てすさび日誌

哀しき宮仕えを早期リタイアし、“サンデー毎日”のomorinが生活の一コマや雑感を認めた日誌です(2005/4/20~)

いまやらねばいつできる

2007-01-11 22:09:15 | レジャー
   

 郷土の生んだ木彫界の巨匠平櫛田中(ひらくしでんちゅう) が、百歳になった時にいった有名な言葉で、岡山人なら誰でも知っている。

 冒頭の言葉に惹き付けられた訳でもないが、第三セクター・井原鉄道が開業8周年を迎えた11日限りの、「ワンコインデー」を実施したのに便乗して、平櫛田中の里・井原市へ、それこそ「今日行かねばいつ行ける」とばかりに出かけた。

 ワンコインデーは、下車時に100円を渡すだけで、総社~神辺間全線で利用できるので、聞きつけた観光客が大勢押し寄せ、1時間に約1本の2両編成の電車は超満員。

 先ずは終点の福山市神辺(かんなべ)町へ直行。これで100円。仕事では訪れたことがあるが、観光では初めて。次の折り返し電車までの1時間ほどを利用して、神辺本陣を訪ねた。
 建物は江戸時代の姿をそのまま留めており、黒塗りの土塀に囲まれている。山陽道の宿駅として栄えた当時が偲ばれる。周りにも古い家並みが続く。
 続いて廉塾(れんじゅく)ならびに菅茶山旧宅を訪ねた。菅茶山は上京して朱子学を学び、郷里へ帰って塾を開いた。これが後に廉塾と呼ばれた。ここでは全国から常時20人くらいの塾生が学び、頼山陽も塾頭をしていた。


 さて、今日のメインである井原市へ取って返す。お目当ての田中美術館は、井原駅より北西へ徒歩で10分。隣接して市民会館や市役所がある。
 館内は3階まであり、田中の作品の数々を中心に、田中と関係の深い日本美術院の作家及び平櫛田中賞受賞作品が多数展示されている。
 3階には、田中が数々の名作をつくり出した、東京上野桜木町のアトリエまで再現している。

 彼の代表作は、お馴染みの「鏡獅子」で国立劇場にあるが、田中美術館では「試作鏡獅子」「鏡獅子試作頭」「鏡獅子試作裸形」などを観ることができる。

 田中翁が満百歳を前にして、あと三十年制作に使える量の木材を購入した話は、田中翁を語る時、必ずといっていいほどついてまわるエピソードである。これから横山大観像や丸木スマ像、武原はん像などを作る予定であった。
 翁が百七歳で没した後、残された木材を使用して、先述のアトリエを再現している。

 九十歳でなお矍鑠たる義父だが、更に田中翁に肖るように、含蓄ある味わい深い田中語録を掲載したカレンダーを、土産に求めて田中美術館を後にした。

【田中語録】
「今日もお仕事、おまんまうまいよ、びんぼうごくらく、ながいきするよ」
「六十、七十は鼻たれ小僧、男ざかりは、百から百から、わしもこれからこれから」
「人間いたずらに多事、人生いたずらに年をとる、いまやらねばいつできる、 わしがやらねばたれがやる」

【参考サイト】
でんちゅうくんの探検
田中美術館のホームページ
平櫛田中の紹介

   

   

   
   高架単線の井原鉄道
   

   
   矢をイメージした井原駅舎

   
   田中美術館の玄関にある「試作鏡獅子」
    
コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする