こういう地味な映画がちゃんと作られて、全国東宝系で公開されるって、いいことだ、と思う。パッケージングはジャニーズ事務所のタレントを使ったアイドル映画のスタイルを踏み、キラキラ青春映画(今発売中のキネ旬が、たしかそういうようなネーミングをしていた)を装うけど、これはその手の映画とは一線を画する。だって、原作は少女マンガではなく、瀬尾まいこの小説である。恋愛小説だけど、高校生のシーンもたくさんあるけど、学園ものではない。監督は衝撃の傑作『無防備』でデビューして、今では時代のアイコンとなった星野源のデビュー作『箱入り息子の恋』を撮った市井昌秀である。そんじょそこらの甘いだけの恋愛映画になんかなるはずもないではないか。
『箱入り息子の恋』の姉妹編のような作品に仕上がっているのもうれしい。あそこでは、吉野家の牛丼がしつこいほどに前面に押し出されたが、今回はケンタッキーだ。もちろん脇目も振らずに王道のフライドチキンである。特定のファーストフードに拘り、その商品を映画の中でここまで前面に出して、それが映画を象徴させるなんて、他の映画にはないことだろう。彼ならではのやり方で、楽しい。(今回はポカリスェットにもこだわっている!)
三木孝浩によるお正月映画『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』と同じように、主人公のふたりだけに焦点を当てた作り方をした。周囲の人たちとの群像劇にはしないのが、特徴だ。描かれる世界はとことん狭い。だから、少々息苦しいほどだ。たまたまなのかもしれないけど、ここまでふたりだけに絞った作り方をする映画は今まで少なかったのではないか。脇役が個性的でちゃんとふたりをサポートしてお話を展開するというのが、どんな青春映画でもお約束だったはずなのに、ここにきて(2作品だけなのかもしれないけど、)こういうタイプの映画が連続したのはなぜなのか、少し気になる。今後の作品に注目しよう。
さて、そろそろ具体的に期待の新作であったこの作品の内容のことを書こう。お話自体は甘い。恋愛映画のパターンから少しも逸脱しない。お約束通りの展開である。しかも、難病もののパターンすら踏む。高校時代の出会い。(幼馴染だから中学も同じ)付き合いだして3年。結婚すら考えたのに、いきなり彼女から別れを切り出される。仕方なく受け入れたけど、彼女が忘れられない。そして、真実を知る。乗り越える。
なんの新味もない。なのに、見終えた時、とても新鮮なさわやかさが残る。『箱入り息子の恋』とよく似ている。困難を乗り越えゴールインする、なんていう単純なお話の中に、市井監督は、人生の真実を見出す。大切にすべき人はそこにいる。だから、彼女だけを見ればいい。ちゃんと彼女を見て、彼女のために生きること。それが自分の生きる道なのだ。そんな当たり前の話をしっかりと作る。ぶれない。作り手の誠実さが映画をキラキラ輝かせる。そいう意味ではこれもまた、キラキラ青春映画なのかもしれない。
『箱入り息子の恋』の姉妹編のような作品に仕上がっているのもうれしい。あそこでは、吉野家の牛丼がしつこいほどに前面に押し出されたが、今回はケンタッキーだ。もちろん脇目も振らずに王道のフライドチキンである。特定のファーストフードに拘り、その商品を映画の中でここまで前面に出して、それが映画を象徴させるなんて、他の映画にはないことだろう。彼ならではのやり方で、楽しい。(今回はポカリスェットにもこだわっている!)
三木孝浩によるお正月映画『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』と同じように、主人公のふたりだけに焦点を当てた作り方をした。周囲の人たちとの群像劇にはしないのが、特徴だ。描かれる世界はとことん狭い。だから、少々息苦しいほどだ。たまたまなのかもしれないけど、ここまでふたりだけに絞った作り方をする映画は今まで少なかったのではないか。脇役が個性的でちゃんとふたりをサポートしてお話を展開するというのが、どんな青春映画でもお約束だったはずなのに、ここにきて(2作品だけなのかもしれないけど、)こういうタイプの映画が連続したのはなぜなのか、少し気になる。今後の作品に注目しよう。
さて、そろそろ具体的に期待の新作であったこの作品の内容のことを書こう。お話自体は甘い。恋愛映画のパターンから少しも逸脱しない。お約束通りの展開である。しかも、難病もののパターンすら踏む。高校時代の出会い。(幼馴染だから中学も同じ)付き合いだして3年。結婚すら考えたのに、いきなり彼女から別れを切り出される。仕方なく受け入れたけど、彼女が忘れられない。そして、真実を知る。乗り越える。
なんの新味もない。なのに、見終えた時、とても新鮮なさわやかさが残る。『箱入り息子の恋』とよく似ている。困難を乗り越えゴールインする、なんていう単純なお話の中に、市井監督は、人生の真実を見出す。大切にすべき人はそこにいる。だから、彼女だけを見ればいい。ちゃんと彼女を見て、彼女のために生きること。それが自分の生きる道なのだ。そんな当たり前の話をしっかりと作る。ぶれない。作り手の誠実さが映画をキラキラ輝かせる。そいう意味ではこれもまた、キラキラ青春映画なのかもしれない。