月のころはさらなり…
猛暑の予報は35℃。 実際、 アスファルト舗装や建物の照りかえしで40度以上はある。 夕方5時、 出発直前にスコールが来て、 一層蒸してきた。 それでも、 すべて洗いあげたように清々しく、 瑞々しくなっていた。 会場の民家園で宵闇を待つ。 この場所で 昨年蓮の花に出会った。
それにしても、 こんな時刻だ。 おおきな荷葉に雫を溜めて、 花はまぶたを閉じ眠りにつくところ。 水面に黄昏が迫っている。 18:42
かつてのように乱舞するのだろうか。 久々のホタルはどんなかと、 ワクワクしながら落ち着かない。
18:47 民家園の背景に、 雨上がりの雲と屋敷林。 大がかりな舞台装置である。 天上のコーラスまで届きそう。
19:09 大きな蒲の穂、 綿毛がはじけているのがいくつもある。 このあたりに、 見沼ホタル保存会の方々が飼育箱から蛍を放った。 まだまだ… ぼんやり明るい。
夏は、夜。 月のころはさらなり、 闇もなほ、螢の多く飛びちがひたる。 また、ただ一つ二つなど、ほのかにうち光りて行くも、をかし。 雨など降るも、をかし。
午後8時、 いよいよ闇夜になりぬ。
螢は草かげで 「ここよ…」 というように ポー ポーと光ってみせた。 一つ、 二つ… 歓声があがる。 「そこ…」 「こっち」、 溢れるほどの見物人。 乱れ飛ぶほどいないし、 これじゃ飛び立つ勇気なんか出ないだろうな。 立派なカメラの閃光、 携帯を向ける、 デジカメのモニターと。 最先端の灯火は、 かすかな情趣と心もとない灯りを、 まるで威嚇するように思える。 健気なホタルに、 あはれを催す。 写真なぞ撮れなかった。
モードを夜景にしてみたり、 ISOは400から1600まで、 さらに連写機能など。 いろいろ試しても、 全くお手上げ、 どうしてくれるの。
半月さえも、 少しふくれてきている。
帰りぎわ、 ようやく飛ぶのを見た。 ゆらり、 ゆらり… むかし見ていた光景だ。 落ち着いて、 心のカメラだけに納めてきた。 鮮明な映像はひとりじめ。
螢が棲める環境、 小さな生物のゆくえ、 自分たちの未来のためにも、 きれいな地球をとりもどしたい。