Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

脳裏に浮かぶ強制収容所

2016-10-11 | 歴史・時事
ケムニッツの捜査が気になる。実は先週捜索前に新聞では話題になっていたのである。明白に書かれていたのではないが、内務省の発表としてシリアからの難民が流れて来ているということで、スイスの国境から入って来ている違法な数が掴めていないという事だった。国境線沿いでは抜き打ちの探査しか出来ていないからである。その500名ほどの危険人物の把握の中に今回の捜査対象も含まれていた。攻撃対象はベルリンの空港だっただろうとあり、警戒線が引かれている。ミュンヘンなどを対象に選んでも駄目だ。精々バイエルン州の政治に勢いをつけるぐらいで、共和国全体への影響は少ない。狙うならベルリンのソフトターゲットに限るだろう。充分にパリ並にややこしい地区が多いので幾らでもなんでもできるのではないだろうか。自宅前の道をそれらしい人が通ると以前は無関心だったが最近は顔を覗き込んでしまう。如何にもトルコ人やクルド人風であれば関心も持たないのだが、アラブ系となると覗きこんでしまうのである。疑心暗鬼は以前とは比較にならないほど広がっているのではなかろうか。

昨晩から暖房を入れた。火入れ式である。充分に食事をして、一杯ひっかけても寒かったからだ。ここで我慢をして風邪を引いて暖房を余儀なくされると余計に温度調整が儘ならなくなる。だから素直に暖房を入れた、薄くだが寝室にも入れた、風呂場にも入れた。夜中だけでも違う。朝までぐっすりと眠れた。風邪引きの危険は払拭されないが、まだ栄養を補うなどして備えることは可能だろう。

週の最後の峠攻めでまた一サイクル終えた。気温はそれほど低くはなかったのだが、湿っていて流石に上着なしでは移動も出来なかった。ショーツはそのままで上にフリースを羽織って走った。週明けも月曜日だけは六時間の陽射しが予想されているが、火曜日は摂氏3度まで下がる。風邪を引きそうなボーダーラインに近づいている。篭り部屋の準備も進んだ。

独日協会の仲間が一人八月に亡くなったことを聞いた。日系米国ドイツ人である。要するに純潔二世がアメリカンアーミーとして冷戦時に西ドイツに派遣されていたのだった。そもそも父親が宣教師で、プロテスタントには違いなかったが、日本語もその教養などを別にすればアクセント無しに話した ― 明仁陛下の皇太子時代に通訳したという親戚の二世などとは違って、日本での生活経験は殆どなかったようである。親戚の兄弟二人が戦時中に京都で医学を学んでいたのとは違って、亡くなった方はその時子供として強制収容所に入っていた。そしてその思い出話を冷静に語るには、子供だった本人にとっては、あまりにも大きな人生の時だったように感じていた。

製紙業で修行して、その後BASFの製紙関連部署で働いていたことから、四半世紀以上の付かず離れずの付き合いであった。そして上のことが故人の人格の大きな柱になっていたと考える。我々からするとガス室がある訳でもない強制収容所などはあまりなんとも思わないのだが、やはり本人たちには人生そのものなのだろう。民間人で収容所に入れられた日本人は、日系米国人と戦後の沖縄県人しかいない。

正月の新年会にあった時が故人との最後となった。本人は「間違った日本人」であり続け、築地で学んだ韓国人の寿司職人のそれが美味いと言って、本当の日本食はどうもよく分かっておらず、その韓国人に泣いてお別れをしていたのを覚えている。最後の最後まで故人の脳裏には、「足元に隙間のあるような有刺鉄線の向こう側で遊ぶ子供たちを眺めていた」、その情景が強く残っていたと確信している。



参照:
美しい世界のようなもの 2016-03-28 | 音
遥か遠く福島への認識の侵食 2011-03-28 | 文学・思想
コメント
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