5才の頃、母を亡くした「僕」のその後の日々を綴る。イギリスから転校して来たさりかちゃんとの交流を中心にした少年時代がゆっくりとしたタッチで描かれていく。5歳から6歳に。春には小学生になる半年間ほどの短い時間。唯一の友だち、さりかちゃんとの間に距離が出来ていく終盤の展開が悲しい。
ハロウィンの日のこと、誕生日プレゼントのゲーム機、雪の日の時間。こんなにも決定的になるとは思いもしなかった。しかもここまで距離が出来るのか、と唖然とする。熱を出して寝込んだ後、バレンタインのチョコを受け取れないこと。たった6歳、まだ就学前の幼稚園児の男女。だけど、ここまでの決裂には驚くしかない。
ラスト10ページでいきなりお話は10年後に飛ぶ。16歳の高校生になっている。あれからさりかちゃんとは会ってない。彼女は大阪に引越して、もう交流はない。どんな女の子になったか、知ることもない。たった半年、幼稚園児だった頃の話だ。だけど、彼にとってはかけがえのない時間。あの日々はなんだったのか。自分でもわからないような幼い頃の頑なで微妙な心情が描かれる。