1964年
ことしの阪神は、オープン戦のうちから次から次へと巨人用投手を育て上げた。バンサイドについで二年生コンビの交告、村上、それから四年生の太田。なかでも太田はオープン戦とはいえ、巨人相手に好投してすっかり自信をつけ、藤本監督に高く買われている。昨年までの太田はせいぜい投げて三回程度。4イニング以上投げた経験がなかった。カーブ、シュートのコントロールはよかったが、いま一つピリッとしたところがなく、巨人戦に登板しても左対左の有利な立場にありながら、王にボカスカ打たれる始末だった。その太田がめざましい進境を示し、オープン戦とはいえ巨人を手玉にとったときには、藤本監督でさえもアッといった。それも一度ならず、二度までも巨人を押えたのだから、疑いもなく本物。杉下コーチも、「ことしの巨人戦にはどんどん使う」と強気な言葉をはいている。太田が昨年と違う点は、ストレートだけで勝負できるところだ。このストレートは握り一つで自然にシュートしたり、スライドしたりする。太田はいわずと、「自分で意識したものではないが、それでも手首のひねりをちょっと違えただけで変化する」そうだが、このナチュラル・シュートやスライダーが、ストライク・ゾーンを上下左右にグルグルと回って打者の目をくらます。倉敷での巨人戦で6イニング投げ、長島の1安打に押えたときは、完璧のピッチングだったし、続く後楽園での対巨人戦でも、4イニングを2安打に封じている。「オープン戦で自信をつけたので、ペナント・レースでもやれると思います。ことしは結婚したばかりなので、心機一転、大いに頑張らなきゃ・・」と、この巨人用投手は、手ぐすねひいて巨人戦に備えている。
ことしの阪神は、オープン戦のうちから次から次へと巨人用投手を育て上げた。バンサイドについで二年生コンビの交告、村上、それから四年生の太田。なかでも太田はオープン戦とはいえ、巨人相手に好投してすっかり自信をつけ、藤本監督に高く買われている。昨年までの太田はせいぜい投げて三回程度。4イニング以上投げた経験がなかった。カーブ、シュートのコントロールはよかったが、いま一つピリッとしたところがなく、巨人戦に登板しても左対左の有利な立場にありながら、王にボカスカ打たれる始末だった。その太田がめざましい進境を示し、オープン戦とはいえ巨人を手玉にとったときには、藤本監督でさえもアッといった。それも一度ならず、二度までも巨人を押えたのだから、疑いもなく本物。杉下コーチも、「ことしの巨人戦にはどんどん使う」と強気な言葉をはいている。太田が昨年と違う点は、ストレートだけで勝負できるところだ。このストレートは握り一つで自然にシュートしたり、スライドしたりする。太田はいわずと、「自分で意識したものではないが、それでも手首のひねりをちょっと違えただけで変化する」そうだが、このナチュラル・シュートやスライダーが、ストライク・ゾーンを上下左右にグルグルと回って打者の目をくらます。倉敷での巨人戦で6イニング投げ、長島の1安打に押えたときは、完璧のピッチングだったし、続く後楽園での対巨人戦でも、4イニングを2安打に封じている。「オープン戦で自信をつけたので、ペナント・レースでもやれると思います。ことしは結婚したばかりなので、心機一転、大いに頑張らなきゃ・・」と、この巨人用投手は、手ぐすねひいて巨人戦に備えている。