Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

アメちゃんの混ぜものポンチ

2009-05-15 | 雑感
14世紀のフォン・ホムブルク伯の城跡であるプェフィンゲンで食事をして出てくる。其処から仰ぐミヒャエルスベルクやバート・デュルクハイムの背後の森は美しい。プロテスタントの鋭塔とカソリックの高まりを目指して町の方へと暫らく歩む。

ドイツのワインと言っても生産性の悪いモーゼルのワイン栽培は半数以上が壊滅してしまう兆候は、それらとここのリースリングの品質の顕著な差に致命的に表れ出している事を語る。要するに、質に拘って此方からモーゼルへと注文するほどの特別魅力的なワインを提供するほどの品質がなければ生き残りは不可能という事で、安物ワインを手ごろな価格で放出しようとしても結局は混ぜ合わせるためのワインの原料を提供するようになってしまうと言うことである。そうした商品にはこれまた価格でとても採算が合わない。それは欧州の単一市場が成立した時から定まっていて、ここでも何度か扱っている話題である。

そのような事を語っていると、その幹線道路沿い歩道側の草むらに右翼団体の選挙ポスター「片付けて仕舞おう」が剥がされてまるで墓場のように捨てられているのを見つける。先日来車に乗っていて眺めていたのもである。なるほど、ユダヤ人を名指しして攻撃すれば一挙に政治活動禁止へと急速に近づくが、そうしたあらゆるグローバリスム批判にその印象などを上手く重ねるような広報活動をしている。

しかし、今や経済危機の影響でポーランド人がアスパラガス摘みに戻ってきて、様々な段階にて外国人の労働力を求めない限り、ドイツ人だけではごみ収集からなにからなにまで老人達が行なわなければ成り立たない労働事情は周知の事なのである。要するに外国人の手ごろな労働力があるからこそ西欧社会が成立しているので、十五年ほど前は盛んであった外国人労働者の排撃などは己の理想とする社会の首を自ら絞めているようなものなのである。もちろん、自由市場が存在してこその繁栄であり、ああした国粋主義者の主張は只感覚的に訴えるしか策がない。

そのような理由から、そうした政党が議席を持つために五パーセントを越えるような得票率を挙げる危機感は、少なくともまともな連邦共和国の教育を受けている有権者がいる限り殆どない。寧ろ、そうした社会からドロップアウトしている自由民主主義に価値を見出さない外国出身のドイツ人などが投票するのではないかと思えるほどで、国粋主義者は、そうした社会からドロップアウトとしているトルコ人有権者などを巻き込めば大きな飛躍があるのではないかと思うほどである。

そのような事を思いながら再び古の城郭の中に停めてある車の所へ戻ろうとすると、バンから三人ほどの同じような若者が少々興奮状態で降りて来て、ハッチバックから真新しい右翼団体の選挙ポスターを出しながら、はしゃいでいるではないか。偶々そのような事を考えていたので、一瞬自らの表情が急激に凍り強張るのを感じた。

なぜならばそこに大きくスローガンとして書かれているのが次ぎのような文句であるからだ。

Deutscher Wein statt Ami-Fusel!

米国ポンチの代わりに、ドイツワイン。

こちらは、プファルツワイン宣伝の帽子を被っている手前、ついつい口を挟みたくなった。どうしてドイツワインなのか、なぜプフェルツァーヴァインではないのか?

Pfaelzerwein statt deutscher Weine!

そのように絡んでやろうと思うのが既に酔っ払いである。一組の夫婦が通りかかっているので、三人の若者を相手になにか騒動になった時はやはり最初に攻撃したことの責任が問われてしまうだろう。所謂過剰反応である。

そのように少しでも冷静に考えると、社会主義者達が連中を政治の表舞台から消し去ろうとしているが、まともに対抗する方が間違いであろうと実感するのである。

この団体は、実際二つ向こうの町で、ドイツのワインを護ろうと大きなデモンストレーションを行なったが、米国のコーラワインを閉め出そうが、これだけその地域や土壌や栽培醸造工程で品質で差がついてしまったドイツワインを同じ狢として扱うのがもう不可能なのである。一度品質を上げたそれに慣れ親しむとたとえ流行はあっても品質を下げる事は出来ない。何もかもが不可逆なのである。

彼らはきっと十五年ほど前にあった二マルクほどの味のないリースリングを寂れた酒場であおって、二日酔いに苦しみたいのだろう。



参照:
新極右翼親仁に学ぶこと 2009-01-26 | マスメディア批評
外人権利と依存する大衆 2008-06-10 | 生活
VDPプファルツへの期待 2008-01-07 | ワイン
Pfalz編・その2 (saarweineのワインに関してあれこれ)
コメント (2)
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