日向で眠りこける犬も、 寝ながら尾をふったり、 前足で宙を掻くようなしぐさをする。 耳をぴくぴくさせたり、 吠えるときもある。 きょうは大きな相手にひるんだか、うなされている。 追われているらしい、 悲鳴に近いものだ。 犬も夢を見る。
rugbyがきて間もない頃、中国がえりの友人から聞いたはなし。
都市で犬にあわなかった。 あれは食べられちゃったのよ。
こちらが仰天するのもかまわず
『あそこでは、犬を連れたひとがくると 『まあ、美味しそうな犬ですこと』 って挨拶するの。 おいしいか、いくらするのか それが問題なのよ』
『日本のように 『可愛いワンちゃん』 なんて言わないの!』 と続けた。 話したくて仕方がない。
そして 『とくに…』 で、 身を乗り出して
『黒い犬がいちばん美味しいんですって…』 と 念を押す。 腰を抜かして 「嘘でしょ!」 と叫ぶのを待っている。 あのころは聴力抜群の彼にも聞こえたはず、 奇妙な趣味のそのひとが浮かんでくる。
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視力の落ちたrugby は 冷たく、しめった鼻を押しつけて 「あ、母さん ここにいたの」 と確かめる。 かわいさ余って、おまえを食べることは絶対しないからね、 安心してと山姥は思う。 背を丸め、ちぢまる寝姿は、やはり100歳。 夢は枯れ野を駆けめぐる。 どうせ見るなら、 いい夢であれ。
たしか去年、 かの国でもペット犬を飼うひとがふえたと報じていた。 食の習慣はまだあるらしい。
すさまじきもの、昼ほゆる犬に、異文化を加えよう。 祭祀や薬効に関係があるらしい。