感染者情報簡略化で市町村困惑 宮城県「個人情報保護」と説明
宮城県が新型コロナウイルス新規感染の公表形式を簡略化したことに、県内の自治体から戸惑いの声が出ている。簡略化したのは昨秋だが、今年1月に入りオミクロン株で感染が急拡大し、詳しい情報を欲する自治体が増えたためだ。県は「簡略化は個人情報保護の強化が目的」と理解を求める。
県は従来、感染者ごとに年代や性別、職業、居住市町村、発症日、症状の有無、過去事例との接触歴、療養状況などを公表してきた。昨年9月21日からは居住市町村や年代、職業などの項目別に人数のみを示す形式に簡略化した。
県疾病・感染症対策課の担当者は「小規模自治体では個人の特定につながる恐れもある」と意図を説明する。患者ごとに公表の同意を得る必要がなくなり、保健所の負担軽減につながるメリットもある。
■住民から問い合わせ相次ぐ
これに異を唱えたのが菅原茂気仙沼市長だ。1月11日の記者会見で県の簡略化について「すごく困る。みんなが不安になる」と、県に見直しを要望した。
市では昨年9月中旬から新規感染ゼロが続いたが、1月4日から感染者が再発生している。菅原市長は「若い人か高齢者かなどの情報はあった方がいい」と訴える。
昨年10月以降はゼロだった石巻市でも1月12日から再発生し、1月の新規感染者数は100人を超えた。市の担当者は「簡略化の趣旨は理解できるが、市民の不安が募るのも事実だ」と悩む。
1月以降、感染確認が相次ぐ岩沼市や柴田町には「もっと詳しい内容を」「年代や職業を、なぜ出せないのか」などの問い合わせが寄せられているという。
■割れる対応
東北で新規感染者の公表は、宮城を除く5県と8中核市が患者ごとの形式を維持している。このうち青森県は感染者の居住地に関し保健所管轄単位の発表にとどめているため、むつ市は県から情報を得て独自に市の感染者数を発表する取り組みを続ける。
市の担当者は「自前の保健所を持つ青森市や八戸市の住民と情報格差が生じる。個人情報保護と感染情報の公表による市民の利益や安心感を比較した上で発表している」と話す。
一方、仙台市は感染者急増を理由に、1月26日公表分から簡略版を導入した。市感染症対策室は「保健所による患者ごとの確認作業が当日中の公表に間に合わなくなった」と説明。従来のような患者ごとの一覧表も数日遅れで公表する方針で、情報公開にも配慮する。
全国では東京や大阪など大都市部で簡略化への移行が目立つ。新潟市は1月13日、患者ごとの発表から宮城県の現形式に近い発表に改め、新潟県も18日、同様に変更した。
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