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またまた食を題材にした美味しい小説だが、今回の目玉は映画業界で働いていた作者が書いた作品ということか。しかも僕とほぼ同い年。同世代の同じように映画好き作家が描く世界ということで興味深い。
ということで読み始めたのだが、あまり面白くない。予定調和のお話が続くからだ。不思議なレストラン。山の辺にあり、1日ひとりのお客しか取らない。亡くなった人との思い出の料理を出し、死者と再会出来る。いかにもな話。しかもそれが単純すぎて。
4話まで読んだところでこれはあかんな、と思い読むのを辞めようとした。ここまでお話が単調で仕掛けもなくパターンの域を出ないって、ガッカリする。しかも出てくる料理がありきたりで美味しそうじゃない。これは瑣末に見えて致命的な欠陥だ。
だけど、後80ページほどだからもったいない(?)と思い読み進めた。5話まで来てようやく話が動き出す。死者に会うパターンではなく、死者が会うという反対のパターンである。これまでの短編連作から一気に長編のエンディングになる。そしてラストの第6話。予定通りこの店のオーナーである天国繁の話になる。彼がなぜ有名なイタリアンの店を辞めたか。ただこのドラマの幕引きになるお話も充分予想できる範囲である。納得する展開と結末だけど、よくあるTVドラマの感動もの、というレベルにしかならない。ただの読みやすいライトノベル。残念だった。