『9で割れ!!』をかなりの回数読み返している。
なぜ矢口高雄はあれほどの名作を描けたのだろうと,その生い立ちを知りたくての思いである。
そして,第3巻で「魚紳さん」の所以たる加藤魚紳さんとの会話がよい。
矢口高雄が「銀行員にみられないために」と不釣り合いな服装で通勤しているときに出会った加藤魚紳さん。複数の会社経営者であり,まさに鮎川魚紳のモデルとのこと。
その加藤魚紳さんが言うのである,若き矢口高雄に。
「自然とにじみ出てくる内面を無理に隠そうとするのは,突っ張っている証拠」
だと。
僕は,会社内外で「面接は”3秒”で見抜ける」と豪語してきた。実際,とくに女性の場合「この女性なら一緒に仕事していけるな」と読めることは事実。その逆に,僕は「頑固一徹」に見えるらしい。釣りは頑固一徹でもない自分だが,やっぱりそういう「内面」が「にじみ」出ているのだろうか
それにしても。
矢口高雄作品は非常に「機微」をうまく記したものが多いと感じる。
『釣りキチ三平』は,35年以上も前に「釣りキチ同盟」なる「釣り人の連携」の必要性を説いていた。連載時の僕は小~中学生だったので深い意味を理解できなかったが,オトナになったいまでも読み返せるのは,さすがの矢口先生である。
そういえば,漫画で感動したり人生観が変わったというとビックリされることがある。
僕の場合,『釣りキチ三平』のおかげでメトロリバー等での「釣り人への声掛け」を何気なく出来るようになった気がする。
不思議なもので,水郷時代は「先行者」だと思っていたのに,いまは「同好の士」として,先行者はむしろありがたい。
自分の「釣り人生」に大きな影響を与え続ける矢口高雄作品。その原点を記した『9で割れ!!』を,僕はこれからも何度も読み返すだろう。