしていることを問題にし、指摘したかったからです。インターネットで旅行商品が販売できるようになり、ありふれた旅行商品はインターネット業界にそっくり取られている。それなのに既存の店舗で営業している業者には「カウンターがどこにある」「料金表を貼り出しているか」「資格者はいるか」などの意味のない検査マニュアルを強要していることを指摘したかった。
【弁護人】拒否しても、県庁から何の連絡もなく登録更新されたのですね?
【被告人】そうです。そして、立ち入り検査と、登録制度がいかに形式的なものなのか、ということを知りました。
【弁護人】松浦の主張で平成19年(2007年)2月に突然、公機関から接触があった事実を記録してあります。「前橋合同庁舎内、旅行業管轄部署の圧力」「群馬県庁、旅行業管轄部署の圧力」「中学校の娘の担任と学年主任からの圧力」「伊勢崎警察署警察官の自宅訪問」そして、2007年7月22日に群馬県知事選挙があった。一連の公権力からの接触で、何を感じ、接触に対してどう対処しましたか?
【被告人】最初の前橋市上細井町の合同庁舎内の旅行業を管轄する部署からの、立ち入り検査の依頼はどういう意味かがわからなかったので、立ち入り検査マニュアルの時代遅れを指摘しました。検査マニュアルと現実がマッチしていない。そんな形式上の検査は拒否する、と答え、県職員もそれで引き下がりました。続いて、県庁内の観光物産課か当時の国際観光課からの立ち入り検査の依頼で、選挙運動への圧力だとわかりました。娘の担任の先生と学年主任の先生とからの呼び出しは、松浦の方が逆に先生二人に苦言を言うだけのものでした。桃の木小学校です。伊勢崎警察の若い警察官が来たのは、上司の指示で圧力の目的は知らなかったようです。数年以上の間、役所からの接触など何もなかったのに1ヶ月の間に4ヶ所の役所から接触を図られました。その時、選挙運動をしていた仲間の話では、選挙運動への圧力は日常茶飯事だという話しがあります。
【弁護人】旅行業登録放棄と選挙運動への圧力が深い関わりがあるということですね?
【被告人】そうです。県職員が小寺知事を知事選で勝たせるために、対立候補を目立って応援していた私に立ち入り検査やその他の理由をつけて圧力をかけてきた。選挙運動の内容は自治会長宛、私のお客さん、高校の同窓会名簿、を対象に3万通程度のダイレクトメールをした。前年秋から私のお客さんの出発地へ候補者を向かわせて顔を売るようにしたことなどです。許認可があるから不当な圧力を受けなければならない。不当な圧力から逃げたいという気持ちはずっとありました。
【弁護人】はらぼじ観光を刑事告訴した、全国旅行業協会にしても、群馬県旅行業協会にしても一度も会ったこともないし、指導も受けていない、ということですね?
【被告人】そうです。一度も会ったことはありません。
【弁護人】以前、旅行業協会に入会していたということですが、その時、協会内ではどんなことをしていましたか?
【被告人】共同企画で積極的に集客したり(はらぼじ観光が一番多く集客したこともありました)会員の研修旅行には母親が数回参加しています。会員の中では積極的に会の活動に参加しています。
【弁護人】辞めた理由はなぜですか?
【被告人】旅行業協会が、私にとっても、世の中全体にとっても、ためにならない存在だと思ったからです。規制、他社排除ばかりで、独自性のある強い会社にすることができなくなります。
【弁護人】辞めたということは、具体的にどういうことですか?
【被告人】新たに1100万円を、供託し、登録をし直すということです。弁済負担金分担金はそのまま1年近く預けたままです。1100万円を工面してまで、登録をし直しました。
【弁護人】旅行業登録を受けていたとき、県庁職員の指導管理を拒否したのはなぜですか?
