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映画・演劇のレビュー

劇団太陽族『トリビュート1/3』

2024-06-28 22:40:00 | 演劇

3月の『戻り道に惑う』に続いて太陽族が2作品連続でウイングフィールドに登場した。これは今回の再演大博覧會参加作品。タイトルの「1/3」というのは、今回の参加作品は『トリビュート』の中の3分の1だからだ。オリジナルは30分ほどの短編作品だったと思うが、それを長編化して再演博に挑む。3話からの短編集(4話だったかも?)の1本を80分の長編として再演するってことだ。こんな大胆な形での再演博への参加って、あり? もちろんあり、だ。ウイングは面白い試みならなんだってOKする。

早朝の新聞交換が描かれる。4誌が集まってまだ来ないヨミウリさんを待つ。ニッケイさんはこの日から新しい人に変わった。そこに謎の女が登場する。真っ白のワンピース。この世界の外からやって来たみたいに無邪気で無垢。これは5誌が明日の新聞(もう今日になっているけど)をお互いに交換して確認し合う儀式。

全編をビートルズが流れる。心療内科医による面談から始まる。感染症が広まり、世界の終わりが近い時代。カウンセリングで医師はいつものことで、またビートルズの蘊蓄を傾ける。

これは夜明け前の真夜中の感慨。現実ではなく夢幻の時間。作、演出の岩崎正裕は自由に、心趣くままに、心情を、想いを語る。そんな断片がとりとめもなく綴られていく。中学時代から大好きだったビートルズ。過去から今に、そして未来を見つめる。岩崎さんは40年以上の歳月を芝居で過ごして、還暦を過ぎた今、その感慨がこの芝居を通して描かれる。それが時代の空気と呼応する。私家版が社会派だった頃の彼の世界にもつながっている。


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