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映画・演劇のレビュー

『土竜の唄 香港狂騒曲』

2017-01-16 02:36:49 | 映画
新年1本目の映画はド派手なバカ映画がめでたくていい。そこでこの映画にした。なのに、これがなんだか真面目なのだ。



まず、前作の続編という当たり前のことがちゃんと律儀に守られてあるのに驚く。こういうばかばかしいコメディはいい加減でいいから、前作のお話なんか了承事項としてすっ飛ばして始めるのがパターンなのに、なんてマジメなんだぁ。でも、そんな真面目さすらふざけているように思わせるのが、実はこの映画の身上だ。三池崇史は何をしてもやりたい放題に見える。マジメのふり、って思わせる。ということで、真面目にバカしている。要するにいつものバカ。(よかったぁ)



まぁ、オープニングの怒濤の展開にまず圧倒される。バカバカしい。マンガか、これは。(というか、マンガですが。)下ネタ満載でお下劣。生田斗真は体を張ってこのバカを全力で体現する。前作以上に開き直っている。それでなくてはこの映画は成立しないし、成功しない。テンポよく、いいかげんなお話がどんどこ進む。



でも、いつまでたっても香港にはいかないんですけど、と思う。体感時間1時間15分で、ようやく舞台は香港へ!(ここまでが長すぎる、という意見も出そうだけど、ここまではちゃんと笑えるし、面白いから構わないのだ。でも、このタイトルなのにその展開ではさすがに心配になってきて、そこでようやく香港に行くことになり、ほっとする)



だが、問題はここからなのである。なんと、香港シークエンスがつまらない!! これはどういうことなのか、と目を疑う。こんなはずじゃない、絶対!
なのに、もう、まるでつまらないんですけど、どうしましょう。バカが加速しないのだ。



わざとつまらない映画をふざけて作ったのか?
いや、それはいくらなんでもないだろ。ということは、息切れしたか。それもないだろ。要するに、失敗したのだ、たぶん。香港もセットばかりで、ロケーションを生かしてないから、わざわざ香港に行った意味がない。そこが一番の問題点だろう。まぁ、この映画は香港を生かすための映画ではなく、香港なんて口実でしかない。場所なんか、どこでも構わないのだ。もちろん、それでいいのだけど、お話が急につまらなくなったのが、ダメなのだ。なぜ、こんなことになったのか。菊川怜二という男の個性でお話が展開していく場当たりだけのいいかげんな展開が面白いのに、それは大きなストーリーの中に飲み込まれていき、彼の個性が相殺されるのが問題なのだ。潜入捜査官という基本設定が今回のお話ではあまり生かされないのも気に入らない。いつのまにか、ただのヤクザのチンピラになっている。それはないだろ、と思うけど。



強烈な脇役たち(ほんとにすごい猛者ばかり)に揉まれても、圧倒的に、勝つ。そんな強烈な個性が彼のキャラクターで、持ち味なのに、後半がこれではつまらない。女装までさせられて、それに何の意味もないってのも、なんだかなぁ。派手な爆破シーンもCGだから、なんの感慨もない。体を張ったバカバカしいアクションこそが、このシリーズの持ち味のはず。たとえチープでも手作り感満載のあほらしさが欲しい。なんか、中途半端な大作仕立ては映画の魅力を損なうばかりだ。
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