【被告人】県職員が現実を何もしらないで、時代遅れのマニュアルで形式的な検査は必要がないと思ったからです。立ち入り検査を理由にして選挙運動に圧力をかける。そういう違法行為を受け入れることはないという思いからです。登録返上後は県の担当部署にしても旅行業協会にしても、はらぼじ観光を指導管理しようとは全くしていない。唯一の連絡が来たのは登録返上直後にホームページに以前使っていた登録番号が載っているのを電話で指摘されたときだけ。これは単なる消し忘れですぐに消しています。
【弁護人】平成23年(2011年)4月19日、全国旅行業協会からの通知、刑事告訴するぞ!という内容の内容証明書郵便が来ています。登録返上から3年、旅行業協会も県庁も何もかかわってこなかったのに突然、事前の話し合いもなしに、告訴するぞ、の通知が来たのですね?
【被告人】3年の間、何もなく営業していたのに、突然、通知が来ました。弁護士7人の連名での通知ですが、その弁護士事務所に電話を2回しても、誰一人の弁護士も電話に出ません。選挙への圧力の経験から、これは悪意によるもので何かのウラがあると考え、告訴されたら、されたで戦えばよいと思い、「刑事告訴の御礼」という返事を全国旅行業協会、その群馬県支部、埼玉県支部、新潟県支部、に送っています。
【弁護人】供述調書の中身、警察官が調書をとった内容です。「9月11日 中村第2老人会 高橋正一証言」「9月23日 行幸田グラウンドゴルフ 真下英男証言」「11月11日 岩鞍リゾートホテル 星野松江証言」「平成24年(2012年)1月13日 全国旅行業協会群馬県支部 青木穣証言」(ちなみに4月10日群馬県議会議員選挙が行われた)「4月11日 (2度目の)岩鞍リゾートホテル 星野松江証言」「4月17日 岩鞍リゾートホテル 吉野証言」(ちなみに4月19日、はらぼじ観光への強制捜査。被害者がいない、緊急性のない事件の捜査で17人の警察官がやってきて、仕事ができない状態にされた)「5月3日 岩鞍リゾートホテル 星野寛(県議)証言」そして、裁判が始まるのは翌年、1年と2ヶ月経ってから。供述調書を読んで何を感じましたか?
【被告人】契約ホテルが30数軒あるのに、一つのホテルだけに、限定して捜査に行っている。強制捜査の前年11月11日に岩鞍リゾートホテルに警察官が行って、社長夫人で副支配人の星野松江から調書をとっている。私は選挙運動への圧力を経験しているからわかるのですが、これは、選挙を前にした不当な圧力です。そして4月10日の県会議員選挙の翌日の4月11日に同じ岩鞍リゾートホテルにまた警察官が行って同じ星野松江の証言を取っています。さらに4月17日には前橋東警察署に呼び出し証言をとっているのは、岩鞍リゾートホテルの社員ではらぼじ観光の担当だった吉野。4月19日には強制捜査、17人の警察官が大挙してやってきました。百歩譲って、はらぼじ観光の仕事が違法だったとしても、一人か二人の警察官がやってきて、事情を聞けばよいことです。正直に何もかも公開して仕事をしていました。押収品として預金通帳全部をもっていかれました。金の流れを調べて、岩鞍リゾートホテルの白バス行為を見つけることが目的だったのでしょう。同じく押収品として持っていった、はらぼじ観光のシステムをすぐには調べていません。パソコンのカギがないと開かないのに、そのカギを松浦の側から「カギがないと調べられないでしょ」と指摘した始末ですから。5月3日には社長で県会議員に当選したばかりの星野寛の証言を取っています。はらぼじ観光の契約ホテル旅館は30数軒あったのに、岩鞍リゾートホテルだけに警察官が何度も行っていることから、はらぼじ観光の容疑は岩鞍リゾートホテルに警察が行く理由作りだった。
【弁護人】6月15日大金グランドホテル和田茂証言、 はらぼじ観光の契約ホテルの中で岩鞍リゾートホテル以外のホテルへ、警察がはじめて行っていますが、被告人はこれはどういうことだと感じましたか?
【被告人】一つだけのホテルに行ったことのカモフラージュではないでしょうか?
【弁護人】被告人は、あらためて、旅行業法と旅行業法施行規則を読み直して、何を主張したいのですか?
