日々

穏やかな日々を

ナース

2014年11月17日 10時19分31秒 | ものがたり
「少女の頃、泣いてばかりいた自分。
12歳、小学校を卒業、両親の不和で泣いた。
それから、初恋をして、叶わず泣いた。
それから、夫の不倫で泣いた。
私も不倫して泣いた。
子どもが死亡して泣いた。
もうこれ以上泣く事柄はないと思って泣いた。
でも、今、また、泣いている。
今の私は、何もかもが悲しい出来ごとになって、泣いている。」

そんなお方に出会った。

「不和だった両親は、今はなんなく生きていて
離婚して一人ぼっちの私より幸せそう。
私は今、定年前、腰痛があって、普通に働けなく
不安ばかりがつのっていく。
そして、涙ばかり出てきて、仕事も休みがちです。」

このようなお方に、名医はどう答えるのだろう
名カウンセラーはどう、対応するのだろう

ナースは、とりあえず、腰痛の軽減のため、受診を勧めた。
不眠については、今まで通りの受診継続で、様子をみていく。
そして
悲しくなったときは、泣きましょう。
泣いて泣いて、涙を流して、自分の不運を泣きましょう。

でも、あなたには、大卒の息子がいて、その子の子どもの頃の苦労を思い出しましょう。
可愛かった太った男の子の笑顔を思い出しましょう。
今、自分の足が元気なのを思い出しましょう。

そして、空の青さや、海の深さ、雪の輝き、月の明かり、風の心地よさ。

ナースはその方の手を握った思いでそれだけが言えた。

今、また、その方を思い出すナースだった。
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