「さわっていい?」まず一言
街中でかわいい赤ちゃんを見かけると、つい手足やほっぺを触りたくなりますよね。
でも、今はコロナ禍です。感染が心配で他人に触られたくないと考える親は多く、SNS上には「やめてほしい」と訴える投稿が目立ちます。
私にも2歳の息子がいます。確かに触られたくない気持ちはわかりますが、一律にダメというのもさみしく感じます。外出中に子どもが泣き出し、あやしてもらった経験がある人も多いでしょう。
コロナ禍で赤ちゃんにどう接すればいいのか、子育て中のみなさんに聞きました。
「感染が心配で、両親にも会わせていなかったのに」
社会部に体験を寄せてくれたさいたま市の阿部愛さん(29)は、長男(1)が生後3か月だった昨春、スーパーのレジで順番待ちをしていた際、後ろに並んでいた高齢女性に長男の素足を突然触られ、ショックを受けました。
初めての子どもで、妊娠中から感染に気をつけてきました。でも、その時は並んでいたため、離れることができず、「かわいいわね」と声をかける女性に嫌な顔もできませんでした。帰宅後、「息子を守れなかった」と自己嫌悪に陥り、その後しばらく外出できなくなったそうです。
この体験を基に、昨年12月、ママ友と相談し、赤ちゃんのイラストに「さわらないでね」とのメッセージを添えたキーホルダーを作りました。ベビーカーなどに付けています。阿部さんは「今は触らず、見守ってほしい」と訴えます。
大阪市の浦田周兵さん(30)もコロナ禍の2020年夏に長男(1)を授かりました。生後6か月までほとんど外出させず、触られた経験はありませんが、「コロナ禍でなくても、勝手に触られるのは心配」と話します。
子育ての先輩からは違う意見も。5歳と3歳の子どもを持つ大阪府松原市の 己波 智司さん(41)は「感染対策は必要だけど、子どもの成長にとっていろんな人と触れ合う機会は大事」と気にしないそうです。
実際、触られることによるリスクはあるのでしょうか。
小児科医の森内浩幸・長崎大教授は「マスクを着けて、目鼻口や指先などを避けて少し触るぐらいならリスクは低いだろう」と指摘します。
一方、身体心理学が専門の山口 創 ・桜美林大教授は「親以外との触れ合いは、他人への信頼感を身につけるために重要」と話します。「幸せホルモン」と呼ばれる「オキシトシン」が分泌される効果もあるそうです。
科学的には、少し触るぐらいなら大きな問題はなく、むしろメリットもあるようです。
だからといって、親の不安を無視していいわけではありません。山口教授は「マナーとして触る前に声をかけ、断られたら、赤ちゃんにほほえんであげて」と呼びかけます。
子育ての考え方は人それぞれ、感染予防の意識も同様です。「これぐらいいいのでは」と自分の考え方を押しつけるのではなく、相手の気持ちに思いを寄せることが大切なのだと考えます。
【今回の担当は】福田友紀子(ふくだ・ゆきこ) 社会面の企画「ゆらぐ暮らし」で、コロナ禍で困窮するシングルマザーらを取材した。32歳。
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