【被告人】総合案内所(予約センター)とランドオペレーターが合法だという文面がないこと。地域限定という供託金100万円の資格が追加されたこと。はらぼじ観光の業種は地域限定です。そういう意味からも昨年以前は法規制に触れない部分の仕事で、違法性はありません。総合案内所(予約センター)とはらぼじ観光が業態が同じなのは「契約先に限定して広告している」「契約金をいただいての契約」「お客さんから対価は受けとらないから債務が発生しない」「歩合的な手数料はお客さんがサービスを受けた後で契約先からいただく」具体的にそういう点で同じです。刑事告訴した旅行業協会が賛助会員として多くの事業所を認めています。今はなくなったかどうかはわかりませんが、旅行業法施行規則でも債務が発生しないので違法でない、と言っています。
<検事からの質問>
【北村検事】警察の誰が、××したのですか?
【被告人】××××××××××××××××××××××××
【北村検事】総合案内所と違って、松浦のしていた仕事は消費者と直接接していますね。事故が起きた時の責任はどうするのですか?
【被告人】消費者と直接接しています。日航機の事故、JRの事故資格や既得権に守られたものが大きな事故を起こしているというというのが現実です。はらぼじ観光の仕事は、事故の責任は契約先であるホテル旅館の側にあります。はらぼじ観光は契約先を広告することが仕事です。はらぼじ観光は自ら宿泊サービスにしても無料の範囲で行っている送迎サービスを提供もしていません。もちろん、事故を起こすような施設を紹介した道義的な責任はあるでしょうから、社会的に抹殺される覚悟はできています。事故が起きなくても、警察が来たことで、このように会社をつぶしてまで、真実を問うているのですから。
**********
■第4回公判はおよそ1時間続きました。被告人であるはらぼじ観光の元代表者は、捜査の異常性や、その背景なども含めて、事件の内容分析まで踏み込んだ説明をしたため、傍聴席では、いつ裁判官や検察側から発言を止められてしまうのか、ハラハラしながら、聞き入っていました。
被告人質問が終わると、裁判官と検察、弁護人の3者で、次回5回目の公判の日程が打ち合わされました。その結果、第5回公判は、年末の日程が立て込んでいるという裁判所の都合により、平成26年1月20日(月)午前10:00から前橋簡易裁判所で開かれることが決まりました。
証拠調べが終わったとして、次回はいよいよ検察官が刑事訴訟法293条に基づいて行う、事実及び法律の適用についての意見陳述、つまり論告が行われます。この中で、もしかしたら、容疑の罰状に関する意見が述べられるかもしれません。この場合は、論告求刑ということになります。
■それにしても旅行業法違反行為というのは、どういう事例があるのでしょう。ネットで調べてみました。
旅行業法における旅行業の定義として、①報酬を得て、②旅行業務を行う、③事業のことだとされています。
このうち①報酬については、旅行者から受け取る「取扱い手数料」、宿泊運送機関から受け取る「販売手数料」、自己で旅行を実施した結果得る「利益」だということです。
②旅行業務については、旅行の企画・実施、運送・宿泊機関との計画に係る「基本的旅行業務」、食事や観光等、添乗・渡航手続代行等に係る「付随的旅行業務」、旅行相談に係る「旅行相談業務」に分類されるようです。
③業務については、上記の旅行業務を繰り返して続けることだということです。
■したがって、旅行業に該当しない業務として次の例があるようです。
1 運送機関の代理行為のみを行う行為(例:道路沿いのガソリンスタンドがカーフェリー切符を販売。コンビニで航空券、鉄道やバス切符の販売)
2 手配代行業者(例:ツアーオペレータ、ランドオペレーター。これらは運送・宿泊機関と旅行業者の間に入り、運送機関、ホテル、食事等の手配を専門的に扱う業者で、直接旅行者と取引関係が生じないので旅行業には非該当)
3 添乗員派遣業者
4 運送・宿泊以外のサービスのみを手配する場合(例:演劇、催し物等の入場券を販売するプレイガイド)。
5 運送・宿泊機関が行う自社業務範囲内の行為(例:バス会社が自社のバスを使って営業する日帰り旅行。※日帰りでなくお泊り旅行の場合はどうなのか?)
