Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

緑の屋並みにはいない泥鰌

2016-02-09 | ワイン
2008年産のリースリングを開けた。グリューンホイザーのアブツベルクのカビネットである。試飲の時の期待に一度も応えてくれなかったリースリングなので、寝かしておいたのだが、アルコール11%から期待できないので、他のものが無くこれを開けてみた。勿論、年度からすれば瓶詰め後五年半経過しているので、これで瓶熟成していなければ逝かれているだけなのだ。

そして注意してコルクを開けた。とてもきれいな感じで熟成が期待できた。実際グラスに注ぐと大分黄色みが出ていたので間違いないと思った。そして香りも開き気味で可笑しな臭いはあまり感じなかった。

飲んでみると細身ながら驚くほどに締っていて、瓶過熟成などは全く感じさせない。どちらかというと閉じ気味なのだが、エアーリングの必要を感じさせない閉じ方である。細身のリースリングにありがちな硬質な感じでありながら、2007年産の同じもののような鋼のそれは感じない。それでも2008年特有の開き切るような酸の感じもなく、このアルコールの弱さでこれほど崩れていないリースリングは無い。殆ど感動して、翌日に早速電話して注文や試飲会の予約などを相談しようと思った。それほど感動させるに十分な特別なカビネットだった。

そして二杯目、三杯目を惜しみながら注ぐ。何故ならば当日は肉食だったが、これほどのしまった感じならばサケに合わせたかったからである。そう思った矢先に片頭痛が走った。鼻から来たようだ。それほどエンジンのエンジニア―のように敏感な方ではないが、JJプリュムの甘口の最初に二年ほどのあれ程ではなくてもある程度は分かる。それがあまり感じさせないのだ。しかし、そこで注ぐ手も止まり、ほろ酔いどころではなくなってきた。

ケミカルしか考えられない。あのシュロース・ザールシュタイン醸造所の親仁ではないが、「亜硫酸含有量が多いほど持つので悪いことではない」と嘯くのを聞いて、このような似非VDP醸造所とは付き合えないと思った。丁度あそこのグレーシーファーなどのうまさと同じものがこのグリューンホイザー醸造所のリースリングにはある。要するにケミカルなのだ。そして天然酵母の自然発酵に拘っている分余計に操作をしているに違いない。

いずれにしても一時どうしようもない経過を見せていた2008年のアルツブルク辛口であったが、ここに来て完全な飲み頃になっていた。通常ではないほどの遅咲きなのだが、ケミカルならば何でもありだ。

このリースリングを買えばどうしても飲み頃を待ってしまうのかもしれないが、そこで待っていたものがケミカル漬けのリースリングだとすると、何とも悲しい。なるほどSWRで取材したスタッフが、「あそこの醸造所は必ずしもワイン造りへの拘りではなく全く異なった考え方で経営している」と語っていたが、なるほどこういうことかと感じた。価格が安いなら文句はないが、それなりの価格で、たとえ飲み頃となったとしても気持ちよく酔えないようなワインは欲しくない。流石に二日目には糖が徐々に浮いて来た。

この手のワインを自宅で開けるのは久しぶりだったので、正直驚いた。数多くある醸造所の中で態々VDP以外の醸造所のワインを購入する必要が無いのはこうした理由である。「下らないワインを飲むには人生は短すぎるのだ」。



参照:
嬉しい誤算と定めた予定 2011-10-22 | 生活
歳月を重ねて熟成するとは 2009-12-07 | ワイン
真直ぐに焼け焦げた軌道 2009-09-29 | 試飲百景
ゲーテには難しい青粘板岩 2012-05-13 | 試飲百景
コメント
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