25年作家生活を送ってきた柴崎友香が自分はADHDだという診断を受けたことを通して告白する創作の秘密と真実。知らなかった自分自身と向き合い、さまざまな角度から考察していく過程が綴られる。
繰り返しが多いけど、それは何度となく振り返りながら先に進もうという覚悟の所産。だから気にしない。彼女は日々の中から自分の病と向き合い、答えを出そうとする。
これはそんな彼女の戦いの記録である。ただあまりに取り留めがないから、読んでいて次第に退屈してくる。ここにはエッセイの軽さはないけど、重いわけでもない。微妙なバランス感覚で書かれたさまざまなエピソードは結局は同じところの堂々巡りで、後半は飽きてきてしまった。描きたいことはわかるけど、新しい展開がないからそれは少ししんどい。だけど彼女は気にしない。読書のためではなく、自分のために書いているからだ。
彼女の小説やエッセイは好きだが、さすがにこれは少し厳しいというのが素直な感想だ。ただ発達障害と向き合いそれを克服する、とかいう美談ではなく、ADHDと一緒に生きる過程を誠実に描く正直な告白は胸に沁みる。