■旅行業法では、旅行者の保護を図るために、一定の営業保証金を供託所に供託し、そのことを役所に届けるのだそうです。
つまり、本来、旅行業法の原点は、旅行者を騙してカネを持ち逃げしないように、供託金を預けさせることです。
こうしてみると、はらぼじ観光が、旅行者と金銭の授受をしていないと主張しているので、この観点から、旅行業に該当しないことになります。
また、いろいろな輸送・宿泊施設の情報を旅行者に提供して、それをもとに旅行者が自ら輸送・宿泊施設を選択して利用する場合、輸送・宿泊施設の情報を旅行者に提供して、輸送・宿泊施設から広告費として対価を受け取る事業は、運送・宿泊機関の広報活動行為のみを行う行為であり旅行業に該当しないことになります。
■ここで、どうしても分からないのは、運送機関の代理行為のみを行う行為は、旅行業に非該当であるのに、なぜ宿泊機関の代理行為のみを行う行為が、非該当であると明記されていないことです。
このことについて、はらぼじ観光では、「旅行業協会が賛助会員として傘下においている予約センターあるいは総合案内所という業態は、旅行業の資格なしで、予約の媒介をする仕事を専門に行っている」と主張しています。この背景として、受け取る手数料は客がサービスを受けた後なので、取り逃げの可能性がないため、旅行業に非該当だという判断根拠があるようです。
そうすると、輸送・宿泊施設の予約の媒介をしている予約センターのような旅行会社は、旅行者から直接金銭の授受がないため、旅行業とは見なされていないという理屈は理解できます。同じように、輸送・宿泊施設の予約の媒介をしている通常の旅行会社は、旅行者の求めに応じて手配しているため、そこに旅行者からの金銭の授受があるから旅行業法に該当するという考え方も理解できます。
■ではなぜ、旅行者からカネを受け取っていないのに、旅行業協会から、はらぼじ観光だけが、捜査時期から1年半も遅れてから起訴されたのか、という疑問が生じます。
第4回公判で、検察側が「総合案内所と違って、松浦(=はらぼじ)のしていた仕事は消費者と直接接していますね。事故が起きた時の責任はどうするのか?」とわざわざ聞いています。どうやら、はらぼじのしていたことは消費者(=旅行者)と直接コンタクトしていたことを暗に批判して違法性を仄めかしているようです。
しかし旅行業法では、旅行者との間で金銭の授受が無ければ旅行業に非該当だとしていることから、検察側のこの論理が良く分かりません。
■むしろ、旅行業協会は、はらぼじ観光に対して、このような言いがかりをつける暇があったら、消費者に対して、もっと積極的にコンタクトして、消費者から旅行者に変化してもらい、交通・宿泊施設をもっと利用するように、業界で自由にビジネスモデルを提案し実行できるような雰囲気気作りを目指すべきでしょう。
とにかく、消費者=旅行者の保護がきちんと担保されていれば、どのようなビジネス形態でも、観光産業の活性化という成果が出せれば問題ないはずです。
にもかかわらず、こうして小規模な個人経営の旅行業者をいじめるだけで、業界のことも旅行者の気持ちも分かろうとしない県の観光行政に携わる職員らに、立入検査権を付与させて、前時代的なマニュアルで業界を縛ろうとするのは、百害あって一利なしだと痛感させられます。
■そのため、はらぼじ観光被疑事件の第4回公判が終わった後、市民オンブズマン群馬では群馬県の観光行政を司る県観光物産課を訪れて、彼らから、旅行業法の解釈と運用の仕方、そして、はらぼじ観光だけがなぜこのような仕打ちに遭うのかについて、彼らの見解を聞いてみることにしました。
【市民オンブズマン群馬からの報告・この項続く】
ところがそれを妬んだ旅行業協会が、はらぼじ観光を告訴し、告訴状を送りつけたため、司直は、地元の政治の圧力もあったらしく、最初のうちは渋々捜査をしていましたが、そのうち、選挙の時期が過ぎてしまい、関心がなくなっていたところ、再度ハッパが上層部から掛けられたためか、今年の春、ようやく検察がはらぼじ観光の元社長を起訴し、8月から裁判所で審理が行われています。
そして、平成25年11月18日(月)午後1時半から、この事件(事件番号:平成25年(ろ)第9号旅行業法違反、裁判官:高橋芳久)に掛かる審理の一環として、前橋簡易裁判所の2号法廷で第4回目の弁論が行われました。
傍聴席は1、2席を残して後は全て傍聴者らで埋まりました。定刻1時30分から2、3分遅れて裁判官が姿を現しました。全員起立し、礼をして着席し、いよいよ第4回公判が始まりました。被告人質問におけるやりとりはおおよそ次のとおりです。
**********
<被告人質問>
【弁護人原田】平成16年(2004年)10月の旅行業更新手続きの時に県庁の立ち入り検査を拒否しても、更新登録完了の書類が県庁から郵送された、と「松浦の主張」にありますが、なぜ、立ち入り検査を拒否したのですか?
