Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

多声音楽の金子織り

2005-10-20 | 
ベートーヴェンの大フーガの自筆譜発見を教えて頂いた。最も有名な弦楽四重奏曲であり、この作曲家の代表作として尊重されている。その楽章が元々作品番号130番変ロ長調の終楽章として作曲されて、その形で1826年の3月26日に初演された。

しかしそのあまりの気宇の大きさに、楽譜社アルタリアは、新たに作曲された他のアレグロ楽章と入れ替えさせ、フーガの方は作品133として独立して出版される事になった。それでも満足出来なかったアルタリアは、このフーガを4手の為に編曲させて、この困難な曲に商業価値を与えようとしたようだ。依頼されたアントン・ハルムの編曲にベートーヴェンは納得せず、カール・チェルニーにも機会が与えられたが、最終的に作曲家自身が編曲する事になる。そして、編曲料を求めてカノンに「金子を調達する、この作品がここにござる」と書き加えたとある。

二百万ダラー以上の競り落とし値が予想されているが、ボンの研究所が入札するかどうかは未定らしい。このような発見と骨董価値を考えると、比較すれば想像の付かないほどの財宝がスペインのトレドのカテドラルにはあるという。そこには予想をはるかに超える未知の楽譜が眠っており、未整理のまま朽ちて行くという。それも未知の作曲家の物でなくて最も重要なスペインのポリフォニーの大家モラーレス(1500-1553)などの作品群である。これらは、指揮者でもある米国人ミッチェル・ノーン氏が手弁当でこつこつと四万枚以上の古い教会儀式用楽譜の山を分類して、更に発表、演奏して行っている。

この束の中には18世紀までの作品もあるようだが、「スペイン音楽の光」モラーレスはヴァチカンのパウル三世からカール五世までに寵愛されて、北はヴィッテンベルクでまで楽譜が出版されていることで、その当時の名声が知れる。トレドへ来てからの創作として有名な通称コデックス25だけでなく、カール五世の死去に伴ってメキシコでも演奏されたレクイエムは、サヴァール等によって録音されている。

それでもそれ以外に徐々に発掘され、演奏され、進行形で録音されるので、殆んど市場では話題にならず、演奏家が自己制作で録音している。その楽譜校訂から譜読み、演奏、録音の過程でも公共的な援助は殆んど無い。これが、上のベートヴェンの楽譜の市場価値との間に大きく横たわる、商業主義の濁流であることを喚起して置きたい。
コメント (4)
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