シリーズ第3作。(敢えて『遺言未満、』含む)シーナさんも80歳になる。(ちなみに僕ももうすぐ65歳になる)もうあまり後がない。だから終わりを考えてしまう。今回の緊急出版(?)は、盟友目黒考二の死が大きな影響を与えているのは明白だろう。シーナさんの相棒である彼が死んだ。やがて自分も死ぬことはわかっているけど、目の前の死にどう反応したらいいか、わからない。彼は葬儀には行かなかった。行けなかった。シーナなりのお別れの儀式がこの本の出版なのだろう。前半部分はいつもの日記。途中目黒の死を挟んで2023年の6月までが描かれる。
若い頃の失踪願望を今の視点からたどるという企画だから、必ずしも自分の死について書いたわけではないけど、明らかに今意識は死に向かっている。死ぬまでにできること、したいことを書くことが今のシーナさんの想いであろう。
自伝小説『さらば友よ!』は直接目黒考二の死を描くのではないが、そこを起点にして、目黒の椎名への遺言から始まって、パタゴニア行きの意味を再び問いかけて、さらには若い頃の臨死体験と失踪事件を振り返る。
300冊に及ぶ著書を遺し、でもこれからもまだまだ書くことがあるシーナさんの80代から目が離せない。