【被告人松浦】立ち入り検査マニュアルの時代遅れ、現実離れしていることを問題にし、指摘したかったからです。インターネットで旅行商品が販売できるようになり、ありふれた旅行商品はインターネット業界にそっくり取られている。それなのに既存の店舗で営業している業者には「カウンターがどこにある」「料金表を貼り出しているか」「資格者はいるか」などの意味のない検査マニュアルを強要していることを指摘したかった。
【弁護人】拒否しても、県庁から何の連絡もなく登録更新されたのですね?
【被告人】そうです。そして、立ち入り検査と、登録制度がいかに形式的なものなのか、ということを知りました。
【弁護人】松浦の主張で平成19年(2007年)2月に突然、公機関から接触があった事実を記録してあります。「前橋合同庁舎内、旅行業管轄部署の圧力」「群馬県庁、旅行業管轄部署の圧力」「中学校の娘の担任と学年主任からの圧力」「伊勢崎警察署警察官の自宅訪問」そして、2007年7月22日に群馬県知事選挙があった。一連の公権力からの接触で、何を感じ、接触に対してどう対処しましたか?
【被告人】最初の前橋市上細井町の合同庁舎内の旅行業を管轄する部署からの、立ち入り検査の依頼はどういう意味かがわからなかったので、立ち入り検査マニュアルの時代遅れを指摘しました。検査マニュアルと現実がマッチしていない。そんな形式上の検査は拒否する、と答え、県職員もそれで引き下がりました。続いて、県庁内の観光物産課か当時の国際観光課からの立ち入り検査の依頼で、選挙運動への圧力だとわかりました。娘の担任の先生と学年主任の先生とからの呼び出しは、松浦の方が逆に先生二人に苦言を言うだけのものでした。桃の木小学校です。伊勢崎警察の若い警察官が来たのは、上司の指示で圧力の目的は知らなかったようです。数年以上の間、役所からの接触など何もなかったのに1ヶ月の間に4ヶ所の役所から接触を図られました。その時、選挙運動をしていた仲間の話では、選挙運動への圧力は日常茶飯事だという話しがあります。
【弁護人】旅行業登録放棄と選挙運動への圧力が深い関わりがあるということですね?
【被告人】そうです。県職員が小寺知事を知事選で勝たせるために、対立候補を目立って応援していた私に立ち入り検査やその他の理由をつけて圧力をかけてきた。選挙運動の内容は自治会長宛、私のお客さん、高校の同窓会名簿、を対象に3万通程度のダイレクトメールをした。前年秋から私のお客さんの出発地へ候補者を向かわせて顔を売るようにしたことなどです。許認可があるから不当な圧力を受けなければならない。不当な圧力から逃げたいという気持ちはずっとありました。
【弁護人】はらぼじ観光を刑事告訴した、全国旅行業協会にしても、群馬県旅行業協会にしても一度も会ったこともないし、指導も受けていない、ということですね?
【被告人】そうです。一度も会ったことはありません。
【弁護人】以前、旅行業協会に入会していたということですが、その時、協会内ではどんなことをしていましたか?
【被告人】共同企画で積極的に集客したり(はらぼじ観光が一番多く集客したこともありました)会員の研修旅行には母親が数回参加しています。会員の中では積極的に会の活動に参加しています。
【弁護人】辞めた理由はなぜですか?
【被告人】旅行業協会が、私にとっても、世の中全体にとっても、ためにならない存在だと思ったからです。規制、他社排除ばかりで、独自性のある強い会社にすることができなくなります。
【弁護人】辞めたということは、具体的にどういうことですか?
