古代、人は山をあがめ、広く深く水をたたえたうみをあがめ、その入り口に立ちはだかる
大木を徴として尊んだ。
福島県の中央を走る山並みは有料道路でつながれ、高速東北自動車道からアクセスすれば
半日もかからず磐梯吾妻を走り抜けることができる。
スカイライン、レークライン、ゴールドラインと名付けられた三本の有料道路からの眺め
はやや高めに思える料金にも見合うもので、道を作った人々の執念や苦難を想像させた。
天皇陛下の「あそこへは車で行けますか」という一言の問いかけに、時の知事が「もちろん」
と答えたことから始まったというスカイライン建設の由緒を今の人はサラッと聞き流すだろう。
くねくねと続く道路途中に展望台がいくつかあって、湖見台という名前そのまんまの場所で
遠く霞んでいる猪苗代湖を望めた。
この日は曇りで空との境と水の色が融けあって、立っているこちらがわの足元まで浮いて
いる錯覚で、そのまま目を閉じるといっとき現世を離れていく。