1964年
「きょうは柿本だから下から投げろ」「きょうは城之内だから上からでいいぞ」シーズン中、バッティング投手をやった辻が、十四日から多摩川で始まった秋季練習から、正式にアンダー・ハンドに転向した。大石コーチに理由を聞くと、「上からだと余りにタマが素直すぎる。スピードはあるんだが、クセ球でもないし、下からのほうがいい球を投げるから」ということだった。辻はことしで三年目。名門の平安高から同僚の林と一緒にはいったが、林と違うのは同じ平安高でも、辻は軟式の出身。高校一年の時は硬式の野球部に籍を置いていたが、二年から転向。中央球界には余り知られなかったのも三十五、三十六年の全国大会、三十六年の国体と大きな大会に三度も優勝している。1㍍76、73㌔と肉体的には恵まれた辻も、軟式から硬式の重いボールに持ちかえて面くらったらしい。それでも昨年は、イースタンで43回2/3投げて自責点10、防御率2.05で4勝をマーク、大洋投手陣の中では最多勝利を上げるほどの進歩をみせた。「稲尾さんの外角速球は見ていて気持がいい。それと広島の大石さんの打者を恐れず真っ向からぶつかるピッチングに魅力を感じます」入団当時から辻の目標はこの本格派のふたりだったが、アンダー・スローに変わって目標がなくなった格好。今シーズンは、イースタンにも一度も登板せず、もっぱら一軍のバッティング専門投手として思いっきり投げ込んだ。そのお陰でスタミナと肩には絶対の自信をつかんだらしく、来シーズンに期している。
「きょうは柿本だから下から投げろ」「きょうは城之内だから上からでいいぞ」シーズン中、バッティング投手をやった辻が、十四日から多摩川で始まった秋季練習から、正式にアンダー・ハンドに転向した。大石コーチに理由を聞くと、「上からだと余りにタマが素直すぎる。スピードはあるんだが、クセ球でもないし、下からのほうがいい球を投げるから」ということだった。辻はことしで三年目。名門の平安高から同僚の林と一緒にはいったが、林と違うのは同じ平安高でも、辻は軟式の出身。高校一年の時は硬式の野球部に籍を置いていたが、二年から転向。中央球界には余り知られなかったのも三十五、三十六年の全国大会、三十六年の国体と大きな大会に三度も優勝している。1㍍76、73㌔と肉体的には恵まれた辻も、軟式から硬式の重いボールに持ちかえて面くらったらしい。それでも昨年は、イースタンで43回2/3投げて自責点10、防御率2.05で4勝をマーク、大洋投手陣の中では最多勝利を上げるほどの進歩をみせた。「稲尾さんの外角速球は見ていて気持がいい。それと広島の大石さんの打者を恐れず真っ向からぶつかるピッチングに魅力を感じます」入団当時から辻の目標はこの本格派のふたりだったが、アンダー・スローに変わって目標がなくなった格好。今シーズンは、イースタンにも一度も登板せず、もっぱら一軍のバッティング専門投手として思いっきり投げ込んだ。そのお陰でスタミナと肩には絶対の自信をつかんだらしく、来シーズンに期している。