【被告人】新たに1100万円を、供託し、登録をし直すということです。弁済負担金分担金はそのまま1年近く預けたままです。1100万円を工面してまで、登録をし直しました。
【弁護人】旅行業登録を受けていたとき、県庁職員の指導管理を拒否したのはなぜですか?
【被告人】県職員が現実を何もしらないで、時代遅れのマニュアルで形式的な検査は必要がないと思ったからです。立ち入り検査を理由にして選挙運動に圧力をかける。そういう違法行為を受け入れることはないという思いからです。登録返上後は県の担当部署にしても旅行業協会にしても、はらぼじ観光を指導管理しようとは全くしていない。唯一の連絡が来たのは登録返上直後にホームページに以前使っていた登録番号が載っているのを電話で指摘されたときだけ。これは単なる消し忘れですぐに消しています。
【弁護人】平成23年(2011年)4月19日、全国旅行業協会からの通知、刑事告訴するぞ!という内容の内容証明書郵便が来ています。登録返上から3年、旅行業協会も県庁も何もかかわってこなかったのに突然、事前の話し合いもなしに、告訴するぞ、の通知が来たのですね?
【被告人】3年の間、何もなく営業していたのに、突然、通知が来ました。弁護士7人の連名での通知ですが、その弁護士事務所に電話を2回しても、誰一人の弁護士も電話に出ません。選挙への圧力の経験から、これは悪意によるもので何かのウラがあると考え、告訴されたら、されたで戦えばよいと思い、「刑事告訴の御礼」という返事を全国旅行業協会、その群馬県支部、埼玉県支部、新潟県支部、に送っています。
【弁護人】供述調書の中身、警察官が調書をとった内容です。「9月11日 中村第2老人会 高橋正一証言」「9月23日 行幸田グラウンドゴルフ 真下英男証言」「11月11日 岩鞍リゾートホテル 星野松江証言」「平成24年(2012年)1月13日 全国旅行業協会群馬県支部 青木穣証言」(ちなみに4月10日群馬県議会議員選挙が行われた)「4月11日 (2度目の)岩鞍リゾートホテル 星野松江証言」「4月17日 岩鞍リゾートホテル 吉野証言」(ちなみに4月19日、はらぼじ観光への強制捜査。被害者がいない、緊急性のない事件の捜査で17人の警察官がやってきて、仕事ができない状態にされた)「5月3日 岩鞍リゾートホテル 星野寛(県議)証言」そして、裁判が始まるのは翌年、1年と2ヶ月経ってから。供述調書を読んで何を感じましたか?
【被告人】契約ホテルが30数軒あるのに、一つのホテルだけに、限定して捜査に行っている。強制捜査の前年11月11日に岩鞍リゾートホテルに警察官が行って、社長夫人で副支配人の星野松江から調書をとっている。私は選挙運動への圧力を経験しているからわかるのですが、これは、選挙を前にした不当な圧力です。そして4月10日の県会議員選挙の翌日の4月11日に同じ岩鞍リゾートホテルにまた警察官が行って同じ星野松江の証言を取っています。さらに4月17日には前橋東警察署に呼び出し証言をとっているのは、岩鞍リゾートホテルの社員ではらぼじ観光の担当だった吉野。4月19日には強制捜査、17人の警察官が大挙してやってきました。百歩譲って、はらぼじ観光の仕事が違法だったとしても、一人か二人の警察官がやってきて、事情を聞けばよいことです。正直に何もかも公開して仕事をしていました。押収品として預金通帳全部をもっていかれました。金の流れを調べて、岩鞍リゾートホテルの白バス行為を見つけることが目的だったのでしょう。同じく押収品として持っていった、はらぼじ観光のシステムをすぐには調べていません。パソコンのカギがないと開かないのに、そのカギを松浦の側から「カギがないと調べられないでしょ」と指摘した始末ですから。5月3日には社長で県会議員に当選したばかりの星野寛の証言を取っています。はらぼじ観光の契約ホテル旅館は30数軒あったのに、岩鞍リゾートホテルだけに警察官が何度も行っていることから、はらぼじ観光の容疑は岩鞍リゾートホテルに警察が行く理由作りだった。
【弁護人】6月15日大金グランドホテル和田茂証言、 はらぼじ観光の契約ホテルの中で岩鞍リゾートホテル以外のホテルへ、警察がはじめて行っていますが、被告人はこれはどういうことだと感じましたか?
