Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

韓国の大スターと子供達

2005-10-03 | テクニック
大韓民国のスター黄禹錫教授が二日間に渡ってボンとベルリンで講演した。今年五月に世界を驚愕させて以来、大韓航空のファーストクラスのフリーパスをプレゼントされたと言うが、研究室を留守にしている時間などはさらさらないらしい。

患者のDNAを用いて胚性幹細胞(ES細胞)11株を作り、不治の病人に奇跡を起した。若い女性たちが卵子の提供を申し出て列を成すという。ソウル大学の獣医の小部屋から今では少し大きな研究室へと格上げされ、二年後には新家屋に移るという。

キリスト教徒の多い韓国でも胚性幹細胞を操作するのは決して容易くなかったようだが、動物を通して成果を示してきたようである。BSEの牛に試みた実験などはこの教授の目先が利いている事を示しているのではないだろうか。

ES細胞自体は、輸入という形でのみドイツ国内で研究用に扱われているが、冷凍されたものでは成果が出ないらしい。何時もの事ながら、ケルンのユルゲン・ヘシェラー教授などは、「彼らは、我々の技術を使っている」とぶち上げる。

同様の試みはロンドンでも失敗している事から、同僚たちの間では苛立ちが募っていると言う。報道直後に、シュレーダー首相が研究推進へのコース変更を表明したが、これは全て新組閣後の課題となる。

胎児への人の介入は欧州全体で厳しく規制されており、ES細胞すら容易には扱えないのが現状である。キリスト教の教義からすれば当然だが、新旧の宗派によっても幾らかの差異がある。人工的な避妊さえ公認しない宗教から容認はありえない。

黄教授は、研究所の職員も多くがキリスト教徒なので精神的葛藤の起こるような状況にはならないと言うが、安易に工業化の計算をしている事から典型的な楽天家のようである。お国では初の韓国人ノーベル賞受賞の誉れが高いらしい。

ミュンヘンのエックハルト・ヴォルフ教授は、黄教授の業績はこの分野の一部であって、取り扱いが上手く行っただけで、非常に大きな進歩だが想像力は全く欠如していると評価する。その研究体制からして、半導体工作のようなのだろうか、工作機械の洗練を以って工業的であるという。そして、想像力無くしては、頭打ちと断定する。それどころか、人間のクローン化の味を覚えた部下が何を仕出かすかわからないと恐れる。

MITのイェニシュ氏は、この分野は全てシナやシンガポールなどへと東へと重心が移って来ており、学術、医療、商業へと欧州の目は移って行くと予想する。しかし、米国からミュンスターのマックス・プランク研究所へと移ったハンツ・シャーラー氏のように、「我々は、現在の法の中でも我々の遣り方で十分な研究が出来る」、「治療には其々の成果を持ち寄れば良い」と基礎研究者らしい目算があるようだ。細胞核を取り出す必要も無い卵子の無い胚性幹細胞を考えているようで面白い。

日本車のTVスポットではないが、象牙の塔のよりも市場には「不可能な事は無い」となるのは、当然の帰結である。人間ほど意地汚いものは無いからである。
コメント (5)
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