
八束澄子の新作だからきちんとチェックして一番に優先して読むはずだったのに見逃してしていた。
こんな小説を読みたかった。しかも、たまたま先日(一昨年だけど)行った智頭が舞台になっていて懐かしい。智頭急行鉄道には乗らなかったことは残念だけど。僕は津山からJRを使って智頭駅に行ったから、ね。駅周辺から目的地である西川克已監督記念館、さらには山奥の廃墟になっている集落にも入った。(徐々にこれから整備されている途中)余談だが。
さて、この作品である。中2の女の子が母親の実家のある智頭に向かうところから始まる。学校を無断欠席して。半年間、祖母が亡くなった後、母は帰らない。父とのふたり暮らしをしている。両親が離婚するかも、という不安もある。
母の故郷で過ごす1週間。森のようちえん(保育園)での2日間。祖母の家の片付け。たった1週間だけど、これまでの14年を覆すくらいに自分の中で大きな変化が訪れる。
毎日不安と怯えの中で暮らしていた。もう限界だったのかもしれない。だから、あの日無断で学校を休み、母のいる智頭に向かった。風に誘われて、中国地方の山の中にある町に向かう。そこで母と再会し、ここで暮らしていた祖母を想う。ようちえんのたくましい子どもたちとの時間は彼女を生き返らせることになる。自分が変わるから周りも違って見えてくる。そんな当たり前に心震える。新しい1日が始まるラストがうれしい。