【被告人】一つだけのホテルに行ったことのカモフラージュではないでしょうか?
【弁護人】被告人は、あらためて、旅行業法と旅行業法施行規則を読み直して、何を主張したいのですか?
【被告人】総合案内所(予約センター)とランドオペレーターが合法だという文面がないこと。地域限定という供託金100万円の資格が追加されたこと。はらぼじ観光の業種は地域限定です。そういう意味からも昨年以前は法規制に触れない部分の仕事で、違法性はありません。総合案内所(予約センター)とはらぼじ観光が業態が同じなのは「契約先に限定して広告している」「契約金をいただいての契約」「お客さんから対価は受けとらないから債務が発生しない」「歩合的な手数料はお客さんがサービスを受けた後で契約先からいただく」具体的にそういう点で同じです。刑事告訴した旅行業協会が賛助会員として多くの事業所を認めています。今はなくなったかどうかはわかりませんが、旅行業法施行規則でも債務が発生しないので違法でない、と言っています。
<検事からの質問>
【北村検事】警察の誰が、××したのですか?
【被告人】××××××××××××××××××××××××
【北村検事】総合案内所と違って、松浦のしていた仕事は消費者と直接接していますね。事故が起きた時の責任はどうするのですか?
【被告人】消費者と直接接しています。日航機の事故、JRの事故資格や既得権に守られたものが大きな事故を起こしているというというのが現実です。はらぼじ観光の仕事は、事故の責任は契約先であるホテル旅館の側にあります。はらぼじ観光は契約先を広告することが仕事です。はらぼじ観光は自ら宿泊サービスにしても無料の範囲で行っている送迎サービスを提供もしていません。もちろん、事故を起こすような施設を紹介した道義的な責任はあるでしょうから、社会的に抹殺される覚悟はできています。事故が起きなくても、警察が来たことで、このように会社をつぶしてまで、真実を問うているのですから。
**********
■第4回公判はおよそ1時間続きました。被告人であるはらぼじ観光の元代表者は、捜査の異常性や、その背景なども含めて、事件の内容分析まで踏み込んだ説明をしたため、傍聴席では、いつ裁判官や検察側から発言を止められてしまうのか、ハラハラしながら、聞き入っていました。
被告人質問が終わると、裁判官と検察、弁護人の3者で、次回5回目の公判の日程が打ち合わされました。その結果、第5回公判は、年末の日程が立て込んでいるという裁判所の都合により、平成26年1月20日(月)午前10:00から前橋簡易裁判所で開かれることが決まりました。
証拠調べが終わったとして、次回はいよいよ検察官が刑事訴訟法293条に基づいて行う、事実及び法律の適用についての意見陳述、つまり論告が行われます。この中で、もしかしたら、容疑の罰状に関する意見が述べられるかもしれません。この場合は、論告求刑ということになります。
■それにしても旅行業法違反行為というのは、どういう事例があるのでしょう。ネットで調べてみました。
旅行業法における旅行業の定義として、①報酬を得て、②旅行業務を行う、③事業のことだとされています。
このうち①報酬については、旅行者から受け取る「取扱い手数料」、宿泊運送機関から受け取る「販売手数料」、自己で旅行を実施した結果得る「利益」だということです。
②旅行業務については、旅行の企画・実施、運送・宿泊機関との計画に係る「基本的旅行業務」、食事や観光等、添乗・渡航手続代行等に係る「付随的旅行業務」、旅行相談に係る「旅行相談業務」に分類されるようです。
③業務については、上記の旅行業務を繰り返して続けることだということです。
■したがって、旅行業に該当しない業務として次の例があるようです。
1 運送機関の代理行為のみを行う行為(例:道路沿いのガソリンスタンドがカーフェリー切符を販売。コンビニで航空券、鉄道やバス切符の販売)
2 手配代行業者(例:ツアーオペレータ、ランドオペレーター。これらは運送・宿泊機関と旅行業者の間に入り、運送機関、ホテル、食事等の手配を専門的に扱う業者で、直接旅行者と取引関係が生じないので旅行業には非該当)
3 添乗員派遣業者
4 運送・宿泊以外のサービスのみを手配する場合(例:演劇、催し物等の入場券を販売するプレイガイド)。
5 運送・宿泊機関が行う自社業務範囲内の行為(例:バス会社が自社のバスを使って営業する日帰り旅行。※日帰りでなくお泊り旅行の場合はどうなのか?)
