寮生活に集団感染の危険 教育現場や行政、悩む対応 高校寮クラスター
▽自律と調和
「密にならないのは、正直難しい」。松江市役所で11日未明に開かれた、市の記者会見。同席した立正大淞南高の上川慎二(かみかわ・しんじ)教頭は、肩を落としながら釈明した。
同校では8日以降、感染者が相次いで判明。18日午前までに生徒や教員ら98人が陽性となった。うち90人を占める男子サッカー部が7月下旬以降に遠征した大阪、鳥取、香川の3府県は、練習試合をした生徒らの検査に追われた。
感染した部員のうち84人は、同じ寮で生活していた。淞南高によると、発熱するなどした部員は2人部屋から個室に移し、大人数で食事や入浴をしないよう注意を促していた。ただ、具体的に人数や入浴時間の分け方は示しておらず、寮の自主運営に任せた。
共同生活の在り方が感染拡大に影響した可能性は高く、上川教頭は「寮内での自律やコミュニケーションは重要だが、感染対策とのバランスが取れなかった」と語る。
▽食事での会話制限
島根県にある公立と私立の全46高校のうち約6割の28校が、県外から生徒を獲得する狙いもあり、寮を併設する。
同県教育委員会は寮で感染が広がらないよう、毎朝の検温や対面での食事回避を求めていた。クラスター発生を受け、寮での食事中に会話を控えさせるよう、各校に通知した。さらに、学校運営に関するガイドラインを改定し、寮生が体調不良を訴えたら保健所に相談するなどの内容も盛り込んだ。
▽「家庭」と同じ
天理大(奈良県)のラグビー部では、18日までに部員53人のコロナ陽性が判明した。密集や密接が生じやすい競技の性質が感染拡大に影響した可能性もあるが、全員が寮に入っていたことから、共同生活が要因となったことも考えられる。
学校寮でのクラスターが各地で散見されており、国は対応に悩む。
厚生労働省クラスター対策班は松江市と合同で、淞南高の調査に着手した。感染源や経路を明らかにすることで各校の参考にしてもらい、注意を促したい考えだ。
文部科学省は、学校生活の衛生管理マニュアルを今月6日に更新したものの、学生寮については宿泊施設のガイドラインを参考にするよう定める程度だ。健康教育・食育課の担当者は「必要に応じて内容の変更を検討するが、学生寮は家庭と同様の側面もある。国が対策を強いるのも、限界がある」と語る。
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