心の風景

晴耕雨読を夢見る初老の雑記帳

55歳の夏

2005-08-15 11:21:16 | Weblog
 久しぶりに仕事から解放されて、ゆったりとしたお休みを過ごしています。部屋の片付け、本棚の整理、レコードの整理、そしてオーディオ機器周りの調整をしていると、あっという間に夕方になってしまいます。贅沢なものです。
 そんなお盆休みを利用して、中古レコード店を何軒か見て回りました。大阪駅前ビル界隈の名曲堂、DISK.J.J.、カーニバルレコード。日本橋にも足を伸ばして、同じくDISK.J.J.と、店名は忘れたけれどもう一軒。手にしたのは、ヴェルディの「聖歌四篇」(ムーティー指揮)、ちょっと難しそうなシェーンベルクのオペラ「モーゼとアロン」(ブレーズ指揮)。ちょうど今、塩野七生さんの「ローマから日本が見える」を読んでいるので、BGM風に楽しむ中世イタリアの音楽シリーズ数枚...。これで終わればよかったのですが、先週触れたダラーブランドのことが気になってジャズコーナーでも物色。結局、「アフリカン・スケッチブック」「ジンバブエ」「アフリカンマーケットプレイス」「ソエト」「アットモントゥール'80」...。どうも脈絡がありませんが、これが私と音楽の関係なんです。
 最近はデジタル機器が充実して、CDで十分に音楽を楽しむことができるのに、何故いまさらレコードなのか。古本屋の、あの黴臭い古色蒼然とした遺物に関心をもつなんて。そんな声が聞こえてきそうです。でも、そうでもないんです。人々から見捨てられたレコードに光を当てる。そおっとレコード針を落とす。すると、役目を終えたはずのビニール樹脂盤から、管弦楽の輝かしい音色が部屋中に響き渡る。かつての名歌手の歌声が、そして中世のイタリア音楽や砂埃のする南アフリカのジャズピアノが、目の前に生き生きと蘇る。古き良き時代を思う懐古趣味と言われそうですが、そんな意外性が私は大好きです。
 そう、この夏、55歳になりました。戦後のゴタゴタが少し落ち着いた頃、この世に生を受けた年代。レコードがSP盤からLP盤に代わった時代、ぺらぺらのソノシートが雑誌の付録についていた時代。若者たちが旧態依然とした大学に溢れ、不満が爆発し、赤い帽子がキャンパスに溢れた時代。社会経済体制の浮き沈みのなかで右往左往しながら頑張り抜いた世代。10年先に定年という出口がぼんやりと見えながらも、心の中に熱い思いを秘めて最前線で最後の力を振り絞っている世代....。レコード盤のように常に輝かしい音色を出せる、そんな生き方ができればと思っています。
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