■旅行業法では、旅行者の保護を図るために、一定の営業保証金を供託所に供託し、そのことを役所に届けるのだそうです。
つまり、本来、旅行業法の原点は、旅行者を騙してカネを持ち逃げしないように、供託金を預けさせることです。
こうしてみると、はらぼじ観光が、旅行者と金銭の授受をしていないと主張しているので、この観点から、旅行業に該当しないことになります。
また、いろいろな輸送・宿泊施設の情報を旅行者に提供して、それをもとに旅行者が自ら輸送・宿泊施設を選択して利用する場合、輸送・宿泊施設の情報を旅行者に提供して、輸送・宿泊施設から広告費として対価を受け取る事業は、運送・宿泊機関の広報活動行為のみを行う行為であり旅行業に該当しないことになります。
■ここで、どうしても分からないのは、運送機関の代理行為のみを行う行為は、旅行業に非該当であるのに、なぜ宿泊機関の代理行為のみを行う行為が、非該当であると明記されていないことです。
このことについて、はらぼじ観光では、「旅行業協会が賛助会員として傘下においている予約センターあるいは総合案内所という業態は、旅行業の資格なしで、予約の媒介をする仕事を専門に行っている」と主張しています。この背景として、受け取る手数料は客がサービスを受けた後なので、取り逃げの可能性がないため、旅行業に非該当だという判断根拠があるようです。
そうすると、輸送・宿泊施設の予約の媒介をしている予約センターのような旅行会社は、旅行者から直接金銭の授受がないため、旅行業とは見なされていないという理屈は理解できます。同じように、輸送・宿泊施設の予約の媒介をしている通常の旅行会社は、旅行者の求めに応じて手配しているため、そこに旅行者からの金銭の授受があるから旅行業法に該当するという考え方も理解できます。
■ではなぜ、旅行者からカネを受け取っていないのに、旅行業協会から、はらぼじ観光だけが、捜査時期から1年半も遅れてから起訴されたのか、という疑問が生じます。
第4回公判で、検察側が「総合案内所と違って、松浦(=はらぼじ)のしていた仕事は消費者と直接接していますね。事故が起きた時の責任はどうするのか?」とわざわざ聞いています。どうやら、はらぼじのしていたことは消費者(=旅行者)と直接コンタクトしていたことを暗に批判して違法性を仄めかしているようです。
しかし旅行業法では、旅行者との間で金銭の授受が無ければ旅行業に非該当だとしていることから、検察側のこの論理が良く分かりません。
■むしろ、旅行業協会は、はらぼじ観光に対して、このような言いがかりをつける暇があったら、消費者に対して、もっと積極的にコンタクトして、消費者から旅行者に変化してもらい、交通・宿泊施設をもっと利用するように、業界で自由にビジネスモデルを提案し実行できるような雰囲気気作りを目指すべきでしょう。
とにかく、消費者=旅行者の保護がきちんと担保されていれば、どのようなビジネス形態でも、観光産業の活性化という成果が出せれば問題ないはずです。
にもかかわらず、こうして小規模な個人経営の旅行業者をいじめるだけで、業界のことも旅行者の気持ちも分かろうとしない県の観光行政に携わる職員らに、立入検査権を付与させて、前時代的なマニュアルで業界を縛ろうとするのは、百害あって一利なしだと痛感させられます。
■そのため、はらぼじ観光被疑事件の第4回公判が終わった後、市民オンブズマン群馬では群馬県の観光行政を司る県観光物産課を訪れて、彼らから、旅行業法の解釈と運用の仕方、そして、はらぼじ観光だけがなぜこのような仕打ちに遭うのかについて、彼らの見解を聞いてみることにしました。
【市民オンブズマン群馬からの報告・この項続く】