一連の報道に「大谷は野球ロボットのようなもの」という言説もある。
大谷のさわやかな笑顔が見えると,通訳解雇問題など忘れてしまう。
反面,『巨人の星』を観すぎた自分にはこのシーンが蘇ってくる,走馬灯のように。
オズマと大リーグボール1号で対決した飛雄馬。奇しくも勝負には勝ったが,オズマには「お互い,野球のためだけに制作されたロボットではないか」と指摘され,動揺する。
大谷が,少年時代から大リーグへのあこがれをもっていたことは知られている。なにより,成功を収めた人の話だから美談になる。
しかし,一部で指摘されるように,大谷はあまりにも「野球のことだけ」を考えて生きてきたのではないか
飛雄馬は同世代との遊びに青春を感じない。自分もそうだった。
気づけば,自分もその連続。50歳をとうに過ぎても釣りばかりやっているし,とくにバス釣りに異常な執念を燃やしていた20代は,まさに「同世代の普通」がわからなかった。
スキーが流行だから無理やりスキーに連れて行かれた。10回目ぐらいでようやくまともに滑ることができたが生涯の趣味になるはずはなく,環境の変化もあってスキーは止めた。
カラオケは,飲み会を鬼のようにやっていた30代まで楽しいかのように思った。しかし,どこかで「ああ,貴重な週末が,釣りに行けなくなる」なんてことばかり考えていた。
父ちゃんはそれでよいというが,そうではないはずだ。
自分の父母は間違いなく古い人間だから,自分のくだらないことなどお構いなく「仕事を頑張り,週末に釣りをして」よいという評価だった。
しかし,これを大谷にあてはめたら,たしかに結婚はしたけれど,夢は相変わらず野球一筋。
まるで,大谷が星飛雄馬のように見えた時間が,いまここにある。