こんな無茶苦茶な映画があっていいのか。全く理解不能。というか、一切説明はない。何がどうしてどうなったのか。最後まで見てもわからない。「第1回日本ホラー映画大賞」で大賞を受賞したという下津優太監督による同名短編をもとに、下津監督が商業映画初メガホンをとり、あのキングオブホラー清水崇が総合プロデュースを手がけた。脚本は昨年『ミンナのウタ』を担当した角田ルミである。これは清水崇門下生による(自主映画ではなく)ちゃんとした角川映画。(低予算作品だけども)
かなりショッキングな映画。ほぼ素人キャストが敢えて拙く芝居をして、リアル感を醸し出す。主人公の古川琴音以外は全員知らない人ばかり。祖父母の怪しさにはかなりのものでいろんな意味でドキドキさせられる。いきなり「かわいい孫だから、目の中に入れても痛くないよ」と言いながら、自分の目に孫の指を突っ込み始めるシーンには驚愕。全体がフェイク・ドキュメンタリータッチでそれが新鮮。わけのわからないダンスや、さりげなく笑えるキミが悪い描写が満載。テーブルの下に隠れた古川の前で祖父は祖母の指をペロペロしゃぶるシーンも強烈。
家族を守るために一家にひとり、誰かを部屋に閉じ込め目と口を糸で縫い付け監禁する。そうすることで家族は平穏に過ごせるって何? 他人を当たり前に軟禁している。世界の幸せの容量は決まっているから、誰かを不幸にしたら自分たちの幸せはキープできるなんていう理論が平然とまかり通る村。
映画は古川が田舎の祖父母のところに帰省するところから始まる。別々に暮らす家族とは現地で合流する予定だったが両親の都合で彼らの帰省が遅れることになり、まずひとりで行く。
幼い頃、祖父母のところで見た不気味な存在。忘れていた記憶。なんだか不気味でざわざわする。ここにはやはり「何が」がいる。
彼女は、裸のままで監禁されていた男を助け出す。だが、男は車に轢かれて死ぬ。平気で殺して、昼間から平然とその遺体を田圃で焼く。あっけらかんと処理。一体何がどうなっているのか、やはりわけがわからない。理屈はない。今までもそうしてきたから、やっているだけ。古川ひとりが何も知らない。彼女はみんなが狂っていると思うが、やがて自分のほうがおかしいのかも、と思う。自然とまわりに取り込まれる。
こんな狂った映画はなかなかないだろう。これを平然と作る下津監督って何者?あまりにあっけらかんとしていて、茫然とする。確かに凄いかもしれないけど、なんだかなぁとも思う。